リエンジニアリングの必要要件

 長年コンピュータを使った雑用係をやっている。物理的作業以外は、ものすごい速さでそれなりにこなしてしまうので、いつの間にか雑用が本業になっている。基本的に頭は使わなくてよい。使っているように見えたとしても、本人にとっては使っているうちに入らない。
 但し交通整理は必要。雑用は次から次へとランダムにやってくるので放っておくとすぐに訳が分からなくなってしまうのだ。

 そこで、これをパソコンにやらせることができないかと考えた。仕事は結構定型化されているのでtaskと期限を入力すれば、ToDoの一覧とそれらのDeadEndを表示してくれるという奴。本当に作ることができれば、さぞかし便利であろう。ついでに、必要提出書類のファイルを開いてくれたりすると感激である。
 しかし、よく考えるとこれはAIの分野である。専門家でもここまでのものを作ろうとすると大変。そこでとっととあきらめた。ちなみに誰か使えそうなソフト、知りませんか?
 もちろん「仕事のパターンを登録するのにXMLを使ってやれば、また別の発想で・・・」としぶとく考えたりしているところは相変わらずである。

 さて、もしこのお仕事交通整理プログラムができたらどうなるのだろうか。ひょっとして昔のSFにあった、全能のマザーコンピュータに労働を指示されているような状態になるのではないだろうか。うーん。単純作業をコンピュータにやらせているうちに、さらなる単純作業を人間が行うようになるという弁証法的展開がちらりと見えたぞ。(^^;クルーグマン先生は機械が代替できない人間の仕事は機械の掃除だと言っておりますし。

 良く考えると、案件(JOB)を個別作業(TASK)に落としてスケジューリングするというのは、もともとOSが行う、いわばコンピュータが汎用となるに必須の仕事ではないか。
(UNIXにtaskという概念はないが。)
 そんなわけで、コンピュータによる人間支配が始まる。各人への指示とスケジューリングは組織のOSたるコンピュータが行い。人間はアプリケーションとしてOSに従う。

 ここで想起したのが「リエンジニアリング」。要するに情報技術を使って中間管理職を削減しろということらしい。(「リエンジニアリング革命」という本にはそんなことは書いていなかったが、世間ではそう受け止められ、結局本人もTVではそう説明していた。)
 つまり中間管理職のすべき仕事の多くはシステム化されるということであるから、私が夢想したような作業を個別指示ベースに定型化して落とすプログラムが作られてゆくということになる。る。ただしどのように定型化されるかは組織によって異なるので、インハウスのシステム開発が必要になる。
 逆にいうとそういうプログラムがどんどん製造されてようやくリエンジニアリングが成功する。そのためには上級管理職は新しい仕事を身につけなければならない。つまり中間管理職代替システムのシステム設計/プログラミングという奴である。
 今の上級管理者はキーボード入力や電子メール設定で苦労している、といったイメージがある。もしこれが本当であるとすれば、リエンジニアリングなんてとてもとても、という結論に達するであろう。少なくとも私には書けなかった。
 それともグループウェアを入れれば何とかなるものなのだろうか?


 「リエンジニアリング」Newsweekで最初に読んだときは感激しました。
 ドリルを作っている会社で
「顧客は何を求めているか?」
「ドリルを買ってくれているのですから、ドリルを求めていると思います。」
「ちがう、顧客は穴を求めているのだ。」

 「リエンジニアリング革命」を読んで感心しました。
「組織を維持するために組織を使う」という隠れたメッセージが読みとれたからです。
 それまで、「人がある目的の為に集まったものが組織である。」→「目的を達成しても組織は残る」→「組織の目的は組織を維持することとなる」といった目的の転換が起こるために組織の没落が始まる、という説を私自身唱えておりました。
 これに対して「リエンジニアリング革命」は組織の没落を回避するために「組織の維持」を第一の目的に引き上げる論に見えたからです。

 ついでに言うと「リストラ」という言い回しが私は嫌いです。
 リストラクチャリングは字義通りとれば「再構成」ですから、第一義的には「再構築時にもとあった部分品を捨てる」という意味はありません。
 よくあるように「不採算部門の切り捨て」といった意味に使うのなら「リストラ」ではなく「リストリ」と言えばいいのです。

restrict
制限する。排除する。
 不採算部門を切り捨てる、といったときはこの動詞が使われます。
 たしかにrestricturingという単語は手持ちの辞書にはありませんでしたが、悪くない表現と自分では思っています。
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