JT.COMのお値段

 日経パソコン8月21日号に載っていた記事。
 jt.comのドメイン名を日本たばこが買い取ろうとしたが、価格の面で折り合いがつかず、調停となったそうな。
 日本たばこの提示価格が5000ドル、ないし7500ドル。これに対して、ドメインを取得していたイスラエル人男性は「100万ドルでも足りない」。これは調停になるわなあ。
 ITバブルの象徴にもみられるドメイン名の高値売買。まあ一年以上前のトピックという気がしないでもないが、さて、本当のところはいくらなんだろう。

 そこでとても機械的に算定してみることにした。広告価値、その他を全く含まない、ドメイン名維持手数料だけに注目したわけである。どの程度の資金を投資すれば維持手数料分の利益が見込めるか、という問題である。少なくとも、JTはその分の資金を登録者に支払うべきであろう。
 さて、この場合利益率をいくらとするかが問題になるが、これはJT自身に決めてもらおう。つまりJT株に投資した投資家がどの程度の配当収入を見込めるかである。つまり、JTはこのドメイン申請者が今まで払ってきた手数料を何らかの形で保証しなければならない。もし、これをJTが株式を自分でもっていて、その配当から支払うとしたらどの程度のJT株を持っていればよかったかで計算するのが、妥当だろう。
 このイスラエル人が今まで払っただけの手数料を支払えばすむという議論もあるかもしれないが、これはどうかなと思う。このイスラエル人がドメインを自分で保有したままJTから毎年の使用料を受け取るという契約でも双方問題はないわけだ。そうなればこの人は利用権を保持したままで毎年手数料の支払いをJTから受けることができる。丁度土地を貸して地代を受け取るようなものだ。ところがJTは「毎年払うのはやだから元をよこせ」と言っているわけである。

 さて、計算。
 JT株のお値段は昨日8月22日では、876、000円。
 配当金は11年3月期で、年間7000円。
 以上より、配当利回り0.7990・・・%。
 ドメイン管理機関interNICに支払う手数料が年間35ドル。
 よって、4380ドル。これに初期費用を加えると、、、えーと。
 おお、JTの提示額はそれなりに妥当であったことが判明した。

 もちろんこれはミニマムである。JTの商標的価値などは入れていない。これではまずいということで、今度はこのイスラエル人(これをユダヤ人と言うとニュアンスが随分と変わってくるなあ)の為に計算してみよう。
 利子率は変えようがないとして(日本の普通預金金利とかつかってもいいが)、年間手数料の方をいじってみよう。「コーヒーレート」の考え方を応用するのだ。同じサービスを日本で受けたときのコストで比較する。
 日本のドメイン名管理機関JPNICは年間手数料をとらないが、会員にしかドメイン名の申請を許さない。で、この会費が年間30万円である。従って、同じサービスを日本で行おうとすれば、年間手数料は30万円/年。
 よって、想定元本は37〜8百万円。
 これは純然たるドメイン維持費用だけだから、JT.COMののれん代を入れてこの倍は欲しい、でもう少し上乗せして言ってみるか、で100万ドル、というのも決して無謀な要求額とも言えまい。高い!といわれるかもしれないが、じゃあ日本たばこはJTという登録商標を5000−4380=620ドルで売ってくれるというのだろうか。Web上で使うという限定された権利ですら、その価格ではうんとは言うまい。

 JTの気持ちも分からないではない。自分が作ったブランドイメージをなんで自分が金を出して買わなければならないのだ。
 しかしだからといって、のれん代ゼロというのはせこすぎないか。ブランドイメージ防衛のための支出と割り切ってもう少し払うと申し出てもいいんじゃないだろうか。例えば出版社のオーム社が、ブランドイメージを守るために「宗教団体とは関係ありません」との全面広告を全国紙に打った時の支出のように。
 Webでのブランドイメージを維持するコストと割り切れば、TIME世界版に1ページの広告を出すくらいのお金は出てもおかしくないわけだ。ところでいくらなんだろ?>そのコスト。さすがに高すぎるような気がしないでもないが、ドメイン名の価格を算出するときの根拠としては一理あるんじゃなかろうか。

 この辺を勘案するとmatsuzakaya.co.jpを1千万円で売る、というのは極めて妥当な価格であったような気がいたします。JPNICが割り当てたドメイン名の売買は禁止されてた、というのは別としまして。

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