交流ラウンジでのビッドから ( 前篇 )

© ぼこさん (boco_san, 2002/08/ 〜 )  SAYC ビッド・サマリー    メイリオ印刷
ブリッジを始めて間もない人のために,ビッドの説明を丁寧に書いています。
「ビッド練習帖」とあわせて お読み下さい。
1NT, 2NT オープン後のトランスファ
 ビッドの一覧表     [136-137].


ハンド評価 (その 1) ポイント・カウント法

 ブリッジのオークションは,オープニング・ビッドから始まります。
そのためには,手の強さを評価する方法が必要です。
その方法として,A=4, K=3, Q=2, J=1 と数える ポイント・カウント法を使います。
 4-3-2-1 ポイント・カウント法は,1940 年代後半に普及し, これにより ブリッジのビッドが容易になりました。

  絵札と HCP   … 3‐4.
  コントラクトの代と種別   …  4.


絵札と HCP

  1. [HCP] HCP とは 何のことですか ?

    ── A=4,K=3,Q=2,J=1 と数えることにより得られる合計点数を
    HCP (High Card Points) と呼びます。
    手の強さを計るときの基本です。
    日本語では,「絵札点」と言うと 分かりやすいでしょう。

  2. [絵札とアナー] 確かに,A  から  J  までは 絵札ですね。

    ── そうなのですが,ここで 「絵札」という言葉に ちょっと注意が必要です。 日本語では この 4 枚を絵札と呼びますが,英語で Honor Cards と言うときには,
         A, K, Q, J, 10
    この 5 枚を指します。たとえば,
      「○○○のビッドをするためには,絵札 (アナー) 3 枚が必要である」
    と言うとき 10 までを含めて考えます。
    そういうわけで,ここでは,10 までを含めて
         「絵札」= アナー
    と約束します。

  3. [アナー] どうして「アナー」と呼ぶのですか ?

    ── これらが,「偉い ( 高位の ) 」カードだからです。
    ラバーのブリッジでは,切り札の絵札 4 枚 (どの組み合わせでもよい) を 一人の人が持っていると,「アナー・ボーナス」と言って,100 点をもらえます。 5 枚全部を 一人で持っていれば,150 点です。

  4. [スポット・カード] 絵札 (アナー) 以外のカードは, 何と呼ぶのですか ?

    ── カードの表面に絵ではなく,単にスポット (スートのマーク) が描かれているだけなので, 「スポット・カード (Spot Cards) 」と呼びます。
     日本語で言うと「屑札」でしょうが,響きが悪いので そのまま「スポット・カード」と呼びます。 手短かに「ちび (puppies)」と呼ぶこともあります。

  5. [点] ところで  1 の代のオープンの条件として, よく「13 点が必要だ」と聞きますが, この「点」と HCP とは どういう関係にあるのですか ?

    ── そのについては,後でまた …。
    実は,オープニング・ビッドのためだけならば,あなたの言うは必要ありません。 HCP だけを知っていれば 十分です。
    そのが必要になるのは,オープニング・ビッド以後です。


コントラクトの代と種別

 コントラクト または ビッドは その「代」と「種別」により決まります。
 たとえば,コントラクト 3NT の代は 3 であり,種別は ノートランプです。
 代 (Level) は,英語のまま「レベル」とも呼びます。
一方,「種別」は  5 通り ( NT) のどれであるかを指します。
はじめの 4 つ だけならば,「スート」あるいは「切り札」でも十分ですが,
NT (ノートランプ) を含める場合には 「種別」と言います。
チャットでの便宜も考えて,私はこの短い呼び名を愛用しています。
 英語では Strain あるいは Denomination ですが, どちらも難しい英単語なので,Eric Rodwell は 単純に "Where ?" (どこで ?) と呼んでいます。


オープニング・ビッド

スート・オープン   …   5‐6.
ルール・オブ 20   …     5.
ノートランプ・オープン   …   7‐10.
セミ・バランス・ハンド   …     8.

スート・オープン (1 の代)

  1. [オープンの基準] さっきの話では,13 点とかは お預けでした。
    だったら,どういう基準でオープンするのですか ?

    ── 確かに オープンの条件として,それくらいは 必要です。
    かつては,そういう 12 とか 13 という数字に頼ってオープンするのが 普通でした。
     しかし 今では,ルール・オブ 20 (Rule of 20) という便利な判定基準があって,これを使うと 入門者でも 初心者でも 上級者でも,みんな誰でも 正確に判断できます。

  2. [どんなルール] その ルール・オブ 20 というのは,どんなルールなのですか ?

    ── とても簡単なルールです。

    一番長いスートの枚数 + 二番目に長いスートの枚数 + HCP ≧ 20
    ならば,1 の代でオープンする … というルールです。
     このルールは,Marty Bergen さんが考案したようです。
      「長いカードと短いカードを持つ手は,見かけよりずっと強い
    ことを, HCP と巧みに組み合わせたルールです。
     今では,ごくあたりまえのルールとして普通に使われるので,ぜひ 覚えましょう。

  3. [いくつかの例] 例を挙げていだけませんか ?

    ── はい。交流ラウンジのブリッジ教室で実際にあったハンドも含めて,いくつか例を挙げると …。

    [1] A 10 7
    A Q 10 9 8 7 2
    8 7
    5
    1 ープン.
    [2] 10 7 5
    Q 9 2
    Q 10 4 2
    A K J
    パス.
    [3] A K 7 3
    9
    9 8 6 4 2
    K J 6
    1 オープン.
    [4] K J 7 6 4
    A J 3
    J 9
    Q 8 2
    1 オープン.
    [5] K 10 8 4
    K 9
    A Q 7
    9 7 3 2
    1 オープン.
    [6] K 10 4
    K 9 5
    A Q 7
    J 7 3 2
    パス.
     たとえば,[1] の場合
         ハートの枚数 7 + スペードの枚数 3 + 10 HCP = 20
    となるので,この手は 1 オープンします。
     練習問題として,そのほかの 5 つの例についても 調べてみましょう。

  4. [機械的に使う] このルールを使えば,私でも正確にオープンできるのですか ?

