GRDSインフォメーション

ゲルマラジオの設計に便利な計算ソフトが欲しくてGRDSを製作しました。GRDSは、趣味レベルで楽しむゲルマニウムラジオ(鉱石ラジオ)において、各種の設計値をおおよそ知る上で役立つと思います。無料ソフト(フリーウェアソフト)として公開していますので、気軽にご利用ください。

目次


GRDSの入手法

最新バージョンは、2.0 です。(2016/01/07 公開)
GRDSのダウンロードページ へどうぞ (一次配布サイトは「Vector」を利用しています)

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インストール、アンインストール

GRDSの動作対象OSは、Windows 10、8.1、8、7、Vista、Xpです。(作者は7で動作確認)

インストールは実行ファイルを任意のフォルダに置くだけです。メニュー登録やショートカットの作成を適宜行い、実行してください。レジストリを変更しないので、アンインストールはGRDSの実行ファイルを削除すれば完了します。

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GRDSの機能紹介

GRDS Ver2.0

「ゲルマラジオ設計支援プログラム GRDS」は、受信機の基本形であるゲルマニウムラジオ(鉱石ラジオ)について、アンテナ回路、同調回路、検波回路、出力回路に関する計算を手軽に行なえるプログラムです。

最新バージョン(Ver2.0)の主な改善内容は以下のとおりです。

なお、前バージョン(Ver1.9)の主な改善内容は以下のとおりです。


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1 アンテナ回路

アンテナ回路に到達した電波のエネルギーを漏れなく受け取ることは、とても大切です。ゲルマラジオは増幅回路を持たない形式のラジオであるため、受け取った電波のエネルギーだけで、ラジオを聞くことになります。

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1-1 波長と周波数

波長と周波数のGRDS計算画面

波長から周波数、周波数から波長を計算します。アンテナの設計や電波伝搬の特性を考える上で必要な値です。電波が進行する速さは、光の速さと同じです。真空における光の速さは299,792,458m/sですが、通常は30万km/sで概算します。短縮率は初期設定値から選択できるほか、任意の数値も入力可能です。

【 参考情報 】速さの概算と短縮率のオプションは、他のアンテナ回路分野での計算にも適用される、共通オプションです。


1-2 ワイヤーアンテナ

[新規] ワイヤーアンテナGRDS計算画面

波長より短いワイヤーアンテナとは、例えば中波1000kHz(波長300m)の受信に、ワイヤーアンテナの全長が10数メートルしかない場合がこれに該当します。 ワイヤーアンテナ(垂直、逆L型、T型)の電気的特性として対地静電容量、インダクタンス、放射抵抗、実効高を求めます。 また、扱いたい周波数に対して、必要なローディングコイル(延長コイル、装荷コイル)を求めます。垂直アンテナの場合は、水平部の長さを0と入力します。

【 注意情報 】ワイヤーアンテナが設置された周囲の環境によって電気的特性は変化します。接地抵抗は実測が必要であり、計算の対象外です。


1-3 実効長(高)

実効高・実効長GRDS計算画面

非接地型のループアンテナ、ダイポールアンテナの形状から実効長を求めます。また、接地型の垂直アンテナの実効高を求めます。

【 注意情報 】Ver1.8〜1.9で搭載していた、共振周波数未満の周波数における垂直アンテナの実効高は、Ver2.0から「1-2 ワイヤーアンテナ」に移行しました。


1-4 電界強度

電界強度GRDS計算画面

中波放送の地表波について、Nortonの近似式で減衰係数を求めることで、周囲が空間だけで何もない状態(自由空間)ではなく、地表波を対象とした実際に近い値で電界強度を推定します。大地の状態を選択すると、法律で採用している代表的な誘電率、導電率を用いて計算しますが、具体的な値が判明している場合は、該当する項目にチェックを入れて、数値を入力してください。

なお、同じ条件でも、電界強度計算と受信距離の計算で数値が僅かに異なることがあります。これは、数値を丸める桁数や、0.01km単位でシミュレーションを行なった影響で発生します。


【 注意情報 】比誘電率は海水、淡水(湖、川)が80程度、陸地が10〜15と値が概ね定まっているのに対し、導電率は変化が大きく、わずかな違いでも電界強度に影響を与えます。例えば、同じ平野であっても、各地方で値が異なることが普通であり、市街地では建物、電線など構造物の込み具合で導電率が変化します。導電率のデフォルトは法律で使用してる代表的な値であることから、計算結果は目安程度にお考えください。

