頭がよすぎると落ちてしまう面接試験

 レドモンド式面接、なんてものがあるらしい。
 畑健二郎氏の説明によると 《近年、企業採用で急速に用いられるようになった、真の知性を示す論理問題のことである!!「マンホールのフタはなぜ丸いのか?」などの難問奇問を論理的に解答し、暗記に頼らない本当の頭のよさを根本から問う試験なのだ!!》
なんだそうだ。

 これをやると多分僕は落ちる。いろんな意味で。
 幸いなことに日本には根付かないだろう。というのは日本には「とんち」というすばらしい文化があるからだ。誰も傷つけず、場を収めることを主眼とした切り返しだ。
 まあ、近東にも似たようなものがある。
「カエサルのものはカエサルに、神のものは神に返しなさい」
「あなたたちのうちで罪のないものが最初の石を投げなさい」
欧米人の多くが知っている話だが、そこではどうやら根付いてなさそうだ。

 というわけで、私は面接官の意図に反して、とんちで返しそうなのだ。
「富士山を動かす?うーん、一番平和的なのは山頂の砂粒を一つ持ち上げて、別のところにずらす。平和的でないのは山梨県を焚きつけて、やはり富士山頂は山梨県、と主張してもらう。適当に影響があるが、だれも文句を言わないのは、国土地理院が設営した三角点「富士山」を老朽化ということで動かしてもらう。」
 面接官が仮定した模範解答は知らないが、ミシシッピ川の流量を計算させたというのが本家マイクロソフトの面接であったそうだから、ブルトーザーで移動させるにはどれ くらいの工数が必要か見積もらせるのが正解なんだろうな。でも、そうして動かしたら、もうそれは「日本一の山」富士山じゃない。ニイタカ山よりちょっと低いただの山になってしまう。だから日本人の美意識を守る限り「とんち」で返さないといけない。

 ミシシッピ川の流量計算、模範解答らしきものを見たが仮定に仮定を継いで無理やり計算で出させている。これを頭がいいというらしい。危険だ。そんな発想でシェリンクラップソフトを作ると、機能は確かにあるんだが、とてつもなく使いづらいものになってしまう。というわけでマイクロソフト製品はどんどん使いづらくなってゆくのだ。だからレドモンド式面接は良くない。
 確かにこの手の推論を使うことはある。他社が外販しようと提案したソフト、社内で報告すると、開発費用がどれくらいかかったと思われるか出してくれと言われた。「そんなん分かりませんよ」「いや、だいたいでいいからさ。」
 およそ10秒考える。「電卓貸してください」。更に10秒「ざっと○億円ですね」「ならばこれくらいライセンス料払ってくれと言うのもわかるなあ。」お仕事はスムーズに進んだ。(営業の人との雑談で知ったコンパイル時間と使用したと思われる機種の性能、その会社に発注したときの単価計算法から導き出した。)
 でもいや、ユニークな質問は良いとしよう。問題は面接官が質問と同じくらいユニークな回答を受け入れる度量があるかどうかなのだ。

 偶然にもレドモンド式になっていた面接の例。これはハルヒモドキが教えてくれた。参加した合コンでそういう話を聞いたんだろうねえ。
 製薬会社の面接で、ある学生がこんなことを言われたらしい。

「君、転勤は大丈夫かね」
「はい」
「北海道でもいいかね」
「はい」
「稚内だよ」
「大丈夫です」
「君、稚内で薬が売れるわけ無いじゃないか」
かの学生は心の呟きが口に出たそうで、玉砕したみたいだが、ハルヒモドキはこう言ったらと提案したそうな。
「何を言っているんですか、富山の薬売りは家が3軒あったらどこにでも行ったんですよ。」
 かの学生は、面接のみならず、合コンでも玉砕したようだ。今考えるとハルヒモドキは時々撃墜報告をしてきたなあ。なんかのサインだったんだろうか?(鈍感>自分。)

 それを聞いての私「僕だったら、なるほど、稚内を拠点にロシアに進出するんですね。面白そうです。と答えるなあ。」
 ハルヒは面接官を笑わせて、僕なら面接官をびっくりさせて、、、共に不合格になるんだろうな。

 が、まあこういう会話をしていた二人に限って言えば、お互いの考えが面白いので、それを知りたいと妙に一緒にいた、ような記憶はある。(ただし一緒にいるところをホントに見た人間は、われわれの間に妙な緊張感がただよっているのに、底知れぬ違和感を感じたらしい。まあ、毎日面接試験やってるようなもんだから。)

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