    ── はい。まだブリッジを始めて間もないあなたでしたら,ほとんど機械的に このルールを使うとよいでしょう。
     もちろん,このルールを使って正確にパスすることも忘れては いけません。

  5. リファレンス( Rule of 20 )
    • Marty Bergen: "Points Schmoints!" (Bergen Press, 1995, 2002)
       Chap. 1, p. 1〜4.
      「ポインツ-シュモインツ!」(JCBL) ¥2300.
    • Ned Downey and Ellen Pomer: "Standard Bidding with SAYC",
       (Master Point Press, 2005) p. 25, $17.95.
    • Bridge Forum SAYC Notes,Hand Evaluation.
    • BridgeGuyes.com, Rule20.html.


ノートランプ・オープン

  1. [HCP の基準] ノートランプでのオープンの基準は ?

    ── HCP で分類すると,
     15〜17 HCP ( 3 点幅 ) ⇒ 1NT.
     18〜19 HCP ( 2 点幅 ) ⇒ 1 の代で何かのスートをビッドして 次回に 2NT.
     20〜21 HCP ( 2 点幅 ) ⇒ 2NT.
    となります。

  2. [暗記法] これを このまま 暗記するのですか ?

    ── この 6 つの数字をそのまま暗記している人は,少ないでしょう。

  3. [何点幅] では,どうやって ?

    ── まず,15〜17 HCP というのは,基本なので 丸暗記します。
    次に,3 点幅,2 点幅,2 点幅 というのを暗記します。
    これは,割合と楽に暗記できます。
    あとは,その場で足し算して計算します。

  4. [バランス・ハンド] これだけで判断していいのですか ?

    ── いいえ。
    このような HCP のほかに,バランス・ハンド (Balanced Hands) であることも必要です.
     バランス・ハンドとは,4 スートのカード枚数が
        4-3-3-3, 4-4-3-2, 5-3-3-2
    この 3 種類のハンドを指します。ノートランプのオープンは,原則として この 3 種類に限ります
     この 3 種類の発生確率は,合計 47.6% に達します (確率の表(3)) 。
    つまり,2 回に 1 回は バランス・ハンドです。
    したがって,バランス・ハンドのオープンは 重要です。

  5. [セミ・バランス・ハンド] 要するに,ボイドやシングルトンが無い手が バランス・ハンドなんですね ?

    ―― 大体はそれで間違いありませんが,正確に言うと,ちょっと違います。
     5-4-2-2 のように,ダブルトンが 2 つあるハンドを,バランス・ハンドとは言いません。 これは,セミ・バランス・ハンド (Semi-Balanced Hand) です。

  6. [入門用の基準] 上の基準を 1 HCP だけ上げて
     16〜18 HCP ⇒ 1NT.
     19〜20 HCP ⇒ 1 の代で何かのスートをビッドして 次回に 2NT.
     21〜22 HCP ⇒ 2NT.
    とするビッドの仕方もあるようですが …。

    ── はい。あります。かつては こちらが標準でした。
    しかし,今では 15〜17 HCP が標準になり, 16〜18 HCP は 入門用に使われています。

  7. [なぜ] 入門用というのは,なぜ ?

    ── ノートランプのプレイは,慣れないうちは 難しいので,ダウンすることが 珍しくありません。15〜17 HCP に設定して,あまりダウンするようだと, ブリッジそのものが面白くありません。
     そこで,慣れない間は 16〜18 HCP に 設定する … という考え方です。

  8. [どちらを使うか] どちらを使えばいいのでしょうか ?

    ── はじめのうちは,16〜18 HCP を使うことをお勧めします。
    パートナーと打ち合わせができていれば,何の問題もありません。
    ある程度慣れてきたら,15〜17 HCP へ移行するのがよいでしょう。

  9. [切り替え] 15〜17 HCP に切り替えた場合,応答の仕方や ステイマンなどに変更はありますか ?

    ── いいえ。変更はありません。レスポンダは 8〜9 pts で 2NT に上げます。
    オープナーは 15 HCP ならパス,17 HCP あれば  3NT をビッドします。16 HCP のときは,手の内容によってどちらかを選択します。 これらは,全く変更ありません。
     したがって,この切り替えの条件として,17 + 8 = 25 pts で 3NT を達成できる腕前が必要です。

  10. [ 15-17 が良い理由] 15〜17 HCP と 16〜18 HCP では,どちらが有利なのですか ?

    15〜17 HCP 16〜18 HCP
    発生確率 10.1 % 7.3 %
    ―― HCP を すべてのカードについて合計すると,全部で 40 HCP あります。ひとりあたり平均で 10 HCP ですね。
    そこで,何 HCP の手がどの位の確率で来るかを正確に計算できます。 Durango Bill さんのホームページにその結果が載っています。
     正確には,バランス・ハンドに限定する必要がありますが,一応,限定しないままの結果を引用すると, この 2 通りの範囲の手が来る確率は,上のようになります。
     したがって,15〜17 HCP にしておけば,16〜18 HCP よりも 1.4 倍多く 1NT でオープンできます。 1NT オープンは,妨害に強いので,低い HCP でオープンする方が有利です。

  11. [ステイマン,トランスファ] 1NT オープンしたときに,パートナーから「ステイマン」とか「トラ」とか言われて …。 覚えないといけないのでしょうか ?

    ── 1NT のあとのビッドの仕方は いろいろあって,何でも 60 種類あるというのを何かで読んだ記憶があります。 どうしてそんなにいろんなことをブリッジ・プレイヤーが考えるのかは別にして,ステイマン (Stayman) だけは使えるようにして下さい。
     パートナーは 1NT オープンしても,4 枚 (あるいはひょっとして 5 枚) の を持っている可能性があります。 ですから,それを見つけるために,ステイマン 2 だけはどうしても必要です。 ステイマンは,すべてのブリッジ・プレイヤーが最初に覚えるコンベンションです。
     俗に「トラ」と呼ばれている Jacoby Transfer は (このサイトでも丁寧に説明していますが), 絶対に必要なものではありません。必要さの度合いが ステイマンとは ぜんぜん違います。ステイマンだけでも,かなりのことはできます。
    それに,知らないものは,「知らない」とはっきり言えばよいのです。

     ステイマンについては,かずちゃんのホームページの 「ブリッジ教室」 に説明があります。 北ブリッジ倶楽部の初級室 ( リスト A コンベンション ) も おすすめします。

  12. ステイマンとジャコビ・トランスファは,両方いっしょに使うものなのですか ?

