障害者雇用促進のひみつ

 障害者雇用促進法により障害者雇用率が引き上げになったらしい。
 1.8%から2%に、とか。
 ということはこのビル1フロア50人を超えているから、各階平均的に1名はいるはずだが・・・見当たらないなあ。

 以前は、目の見えない人とか半身不随の人とか同じフロアで仕事していたこともあるので皆無と言うわけではないが随分少ないな、という気はする。そういえばそういう人に郵便物配るときは封を切って、中味を1/3ほど引っ張り出してから机に置いていたなあ。僕も多少は気を使っていたらしい。自分でも気がつかないほど無意識だった。少なくとも誰にも教わらなかった。元障害者には障害者の心が良く分かる?(大火傷で生死の境をさまよったあと奇跡的に助かってリハビリの結果動くようになりましたが、小学校低学年のときは結構辛かった。)

 見当たらない理由として、外観は普通でも障害者ということがあるのかもしれない(心臓病で薬を飲んでいないといけないとか、骨折の後遺症で走るときだけ問題がでるとか)。更には法律や省令を読んだ限り、何を持って障害者とみなすかそもそも書いていない。ひょっとして適当に「この人障害者」とレッテルを貼って役所に届ければ済むんじゃないかなあ。ホントにそうか?と問い詰められれば「個人情報です(しかもセンシティブ情報)」と言って詳細な説明を拒否するってのはありだろうし。

 なんだこのザル法、と思っていたが、ここによると、対象の障害者はなんかの手帳を交付してもらってないといけないそうな。
 ついでに、高次脳機能障害や発達障害は身体的機能に出なければ手帳交付の対象とならないとか。うーん知的障害の傾向がある自分としてはやや不満。(障害というと語弊があるが「規格外」を名乗るなら異論はなかろう。)

 では対象となる人はどのくらいいるのだろうと調べてみた。最初に2010年度の資料が見つかったので類似のものをあちこちからかき集める。

身体障害者手帳交付台帳登録数 5,107,947人
療育手帳交付台帳登載数 816,548人
精神障害者保健福祉手帳交付台帳登載数 544,332人
合計 6,468,827人
一方、日本の総人口は127,510,000人。

 つまり人口の5%が障害者ってことになる。ところが、この割合が就業者の年齢でも同じとは限らない。もちろん高齢になるにつれて、この割合は上がる。調べると身体障害者手帳に限っては年齢別の構成が見つかった。生産年齢人口と言われることが多い18〜60歳は85.5万人。つまり全体の16.7%しかいない。
 療育手帳、精神障害者保険福祉手帳の保有者も同一割合と仮定すると、その年代の人口に占める障害者の割合は、1.6%。
 であれば、杓子定規に考えると「法定障害者雇用率2%を全企業が守ることは不可能である。」という結論に達する。

 つまり、2%にするためには、障害者とみなされる人を増やさないといけない。手帳にとらわれていては法律を守れないのだ。(もちろん健常者を雇わないという手もある。当然、失業率は上がるが。)
 例えば私のように不治の病(近視)に悩む人を障害者とみなすとか。
 でもそこまで無理せずとも、長期病欠者、少なくないなあ。顔を見たことがない人さえいる。あの人たちをカウントすればいいかもしれん。そうであれば、新型うつ病の方々が増えている昨今、1.8%→2.0%は時代の趨勢を反映しているとさえいえる。(出社しなくてもフルタイムの契約で雇っているんだからカウントしてくれ。)
 あるいは、グループ会社全体での雇用率で法定の2%を達成すればよくなったので、「作業所」の大企業による買収が進んでいるのかもしれない。これは一概に悪いこととも言えないだろう。

 いや、企業がそんなズルをするはずがない。すくなくとも安定した組織構造と社内融和がウリのウチの会社がズルをするわけがない。ズルをするのは政府と昔から相場が決まっている。えーと障害者雇用の罰則規定は・・・なあんだお金を払えばよいのだ。

 つまり、雇用率の引き上げとは、障害者雇用納付金を増やし、障害者雇用調整金が受給できない会社を増やすことに他ならない。つまり、形を変えた「法人税増税」だったわけだ。
 アベノミクスでしたか?(山田先輩がお元気そうで何よりだ)なかなかやるなあ。
(消費刺激策としては、野田政権の「段階的消費税引き上げ」の方が遙かに効くと思うんだが。赤字国債法案の複数年化など、全体のことを考えてきっちりと道筋を残している。人気はなかったがたいした人かもしれない。比べてくれ、小泉郵政改革でどこがどうよくなった?)

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