セメント工場年間生産計画

このセメント工場は、湿式方法製造によってセメントを生産しています。一般のセメント生産工場は石灰石鉱山の近辺にあるため、 石灰石と粘土は自給できます。酸化鉄原料(この工場は硫酸鉄粉を使用)は外注としています。表土は石灰石鉱の表土層に含まれているので、 約10%利用できます。特別の場合には、少量の珪石を外注します。

湿式方法セメント生産の説明

石灰石 表土 粘土 硫酸鉄粉
78% 8% 11% 3%

 以上の原料と35%の水分を混ぜて、原料粉砕機に送入します。加湿方式で粉々にしてペースト状になってから、各成分の容器(高、中、低)に入れます。もう一回ペースト状の原料を再配分し、成分を合格まで調整してからスラリー貯蔵池に入れます。次はペースト状の原料をポンプでキルン(セメント回転窯)に送入、キルンで焼いて半製品の合格クリンカー(clinker)が出来上がります。

普通セメント湿式方法製造の原料配分化学成分式

  1. 石灰飽和率 KH = Cao - 1.65AL2O3-0.35Fe 2O3/2.8SiO2
  2. 珪酸率; SM = SiO2/(AL2O3 + Fe2O3)
  3. 浮き上がった石灰 ≦ 1.0%
  4. クリンカー(5 〜 7 mm 直径)立方リトルの重量 ≧ 1.4 キログラムは合格ライン

クリンカー(clinker)に含まれる各原料の成分         単位 %

  CaO SiO2 AL2O3 Fe2O3 注釈
石灰石 52 3 1.5 0.6  
表土 0.4 60 25 5  
粘土 0.5 78 10 1.5  
硫酸鉄粉 1.0 22 5 55  
珪石   90     特別の場合のみ外注

このセメント工場の経営方針及び目標期待値

  1. 年生産量を36.5万トンにする。
  2. 各種のセメントの生産量
    625号普通セメントは4万トン以内にする。
    525号高炉セメントは生産量未定。
    425号高炉セメントは市場重要によて16万トンが考えられる。
  3. 粉砕機はA、B、C、三つに分けられる。三つともに稼動日数は365日×0.85 = 310日以内にしなければならない。

  4. A粉砕機は一台960千ワット×1
    B粉砕機は二台680千ワット×2
    C粉砕機は一台680千ワット×1(技術改造後B粉砕機より性能が良い)。

  5. 生産量平均:単位は万トン/日
  6.   625号 525号 425号
    A粉砕機は一台 0.042 0.043 0.044
    B粉砕機は二台 0.035×2=0.07 0.036×2=0.072 0.037×2=0.074
    C粉砕機は一台 0.0365 0.0375 0.0385

  7. 稼動日数の予定

  8. A粉砕機とB粉砕機は正常生産機として、稼働日数は各280日/年。平均生産量は280×0.0435 + 280×(2×0.0365)=32.62万トン。 C粉砕機は生産調整用として年3.88万トンを生産する。即ち、稼働日は 3.88÷0.0375 = 103日。

  9. 生産利益

  10. 625号セメント 280万円/万トン。
    525号セメント 120万円/万トン。
    425号セメント 60万円/万トン。
    年総利益は3500万円以上にする。

  11. 原料とクリンカーの配分率
  12.   625号 525号 425号
    クリンカー 0.95 0.68 0.54
    高炉スラグ 0 0.27 0.42

    1. 一年クリンカー供給できる上限は24万トン。
    2. 一年高炉スラグ供給できる上限は10万トン。
    3. 変数の設定
    4. X11、X12、X13はA粉砕機各生産C1製品(625号セメント)、C2製品(525号セメント)、C3製品(425号セメント)、の年稼動日数/台。X21、X22、X23はB粉砕機各生産C1製品(625号セメント)、C2製品(525号セメント)、C3製品(425号セメント)、の年稼動日数/台。X31、X32、X33はC粉砕機各生産C1製品(625号セメント)、C2製品(525号セメント)、C3製品(425号セメント)、の年稼動日数/台。
    5. C1製品は製作上の技術の難しさと市場需要も少ないため年生産量を4万トン以下とする。

数学モデル

  1. 利益

  2. P = 28(0.042X11 +0.07X21+ 0.0365X31)+12(0.043X12 + 0.072X2+0.0375X32) +
    6(0.044X13 + 0.074X23 +0.0385X33) + Y0- − Y0 + = 1.176X11 + 0.516X12+0.264X13 +1.96X21 + 0.864X22 + 0.444X23+1.008X31 +0.45X32
    0.231X33 +Y0-− Y0 + P = 350

  3. 生産量
    C1製品生産量 W1=0.042X 11 + 0.07X21 + 0.0365X31≦3
    C2製品生産量 W2 =0.043X12 + 0.072X22 + 0.0375X32
              14 ≦ W2 ≦ 22
    C3製品生産量 W3= 0.044X13 + 0.074X23 + 0.0385X33+Y2- − Y2+ = 16

  4. 総生産
          W = W1 + W2+ W3
           = 0.042X11 + 0.043X12+0.044X13 + 0.07X21
       0.072X22 + 0.074X23 + 0.0365X31 + 0.0375X32
       0.0385X33 + Y1- − Y1+ = 36.5

  5. 高炉スラグ供給量
    W4 = 0.27W2 +0.42W3 + Y4- − Y4

      = 0.0116X12 + 0.0185X13+0.0194X22 + 0.0302X23

    0.1013X32 + 0.0162X33 + Y3- − Y3+ = 10

  6. クリンカー供給量
    W5 = 0.95W1 +0.68W2 + 0.54W3 + Y4-− Y4+
     = 0.0399X11 + 0.02924X12+0.02376X13 + 0.0665X21
     0.04896X22 + 0.03996X23 + 0.0342X31 + 0.0255X32
     0.02079X33 + Y4- − Y4+ = 24