    ── ジャコビ・トランスファは,ステイマンといっしょに使います。
    しかし ステイマンは,上にも説明したように,単独でも使います。

  13. [スート・オープンとの選択] こういう手で が 5 枚あるので
    K J 3
    Q 10 9 8 2
    A Q
    A J 9
    ( 17 HCP )

    1オープンしたところ,1という返事が返ってきました。 ここで何をビッドすればよいのか 分からなくて 困りました。
    17 HCP あるから,2 回目に 1NT をビッドするには良すぎるし …。 かと言って,ここで 2NT をビッドするだけの強さは無いし …。
    ここで,何をビッドすればよいのでしょう ?

    ── そうですね。ここまで来てしまったら, 2 をビッドしましょう。
    でも,その前にオープニング・ビッドについて考えるべきでした。
      5 枚メジャーのシステムは
       「メジャースートでオープンするには 5 枚必要だ」
    という意味であって,
     「メジャースートが 5 枚あれば 必ず メジャースートでオープンする」
    という意味では ありません。
     17 HCP で 5-3-3-2 の バランス・ハンドですから,5 枚の メジャースートがあっても,1NT をビッドすると,あとのビッドが 楽にできます。
     それに,もしもパートナーに が 4 枚あってゲームがありそうならば,ステイマン 2 をビッドしてくれる筈です。


ハンド評価 (その 2)

  長さ点 (LP)   …   11‐12.
  ダミー点 (DP)   …   12‐13.
  ゲームに必要な手の強さ   …   14‐15.

長さ点 (Length Points, LP)

  1. [点について,もう一度] さっき すっ飛ばした「点」の話が ここで 出てくるのですね。

    ── はい。
    HCP は,バランス・ハンドを評価するのに向いています。
    しかし,それ以外のハンドの特徴を捉えることは できません。
     たとえば 長いスートを持つ手の場合,そのスートで沢山のトリックを取れる。 これは,スート・コントラクトにも ノートランプ・コントラクトにも 共通しています。

  2. [スートの長さを評価する] それには,どうするのですか ?

    ── 5 枚以上のスートがあるとき, 長さ点 (Length Points, LP) というものを
      5 枚のスートがあれば +1 ( 5 枚のスートが 2 つあれば  +2)
      6 枚のスートがあれば +2
      7 枚のスートがあれば +3
      以下同様に …
    加算します。ただし 絵札のシングルトンは,−1  します。
    そして,これに HCP を加えたもの
         TP  =  HCP  +  LP
    が総点 TP (Total Points) です。
     この TP を 普通は単に「点 (pts) 」と呼び,ハンド評価に これを使います.
    「長さ点」は,長さによってトリックを取る強さの目安です。

  3. [LP をいつ誰が使うか] それで,LP を使って得られた TP を 誰がどういう場合に使うのですか ?

    ── オープニング・ビッドを NT とスートに分けて考えると …
       ノートランプ・オープナーは,HCP だけを使います。
       1 の代のスート・オープナーは,ルール・オブ 20 を使うので その中に LP が含まれています。 ただし,2 回目以降のビッドでは,LP により手の強さを評価します。
     また,ノートランプ・オープナーは HCP だけでその手を評価しますが,そのパートナー (ダミー) は LP により自分の手を評価します。

  4. ということは,ディフェンダも ?

    ── はい。ディフェンダも TP を使ってハンドを評価します。

  5. [LP を使わない場合] じゃぁ,その反対に LP を使わないのは 誰 ?

    ── スート・コントラクトで,ダミーになる人は LP を使いません。


ダミー点 (Dummy Points, DP)

  1. [ダミーの短いスート] それでは,ダミーになる人が使う点数は ?

    ―― スート・コントラクトでダミーになって,切り札をサポートできる場合には,ダミーの切り札で切れることを評価して,

    サイド・スートの内容 切り札 3 枚
     の場合
      切り札 4 枚
     の場合

      2 枚のスート (ダブルトン)+1+1
      1 枚のスート (シングルトン)+2+3
      0 枚のスート (ボイド)+3+5
    により ダミー点 (Dummy Points, DP) を加算します。
     切り札が 3 枚の場合は,ラフの可能性が下がるので,DP を小さく評価します。
     そして,これを HCP に加えたもの
         TP = HCP + DP
    が総点 TP (Total Points) です。
    この TP を 普通は単に「点 (pts) 」と呼び,ダミーの手の評価に使います。

  2. その場合,絵札のシングルトンを どう数えるのですか ?

    ―― A は  7 点と数えますが,それ以外は
        K = 5,Q = 4,J = 3
    と数えます。

  3. [ダミー点の注意] ダミー点というのは, ダミーになることが はっきりしている場合に使うのですね ?

    ―― はい。
    ダミー点を数えるときに,うっかりしがちなことを注意しておきましょう。
     (1) レスポンダは,切り札が決まるまで,ダミー点で計算してはいけません。
    オープナーがビッドしたスートを切り札としてサポートする場合に 初めて ダミー点で数えます。 それまでは,LP を使って数えます。
     (2) オープナーがダミーになることもあります:
    レスポンダがビッドしたスートを 自分 (オープナー) がサポートする 場合には,オープナーがダミーになるので,自分の手をダミー点により再評価します。

  4. [例] たとえば ?
    A J 4 2
    K Q 8
    A Q J 7 4
    7
    ( 17 HCP )
    あなた LHO Pard RHO
    1 パス 1 パス
    4

    ―― こんな場合です。
    この手は  17 HCP + 5 + 4 = 26 ≧ 20  なので 1オープンしました。 すると,うれしいことに,パートナーから 1 が返ってきました。 を 4 枚 持っているので, を切り札にします。 自分がダミーになるので ダミー点により評価し直すと,クラブがシングルトンなので
          17 HCP + 3 DP = 20 pts
    となります (この場合,ダミーなので LP を数えません)。
      パートナーの 1 は 6 pts を保証するので, 合計 26 pts あります。
    そこで  4 をビッドします。
     なお この場合,スプリンターというコンベンションを使っていれば,4 を ビッドして クラブのシングルトンを伝え,同時に スペードのゲームを保証します。


ゲームに必要な手の強さ

  1. [ゲームに必要な強さ] それで,その TP が合計いくらになると,ゲームが作れるのでしょうか ?