2 同調回路設計

ゲルマラジオが受信する放送局は、コイルとコンデンサーの組み合わせ方で決定します。

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2-1 共振状況

共振状況のGRDS計算画面

共振周波数、コイルのインダクタンス、コンデンサーのキャパシタンスの関係について計算します。計算で求めたい項目を選択し、残り2つの値を入力することで計算が可能になります。

【 参考情報 】「expand」をダブルクリックすると、特性インピーダンス、合成インピーダンスなど、周波数特性に関連する計算機能が追加されます。通常のゲルマラジオ製作には必要ありません。


2-2 受信範囲

受信範囲のGRDS計算画面

同調回路(コイルとコンデンサーによる共振回路)の周波数範囲や、受信範囲をカバーするために必要なバリコン若しくはμ同調器の可変量を計算します。バリコン(可変容量コンデンサ)において、単に容量と呼ばれる値は、可変する容量の最大値のことです。容量の最小値が不明な場合は、最大値の5〜10%程度を見積もれば良いでしょう。

【 注意情報 】 実際のゲルマラジオでは、コイルの分布容量やアンテナ回路側の容量、インダクタンスが存在します。そのため、これらの影響が大きい場合は、計算値に誤差が発生します。


3 バリコン設計

バリコン設計のGRDS計算画面

コンデンサーを構成する電極板の面積S、電極板間の間隔d、コンデンサーの容量Cの関係について計算します。電極板の多重化には、電極の配置関係によって何個分のコンデンサーが並列接続されている状態なのか、相当する数を入力します。比誘電率は電極板に挟まれた空間に存在する物質で異なり、空気の比誘電率は1.00059になります。計算で求めたい項目を選択し、残り4つの値を入力することで計算が可能になります。

また、正方形、長方形、半円の形状に限られますが、電極板のサイズから面積を、電極板の面積からサイズをそれぞれ求めることができます。半円は0を超える内径を入力することで、円の中心部をくり抜いた状態(ドーナッツ状のもの)を半分にした形状で扱い計算します。

【 注意情報 】 面積S>>間隔d の条件以外では誤差が生じやすいと考えられます。


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4 コイル設計

ゲルマラジオ(鉱石ラジオ)の同調コイルとして自作例が多いと思われる6種類のコイルについて、その形状からインダクタンス値、巻き数、製作に必要な線材の量(重量と長さ)を計算します。使用する線材の重量は、UEW(ウレタンエナメル線)とPEW(ポリエステルエナメル線)を想定しています。これらの線材は通常、「直径と重量」の表示で販売されていますが、少量の場合は「直径と長さ」の表示で販売されています。

コイルを自作する場合、使用した材料や製作上の誤差のため、インダクタンスの実際値が計算値と異なる場合があります。作り方のコツとして、コイルを計算値より多めに巻いて、少しずつ解きながらインダクタンスを微調整し、受信範囲を整えると良いでしょう。
計算される線材の長さと重量は、いずれもコイルのリード線やタップ加工に必要な量を含みません。実際に使用する量は計算値より多く準備する必要があります。

なお、形状が同じ条件でも、インダクタンス計算と巻き数の計算で数値が僅かに異なることがあります。これは、数値を丸める桁数や、0.01巻き単位でシミュレーションを行なった影響で発生します。

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4-1 ソレノイドコイル

ソレノイドコイルのGRDS計算画面

単層密巻きのソレノイドコイル(円筒コイル)のインダクタンスを計算します。密巻きなので「コイルの長さb」=「線径」×「巻数t」の関係が成り立ち、空芯コイルである場合、最も計算値(理論値)に近くなります。コイルの直径a、コイルの長さbですが、巻き線断面の中央を基準にして測定した長さが正確な値になります。ソレノイドコイルの計算に必要な長岡係数は、第一種完全楕円積分、第二種完全楕円積分で定義される理論式から算出して利用しています。

なお、コアにフェライトバーを使用した場合(バーアンテナの場合)は、位置によって比透磁率が違うことからインダクタンスが変化します。フェライトバーの中央にコイルを配置するとインダクタンスは増加し、フェライトバーの端にコイルを配置するとインダクタンスが減少します。

【 注意情報 】 コイルの直径aとコイルの長さbが異なるほど誤差が生じやすいと考えられます。


4-2 スクエアコイル

スクエアコイルのGRDS計算画面

ここでは単層密巻きで、角柱状に巻いたコイルのインダクタンスを計算します。コイルの断面が正方形、密巻きなので「コイルの長さc」=「線径」×「巻数t」の関係が成り立ち、空芯コイルである場合、最も計算値(理論値)に近くなります。

【 注意情報 】 コイルの大きさa、bとコイルの長さcが異なるほど誤差が生じやすいと考えられます。


4-3 ループコイル(ループアンテナ)

