メディアタイプ

メディアタイプの概要

スタイルシートのもっとも重要な特徴のひとつは，異る複数の出力媒体――コンピュータ画面，ハンドヘルド機器のような小さな画面，印刷出力，音声出力，点字出力など――について構造化文書のプレゼンテーション（表現方法）を指定できる事にあります。

プロパティのなかには特定のメディアタイプ専用に設計されたものがあります；たとえば頁メディアに適用される'page-break-before'など。異るメディアタイプのスタイルシートが同じプロパティを共有することもありますが，それでも各々が異る値を必要とするのが普通です。

たとえば'font-family'プロパティは，画面および印刷メディアの双方に適用できます。しかし画面では一般にサンセリフ系が好まれるのに対し，一方の紙面ではむしろセリフ系フォントのほうが一般的です。これは紙面印刷のほうが圧倒的に画素密度が高いことに因ります。

これらの理由から，スタイルシート（またはその一部）が特定のメディアタイプ専用であることを明示する必要があります。また，出力対象を特定することにより，UAがサポートしていないメディアタイプのリソースを検索する無駄を避けられる，という点においても重要です。

メディアタイプを特定する

スタイルシートの対象メディアタイプを特定する方法は，大きく分けて二通りあります。

スタイルシート内で@media規則あるいは@import規則を用いてメディアタイプを特定する：
```
@import url("handheld.css") handheld;
@media print {
  body { font-size: 9pt; }
}
```

構造化文書内でメディアタイプを特定する； style要素もしくはlink要素のmedia属性など：

<!DOCTYPE HTML PUBLIC "-//W3C//DTD HTML 4.01//EN">
<html>
<head>
  <meta http-equiv="Content-Type" content="text/html">
  <meta http-equiv="Content-Style-Type" content="text/css">
  <title>Link to a target medium</title>
  <link rel="stylesheet" type="text/css"
     media="print, handheld" href="foo.css">
</head>
<body>
  <p>The body...</p>
</body>
</html>

@media規則（The @media rule）

@media規則はひとつ以上のメディアタイプをコンマ（,）区切りで指定し，その後につづく中括弧に含まれる規則集合をその対象にします。この規則を利用する事により，一枚のスタイルシート中に複数のメディアタイプに対する規則を記述できます。（cf. @規則）

例

@media screen {
  body { font-size: medium; }
}
@media print {
  body { font-size: 10pt;   }
}
@media screen, print {
  body { line-height: 1.4;  }
}

認識されるメディアタイプ

CSSメディアタイプに採用された名称は，関聯のあるプロパティが意味を成す対象デヴァイスを表しています。

CSS2適合では，あるメディアタイプへのサポートを称するUser Agentは，そのメディアタイプに適用される凡てのプロパティを実装しなければならない，とされています。しかしCSS2.1ではそうではありません。CSS2.1では下記リストで示されるメディアタイプの名称は規範的（normative）ですが，その説明については参考情報（infomative）に過ぎません。同様に，各プロパティ定義に示された対象メディアの欄も参考情報です。

以下に示すメディアタイプの名称が定義されています。なお，名称は大文字と小文字を区別しません。

all

すべてのデヴァイスにあてはまる。

screen

主に色を表現できる一般的なコンピュータの画面。

tv

テレヴィジョン型の機器。（一般的には低解像度，色つき，かつスクロールに制限のある画面。音声も使用可能。）

handheld

低性能なポータブル機器。（典型的な物には，小さな画面，モノクロ画面，周波帯域の制約を持つ機器など。）

tty

グリッドの矩形領域に納る固定ピッチ文字を使用する出力装置など。具体的にはテレタイプ，端末，あるいはディスプレイ性能の限られたポータブル機器などが想定されます。著者はこのメディアタイプにおいて画素単位pxを用いるべきではありません。

print

頁区切りの物質への印刷；もしくは画面上の印刷プレヴュー。（cf. CSS2勧告邦訳 13. 頁媒体）

projection

映写機などの投影表現。CSS2.0では透明素材への印刷も含む。（cf. CSS2勧告邦訳 13. 頁媒体）

braille

点字の触感がフィードバック（即時反応）される装置。（具体的なものでは点字ディスプレイが利用されている。）

embossed

頁区切りの点字プリンタ。（頁区切りの点字用紙などに，点訳されたデータを“型押し”の膨らみで出力する装置。）

speech （CSS2では aural だが非推奨）

合成音声を生成するためのソフトウェアやデヴァイス。（cf. CSS2勧告邦訳第19章音声スタイルシート）

【註】：改訂版のCSS2.1では，auralメディアタイプを非推奨（deprecated）とし，代りに "speechメディアタイプ" が将来の拡張（CSS3 Speech Module）のために豫約されます；具体的な意味合いは定義されない。また，CSS2仕様書の第19章にあった音声スタイルシートについても，CSS2.1では規範情報（normative）でなくなり，参考情報（informative）としてAppendix A.に移動されました。