    ―― 経験によれば 次の数値が知られています。
    二人の手を合わせて これだけの強さがあると,それぞれのゲームができます。

    コントラクト  合計点数

    5 529 pts
    4 426 pts
    3NT25 pts
    この表で,かつては  3NT のところが 26 pts でした。
    しかし,プレイの技術の進歩に伴って 今では 25 pts に下がりました。

  2. [経験値の確かさ] 経験によれば … というお話ですが,どのくらい確かな数字なのですか ?

    ―― 経験したボード数の多さという意味では,コンピュータに敵う人は いません。 私が作成したソフトウェア BridgeGame25 により得られたグラフを下に示します。
     これは 約 700,000 ボードについて解析して得られた結果です。
     点数の数え方にについて 細かい説明は省きますが,LP, DP, (および 絵札の無駄点) などすべてを考慮しました。
     グラフからお分かりのように,どのコントラクトも 上の表の点数で 成功確率が 60〜65 % に達します。

  3. [オープンできる手] この表で,5と 5 を別にすると,ゲームに必要な強さほぼ 26 pts … これは オープンする手の強さの約半分です。

    ―― それは 非常に重要な観察です。
    ブリッジのビッドやプレイに入っていくと,「オープンできる手」というのが意外に 重要な意味を持つことに気づきます。
     たとえば,レスポンダとして 「オープンできる手」を持っていれば,何かゲームがあると確信できます。
     一般に「オープンできる手」と「オープンできる手」が向き合えば,何かゲームがあるのが普通です。 なぜなら,3NT とか 4 の代のコントラクトは  26 pts あれば できるからです。
     つまり,

    「オープンできる手」 + 「オープンできる手」 = ゲーム
    ということです(注)。これは ブリッジの重要な 公式 です。
     もしも,1 回目にパートナーが パスした場合には,自分がオープンできても,最低限の手ならば ゲームはありません。
     また,パートナーがテイクアウト・ダブルを掛けたとき,あなたは,パートナーが「オープンできる手」を持っていると 想像してビッドします。
     この場合にも,自分が「オープンできる手」ならば,たぶん 何かゲームがあるでしょう。
     2 の代でのオーバーコールも,「オープンできる手」に準じます。
     ですから「オープンできる手」を理解していることは,自分がオープンする場合以外にも大切です。


ブリッジのビッドは あまのじゃく ?

  ダブルの意味 (テイクアウト・ダブル).  … 16‐18.
  3 種類のビッド.  … 18‐19.
  「フォーシング」とは ?  … 20‐21.
  1 回フォーシングとゲーム・フォーシング.  …   22.

ダブルの意味 (テイクアウト・ダブル)

  1. 私は,ほんとにまだブリッジを始めたばかりです。
    先日プレイしたボードで,こんな手を持っていました。
    J 5 3
    10 7 4 2
    Q 10 8
    10 9 7
    ( 3 HCP )
    RHOあなたLHOPard
    1 パス 2 X
    パス ?
    3 HCP のボロの手です。10 が 3 枚あるので,4 HCP くらいと思ってもよいのかも知れませんが,それにしても,ボロであることに変りはありません。
     オークションは 右オポの 1 から始まりました。
    私は パスして こう進みました。パートナーが これにダブルを掛けました。でも 私の手はボロで,何もビッドできないので パスしました。

    ── それで,その結果はどうなりました ?

  2. コントラクトは 2X に決まり,ジャストメイクしました。 そして,終わってから パートナーに叱られました。
     パートナーのダブルがどういう意味なのか分からないのです。だって,ダブルというのは,得点も失点も 倍にするということですね。だったら
       「 2 をダウンしてみせるぞ 」
    というのが,このダブルの意味だと思うのです。それなのに …。

    ── おっしゃるように,それが,ダブルの本来の意味です。
    その意味のダブルを 「ペナルティー・ダブル (Penalty Double) 」と言います。 でも 今の場合,パートナーがダブルを掛けたのに 2 はできてしまった …。
     実は,この 1‐2 というビッド経過で 2 コントラクトができることは,誰が見ても ほぼ確実です。パートナーはそのことを知っていて,でも非常に良い手を持っているので,ダブルを掛けたのです。

  3. ? ? ? 非常に良い手を持っているんだったら,自分で何かビッドできるんじゃないですか ?

    ── はい。ビッドできる場合も たくさんあります。たとえば,

          A K 10 9 7 3
          K 8
          A 10 7
          J 5   ( 15 HCP )
    こんな手ならば,2 オーバーコールできます。 が 6 枚の良い手です。
     ところが,5 枚のスートが無い
          A K 9 3
          K Q J 6
          A J 7 5
          5    ( 18 HCP )
    このような手は,非常に強い手ではありますが,自分からどれかのスートをビッドするのは不都合です。
     こういう手の場合に,1‐2 に対して ダブルを掛けます。
    このダブルの意味は,ペナルティー・ダブルとは正反対です。
     つまり
    このダブルをあなたがパスすると,2X は メイクしてしまいます。
      だから,あなたの一番長いスートをビッドして下さい。
    という意味なのです。

  4. ふーん,私に強制的に何かビッドさせようということ ですか … このダブルは ?

    ── はい。自分ひとりでは切り札を決められないので,あなたに ( 以外の) 一番長いスートを ビッドしてもらって,それを切り札にしたい,という意味です。
    このようなダブルを「テイクアウト・ダブル (Takeout Double) 」と言います。

  5. この場合,私は ボロの手でも 何かビッドしなくちゃいけないんですか ?
    RHO あなた LHO Pard
    1 パス 2 X
    パス 2
    一番長いスートと言うと,私の手の場合 が 4 枚で 一番長いから 2 を …。

    ── はい。必ず一番長いスートをビッドします。
    こういう状況で パスしてはいけません。
     もしも 右オポ (RHO) が何かビッドした場合には,ビッドの順番がパートナーまで回るので, ボロならパスしても構いません。しかし,右オポがパスした場合には, あなたは 0 点でも必ず何かをビッドします。パスしてはいけません。
    さもないと,2X ができてしまいますから。

  6. それで あのとき,パートナーに注意されたのか …。
    でも,なんだか あまのじゃくのビッドですね。テイクアウト・ダブルというのは …

    ── テイクアウト・ダブルとその条件については 後の方でまた説明しますが, ブリッジのビッドには そういう「あまのじゃく」の側面もあるということをご理解下さい。


3 種類のビッド

  1. [ 3 種類のコール] でも そうすると,ちょっと心配になってきました …。
    ブリッジのビッドというのは,いつもそういうふうに,2 重の意味を 持つんですか ?

