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わたくしの仕事環境――収入を度外視したSOHO例。(第三回)
白石昇


●接続権利。

 南国は刹那的なのです。ええそれは間違いなく刹那的なのです。その証拠に母国で淋しく時には痛い恋愛を経て傷ついた日の丸娘達が海外へ一発はじけに行く時は決まって南国です。サンクトペテルブルグとかストックホルムに行くリゾラヴァなどあたしは聞いたことはないです。

 それはきっとものすごく昔から手を伸ばせばそこに生えているバナナやパパイヤやタロイモがゲットでき、籾播いてれば草取りしなくてもお米が収穫出来るからだというのが要因でしょうこの南国的刹那の。歴史的に太陽と肥沃な大地は人を思いっきり刹那の嵐に巻き込むのです。

 そんなふうに、あたしも含めて日々の小口な欲望精算に寛容ワンセルフな皆様が社会を形成しているこの土地において、ネットをお使いになられる方々が、わざわざどこかのプロヴァイダと契約して接続されることなどほとんどありません。ほとんどがプリペイドのアカウントをお使いです。そしてほとんどの人がフリーメールをご利用です。時折一般企業までフリーメールを使ってたりします。刹那万歳刹那いえーい。

 こういった状況を生みだした理由は、このリゾラヴァ感覚のほかにもう一つ、プロヴァイダ側インフラの問題があります。刹那的にプリペイドを売るのですから、売ったもの勝ちなのです。

 だから、回線やアクセスポイント、ルーターの数などネットワークやシステムのことなど無知な、なんか知らないけど僕、プロヴァイダっていう種類の会社管理職になっちゃったあ程度の認識しかない天下りもしくはコネ入社親父がなんにも知らずにガンガン売りまくった結果、繋がらないとか、クソ遅いとかパスワードを認識しやがらないとか言う悲劇が起こるのです。そうですこの世の中の大部分はITに弱い売り上げしか頭にないクソ親父共がダメにしているのです。

 しかし、さすがにいい加減なアカウントを売りまくっていればそのうち売れ行きに影響します。粗悪な物をつかまされた客の恨みは深く、そういった人はまちがいなくいかにそれが粗悪だったかを事ある毎にふれ回ります。口コミというのは恐ろしいのです。そうなるとそこはさすがに資本主義です。そのうち競争原理が見事に働き市場が成熟し、いい品質のアカウントを提供している会社のものなら、ある程度の値段でも売れるようになります。

 大体ここでは五十時間半年以内のアカウントで五百バーツ前後、と、いったところなのですが、先日二五〇バーツで五十時間、という破格のアカウントを購入いたしました。そしてそれは当然のように繋がらないし遅いし挙げ句の果てはパスワードを認識しやがらないという最低のものでした。

(日本円との交換レートはこのあたりを参考にして下さい。)

 ハズレをつかんでしまうこともままあるのですが、利点としてはまあ圧倒的にプリペイドで使っている人が多いから、日本よりもサーヴィス品質向上のサイクルが刹那的に速い気がする、ということでしょう。ここでは大手電話会社が親会社であるプロヴァイダでも何年かで斜陽になったりするのです。
 
 
 

初出・【日刊デジタルクリエイターズ】 No.0878 2001/06/12.Tue.発行

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