コンピュータによる民主主義モデルが照らし出す問題点

 夜中テレビをつけていたら  3台のコンピュータが多数決で判断する民主主義的なコンピュータに支配された世界、とやらが想定されていた。

 あほである。
 3台のコンピュータの多数決、というとアポロ計画、さかのぼって,ジェミニ宇宙船のアーキテクチャーであるが、本来は1台壊れても切り替えをすることなく稼働できるというリアルタイム性を重視しての設計であろう。(私もノーダウンシステムを要求されたときに「アポロの多数決ってそういうことだったのか!」と気が付いて感動した。それまでは「プログラムが同じなら出力も同じでしょ。多数決なんて必要ないじゃん!」と不審に思っていたのだ。)

 さて、政策決定をするコンピュータがあると仮定して、3台のコンピュータの多数決が必要か?という無駄な突っ込みをしてしまった。宇宙空間をものすごい速度で飛ぶものを制御するわけではないから故障しても手動で切り替えたので十分間に合うから、障害対策とは思えない。その辺まで分かって作った設定とはとても思えないが。
 コンピュータゲームをやっているから自分がコンピュータについて詳しいと誤解するのはいかがなものか?というのはソードアートオンライン見てて鼻についたことであるが、似たような傾向であろうか、毎日ネットワークと戯れているとコンピュータに詳しいという思い込みが生まれるらしい。(あまりSAOを悪く言いたくないのだが・・・知り合いが関与しているし。あの人のお兄さんからサッカーシューズを貰ったこと、今でもPUMAを買うたびに思い出すのだ。ありがとう。)

 さて「民主主義」というからには政策決定に関与する個々のコンピュータはそれぞれの意見を持ってプログラミングされているに違いない。ラノベの異世界観からして3台であれば「平民の立場」「貴族の立場」「国王の立場」を代表したプログラムを積んでいると推測するのが適当であろう。これが江戸時代なら士農工商の4台から構成されることになる。つまりそれらのコンピュータは互いに違ったプログラムを積んでいるわけで、だからこそ多数決、というのも何かしら有効性を持ってくるのであろう。

 問題はそれらが「どのようにプログラミングされているか」である。
 決定の過程を多少なりともリアルに考えると、国王と貴族が何のかんのと一致して、多数決で政策が決定されたることになる。平民はまず切り捨てられるわけだ。そのあと細部を詰めてゆく事になると思うが、このときおそらく平民プログラムは対応できない。すでに決まった方針は多くの場合容認できない、というか想定外のものであり、その範囲内で考えてゆく機能は持ってないと思われる。その証拠に今の市民団体は自分の意見が通らないと、議会の外で「デモその他の反対運動」を実施する。つまり細部を詰める段になると平民は排除される。そして細部において国王と貴族が対立した場合、結局は国王プログラムが押し切りそうだ。なんだ、民主的な手続きを踏んだように見せて国王の独裁を認めてしまうわけではないか。(政策決定シミュレーションプログラムを作るネタとしては面白い。民主主義に見える現代日本も閣議決定で強引に決まってしまう、という構造が見えるでしょ。都合が悪くなると「反社会的勢力は定義できない」。)

 さてここでの問題点は「切り捨てられた平民プログラムがそれ以降は政策決定に関与できない」ことである。大方針が決まって細部を詰めるときに平民プログラムはもはや対応できないわけだ。対応できるようなプログラムがあったとして、だれが作るのかね?機械学習とかで作ったとしても膨大な時間がかかるので、政策決定には間に合うまい。
 それでもこれが生きている人間の平民、なら即座に切り替えができるはずなのよ。人間の思考速度は場合にはよるがノイマン型(プログラム内蔵型)コンピュータをはるかに超える。だから我々はこれを示して閣議決定という独裁機関を排除しないといけないだろう。

社会問題ネタ、目次
ホーム