    ── 整理しましょう。
    ブリッジのビッド (正確には,パス と ダブル を含めて コール (Call) と呼ぶ) は,次の 3 種類に分けられます。
      (A) 自然な (素直にそのままの) 意味を持つコール.
        言い換えると,自分の手の強さを素直に表現するコール.
      (B) ほとんど逆の意味を持つコール.
      (C) 特別の意味を持つコール.
    この 3 つに分類できます。

  2. はぁ。でも こんな分類なんて,私のブリッジの本には書いてありませんが …

    ── 私も,こんな分類なんて 本で見たことはありません。
    でも 大まかに言って,こんなふうに分類できるのです。

  3. さっき出てきたテイクアウト・ダブルは,このうちの (B) ということ …。

    ── はい。そうです。

  4. それで,さしあたり知りたいのは,こんなふうに 反対の意味を持つコール他にもあるかということ …。

    ── ご安心下さい。非常によく使うのは,テイクアウト・ダブルだけです。
    分類の (B) に属するビッドとして キュービッド (Cuebid) がありますが,それは,かなり先に進んで 必要を感じたら身につければいい。
    テイクアウト・ダブル以外は,さしあたり 心配する必要はありません。

  5. [コンベンション] 分類の (C) というのは ?

    ── これは,コンベンション (Conventions) と呼ばれるものです。
    典型的な例は,ステイマン,ウィーク 2,ブラックウッドです。
    これも,必要を感じたら少しずつ覚えていけばいい。

  6. [自然なビッド] そうすると後に残るのは (A) だけ …。

    ── はい。ブリッジの上達に必要なのは,圧倒的に (A) のコールです。
    これを使って
     「状況に応じて,自分の手にあるものを どれだけ正確に表現するか」
    というのが,誰にとっても重要な課題です。


「フォーシング」とは

  1. ビッドの説明で「フォーシング」という言葉が出てきますが,「フォーシング」って何ですか ?

    ── パートナーが パスしては いけないビッドのことを フォーシング・ビッド と言います。 フォーシング・ビッドのパートナーは,ビッドが続くようにしなければなりません。

  2. [2つの場合] どういうビッドが "フォーシング" になるのですか ?

    ── たとえば,
     (1)  レスポンダが新しいスートをビッドするのは,フォーシングです。
     (2)  ディフェンス側のビッドとしては,さっき出てきた テイクアウト・
       ダブルがフォーシングです。
    始めのうちは,フォーシング・ビッドは これだけだと思っていれば十分です。
     このうち,テイクアウト・ダブルは 上に出てきたので,ここでは (1) を説明しましょう。
     1 の代のオープンを受けて,レスポンダが新しいスートをビッドするとき

      6+ pts あれば,4+ 枚の新しいスートを 1 の代でビッドしてよい。
    10+ pts あれば,4+ 枚の新しいスートを (ジャンプしないで)
    2 の代でビッドしてよい。

    PardRHOあなたLHO
    1パス 1パス
    ?
    というのが,レスポンダの答え方の基本です。
     たとえば,このように あなたが 1 と答えた場合を 考えましょう。
     このとき,1 オープンしたパートナーは, どんなに弱い手を持っていても 何かビッドする義務があります。
    レスポンダが新しいスートをビッドするのは,フォーシング
     これは,ビッドの基本的な約束です。
    あなたが レスポンダとして,新しいスートをビッドする限り, ビッドの順番は 必ずあなたに また 回ってきます。

  3. [基本的な約束] そうなんですか。
    でも,どうしてそういう約束があるんですか ?

    ── 1 をビッドしたあなたは 4 枚 の と 6+ pts を保証しているけれど, その上限はかなり大きい (ジャンプ・シフトしていないので,上限は 18 pts くらいです)
     仮に,オープナーが

    K 4
    K J 9 5 2
    A J 7
    10 9 3
     ( 12 HCP )
    このような手で 1 オープンしていたとしましょう。
    この手は,1 をビッドする最低限の内容です。
     こんな手では,2 回目には パスしたくなりますね。
     でも あなたが 6 〜18 pts の範囲では,ゲームの可能性も十分にあります。ですから,ここは パスせずに 繋がなければ いけないのです。

  4. [フォーシングをつなぐ] こんな手では,何をビッドするのですか ?

    ── オープナーは,仕方がないので,2 回目には 1NT をビッドします。
     この 1NT は,ノートランプを積極的にやりたい … という 意味ではなくて, 13 ‐15 pts の範囲であることを あなたに伝えるつなぎのビッドです。
     あなたの手が強い場合に備えて,ビッドをつないだのです。

  5. [つなぎの不要な場合] それでは,オーバーコールが入った場合には,どうなりますか ? フォーシングの取り扱いは …。

    Pard RHO あなた LHO
    1パス 12
    ?
    ── たとえば,あなたの 1 の後に 2 オーバーコールが入って,右のようになりました。
     この場合には,上の手でしたら オープナーは パスします。パスしても,ビッドはあなたまで回りますから。
     このとき,「パス」は 大切なコールです。それによって,
         「わたしの手は弱い (13〜15 pts)」
    と伝えることになるからです。もしも,ここで無理に何かをビッドすると,それより強い (16+ pts,あるいは強い切り札の) 手を意味するので,レスポンダとの間で誤解が生じます。
     一般に,
       「前回までのビッドで,自分の手については言い尽くした」
    という場合には,(何かビッドする義務がある状況を除いて) パスすれば, そのことがパートナーに伝わります。