ループコイルのGRDS計算画面

ここではループコイルとして使われることもある、多層巻きした方形コイルのインダクタンスを計算します。
ループアンテナとは、同調コイルがアンテナの役目も兼ねる場合(コイルが大きいと電波の磁界成分をキャッチしやすくなる)のループコイルや、送信機や受信機の外部アンテナとして使われるループコイルの名称です。

【 注意情報 】 コイルの巻き具合によっては計算値と実測値が大きく異なる場合もありえるので注意してください。


4-4 スパイダーコイル

[新規] スパイダーコイルのGRDS計算画面

奇数枚の羽根をもつ枠に巻いたコイルのインダクタンスを計算します。スパイダーコイルは巻枠の厚みと電線の交差を利用することで線間距離が増加するように巻くことで、線間容量を減少させています。このため、小型でも性能のよいコイルが製作しやすいと一般的に言われており、過去に製作された鉱石ラジオでも多くの使用例が見受けられます。

【 注意情報 】 コイル枠の厚さは1mm程度、羽根は15本で、羽根2本おきに巻いた状態を想定し、概ねの係数で計算しています。想定のコイル枠形状に対し、極端に厚みがある場合や羽根の数が少なすぎる場合は誤差がより大きくなると考えられます。


4-5 スパイラルコイル

スパイラルコイルのGRDS計算画面

スパイラルコイル(渦巻きコイル)のインダクタンスを計算します。形状は方形と円形が選択できます。スパイダーコイル(蜘蛛の巣コイル)も近似した値になると考えられます。スパイラルコイルは同一平面状で渦巻状にコイルを巻きます。

【 注意情報 】 本ソフトの計算で最も誤差が生じやすいと考えられます。渦の巻き具合によってインダクタンスは変化します。計算値と実測値が大きく異なる場合もありえるので注意してください。


4-6 トロイダルコイル

トロイダルコイルのGRDS計算画面

トロイダルコアに巻いたコイルのインダクタンスを計算します。特に現在、日本国内で入手が容易だと期待される材質(#2、#6、#43、#61)については、コアサイズを選択するだけで計算が可能です。コアの内側を貫通した線材の本数が、巻数に相当します。線材はコアの周囲を均等に巻きます。

【 注意情報 】 理論式の確度は高いと考えられますが、コアの製造誤差などのため実測値と異なる場合があります。


5 コイル評価

共振回路やコイルの性能を表す指標としてQがあります。Qメーターと呼ばれる専用の測定器を利用できない場合を想定し、測定の原理に従って計測した値からQを算出します。代表的な計算方法として、昇圧の状況を確認する方法(直列共振法)と帯域幅を確認する方法(動作特性法)があります。
必要な値を入力後、計算ボタンを押すとQ値が算出されます。いずれの場合も、計測中は測定器や被測定コイルの配置、周囲の状態を変化させてはいけません。

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5-1 直列共振法

直列共振法のGRDS計算画面

1  高周波発信器で、測定したい周波数(例えば1000kHz)にセットする
2  信号を分圧する抵抗値をGRDSに入力(R2が存在しない場合「R2を使用しない」にチェックを入れる)
3  バリコンの調整によって共振させて、最大となったバリコン両端の電圧V2を測定し、GRDSに入力
4  信号源の電圧V1を測定し、GRDSに入力

なお、「コイルの分布容量は無視できる」のチェックは、通常は入れてください。このチェックをはずした場合は、実在する分布容量をゼロとした場合の理想値を計算します。


5-2 動作特性法

動作特性法のGRDS計算画面

1  高周波発信器で、測定したい周波数(例えば1000kHz)の信号を加え、並列共振回路を同調させる
2  発信器の周波数と並列共振回路の出力電圧をGRDSに入力
3  発信器の出力を調整し、+3dBにする(必要な電圧値はGRDSが表示)
4  発信器の周波数を可変させて、最初の出力電圧と同じになる周波数を2箇所求めてGRDSに入力

なお、直列共振の場合は「−3dB」をご利用ください。ただし、グラフのイメージは反転しません。


5-3 分布容量

分布容量のGRDS計算画面

測定器による実測値からコイルの分布容量を計算します。なお、自己共振周波数とは、コイルの分布容量とインダクタンスによって、コイル単独で共振現象が起こる周波数のことです。

【 注意情報 】 分布容量は小さい値ですから、測定値の誤差が大きいと計算結果に大きく影響します。また、上段枠の共振周波数が接近した値である場合も測定精度が問われます。


