日本一ドローンが使える場所は?

 千葉市がドローン特区に選ばれた時に
「なんでこんなところが」
と思った。
 幕張の高層マンションのベランダに荷物を運ぶつもりだそうだ。電柱がないのが適しているのかなあ。
 しかしどう考えても無理のある画だ。宅配便のドライバーが操縦してバルコニーに軟着陸させるんでしょ。見えないところに軟着陸させるのだからかなりの技量が必要だね。受取印はどうやってもらうの?世の中には時々こういった無理のあることを平気で提案する人がいる。amazonの方々は幕張に倉庫を新設して、市川のアマゾンの倉庫から(風の強い)海の上をドローンで運ぶなんておっしゃっておいでだが、まあ地震で液状化が起り、道路が通行不能という事態を想定するなら分かんなくもないね。(東日本大震災では特にこれと言ったことは起らなかった。新浦安は悲惨だったからやるとすればそっちだろうに。)

 というわけで「あがいなとこでなんするつもりなんやろか」と思った。しかし堂々と笑い飛ばすためには根拠がなくては、と見に行くのが私の真面目なところ。かくして2015年も押し詰まった頃、行ってきました。しかし実際にこの目で見た結果は異なりました。確かに千葉市が日本で一番ドローンを実用化するに適している。

 問題はドローンの信頼性があまり高くないところ。何時墜落するかわからない。しかも特区だから有視界飛行とは限らない 〜 というか自動で飛ばしてこその特区です。では墜落しても不時着と言い張れる、つまり外部に迷惑をかけずに済むところを飛ばせばいいわけなんだけど、千葉市には2か所それがある。
 ひとつは、世界最長の懸垂式モノレールの軌道。残念ながら支柱が大いに邪魔でありますが、軌道の上なら安心して不時着できます(海の上なら墜落である)。追加でネットとか張る必要はありますが、すでにドローン専用軌道が敷設されているようなものです。しかも上り下りの二本。これを幹線としてドローンを行き来させればよい。
 もう一つは幕張メッセ。あの屋根の上を飛ばす。屋根の上なら不時着し放題。
 そんな限定的なところ飛ばしてどうすんのって?メッセの両端をよく見ましょう。日本最大級のショッピングセンターAEON幕張新都心店。もう片方はホテル群。ちなみに「川と道を渡る歩道橋にまで屋根があります」さらにメッセから少し内陸を見ると、富士通とAEON本社があります。(AEONとしてもいわば庭先でamazonのドローンが飛んでいたらいい気分ではないでしょうから協力してくれるかも。)

 つまり実験的にはこんなことが可能なのです。
 ホテルのルームサービスをAEONショッピングセンターから配送する。商品のバリエーションが圧倒的に豊富になります。ルームサービスということなら多少割高でも払ってもらえますから輸送コストは回収できそうだ。コースが一定化しますと完全自動運転の可能性が出てきます。富士通の自動運転技術はあまり聞きませんが、車庫入れとか研究しているそうですから、メッセの屋根にセンサーを仕込めば誘導することは可能でしょう。そこならセンサー付け放題です。受取は部屋のバルコニーまで送ってもいいですが、まずはホテルの人が代理で、かな。(お客さんによっては飛んできたところを話のタネにしたいでしょうね。)
 問題は海沿いで風が強いこと。千葉市が特区申請したところで解決の目途が立っていると思われますが念のため対策も考えました。といっても大学に丸投げするだけですが・・・北北東に進路をとって9キロ。霊長類・ヒト科・鳥人間、日大理工学部航空宇宙工学科がある。
 研究室に依頼すれば、メッセの屋根の上の気流をヘルメットを付けた学生さんたちがチェックして飛行コースを算出してくれるんじゃないかな。彼らとしてもやりがいはあると思うよ。(ドローンを扱っている研究室は一つしかないそうですが。)

 ホテルニューオータニの前に立って、これらの要素がそろったとき、私の目には荷物を持ったドローンが幕張メッセの銀桟の上を飛んでいるのが見えたのだな。

 これに比べると千葉都市モノレールの軌道上を飛ばすのはちょっとしんどいかも。そもそも権利関係が複雑だそうだし(伏見つかさ先生、また舞台にしてください)。軌道を外れた先で不時着はあってほしくない。なので後回しかも。
 でもね、実験的ではあっても安定的な需要はあるのだ。モノレールは千葉県庁と千葉市役所を結んでいる。この間のメッセンジャーボーイとしてドローンが飛び交うとしたら、特区としての成果をあげたい行政は乗ってくれるんじゃないかな。ドローンが天敵である架線の塊、JR千葉駅のはるか上を超えてゆく光景を千葉そごうの屋上で想像すると、そこそこ興奮するものがありました。

 あとになって日大理工学部にも立ち寄りました。そこで分かった。なんで一度無くなった鳥人間コンテストのスポンサーにiwataniがついて復活したのか。駅前に社宅があるんだよね。
 たぶんそこに住んでいる人が「鳥人間が無くなって肩を落として歩いている学生さんたちの姿、とても見ていられないよ。うちがスポンサーになって続けてあげられないかねえ」と声を上げたのでしょう。早速提案書が作られたのでは?「人力飛行機はクリーンなエネルギーを追究するわが社の方向性と一致し、大空を飛翔するさまはわが社のイメージと重なる」なんて理由を付けて。
 最終決裁した人もひょっとしたら若いころ、その社宅に住んでいたのかもしれないね。

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