かみかみ健康法

 二週間ほど入院してしまった。
 定期健診で「要検査」となり、自覚症状も出たので行ってみたところ病気が発見された。これだけなら仕方ないことだが、検査を受けた病院があまりよろしくなかった。
 検査そのものは楽であった。鎮痛剤も回復に1時間半かかるほど多量に投与してくれるので当たり前ではありますが、痛みが少ないのは悪くない。ところが出された薬が私の体質に合わなかったらしくアレルギーを起こしてしまったのだ。それだけなら不運と割り切れる。が、院長さんは「この薬でたまにアレルギーが起こる」ということを知らなかったようだ。なので経過を聞いて薬を替えるのではなく、さらにアレルギーを助長する薬を追加した。症状は当然のごとく悪化した。にっちもさっちもいかなくなって次の週、大きな病院に行くから紹介状書いてくれ、とお願いすると、その段になってようやく超音波検査で炎症を確認し、抗炎症剤を点滴した。
 それでもこれだけなら症状がひどくなったので、と好意的に受け取ることもできただろう。しかしながら、書いた紹介状に検査データを添付しない、さらに紹介先から問われると「患者さんにCD-ROMにして渡しましたよ」とその場しのぎ、というのがあったのでさすがに不信感。今更ながら炎症を抑えたのも紹介先に不手際を見せまいとしてのこと、そうとられても仕方ないんじゃないかなぁ。

 うちの娘「なんでそんなところで検査を受けたの?」「よそでやると一カ月待ちだから。」「見るからに胡散臭いじゃない」。スタッフの集合写真、院長以外全員女性というのに気づいておくべきだったかな。
(あとで書いてもらった診断書を見たところ、組織をとって検査したはずが、病名も特定できずただ「大腸炎」とだけしか書いていなかった。検査技師としての実績は信用するとしても、医師としていろいろ至らないところがあるんだろうなあ。)
 というわけで自分の運が良いという自信があればこの病院で検査を受けることを薦めます。しかしながら慎重を期するならば避けたほうが無難だと思います。

 紹介状が汎用のものだったので、その分野で権威があるという都内の大学病院に急行した。検査をした先生がたまたま立ち会ってくれた診療科のトップの先生に思わず尋ねていた「これで昨日会社に行けるものなんでしょうか?」「精神力だ。」
 さらには「これで立って歩けるんですか?」「精神力だ。」偉い先生でもそういわざるを得ない状態だったらしい。おかげでそれ以後敬意を持って接してもらえるようになり、何とか病室を探してもらって「緊急入院」となった。窓の外には御茶ノ水楽器店街が広がるという生殺しに近い状態。(外出許可をもらって一回行った。外出許可の書類には「行先:神田明神、理由:参拝」というとても波風の立たないことを書いた。もちろん参拝はした。感想:犬の気持がわかったので犬の散歩は少々無理してでもやろうと思った。)

 薬を止めて腸を休めて検査。というわけで症状は治まったが肝心の病気は手つかず。他の薬を試したのだが、やはりアレルギーを起こしてしまったのだ。とりあえず退院して、炎症が出た時にはステロイドで抑えることとしたが、なにしろ発病を抑えるすべが見つかっていないままなことには変わりない。
 というわけでニョーボが燃えまくっている。料理好きが高じて食っているものの化学的構造を知りたくなって楠田江里子の後輩になったという筋金入りである。お医者さん自身は「この程度の病状なら何を食べてもいいよ」と言ってくれたのだが「体質の問題なのだから注意しておかないといけない。別の個所で発症するかもしれないし予防薬はないのだから」と食生活を司るニョーボに言われては誰も反論できない。何しろ食卓にカレーが乗ったと思ったら(刺激物なので避けたほうがよい)尋常ならざる対策がなされていたのだ。確かに外観は子供と同じ「ような」モノである。ところが、子供は普通のカレーだが、当方のは片栗粉でとろみをつけてカレーらしくみせているのだ。さらに肉ではなくて魚を入れている。(要するに一度に二種類のカレーを作っている。)一言も文句を言わずここまでしてくれるニョーボに反抗するわけにはいかない。
 間食はゼロになった。気が向くと脂肪分ゼロのお菓子を作ってくれるそうだがいつもというわけではない。(あたりまえのようにオリジナルレシピ。粉にした栗でマドレーヌって作れるんだ。なお娘に絶対安全ケーキの作り方を仕込んでいた。)なので、腹減った。食事が薄い!でも食べた気分にはなりたいので。

 入院中に出来た習慣を意識的に続行。ようするによく噛むのである。なにしろ当初は腸を休める目的から普通のご飯が食べられず5分がゆと茹でた野菜とか、ひどいときは固形物がなかった。間食するわけにもいかんので食べた気分になりたいがためにひたすら噛みまくった。そういえば子供の時は呆れられるほどのスピードでたくさん噛んでいたなあ。(たくさん噛むのは脳の発達にもいいらしい。ちなみに父親も噛むスピードが速いんだよね。)
 効率よく噛むために、口の中のものを一様に、かつ歯全体でムラなく(前歯と糸切り歯はあまり使わないが)噛む方法を考えた。ほっぺたの筋肉を使う。噛んで歯の内側に取り込んだものを空気圧で歯の外側に押し出し、ほっぺで押さえながら再び徐々に歯の内側に、これを繰り返す。噛みながら内側から外側はムラになるので一度全部押し出した方がよろしい。

 すると、症状がおさまった。正確には一度抑えた後、再発しなくなった。熱は多少高めの時もあるのだが、ほとんどの時間、通常の36.5℃(中島みゆきとは関係ない)に収まっている。実際には次の通院で報告してみないと何とも言えないが、ようするに食生活の洋風化に伴って増えてきた病気というより「噛むのが減ったために食物が体になじむ前にとりこまれ、かくして食物が異物として認識される傾向が強くなったことにより、免疫機能がオーバードライブしている」のではなかろうか。

 もっとも今回の入院、無駄ではないかもしれない。詳細はまだ言えないが今後数千人の子供が助かるかも。こういうのを巡り合わせというのだろうか。

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