メディアタイプは，文書をレンダリングする際にUser Agentがひとつのメディアタイプしかサポートできないという意味では相互に排他的です。しかしながら，User Agentは異るカンヴァスに対しては異るメディアタイプを使用するかもしれません。たとえば，ある文書は一方のカンヴァスに対しては 'screen' モードで表示されたり，他方のカンヴァスに対しては 'print' モードで表示されるかもしれません。

多様式（multimodal）のメディアタイプは，単にひとつのメディアタイプに過ぎない点に注意してください。たとえば 'tv' メディアタイプは，単一のカンヴァスに対して視覚的および聴覚的に表現される多様式のメディアタイプです。

@mediaまたは@import規則に未知のメディアタイプを含む場合，それらが指定されていない時と同様に扱われます。

【註】：将来におけるCSS仕様の更新によって，上記リストに示したメディアタイプの種類は拡張されるかもしれません。スタイルシート制作者は，既存のCSS仕様においてまだ定義されていないメディアタイプの名称に頼るべきではありません。

メディアグループ（Media groups）

【註】：CSS2.1仕様では，この節は参考情報（informative）とされ，規範情報（normative）ではありません。

各プロパティ定義には，メディア欄として，そのプロパティがどのメディアタイプに適用されるのか示してあります。しかし，各プロパティは一般に複数のメディアタイプに適用可能なので，一々のメディアタイプではなく，以下で述べるメディアグループを列記してあります。つまり，各プロパティはその定義に列記されたメディアグループについて，それらに内包しているすべてのメディアタイプに適用されることになります。

それぞれのメディアグループは，その特徴からいくつかの性質に分類されています：

連続的（continuous）出力か，頁で区切られる（paged）かどうか
視覚的（visual），音（audio），話す（speech），触覚（tactile）か
グリッドの制約があるか（grid），自由に表現できるか（bitmap）
ユーザと対話的にやりとり出来るか（interactive），静的（static）か
すべて（all）：すなわち，すべてのメディアタイプが含まれる

以下ではメディアグループの特徴およびそれらに内包するメディアタイプについて述べます。

continuous（連続メディア）

内容を際限なく連続的に途切れなく出力できるメディア。
speech，braille，handheld，screen，tty が該当。tv が該当することもある。
一般的な画面環境では，表示域に収らない部分はスクロール操作で閲覧する。

paged（頁メディア）

横幅や縦幅に制限のある頁単位で区切られるメディア。
embossed，print，projection が該当。
tv はこのグループ，もしくは連続メディアに該当することもある。

visual（視覚メディア）

視覚的な整形構造をもちいて情報を表現するメディア。
handheld，print，projection，screen，tty，tv が該当。

speech（合成音声メディア）

合成音声で話されることで情報を表現するメディア。
speech が該当。CSS2.1では handheld が該当することもある。

tactile（触覚メディア）

点字などの突起物による触感で情報を表現するメディア。
braille，embossed が該当。

grid（グリッドメディア）

表示域がグリッド（升目）で区切られていて，表現に制約のあるメディア。
ひとつの升目にはひとつの文字しか入れられず，画像も表示できない。
braille，embossed，tty が該当。handheld が該当することもある。

bitmap（ビットマップメディア）

グリッドの制約がなく，自由にビットマップの画像を表示できるメディア。
print，projection，screen，tv が該当。handheld が該当することもある。

interactive（対話的メディア）

ユーザによる操作を受けつける対話的なメディア。
print，projection 以外； CSS2.1では print，embossed 以外。

static（静的メディア）

ユーザによる操作を受けつけない静的なメディア。
print，projection； CSS2.1では print，embossed が該当。
他のすべてのメディアタイプもこのグループに該当する可能性がある。

all（すべてのメディア）

すべてのメディアタイプが含まれる。

下記の表は，メディアグループとメディアタイプの対応関係を示しています。

'both' という表記は，そのプロパティが両方のメディアグループに適用されることを示しています。
括弧で示された補足内容は，CSS2.1で改訂されたか，附加されたメディアタイプを意味します。

メディアグループとメディアタイプの対応関係
メディアタイプ	メディアグループ
メディアタイプ	continuous / paged	visual / audio / speech / tactile	grid / bitmap	interactive / static
braille	continuous	tactile	grid	both
embossed	paged	tactile	grid	both (2.1: staticに改訂)
handheld	both	visual (audio, speechも含む)	both	both
print	paged	visual	bitmap	static
projection	paged	visual	bitmap	static (2.1: interactiveに改訂)
screen	continuous	visual (audioも含む)	bitmap	both
speech	continuous	speech	該当なし	both
tty	continuous	visual	grid	both
tv	both	visual, audio	bitmap	both