自分より劣っていた人を尊敬する

 ディズニーの名言にこんなのがあるらしい。
《私は偉大なアーティストでも、偉大なアニメータでもない。私の周りには、いつも私より優れた技術を持った人たちが私の代わりに働いている。私の仕事は新しいことを考え出すアイデアマンだ。》

 ようやくこの意味が分かってきたような気がする。ものすごく謙虚で、そのくせ傲慢なほどのセリフである。そして、これを言うのは難しい。
 当初持っていた感想は「なんだこの偽善的セリフは」。なのだ。実際、ウォールトも、自分より他人のほうがミッキーマウスを描くのが上手とは思っておるまい。絶対に自分が一番だと確信しているはずだ。ところがあいつは多分、途中で「画家であることをやめた」んだろうな。ぶっちゃけ、自分が画家をやるよりも、他人に画を書かせた方がもうかるだろうから、だ。

 ところがウォールトが偉大なのはここからで、他人に画を書くことをきちんと教えた(ようだ)。しかも自分を超えてしまえるくらい。そしてついに自分より優れた技術を持った人たちを、しかも多数、育てることに成功した。んでもってこいつらがディズニー映画を支えるに至った。
 単にプライドの面から考えると結構つらいと思うよ。自分より劣っていたはずの人間を自分より優れた人間を自ら教育する。さらには彼らを尊敬している節もある。ものすごい管理者である。(こんな人、周りにいますか?)

 ただし、この「思い切った行動」を支えることが出来るのは、次に来る自負心「私の仕事は新しいことを考え出す」があってのことだろう。
 この能力。これは他人には絶対に負けない。強烈な自負です。実は私もその辺の自信(と悲しみ)はあるけどまだ堂々と言えない。(このサイトだけでも見てよ。15年間、波はあるけど尽きてないんだよ。)
 それは他人に自分の技術を教えて、自分を超えてもらった経験がないからだろうね。でも最近になってようやく、自分のやり方を教えて、成果が出たことについて、実際に行った人に感謝することができるようになった。
 だからウォールトの言葉の意味が分かった気持ちになれたのだろうな。

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