【シュナの旅・宮崎駿)】
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  • File 24【シュナの旅】(宮崎 駿)

    先日、タコヴンラヴというアーティスト集団のホームページの向日葵さんという方に教えて頂いた宮崎 駿の「シュナの旅」。すぐに本屋さんへ行ったのですが残念ながら置いてなかったので、さっそく注文して、暫く待ち遠しい日が続きました。

    本日やっと宅配サービスで「シュナの旅」が送られて来て、さっそく絵本を開いてみての感想は、「おおぅ!、こ、これは、風の谷のナウシカ!?」でした。

    しかしどこかで宮崎駿の年表を見た覚えがあり、ナウシカの後に出版されて いた様な記憶がありましたので、変だなぁ〜と思って調べたら、1982年に ナウシカが連載を開始し、1983年にシュナの旅がアニメージュから出版で したので、シュナの旅の方がナウシカのチベット民話versionという事に なるのでしょうか。

    この絵本は穀物を持たない貧しい国民の為に、王子がいくつもの苦難を乗り越えた末、竜王から麦の粒を盗み出した為に魔法で犬にされてしまうのですが、一人の娘の「愛」によって救われて、ついに祖国に麦の種をもたらすというチベットの民話「犬になった王子」が元になっているのだそうです。あとがきには、その他にこれをアニメーション化するのが夢であるが、こんな地味な企画が通るばずもない。という宮崎 駿さんの言葉もありました。

    それにしても宮崎の描く絵本は「人」や「動物」の匂いまで感じさせる様な作品ばかりです。そして「風」「空」「雲」「光」「植物」などの背景を描くタッチ、特にそれぞれの「影」の描き方(タッチ)が大好きです。

    色使いも勿論良いのですが、結局タッチを生かすには必然的にあの様な色あいになるのでしょう。一つの絵が独立して何かを物語っている様で、そう一枚一枚をセピア色にしてみても、あのタッチを十二分に楽しめて良いかなぁ〜、なんて感じました。

    ナレーション的な本文も独特で、昔のタロットカードや中世の地図の様な雰囲気が漂っています。そして何故か1シーン毎に「存在感」というか、リアリティをもって描かれているんです。

    この「シュナの旅」、「ファンタジー」という枠には収まらない様な気さえします。毎度の事ですが、宮崎駿が創造する動物・植物をはじめ、あらゆるものについて、実際に存在するものを細かく観察しつくされたのちに生まれたキャラクターばかりなので、ともすれば本当に存在するのではないかと錯覚する事さえあります。そしてそれは、必ずと言って良いほど移りゆく季節の変化や気象状態などリアリティー溢れる背景描写の中で息づいている様です。つまり環境(時代背景)をも創造し、けっこうそれが一番のポイントだったりするのではないのかなぁ〜、という気さえします。

    もっと鋭い観賞眼があればいろいろイメージが膨らみ、それを文章にして表現できるのだとおもうんですが。しかし、今まで「いいなぁ〜」「すごいなぁ〜」と感じていた事が、何故「いいなぁ〜」と感じたのか。今回、文字にしてみて、自分自身少し解った(つもり)です。

    ただ一つだけ残念な事は。・・・「本が小さすぎる!」です。 せっかく素晴らしい作品なのに、この様に覗き込む扉が小さくては 細かい描写を観賞出来ません。せめて原画と同等のサイズであれば、 もっともっとその世界に入り込めるのに、と思いました。




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