この理解であっているだろうか

 「ホモ・デウス」という本が流行っているらしい。ユダヤ人がみだりに神の名を唱えることはないので、眉唾なので読んでないが内容を伝え聞く限りでは納得したくなることもある。「無用者階級」その通りだ。もっとも何十年も前に松下の社長は「わが社は1万人の社内失業者を抱えている」という言い回しで無用者階級の存在について言及している。
 ただし無用者階級も無駄というわけではない。毎朝混雑した通勤電車に乗っている人はご存じだろうが、これだけの人が運賃を払っているから、電車賃はそれほど高くつかずに済んでいるのである。大量生産のためには多数の消費者が必要なのだ。

 とここまでは平成の時代の発想だったが、そろそろ多数の無産者階級が必要とされる理由が変わってきたといえよう。彼らはデータ収集のために必要なのだ。
 Amazonのような通販サイトであれば「この商品を見た人はこんなものも買っています」と提案が出てくる。これは多くの人がサイトにアクセスして購買活動をしてくれた結果、Amazonが提案するだけの情報を持ってくれているからできることである。結構役に立っている。カバン欲しいなあ、と適当に検索していると、ああ「サコッシュバッグ」というジャンルなのかと分かり、サコッシュバックで検索すると「これよさそう」。ついでに提案された商品を見て「これにしようかな」。実に能率がヨイ。

 通販であればこんな感じで直観的にわかるが、これが「旅行しようか」となると少し変わってくる。もっと情報が必要になるが、あまり考えなくて済むのである。
「休みが1週間、この時期に取れるから、3泊4日くらいでのんびり旅行がしたいなあ」
だけで結構なことをコンピュータが連想しくれそうだ。

 今までの旅行の記録から、飛行機を好むか、列車が好きか、あるいは車で行くか、アタリを付けてくれる。
 購買履歴やブログから、私がどんなタイプの人かカテゴライズしてくれ、似た傾向の人の選択して(満足した)旅行先やルートを集めてくる。もちろん訪問先もチェック。
たまたまその辺で行われている興味を引きそうなイベントを集めてくる。
 というわけでざっくりとした旅程表を作ってくれる。まあ、宿泊場所くらいは選択の余地を与えてくれるだろう。もちろんホテルの紹介付きで。
 細かい列車の時刻や宿泊場所を決めると、他の人のブログや観光協会のサイトから情報を集めて、もちろん随時スマホで確認可能な「旅のしおり」を作ってくれる。
 実に楽である。破綻するようなプランでないことは保証されている。私をよく知っていて、私以外のことをとてもよく知っているコンピュータに判断をゆだねると、とりあえず旅行の目的である「非日常性の追求」や「リラックス」「知識の獲得」は自分で計画を立てるよりも高水準で満たされることであろう。

 ただしこれができるためには「多くの人の情報が必要である」。このために無用者階級が存在しているわけだ。ただし大変うれしいことに、これを使うのはホモ・デウスよりも無産者階級の方が圧倒的に多いだろうから、無産者階級同士、助け合って楽をするという幸せな環境ができることになる。

 すごく絶望的な気分なのですが、ホモ・デウスを書いた人はなぜあんなに元気そうなのだろうか。
 まあ、私がざっと聞いて見当を付けた内容と、実際の内容は次元が違うことが多いのですが。あるいは無用者階級に対する絶対的な偏見の有無かも。私はまだある。彼にはない。

 ところでみなさん。ヨハネの黙示録にある「666」って知ってますよね。
 6は人間を表し、3は神を表すなんて話があるそうです。3は父なる神、子なる神、聖霊なる神の3つかな。ということは666は人が集まって神の振りをするということ。
 これって「ホモ・デウス」?

社会問題ネタ、目次
ホーム