熊本地震のエネルギー放出からみた特殊性

 熊本地震は本震の規模もさることながら、前震が震度7を記録したり、数多い余震が被害規模を広げたりと従来にないパターンの地震と言われている。
 しかしながらマスコミ報道を見ると「震度1以上の余震が800回」というように、単に数を強調しようとするあまりか、震度1、2といった日常的に起る体感されないような地震も合計している。このようなものまで含んで「○○○回」と言われていると、数は多くとも影響としては大したものではないのでは?マスコミがセンセーショナルにあおっているだけではないか」という疑問を感じざるを得なかった。

 そこで、実際に余震としてどのくらいのエネルギーが解放されているのか?を集計することにより、熊本地震の「余震が多い」と言われる特殊性を検証しようと考えた。

 地震のデータは、Yahooの災害情報にて公開されているものを使う。(気象庁の方が信頼性は高そうだがは一括でコピペできないから不採用。)
 余震の発生状況の推移をみるため、件数ではなく、単位時間当たりの解放エネルギーを算出する。
 エネルギーで確認したいため、震度ではなくマグニチュードを利用する。
 ただしマグニチュードは2上がると1000倍、という単位であり、単純に合計ができないので、エネルギーの統一単位である「ジュール」に換算してから1時間に解放されたエネルギーを合計することとした。

 震源が「熊本県」「大分県」の地震を選び出し、余震があった14日の夜から、20日の朝までについて合計を取り、MicrosoftExcelの機能でグラフ化した。ただし、本震のエネルギーが圧倒的に大きく(実際にグラフ化して驚いた)、それを基準にすると他はゼロに近いので、対数目盛のグラフとした。

(線の切れている部分は、地震が起こらなかったところ。)
こうしてみると、休む間もなく地震が起こっていることが分かる。しかも18日、19日になって規模の大きなものが起るなど、被災地の人は気が安らぐ余裕もなかろう。

 しかし、これは熊本地震だけの特殊要因なのだろうか?他の地震でも同じようなものなのではなかろうか。
 Yahooの地震情報を見ると2004年からのデータが保存されている。そこで、余震が多いといわれた中越地震(2004年)および東北太平洋沖地震(2011年、東日本大震災)と比較することとした。
 これを手作業で行うのは大変なので、Micoroft Excelのマクロで自動処理することを考えて実施した。
プログラミング時、留意したのは次のこと。
・データはYahoo地震情報からコピペして得るが、数ページ分を貼るとデータの時系列は保証されない。Sortをかけたとしても発生時刻が「文字列」として認識されるため、時間の順序にはならない。(3時が24時より大きいと判断される、など。)そこでデータの対象範囲をまず確認して、時間ごとに区切った項目を持った表を作り、各地震のレコードを読み込むたび、そのエネルギーを該当する時間帯の数値に足しこむようにした。
・データには熊本地震、東北太平洋沖地震、といった集計の対象とする以外の地域のデータも含まれている。そういったものはあらかじめ削除しておくことが必要だが、地域名の一部をソース中に指定しておくとそれを含んだものだけを取り出して集計するようにした。
・グラフは自動で作るが、その際「地震が起こる前の時間帯」が入ると見栄えが良くないのでグラフには表示しないようにした。

 その結果、発生後およそ1週間のレコードを見ると次のようになる。
○中越地震(震源地:長野、新潟で抽出)

○東北太平洋沖地震(震源地:三陸、岩手、宮城、福島で抽出)

○熊本地震(熊本、大分で抽出)<再掲>

 熊本地震の解放エネルギーを見ると、開放間隔は短く、散発的になるまでの経過日数も長い傾向にある。
 1時間当たりの量も当初急速に減るものの、それ以降増える場合もあり、なかなか落ち着いていないのが分かる。
 ただし、前震はべつとしてピークが複数あるのが気になった。自然は正規分布を好む。
 そこで「この地震は3つの地震の複合」という説を思い出し、震源地を「熊本県熊本地方」「熊本県阿蘇地方」「大分県」で分けてみた。(元データのシートにフィルタをかけて非表示にすると合計しないという機能をこのためにつけた。←初めからこうしてもよかったかも。

熊本県熊本地方

熊本県阿蘇地方

大分県

 やはり、熊本県熊本地方を震源としたものが多いものの、比較的落ち着いて、間隔も広がる。3つの地震の複合であるのだろうということを思わせる。
 ここで気が付いたのは、18日以降散発的になるにつれて線分の形が変わってきたことだ。それ以前は「右上がり」が多かったのだが、以後「右下がり」になっている。余震のパターンとして「比較的大きなエネルギーが解放される」→「小さなエネルギーが解放される」という動きがあるのだろうか。地震の発生メカニズムを考え合わせると「地層が大きく崩れる」→「崩れた周辺が地層のバランスを保つため崩れる」という流れは自然なものと思われる。
 であれば、大分の地震は16日未明の「本震」を除いては散発的な余震でさらに新しいエネルギーを解放しようという動きは見えず、一部で心配されている「この地震が中央構造線に沿って東進」ということはなさそうに思われる。

 さて、熊本城の落城(?)に見られるよう、熊本地震、ものすごい破壊力である。このエネルギーを有効活用できれば、と家内もしないことを思ってしまった。しかし、1週間で解放されたエネルギー、35億7千万メガジュールは、2014年の日本における最終エネルギー消費量13,558ペタジュールの0.03%にも満たない微々たる量である。(ホントか?どうしても信じられないのだが。)

 現代社会はこのような莫大なエネルギーを消費する構造となっているわけであり、自然の恐ろしさを実感するとともに、自然と共生するためには変えていかねばならぬことが多いのを反省して、結びとしたい。


 春の熊本地震を受けて、余震について統計を取ってみた。
 どこかの学校の地学関係のクラブの文化祭発表ネタにはなったろうし、まあ最低でもうちの子の自由研究にはなるかなと手持ちにしていたのだが、
娘の学校に自由研究の宿題はなかった。

 ということで秋には自分のサイトのネタにしようと思ったが、
Vectorが作者サービスとしてホームページエリア5MBくれたものの、容量はそのままなので(お願いです時代に合わせて増やしてください)、新たに画像を追加することができず、お蔵入りとなっていた。そこまでネタに困っていたということはないから無理する必要もなかったということもある。
 しかしながら、熊本の皆さんがどれほど眠れぬ夜を過ごしていたか、ということは理解してほしいものだ。そこで遅ればせながら公開することにした。無料ブログサービスに申し込んで画像はそっちにアップし、こちらからリンクをかければ、容量の問題は先送りできることに遅ればせながら気が付いたのでね。

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