5-4 Q/表皮効果

Q/表皮効果のGRDS計算画面

コイルの質の良さを表すQを理論式で計算します。ここで、分母の抵抗Rとはコイルの抵抗ですが、その要因の一つに表皮効果があります。表皮効果とは、電流の周波数が高くなるほど、電流が電線の表面だけを通り、電線内部を通らなくなる現象です。表皮深さ及び表皮効果によって生じている抵抗値を計算します。

【 注意情報 】 理論式の確度は高いと考えられますが、コアの製造誤差などのため実測値と異なる場合があります。


5-5 AWG

AWG - mm換算のGRDS計算画面

AWG(American wire gauge)のNo、直径mm、断面積mm^2の換算表です。「逆順」ボタンを押すと、昇順と降順の切り替えができます。


6 検波・出力回路

より良い受信を追及するには、検波回路、出力回路の検討も欠かせません。

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6-1 包絡線検波

包絡線検波GRDS計算画面

通常のゲルマラジオでは省略することも多いですが、音質を重視する場合はダイオードで検波した後、抵抗器とコンデンサーを追加します。検波する高周波信号と、抵抗値、静電容量を入力することで、包絡線検波の検討を行います。

1/(搬送波の角周波数)<<時定数 が破たんすると検波効率が悪くなります。1/(信号波の角周波数)>>時定数 が破たんするとダイアゴナル・クリッピング歪みが発生します。

【 注意情報 】 抵抗値を低くしすぎると、音量が低下します。コンデンサーは値を大きくしすぎると、高音が減少します。ゲルマラジオの場合、最終的な音質は、使ったイヤホンの特性に強く左右されるのが実状です。


6-2 ダイオードシミュレーション

ダイオードシミュレーションGRDS画面

ダイオードの特性に基づいて、以下の入出力をシミュレーションします。

【 参考情報 】 理論式の導出など、詳しい説明は探検 ゲルマラジオをご覧ください。


6-3 抵抗器のカラーコード

抵抗器のカラーコードGRDS判読画面

抵抗器に示されたカラーコードを、ラジオボタンで指定すると、抵抗値と誤差を表示します。カラーコード自体には定格電力の表示はありません。ゲルマラジオ(鉱石ラジオ)の場合、音声信号が微弱なため、耐電力値が問題になることはほとんどありません。通常は安価な1/4W型を使用すれば良いでしょう。

【 訂正情報 】 第4色帯において、誤差0.05%(A)を灰色としましたが、これは旧規格です。現在の規格は、橙色が0.05%(W)であり、灰色は未定義です。橙0.05%(W)がプログラム(Ver1.0、Ver1.1)に反映されておらず、不備をお詫びします。Ver1.2以降で対応していますので、バージョンアップをお願いします。


6-4 コンデンサー容量表示

コンデンサー容量表示GRDS判読画面

ゲルマラジオでよく使われるセラミックコンデンサーの容量と誤差を表示します。


6-5 イヤホン

[参照先アドレス変更]

クリスタルイヤホン(セラミックイヤホン)のインピーダンス特性について、実測した結果をグラフ化し、GRDSに掲載しました。イヤホンは個体差があるため、掲載された特性は一例とお考え下さい。


補足事項

1 マウスが無くても、Tabキーで入力項目等を順番に移動できます。逆方向に移動する場合は、SHIFT+Tabキーです。
一部の計算では、計算ボタンをクリックしなくても、エンターキー(リターンキー)で計算を実行するようになっています。

2 回路図によるGUIは、表示を旧JISに変更できます。

3 GRDSは「ゲルマラジオ設計支援プログラム」の頭文字(ゲルマ・ラジオ・デザイン・サポート)が命名の由来です。

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謝辞

・ 電界強度の計算には、浅瀬野 様のAM放送波(中波)の電波伝搬についてを参照させていただきました。
・ ダイオードシミュレーションは、理論解析をされた浅瀬野 様からプログラムのご提供を頂き、GRDSに移植させていただきました。
・ Q算出の回路図作成は、「水魚堂 ONLINE」から公開されている回路図エディタBSch3Vを利用させていただきました。
・ ワイヤーアンテナの静電容量、放射抵抗について、ON7YD, longwave, 136kHz, antennasを参照させていただきました。
・ バグ報告を頂き、更新時に改善しました(Ver1.8:miwa様)。
以上の方々、そして本ソフトをご利用いただいた皆様、ありがとうございました m(__)m

外部リンク

ゲルマラジオの試作工房 では、ゲルマラジオの試作例などを紹介しています。サイト内では多くが割愛されていますが、受信範囲の検討やソレノイドコイルなどの設計には、GRDSが活躍しています。
ゲルマラジオの試作工房

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