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わたくしの仕事環境――収入を度外視したSOHO例。(第五回)
 
白石昇


●業務内容その弐。

 突然ですがこれから北部の緬国国境に行かねばならなくなりました。そうです、こないだまで軽く戦争なんかやっちゃってたメーサイ−タチレク国境というところです。何故そんなおちゃめなところに行くかというと、現地からインターネット中継をしたり、その他いろいろなかたちでインターネットを使って情報を発信したりするためではありません。

 もちろん中国原産西瓜石鹸胡瓜石鹸の密輸でもないです。あ、今思ったけどこれ日刊デジクリ読者様へプレゼントするってのいいかもしれない。ほんとに西瓜と胡瓜のフレグランスなの。素敵よ。

 で、結局どういう理由かというと単に査証が切れるのでいっぺん国外に出なければならないのです。それで、国外に出るには一番コストがかからず精神的に近い場所がその北部国境なのです。行ってみれば今や遠い記憶のかなたであるところの小学校の夏休み、ラジオ体操に行ってカードにスタンプをもらってくるようなものです。単なるお気楽ツアーです。かなりめんどくさいですけど。

 しかし、お気楽とは言ってもそこはそれ、こないだまでプチ戦争やってた場所ですから何が起こるかわかりません。まあ首脳会談が済んだのでなにも怒ることはないと思うのですが。もし万一一週間後までわたくしがネット上で動いている気配がなかったら何かあったと思って下さい。いや、脅かすつもりはないんですけど、誰も心配してくれなかったら少し淋しいんです。ちなみに今日は七月四日です。

 で、こんな淋しがり屋の私が今年いっぱい収入の見通しも立たずインドシナ半島で何をやっているかというと簡単に言えば翻訳です。あ、簡単すぎましたね説明が。要するに泰語の書物を日本語にするのです。あ、わざわざ詳しく説明することもありませんねそんな簡単なこと。

それで、翻訳する際にひとつ大きな問題があるのです。それは、わたくしの記憶能力です。わたくし幼少のみぎりより単純記憶能力に著しく問題がありまして、それが更に成長するに従って酷い状態になってきましたのです。

要するに翻訳とか言語学を学ぶに際して必要不可欠な基本的能力である、新しい言葉を記憶する、と言う能力に問題がある訳なのですね。という訳なので、何度同じ言葉を辞書で引いても頭に入っていかないのです。

 そもそも英語の点数四十点で学校に入学した人間が卒業して五年以上経って更に脳が衰えた年齢で翻訳などという作業をはじめようと思うこと自体が何か基本的に身の程知らずのような気がするのですが致し方ありませんバカなのですから彼は。

 この先極力皆様に迷惑をかけずできれば喜んでいただけるようなバカぶりを発揮させようと思いますのでまあ今日のところは穏便に何とかしていただくわけにはいかないでしょうか。

 と人ごとのように自己弁護し自らのバカぶりを正当化するわたくしとはいえ、目の前の現実からこれ以上目を背けることは出来ません。だって書かれている泰語に相当する日本語がわからなければ翻訳なんて出来るわけがないのですから。

 そうしてわたくしはとりあえず何度も辞書を引かなくてもすむ方法を考えました。その詳細についてはまた次回。
 

初出・【日刊デジタルクリエイターズ】 No.0899 2001/07/11.Wed.発行

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