1 回フォーシングゲーム・フォーシング

 ビッドについて学んでいけば 次第に分かることですが,フォーシングには 次の 2 種類があります。ここでは,2 種類あるということを知っておけば十分です。
 先へ進んで下さい。
 後の便宜のために,ここに例を示します。
1 回フォーシング
文字通り,1 回だけのフォーシングです。
 ◇ レスポンダの新しいスート (既出)
 ◇ テイクアウト・ダブル (既出)
 ◇ オープナーの リバース
 ◇ キュービッド・レイズ (オープン側)
 ◇ キュービッド (ディフェンス側)
ゲーム・フォーシング
どちらかのプレイヤーが
ゲーム (3NT, 4, 4, 4, 4) を
ビッドするまで 二人ともパスできない。
  ◇ ジャンプ・シフト O, R1, R2.
  ◇ レスポンダの リバース
  ◇ 第 4 スートフォーシング (FSF)
  ◇ キュービッド (オープン側)
 (注) この表では省きましたが,ステイマンなどの各種コンベンションも 1 回のフォーシングです。
 (注) ゲーム・フォーシングのビッドは,「マラソン・ビッド」(Marathon Bid) とも呼ばれ,マラソン・ランナーのように 二人とも ゴールするまでパスできません。
 (注) 4, 4は ゲームではありませんが, 「ゲーム」という言葉は このように 使われます。できることなら 3NT を目指したいのですが (二人合わせて それだけの強さがあるのですが) ストッパが無いために 4, 4で我慢する場合が含まれます。

レスポンダのビッド (1 回目)

  サポートの有無により場合を分ける.   …  23.
  をサポートする.   … 24‐25.
  をサポートする.   … 26‐28.
  ジャンプ・シフト.   …   29.

サポートの有無により場合を分ける.

スート
サポートに必要な枚数 3 枚4 枚
 右オポがパスしたとして,サポートの有無により レスポンダの ビッドを 次の 3 通りに分けて考えます。
(1) 5 pts 以下の場合,パスします。
(2) パートナーのスートをサポートできない場合:
   可能な限り低い代で,長いスート または ノートランプを ビッドします。
   ただし,2 の代では 10 pts が必要です。
   新しいスート (NT 以外,4+ 枚のスート) をビッドするのは 1 回フォーシングです。
   1 オープンに 2を ビッドする場合だけは,5 枚のハートが必要。
   非常に強い手では,ジャンプ・シフトすることがあります。
(3) パートナーのスートをサポートできる場合:
   メジャースートをサポート (以下に説明)。
   マイナースートをサポート (以下に説明)。
(4) 以上の他に,パートナーの ノートランプ・オープンをサポートする場合には, オープナーの HCP に自分の HCP + LP を加えて,可能な代をビッドします。


をサポートする

  1. メジャースートのオープン (1, 1) に対して, 切り札のサポートがあるときどう考えてビッドしますか ?

    ―― オープナーは,5+ 枚の切り札と 13+ pts を保証しています。
     一般に,二人で合計して 8+ 枚の切り札と 26+ pts があれば 44 は できるので,そのことを頭に置いてビッドします。

  2. 具体的に言うと,どんなビッドになりますか ?

    ―― 切り札は確定しているし,あなたがダミーであることも確定しています。
    したがって,ダミー点 (DP) を使って 自分の手を再評価します。
    そして,その点数と切り札の枚数により ビッドを決めます。
    オープニング・ビッドが 1 として

    条 件 ビッド
      (A)   0〜5 pts,
    切り札 4 枚以下
     ⇒    パス
      (B)   9 pts 以下,
    切り札 5+ 枚
    シングルトン/ボイドあり
     ⇒    4 (プリエンプト = ダウン覚悟)
      (C)   6〜9 pts,
    切り札 3+ 枚
     ⇒    2
      (D)  10〜12 pts
    切り札 3 枚
     ⇒   他のスートをビッドして,
      後に 3
      (E)  10〜12 pts
    切り札 4+ 枚
     ⇒  3 (リミット・レイズ)
      (F)  13+ pts
    切り札 3+ 枚
     ⇒   他のスートをビッドして,
      後に 4

  3. この表の (D)(F) では,「他のスートをビッドして」となっていますね。
    (D) の場合はともかくとして, (F) のようにゲームがあることが はっきり分かっているのに,まわり道のビッドをするのは,分かりにくいです。
    もっと直接に,「ゲームがあるよ」って伝えるビッドは無いのですか ?

    ―― 回り道のビッド (つなぎのビッド,Temporizing Bid) は 確かに分かりにくい。 とくに,ビッドに慣れないうちは ….
     でも,ブリッジのビッドというのは,もともとそういうものなのです。
     互いに相手の手の内容を想像しながら ビッドを 続けることにより,最適のコントラクトを見つける … というのが ビッドの本来の考え方です。
     1 回のビッドで全てを伝えられることも,無いわけではありませんが,そういうことは珍しい。互いにやり取りをする中で だんだん詳しいことが分かっていきます。
     普通の会話だってそうでしょ。言葉の往復によって,相手が何を言いたいのか 正確に分かります。1 回だけでは 正確には伝わりません。それと同じです。
     (F) の場合について言うと,標準のビッドで これを 1 回で伝える方法ありません。 でも,だからと言って ゲームをビッドし損なうことは無いでしょう。
     ただし,スラムを狙うとなると話は別で,標準のビッドだけでは不十分です。
    そのため,(F) で切り札が 4+ 枚あることを 1 回で伝えるコンベンションとして,スプリンタージャコビ 2NT があります。

    「ビッド練習」(メジャー・オープン) #1, #2

をサポートする

  1. マイナースートのオープン (1, 1) の場合,サポートするときのビッドの仕方が分かりにくいですね。どう考えたらよいのですか ?

