一票の格差を減らすには

 またもや選挙制度が改革されたらしい。
 そんなの改革する暇があれば一票の格差を何とかするのが先決だと以前は思っていたのだが、最近はそう思う気力もなくなってしまった。
 最大5倍にもなる一票の格差を擁護する人も多いようで、その人たちの言い分によると、少数意見の尊重をとか、人口の低いところへの配慮を、とかいうことで必要なんだそうだ。
 だったら、例えば人口の少ない党(当然支持者も少ない)に投票された一票は、一票の格差程度の水増しをして計られても筋は通るのではなかろうか。
 計算基準についてはいろいろと議論があるだろうから、一番問題のなさそうな比例代表から実施してはどうだろう。つまり衆議院選挙においては、最低得票党の獲得票数は一票の格差最大値の2.3倍程度に水増しして計算され、参議院においては5倍程度に計算し直すのだ。一票のあたりの議員の多い地区の皆さんは賛成せざるを得ない。すばらしいことに、こういった人々が日本の民主主義においては発言力の強い人なのだ。だって参政権が5倍もあるんだから。

 そんなわけで、次回の選挙制度改革の時は「比例代表においては、一票の格差にあたる倍数によって、得票数を再計算する」という条項を加えてほしいなと考えた次第。もちろん一票の格差が減少すれば、倍数も減る。
 従って自動的に一票の格差を減らそうとする誘因が働く。

 ここまで考えて思い出したのが、ヘンリー=フォードのはなし。工場が川から水をとる際に、どのような規制をすべきかの議論にこの上ないシンプルな解決策を提出した。
「工場は川からいくらでも水をとってよい」
「ただし、とった水と同量の水を、その川の上流に戻さなければならない」
 必然的に、水をきれいにして戻さざるを得なくなる。川の水を汚さないという要因がいやでも働くのである。

 もう少し拡大すると、経済学でよく言われる「ビルトイン=スタビライザー」につながるかもしれない。中学校で習ったのが累進課税。「景気がよくなる→所得が上がる→税率が増える→景気が落ち込む」ということで景気拡大に自然とブレーキがかかるというもの。景気縮小にも逆の流れでブレーキがかかるということらしい。だから特に何も施策をうたなくても何とかなるという話だ。
 その他にもレーガン時代の連銀が採用したビルトインスタビライザーとして、「マネーサプライ伸びを一定としておけば、景気が必要以上に拡大/縮小しようとしても、利子率が上下動して景気を平準化する」というものもある。

 政治における特定部門の暴走を止めるには三権分立に代表される「相互牽制」の考え方が主流であったが、どうやら機能不全らしい。だから最高裁が違憲状態と断じた一票の格差の中で得票数の数え方だけが与党の都合のいいように変えられるのだ。
 従って「ビルトインスタビライザー」による制度監視が必要なのではないかと考えるようになった次第。もちろんこういうことを考えるのは、相互牽制が可能なほど権力が分散しておらず、与党の力が強大になりすぎたことを認めてのことである。
 ビルトインスタビライザーの効果を再評価して、政治制度だけでなく会社組織その他にも組み込んでゆかねばならないなあ、と考えている次第。(私の就職した業種は社会への貢献という観点からはビルトインスタビライザーが働く構造になっているはずである。)

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