どうせU-14の練習などで休みがちになる学校。
なんの感慨も生まれないだろうと思っていた中学生活に、色を与えてくれたのは君。
君の周りだけ、鮮やかに見えた。




【8】を背負う男 -2-




入学してから数ヶ月、クラスの仲も落ち着いてきた、というか、いわゆるグループ分けがされていた。
能力の足りない奴らが群がってくすみ合っている。
そして彼女はどこにも属さなかった。

当然だと思った。
出会ったあの日から、彼女は違うと思っていた。
遠巻きに俺を見て笑うクラスメイト、下手な同情をする教師、後ろ指を差すニホン人…
そのどれにも、彼女は当てはまらない。
だって、彼女は俺の言葉を言ったから。
俺が周りと違うように、彼女もまた違う。

いつの間にか、俺は彼女のことばかり追っていた。
だって周りは全てくすんで見えたから、目のやり場がないくらい、汚く見えたから。


昼休み、彼女は屋上へ行く――晴れの日も、雨の日も。
さすがに雨の日は、入り口の屋根のある場所にいる。ドアにもたれる背中が曇りガラスからぼやけて見えた。
俺はその背中を、屋上へ続く階段から眺めるのが好きだった。
いつもは賑わう屋上も、雨の日は彼女の気配だけが微かに感じられて、雨の音が優しく聞こえた。

彼女は一体何を考えているのか…
そんなことを、取り止めも無く考えて昼休みが終わる、彼女が出てくる前にその場を去る、
今日も、そうなると思っていた、ある雨の日。


「…?」

追ってきたはずの背中はどこにもなくて、曇りガラスは鈍く外の光を写していた。
いつもなら、あのガラスに、小さな肩が影を落としているのに…
とりあえず戻ってみようと振り返ったら、目の前に彼女がいた。
あの日と変わらない、不敵な笑みを浮かべて。

「何か、用?」

目の前で笑う君に、俺はそんな言葉を言った。
話したい事は、山のようにあるというのに…

「それ、私の台詞」

君は笑った、不敵な笑みを、少し優しくさせて。




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初コンタクト(?)編、でした。


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