    ―― たしかに,メジャー・オープンの場合より,ずっと分かりにくい。
    切り札のサポートが いっそ 無い方が,むしろ,ビッドしやすい。
     「どういう場合にどう返事するか」ということよりも前に,方針理解することが大切です。そうでないと,覚えることが たくさんあり過ぎて 分かりにくい。

     オープナーは,平均して 4 枚 (3 枚のこともある) の切り札と 13+ pts を保証しています。 このとき,あなた (レスポンダ) は,4+ 枚の切り札を持っていても 次の優先順位に従ってビッドを考えます。

      [1] メジャースートでのフィットを探る.
    オープナーは 5 枚の を持っていませんが,4 枚ならば持っているかも知れない。 そこであなたが のどちらかを 4+ 枚持っていれば,それをビッドして知らせる … これを最優先します。

      [2] ノートランプの可能性を探る.
    たとえ, の切り札がフィットしていても,5 とか 5 をメイクするには 29 pts 必要なので 大変です。でも,3NT ならば  25 pts あればできます。
     そこで,とりあえず  3NT を目指します。 もしも,他のすべてのスートにストッパがあれば, フィットした は トリックを稼ぐのに とても役立ちます。
      [3] マイナースートでのゲーム (5, 5) を試みる.
    ストッパが無くて  3NT が無理と分かれば,5 の代の可能性を探ります。

  2. 具体的に言うと,レスポンダのビッドは どうなりますか ?

    ―― オープナーが 1 (または 1) をビッドして,あなたが 切り札を 4+ 枚持っているとき,次の優先順位に従います。
     ここでは,メジャー・オープンの場合とは違い ダミー点を未だ使いません。

    条 件 ビッド
     (0)  0〜5 pts  ⇒    パス
     (1) 6+ pts, どんなに良い手でも,
    4 枚のメジャースートあり.
     ⇒   それをビッド.
     (2)  8〜10 HCP,バランス・ハンド.  ⇒   1NT
     (3)  他方のマイナースートを
      1 の代 (6+ pts) 
    または 2 の代 (10+ pts) で
    ビッドできる.
      それをビッド.
     (4)  6〜9 pts,
    上のどれにも当てはまらない.
    シングル・レイズ (2, 2).
     (5) 11〜12 HCP,バランス・ハンド.  ⇒   2NT
     (6) 13〜15 HCP,バランス・ハンド.  ⇒   3NT
     (7) 11〜12 pts, 切り札 5+ 枚.   ダブル・レイズ (3, 3)

        この (5) 2NT を リミット・ノートランプ応答 と呼びます。
        また,ダブル・レイズは,リミット・レイズを意味します。

  3. メジャー・オープンのときと違って,ずいぶん複雑ですね。

    ―― 無理に覚える必要はありません。実際にビッドしていると,はじめに説明した方針がだんだん頭に入ってくる。
    そしたら,自然にビッドできるようになりますから …。

  4. 切り札のサポートがあるのに,なかなかサポートしないんですね。
    シングルレイズは (4) 番目だし。ダブル・レイズは,一番最後の (7) 番目 …。

    ―― はい。その通りです。

  5. 具体的にいくつか例を挙げて説明していただけませんか ?

    [a] Q J 4
    8 7 5
    K 7 6
    Q 10 7 5    ( 8 HCP )
    オープニング・ビッドが 1,1 のどちらであっても,1NT をビッドします。
     8〜10 HCP のバランス・ハンドです。
    [b] Q J 4
    8 7 5
    K 6
    Q 10 8 7 5   ( 8 HCP )
    1 オープンには 2 を, 1 オープンには 1NT をビッドします。

    [c] 8 6
    A 10 4
    A J 8
    Q 10 9 8 3  ( 11 HCP )
    1 オープンには,ダイヤモンドが 3 枚ですが 1 をビッドします。
    1 オープンには,2 をビッドします。

    [d] A Q 2
    A 7 2
    Q 3 2
    10 9 8 3   ( 12 HCP )
    1,1 に対して 2NT をビッドします。
    は,どちらも 3 枚以下です。
    [e] K 10 2
    Q J 3
    A J 6 5
    Q J 4    ( 14 HCP )
    1,1 に対して 3NT をビッドします。
    は,どちらも 3 枚以下です。
    [f] K 10
    K 6 5 3
    A J 6 5 2
    Q 4  ( 13 HCP )
    4 枚のメジャースートがあるので,1,1 に対して 1 をビッドします。

    [g] K 9
    Q J 5
    10 8 2
    A J 6 4 2  ( 11 HCP )
    1 オープンを 3 に上げます(リミット・レイズ)。
    1 オープンには,2 をビッドします。
    [h] A J
    10 9 3
    K 6 4 3
    K Q J 2   ( 14 HCP )
    1 オープンには,1 をビッドします。
    1 オープンには,2 をビッドします。
     良い手なので,どちらの場合にも,急ぐ必要はありません。
    [i] 10 9
    A 9
    K J 10 8 6 3
    K 7 6   ( 11 HCP )

    1 オープンには 1 をビッドします。
    1 オープンを 3 に上げます(リミット・レイズ)。
    [j] K 10 5
    6 5 3 2
    5
    A Q 6 5 3   ( 9 HCP )
     
     
    1,1 オープンに 1 をビッドします。
    に絵札が無いので,気持ちとしては ビッドしにくいですが, あくまでも,枚数が重要です。 で取れるトリックが少なくても,他のスートの絵札が その埋め合わせをします。
    「ビッド練習」(マイナー・オープン) #1, #2


ジャンプ・シフト (レスポンダ)

  1. レスポンダのジャンプ・シフトは 何点くらいから ?

    ―― 19 pts というのが クラシックな数字です。
    ただし,場合によっては  17 pts くらいからジャンプ・シフトします。

  2. ビッドの意味は ?

    ―― レスポンダがジャンプ・シフトするのは,スラムへの関心を示します。
    もちろん,ゲームは 十分にできるので,ゲーム・フォーシングです。
    オープナーは 13 pts を保証している …。それに 17 pts を加えると 30 pts になります。

  3. スラムには  33 点必要なのではありませんか ?

