ウィルス対策で人権擁護

 嫌いな人権標語募集の季節がやってきた。
 そろそろこういうのを作るのは卒業だと思っていたが、募集しても集まらないらしい。よし、少しは協力しよう。

 このような標語を作るときに大切なことは、数を出すことである。いつか書いたとおり、日本では「○○に対する差別」というのを露骨に表現するとそれ自体が差別表現と見なされる傾向がある。従って、標語は極力前例に則ったものとしなければならない。かくして既存の標語を改作する。似たり寄ったりのものとなるが仕方ない。意識の高さをアピールするために数を出す。
 というわけで前例を探すべくWebを検索。何年か前と違って、「募集」だけでなく「結果発表」もそれなりに出るようになった。よいことだ。何とはなしに「広報もりぐち(平成18年12月1日)」というのを覗いてみた。す、すごい。全文引用したいくらいだ。まあ、インパクトの強いものに限ると

 正直クラっときた。あ、これは標語ではなくて「人権週間・強調週間事項」というのだわ。しかし、ここまでわかりやすく書くとは。ならば、と、市民の作った人権標語入賞作品も斬新なものが並んでいるだろうと期待したのだが、、、まあよい。改作の元ネタとしては適当だ。(後で知りましたが、このインパクトのある人権ポリシーは、法務省人権擁護局がオリジナルです。同性愛は不道徳ではないと法務省がお墨付きを与えたとは驚いた。)
 改作のコツは「五七五にする」。なお、私、偽善を恥ではないと開き直りさえすれば、臆面もなくさらさらと作れてしまいます。
・さようなら いじめを見逃す その心
(原文:いじめ悪口 心の弱さが 生む悪魔)
・みんなが守る あなたの人権 あなたが守る みんなの人権
(原文:認め合おう 一人一人の人権を)
・つづけよう 差別を無くしてきた努力
(原文:差別しない 明るい守口を つくろうよ)
・悪口を いわない品格 止める勇気
(原文:やめようよ わるくちいうの とめようよ)
・差別をなくし みんなで作る 美しい国
(原文:人権は、明るい未来の 道しるべ)
 最後二つは「品格」「美しい国」と流行語を入れて目新しさを出してみました。
 でも、パクリだけでなく多少は自分の意志も反映させたい。システム屋らしいものを作りたい、と考えた。近年の人権侵害でシステム屋にも身近なものというと、やはりWinnyで捜査資料(容疑者名や行動など)や個人情報(プライベート写真とか日記とか)が流出した、というあれでしょう。話によるとWinnyをインストールしているだけで、流出ファイルの中継所を提供していることになり、こういった人権侵害ファイルの拡散に協力することになるらしい。
 ということで主張「ウィルス対策を実施し、Winnyをインストールせず、またインストールしている人にアンインストールさせることが、人権を守ることなのです。」
 やったー、具体的・客観的に進められる人権標語が作れるぞ。しかも、差別意識を刺激しない。めちゃくちゃ画期的。しかし、私の言語能力がこれを上手く消化できないのでした。
 まあ、リズムだけは合わせて

「ウィルスチェックとWinny退治 流さない ひとの大事なプライバシー」

 まーまーと思ってはいるんですが、もう少し何とかならんかねえ。

 人権標語は成功とは言い難いが「人権週間の間だけでも、Winnyをアンインストールしよう」という運動を起こして辻褄を合わせることにした。1週間、みんなが止めてキャッシュをクリアすれば今まで流出したファイルは拡大が止まる。意識して再放流するモラルに欠ける奴はいるかもしれないが、それでもずいぶんな量は消える。人権週間という、ともすればお題目に終わっていた運動の効果がハッキリと分かるようになるわけだから、画期的なことではないか?首相が言ってくれれば一発だがさすがに知り合いではないので、どっかの人権団体に提案しよう。多分賛同してもらえないと思うが、それはそれでそういうものかという現実は分かる。かえって会員の人権(集金権?)だけに固執する某団体が、Winnyを止めるいい口実だと乗ってくれるかもしれん。(著作権教会も、こう書くと宗教団体みたいだなあ。著作権者の人権拡大に熱心でWinny作者の人権を気に留めていないんだから間違ってはいないんだが。まあ穏当な表現ではないな。)

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