東京都飛地

 知名度の高い地名だと、ついつい乱用されることががある。
 海外旅行で入国カードを書くときに、出身地の欄を面倒くさいから「東京」にしてしまうという習慣がある人もいるという。そんなわけで、東京ディズニーランドも「東京」という名前がついている。いうまでもなく本当は千葉県にある。千葉にあるのに「東京」を名乗っていることに多少なりとも後ろめたさを感じているのだろうか、「千葉県民感謝デー」と銘打って千葉県民が割引で入場できる時期も設けられている。
 それにしてもなぜ「東京ディズニーランド」なのだろうか。「アジアディズニーランド」ないし「極東ディズニーランド」とかすればこんなややこしい問題は起こらないのに。だってパリ郊外のディズニーランドは「ユーロディズニーランド」ですよね。

 埼玉県にも東京都飛地ができるかもしれないぞ。地上波ディジタル放送用のテレビ塔を誘致するという説があるが、そうすると「第二東京タワー」などという名前になるかもしれない。

 良く考えれば、千葉県にはもうひとつ東京の飛地がある。新東京国際空港である。最近は羽田空港を拡充するという話もあるが、それが出来るのなら始めから成田空港なんぞ作らないでほしかった。大学のときは反対運動がうるさかったんだぞ。追い出された農民にしてみれば「今更」と腹が立っているかもしれない。だから少なくともちゃんと筋を通して提唱者に一度頭を下げにきていただきたいところだろう。
 他にも風が吹くと桶屋が儲かる的に成田空港建設で日々経済的損失を被っている人がいるはずである。成田空港建設時に土地収用を強引にやったそうなので、そのあとの公共事業で土地収用法の適用が難しくなったそうだ。おかげで「鉄道新線、最後の20メートルの用地買収ができず20年間工事中断」ということがあったらしい。ということは、鉄道開通が20年間遅れたことになる。問題は買収完了までにもちゃんと工事は行っていたということである。(TVで最後の20メートル直前/直後まで通じていた線路の画像を見たことがある。)
 つまり、それまでにも用地買収費・建設費は支払われていたが、20年間利益を生まなかったということである。これがどういうことを意味するかというと用地買収費・建設費の金利を20年間、ただ支払っていたということだ。この間に支払われた金利は借り換えを考えると元本の3倍くらいにはなっているはずである。要するに支払った建設費が全線に渡って実際にかかった費用の4倍になったということである。最後の20メートルの土地代なんぞ問題にはならない大金だ。かくして運賃はものすごーく高くなっているはずである。
 似たような例は全国にあるだろう。余分な税金をつぎ込まなければならなかったというものも含めて。かくして羽田空港拡大派は、このようなことによって不利益を被った人に対しても頭を下げて回るべきであろう。(物理的には無理だが)


 さて、このような東京都飛地であるが空港であればまあ理解できる範囲である。しかしどうしても分からないものが「東京ドイツ村」である。東京シティエアターミナルから50キロ以上離れているというのはあまりである。でも行っちゃったんだなあ、ドイツ在住経験のある私としてはつい。
 ホームページの作りは最悪である。まず、行き方が分からない。道路地図には載っていたので何とかなるだろうとは思った。インターチェンジを降りると確かに看板はある。で、県道24号線を進んでゆく。両脇の電柱に「東京ドイツ村、直進」の表示はいやになるほどある。しかし「東京ドイツ村、左折」の表示はどこにもないのだ。
 ちなみにセブンイレブンの角を左に曲がる。県道143号線。少し行くと右折の看板が出ている。これは誰にでも分かる大きな看板である。
 なお、東京ドイツ村に最寄駅はなく車でくるのが普通と考えられている。かくして入場券売り場は「ドライブスルー」。なのに車でくると分からない。東京ドイツ村についたときの印象は最悪である。(やたら「東京ドイツ村」と表記してあるが、これは東京ドイツ村のマーケティング担当がサーチエンジンで東京ドイツ村を検索して、風評を知ろうとしたときにできるだけヒットしてほしいからである。)
 なお、ドライブスルーで入場券を買うことになるので、混むときには混みそうである。

 ドイツ風建物を適当に建設して「ドイツの田園風景」をかもし出しているそうだ。 要するにこんな感じである。 いちばんそれっぽいところの写真
 建物の作りがアニメっぽいのは許しがたいが許そう。木目が杉に見えて仕方がないのは気のせいだろう。(あのデザインの建物ならモミの木目でないと落ち着かないのだ。)しかしみやげ物売り場を「マルクトプラッツ」と命名するセンスはなんとかしてくれ。「マルクトプラッツ」を直訳すると「市場広場」である。あくまで広場である。イメージとしては露天市のでる広場。決して建物ではない。

