負けるな!青少年

 前回アップした「コクれ!青少年」魂入りすぎの力作なんだけど、ちょっと無謀な状態を前提としている。それはコクった相手がこちらの長所を知っていてくれるということ。「勉強ができる」とか「野球がうまい」とか、ね。これは書いた時のテンションがこうさせてしまったわけで、後から気が付いても、文章の勢いを殺したくないから書き換えができない。なので新しく起こすことにした。もっとありがちなシチュエーション、つまり想う側と想われる側に絶望的と言ってもいい情報の非対称性が存在する場合だ。ところがこれを前提とすると私の筆力では、どうしても過度に事務的となるのだな。

「当方はあなたが好きである。よって恋人として認めていただきたい。具体的にはメールをやりとりし、休日には月1〜2回程度のデート、例えば映画鑑賞やスポーツ観戦を一緒に行うことといたしたい。またあなたが自分の時間を他人のために消費する判断にあたって、他の男性に対する優先権を主張したい。」

「当方は貴殿の要求を検討する以前に、検討のための十分な情報を有していない。貴殿は校内テストの成績上位者に列せられることもなく、部活動での目立つ活動歴もない。かといってインフォーマルな部分、例えばクラスでギャグを飛ばして周囲を笑わせているといった認識もない。確かに顔と名前が一致する程度の情報は有しているが、特に人目を引く容貌でもなく、個別属人的な感想を持っていない。この状態でキミの要求を承認することはおろか、検討することも不可能である。よって要求を却下することといたしたい。」

「あなたが私の要求を検討するだけの情報を持たないことは十分予測の範囲であったし、またあえて検討に着手するだけの手間をかける価値を見いだせないということは理解できる。しかしながら私はあなたの、いたずらっぽく輝く目。全身から感じられるはち切れそうな生命力に強く惹かれている。この人が自分の恋人としていてくれればどんなに幸せだろうと想像せざるを得ない。そしてあなたがその明るさの奥に悲しさ、弱さを隠しているような気がした。傲慢かもしれないがそれを自分なりに支えてあなたをより輝かせたいと思った。たしかにあなたにとって私は関心を持つことがなかった存在かもしれない。しかしながら自分をアピールする場程度は用意していただけないだろうか。」

「了解した。自分に好意を寄せてくれる人に対して門前払いというのは確かに失礼だ。ではあなた自身が一番アピールしたいことを私に見せることができる場を指定してほしい。公序良俗に反しない限り、半日から1日程度時間を割いて、それを確認する機会を設けてもかまわない。」

 書いていて個人的につらくなってきた。なので、実際にガイドラインを書いてくれることを期待している文部省官僚にはノリノリであってほしいんだ。できるだけロマンチックな表現にしてもらうの。んでもって青少年がそのガイドラインをネットからダウンロードして読み、次第次第にその気になる。かといって外連味たっぷりの表現に惑わされてしまってはこまる、ということで、彼女が言いたいのは実はこういう味もそっけもないことなんだよ、という解説本を誰かが書いて、そこそこ売れる。言い回しの隙に付け込んだ裏ワザ的な攻略本も出そうだ。さらにはあなたにぴったりのアピール法を伝授、なんてハウツー本も出て標準デートスポットがそれなりに流行り、と、経済効果も少なくなさそうだ。(話題豊富という自負のある人はあえてディズニーランドを選び、待ち時間に・・・。)

 「棲み分けが可能だ」などと言っておいて、結局はかなり厳しいことになりそうだな。でも僕はみんなを応援するぞ。だから一次要求を突っぱねられたときのための言い方、よく考えると自分は何一つ彼女に提供することができなさそうな人のために協力しよう。だから「あなたについての情報不足」として断られた場合の二次要求としてこんなのを提案したい。

「メールアドレスを教えていただけないだろうか。そして僕が書くメールを読んでほしい。常日頃僕が何を見て、何を考えているか、それを綴るから。もちろん不快な話題を出したら拒絶してくれてかまわない。メールの中で改めてあなたを求めることはしない。しかし、もし僕の中にあなたが共感できる部分を見出してくれたなら返してほしい。結局、この人とは相容れないな、と判断したらその旨連絡してくれ。あきらめるから。でもあなたを忘れない権利だけは認めていただきたい。」

 こんな自信に満ちたことが言える人がいたら、高校時代の僕は間違いなく憧れただろうな。同じように思った青少年の方が万が一おられましたら文章の綴り方くらいは教えて差し上げます。ラブレターは最高の文章の練習だという、しかしそれ以上のものを自分に科してみろ。「相手を求めることなく」自分の「想い」は込めるという超難題だ。これをこなせば、間違いなく国語の点くらいは上がるぜ。たんなる「玉砕」でないと感じることくらいはできるんじゃないか?

 ただし言っときます。駄目だったら早く忘れなさい。リセット&リスタート。絶対にその方が楽しいから。でもまあ、忘れないだけ、ならアリかな。

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