  7. 稼動時間制限
    A粉砕機一台の稼動日数 T1 = X11 + X12 + X13 ≦310
    B粉砕機一台の稼動日数 T2 = X21 + X22 + X23 ≦310
    C粉砕機一台の稼動日数 T3 =X31 + X32 + X33 ≦150

  8. 目的関数の優先順位
    1 (高炉スラグ  ≦ 11の目標) Z1 =Y3+ → 最小化
    2 (クリンカー  ≦ 24の目標) Z2 =Y4+ → 最小化
    3 (総生産量 = 36.5目標) Z3 =Y1+ + Y1-→ 最小化
    4 (425号生産量 = 16 ) Z4 = Y2+ + Y2- → 最小化
    5 (利益最大) Z5 =Y0- → 最小化

GLPS計算結果

    A粉砕機625号セメント生産量 X11 = 71.43
    A粉砕機525号セメント生産量 X12 = 218.17
    A粉砕機425号セメント生産量 X13 = 0
    B粉砕機625号セメント生産量 X21 = 0
    B粉砕機525号セメント生産量 X22 = 175.26
    B粉砕機425号セメント生産量 X23 = 134.74
    C粉砕機625号セメント生産量 X31 = 0
    CA粉砕機525号セメント生産量 X32 = 0
    C粉砕機425号セメント生産量 X33 = 0
    625号セメント生産量3万トン
    525号セメント生産量22万トン
    425号セメント生産量9.97万トン
    高炉スラグト使用10万トン
    クリンカー使用23.19万トン

    第一目標高炉スラグ使用10万トン目標達成。
    第二目標クリンカー使用23.19万トン目標達成。
    第三目標セメント総生産量34.97万トン、不足1.53万トン。
    第四目標425号セメント生産9.97万トン、不足6.03万トン。
    第五目標利益407.83万円

計算結果評価

  1. 総生産量と425号セメント生産量の目標値が達成できなっかたのは、高炉スラグの供給量を10トン以内に制限しているから。
  2. 利益は予定より多かった。

モデルの修正

  1. 高炉スラグの制限量を10万トンから11万トンに変更。
  2. 目的関数の優先順位変更
    1. 1 (高炉スラグ  ≦ 11の目標) Z1 =Y3+ → 最小化
      2 (クリンカー  ≦ 24の目標) Z2 =Y4+ → 最小化
      3 (425号生産量 = 16 ) Z4 = Y2+ + Y2- → 最小化
      4 (総生産量 = 36.5目標) Z3 =Y1+ + Y1-→ 最小化
      5 (利益最大) Z5 =Y0- → 最小化

実際インプット・データの修正は次のようになる。(赤色部分)

TITLE セメント工場年間生産計画
MIN Y3+
MIN Y4+
MIN Y2+ + Y2-
MIN Y1+ + Y1-
MIN Y0-
ST
1.176X11 + 0.516X12 + 0.264X13 + 1.96X21 + 0.864X22 + 0.444X23 + 1.008X31 + 0.45X32 + 0.23X33 + Y0- - Y0+ = 350
0.042X11 + 0.07X21 + 0.0365X31 <= 3
14 <= 0.043X12 + 0.072X22 + 0.0375X32 <= 22
0.044X13 + 0.074X23 + 0.0385X33 + Y2- - Y2+ = 16
0.042X11 + 0.043X12 + 0.044X13 + 0.07X21 + 0.072X22 + 0.074X23 + 0.0365X31 + 0.0375X32 + 0.0385X33 + Y1- - Y1+ = 36.5
0.0116X12 + 0.0185X13 + 0.0194X22 + 0.0302X23 + 0.1013X32 + 0.0162X33 + Y3- - Y3+ = 11
0.0399X11 + 0.02924X12 + 0.02376X13 + 0.0665X21 + 0.04896X22 + 0.03996X23 + 0.0342X31 + 0.0255X32 + 0.02079X33 + Y4- - Y4+ = 24
X11 + X12 + X13 <= 310
X21 + X22 + X23 <= 310
X31 + X32 + X33 <= 150

修正後の再計算結果

    A粉砕機625号セメント生産量 X11 = 71.43
    A粉砕機525号セメント生産量 X12 = 228.52
    A粉砕機425号セメント生産量 X13 = 0
    B粉砕機625号セメント生産量 X21 = 0
    B粉砕機525号セメント生産量 X22 = 93.78
    B粉砕機425号セメント生産量 X23 = 216.22
    C粉砕機625号セメント生産量 X31 = 0
    C粉砕機525号セメント生産量 X32 = 0
    C粉砕機425号セメント生産量 X33 = 0
    625号セメント生産量3万トン
    525号セメント生産量16.58万トン
    425号セメント生産量16万トン
    高炉スラグ使用11万トン
    クリンカー使用22.76万トン
    第一目標高炉スラグ使用11万トン目標達成。
    第二目標クリンカー使用22.76万トン目標達成。
    第三目標425号セメント生産16万トン目標達成。
    第四目標セメント総生産量35.58万トン、目標不足0.92万トン。
    第五目標利益378.95

修正後再計算結果の評価

高炉スラグの制限量を10万トンから11万トンに変更するだけで、すべての上位目標が全部達成できて、総生産量はやや不足が実行可能な数値だと思います。

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