 テーマパークとしての企画はしっかりしたところも見られる。それなりに収益を上げられるように考えられている。客単価を上げるにはものを食べさせれば良い。かくしてバーベキューレストラン「ブルスト(ソーセージの意味)」のメニューは充実している。手軽に作れて、高く売れて、それっぽいもの。いやあソーセージって便利ですね。
 しかし食事に力を入れている割にホームページに記述はない。仕方がない、僕が作っといてやるか。

品名価格
アイスパイン1,500円
牛肉のビール煮1,300円
豚肉とドイツソーセージの煮込み1,100円
ドイツ風ロールキャベツ1,000円
ハンバーグステーキ900円
ホワイトソーセージ900円
ビアブレストソーセージ1,000円
ぐるぐるソーセージ1,000円
ドイツソーセージの盛り合わせ800円
ジャーマンポテト500円
その他
パスタ・ピッツア
麺・丼
カレー
サラダ&デザート
スナックなど、一通り

 アイズパインは決して注文してはいけません。スネの脂の部分がちょこっとついていますがほとんど全部骨です。言うまでもありませんが正真正銘の東京、銀座にあるドイツ料理店「つばさ」の方が100倍ましです。あれはうまい。
 同じ建物にバーベキューガーデンも併設されていまして、お手軽にバーベキューを楽しむことも出来ます。食材もそこで販売しています。各テーブルに金網つきのコンロもついています。でも、純粋にメニューだけみたら「品数の少ない焼肉屋」だなあ。焼肉だって各テーブルで焼くしねえ。
 おすすめは、レストランと別棟で売られているパンを買って芝生で食べることです。このパンは本当に美味しい。

 東京ディズニーランドの客単価が高いのは、キャラクターグッズが売れるからでしょう。かくして、東京ドイツ村にもキャラクターがいます。ブタです。北ドイツではブタが主に飼育されていますからこれは納得できます。ホームページでも扱いが大きいです。園内案内図もないのにFLASHムービーを使ったキャラクタ誕生秘話のページがあります。(3/26追加:園内案内図はありました。)
 なに?ブタはイメージが悪い?何を言ってるんですか、ミッキーマウスだってネズミです。下手に触るとペストに・・・。
 こども動物園にいたコブタはかわいかった。娘はあれが一番気に入ったんじゃないかなあ。

 園内は車で回れます。一方通行の周回道路があります。ただし、一車線であるのに、両側に駐車スペースがありますので、出るのは大変です。すぐ渋滞します。マルクトプラッツから出口方面に向かうときは、内側の走路をとるのがおすすめです。

 さて、出口。たしかSee You Againと英語で書いていました。なぜドイツ語で書かない!
 ここで分かった。東京ドイツ村という呼称に別に意味はなかったのだ。ひょっとして東京都がドイツのどこかと姉妹都市契約を結んでおり、その関係で東京都が「ドイツ村」をつくる時「東京」の文字を入れなければならないのかと、とても好意的に考えていたのだ。
 しかし、平気で英語を使ってしまう感覚のうちにドイツとの友好を考えているという印象はない。
 売り子の方が「生ビール、ドイツビールはいかがですか」と叫んでいるのは理解できるのよ。ドイツ村というからにはドイツのビールを最低十種類は並べ、適当に薀蓄付で売ってほしい。でもそれをやると車できた人がついつい飲んじゃうかもしれない。だからビー販売には力を入れられない。この矛盾は理解できなくもない。なお、ここの生ビールはサントリーのモルツです。せめてレーベンブロイに・・・いやいや言うまい。デュッセルドルフのアルト、ケルンのフリュー、なんて並べられると私は確実に飲酒運転してしまう。
 また、かかっていた音楽。クラシックだったら何でもいいと思っているのか、フランス、イタリア音楽がやたら多かった。ようやくドイツの作曲家と思うと、ベートーベンの「運命」。どうして辻音楽士のやるようなフォークソングを流さない。
 フォークで思い出した。力を入れていたレストランのフォーク。Miffy柄であった。言うまでもなくオランダの絵本。おい、ドイツとオランダは仲が悪いんだぞ。なんてドイツ文化に無頓着なんだ。

 さて、東京ドイツ村、GW前後が書き入れ時になるだろう。房総半島に潮干狩りでやってきた家族連れをうまくこちらに引き込めるか。まあ、ゴルフ場銀座に近いことから、お父さんがゴルフに行っている間、ニョーボ子どもを遊ばせている、というパターンの客層も見込んでいるのかもしれないが、、、そんなわけで関東一のパターゴルフコースがあるのかな。
 本コラムが、東京ドイツ村の集客の一助となれば幸いである。え、こんだけぼろくそに書いておいてよくいうよって?でもね、公式ホームページにはない道順についても書いているし、レストランのメニューだって紹介しているんだよ。感謝されこそすれ、文句を言われる筋合いはないよ。

社会問題ネタ、目次
ホーム