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わたくしの仕事環境――収入を度外視したSOHO例。
白石昇

●仕事場内の生物学的インフラ。

 もう丸二日間部屋から出ていません。多分今日も部屋から出ることはないでしょう。朝になったらメールマガジンを発行し、バルコニーに日が射す時間になったら寝ころんで身体を灼き、シャワーを浴びてそれ以外は仕事したりダラダラしたりしていますから、特に部屋から出る必要はないのです。米や最低限の食料は部屋の中にあるし、喉が渇いたらお茶を湧かして飲めばいいのです。

 どうして部屋から出ていないかというと、簡単に言えば、今現在手元にお金がないからです。今わたしの手元には二十五サタンだけしかありません。おまけにアパートメント一階ミニマートのおばちゃんに二バーツ借金しています。お金がないのにやることが山ほどあるのだからお部屋に閉じこもっているのです。

 しかし二十五サタンあるからと言って何か買えるわけではありません。首都圏の最低労働賃金が一日一五〇バーツ前後、一番安い米一キロが十二バーツのここでは二十五サタンしかないのでは飴一個だって買えないのです。ちなみに一バーツは百サタン。飴は二個一バーツです。

 とりあえずこれを読んでいる方々は通常円を通貨として使われているでしょうからバーツとの換金レートは日々ホットな情報を ここで確認していただくとして(便利な電卓付)、今日も特に部屋から出る予定はないのでこの部屋で仕事に必要な設備から説明してゆこうと思います。

●お飲物。

 まず水です。水分がなければ仕事どころではありません。パソコンが壊れてもなんとか仕事は出来ますが、水がないと仕事などそのうち出来なくなります確実に。で、生水を飲みます。隣が椰子畑で水脈に恵まれているので多分ここの水道水は地下水を汲み上げていて比較的きれいだけれども一度煮沸します。

 そういうわけなの二四〇ボルト直結ですぐに沸騰する電気ポットでお茶を湧かして飲むことにしています。特に去年近所でコバルト60と言う放射性物質に汚染された機械が掘り出されたらしいので、煮沸して安全かどうかは別問題として心配するにこしたことありません。とりあえず一度沸騰させれば放射性物質も大丈夫だろう、と思うことにしています。

●食べ物。

 乾く心配がなくなったら今度は餓えを何とかしなければなりません。今のところは引っ越した友人から山のように貰った日本食材があるので大丈夫なのですが、普段は市場に買い物に行きます。うちの地元は大きな港に面しているので市場も広く、市場のすぐそばに豚屠殺工場もあり、必ずどこかの店が開いているので、二四時間どこかの店で食材を調達することが出来るのです。

 米についてはそのあたりに雑貨屋があるし、米屋に行けば、茉莉香米、スーリン米などの高級米から、糯米、玄米までありとあらゆる種類の国産米が入手できます。安いものはキロ十二バーツくらいから、高くても二四バーツくらいです。

●滞在許可その他。

 それで、ここまで説明してきて、どうしてこのような環境で仕事をせねばならないようになったのかを皆様に説明しなければならないのではないかと言うことに気づきました。それは、一言で言えばそれはわたくしがフリーランスで定収入がないからなのです。

 フリーランス、と言う存在に就労査証が発給されることはまずありません。就労査証の発給にはその人間を保証する企業なり組織なりがドキュメントを書かねばならないのです。もちろん、こちらにおられる日本人社会の皆様方の中には当たり前のように不法就労されていらっしゃる方が何千人もいらっしゃいます。

 こちらの日本人社会、IT化は悲しいくらい立ち後れてますから、少しパソコンがいじれるくらいのわたくしにも不法就労のお誘いはあります。しかし、その依頼をしてくる人がことごとくあやしい人たちばかりなので、最近はこちらでバーツ収入を得ることはいっさいやらないことにしております。こっちにいる日本人ほどある意味信用できないものはないのです。

 それでは、折りあれば次回は通信環境とプロヴァイダについてご説明差し上げたいと思います。
   
 
 

初出・【日刊デジタルクリエイターズ】 No.0865 2001/05/24.Thu.発行



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