    ―― 6NT のようなスラムには  33 pts 必要です。
    しかし,スート・コントラクトの場合には,手の形が偏っていて 切り札が多いので,ラフによりトリックを稼げます。 二人の手の組み合わせが良ければ,(ダミー点を含めて) 30 pts くらいでスラムができることは 珍しくありません。

  4. 私の場合には,何点くらいからジャンプ・シフトしたらいいでしょうか …

    ―― はじめのうちは,スラムをあまり意識しない方がよいので,クラシックにしてはどうですか。
     だんだん慣れてきて,どういう場合に 30 pts でもスラムができるか分かるようになったら → 18, 17 pts と下げていけばよいでしょう。

     それから,19 pts あれば いつでもジャンプ・シフトするのが良いとは限りませんが (Karen's Bridge Library),ここで細かいことを言っても仕方ありません。そういうことは,実際の経験からだんだん分かっていくはずです。
     とりあえずは,「ジャンプ・シフトは 19+ pts を伝えて スラムを狙う」と理解して下さい。


オープナーのビッド (2 回目)

  手の強さにより場合を分ける.  …  30.
  弱い手の場合に困ること.  … 31‐33.
  ジャンプ・シフト (オープナー).  …  34.
  リバース・ビッド.  … 35‐38.
  シングル・レイズに対するビッド.  … 38‐41.
 ここでは,手の強さにより 次の 3 種類に場合を分けて考えます。
 これより更に詳しい一覧表は,ビッド・サマリーをご覧下さい。
強 さ ビッド
弱い
(13〜15)
 [a] パス
 [b] 2 の代で自分のスートを リビッド(注1)
 [c] 2 の代で新しいスート(リバース不可)
 [d] 1NT, 2NT (低い方)
 [e] レスポンダのスートをシングル・レイズ
強い
(16〜18)
 [f] 3 の代で自分のスートを リビッド
 [g] 新しいスート (3 の代も可)
 [h] 新しいスート (リバースも可)
 [i] レスポンダのスートをダブル・レイズ
最強
(19〜)
 [j] リバース
 [k] ジャンプ・シフト
 [l] 自分のスートで ダブル・ジャンプ
 [m] レスポンダのスートで ダブル・ジャンプ
18〜19  [n] NT をジャンプしてビッド
(注 1) リビッドという言葉は,一般に 次の 2 通りの意味を持ちます。
  (1) 2 巡目のビッド (前回と同じスートとは限らない).
  (2) 前回 (または 前々回) と同一のスートでのビッド.
ここでは,リビッド (Rebid) を つねに (2) の意味に使います。
(注 2)  「リバース」は,1 回フォーシングです。
(注 3)  「ジャンプ・シフト」は,ゲーム・フォーシングです。
「ビッド練習」#1, #2, #3, #4, #5.


弱い手の場合に困ること

  1. [リバースとジャンプ・シフト] さすがに,ここまで来ると 場合の数が多くなりますね。この表で,強い手の場合に 「リバース」とか「ジャンプ・シフト」と書いてあるのは ?

    ―― あぁ,それは ちょっと注意が必要なので,下で 別に説明します。

  2. [弱い手の場合] 強い手の場合には,何とでもビッドできますが, 弱い手の場合に困ることがあります。もしも 弱い手で,このどれにも当てはまらない場合には,どうしたらよいでしょうか ?

    ―― その場合,レスポンダからの返事が 1NT や 2NT だったら
      [a]  パスします。
    しかし,スートの返事だったら,フォーシングなので パスできません。
    そこで,
      [b]  自分のスートを 最低の代で もう一度ビッド (リビッド) します。
    これにより,弱い手であることだけは 十分に伝わります。
    このビッドには (原則として) では 6 枚, では 5 枚が必要です。

  3. [2/1 応答] とくに困るのは,私が 1 の代でオープンしたときに,パートナーから 2 の代のスートが返ってきた場合です。

    NorthEastSouthWest
    1 パス 2 パス
    ?
    ―― はい。2 オーバー 1 の応答ですね。たとえば こんな場合です。1 オープンに  2 が返ってきた。
    ここで 2 は ビッドできないので,弱い手に許されるビッドは
       [b] 2, [d] 2NT, [e] 3
    この 3 つです。この中からどれかを選びます。

  4. [リバースは不可] 私のスペードが 4 枚だったら,[c] 2 も ビッドできるのではありませんか ?

    ―― いいえ。 2 は   [h] リバースなので (より上位のスートなので), 弱い手の場合には 許されません。
    リバースについては,大切なことなので 下で別に説明します。

  5. それでは,どうやって この中から …。

    ―― ここでは 原則として 次の方針に従います。
      [b]  2には,ハート 6+ 枚が必要です。
      [d]  2NT には,これまでビッドしていないスートに ストッパが必要。
      [e]  レスポンダのスートは,4+ 枚でサポートします。
         ( ただし,1‐2-3 の場合だけは,3 枚でよい )
    そうは言っても,この原則を常に守れるとは限りません。
     たとえば,Bill Root さんは薄手のブリッジ入門書の中でページを割いて

    6 5
    A J 9 7 2
    K J 2
    A 10 8 ( 13 HCP )
    NorthEastSouthWest
    1 パス 2 パス
    3
    こんな手で  3を推奨します。
    ここでは 「4 枚でサポート」の原則を破って,3 枚でサポートします。
    他に良い方法が無いからです。
    A Q 5
    K Q 10 7 3
    7 4
    K 10 2 ( 14 HCP )
    NorthEastSouthWest
    1 パス 2 パス
    2NT
    この場合には 2NT を勧めます。Root さんのお勧めは ここまでです。

  6. それでは,クラブにストッパが無い場合には ?

    ―― その場合には,[b] 2, [d] 2NT のどちらかを選びます。
    2は なるべく ハート 6 枚の 場合に使うことにして, にストッパが無くても, どちらも 3 枚あれば,2NT を選びます。
    パートナーの  2が 10+ pts を保証するので, に 絵札を持っている筈です。
     Eric Rodwell さんの 2/1 講座 (下記リファレンス) は,この方針を採用しています。 以前,Rodwell さんは下のような ( に ストッパが無い) 場合に,ハート 5 枚で [b] 2をビッドしていたけれど,その後の経験から,2ハート 6 枚限定に宗旨替えしたと書いています。

    10 6 3
    A K J 7 5
    K 3
    J 7 5   ( 12 HCP )
    NorthEastSouthWest
    1 パス 2 パス
    2NT

  7. だったら,クラブが 2 枚の場合には ?

    ―― その場合には,リビッド [b] 2しかありません。
    でも,ハートの内容が良いでしょう。

    J 9 7 2
    A K J 7 5
    K 3
    7 5   ( 12 HCP )
    NorthEastSouthWest
    1 パス 2 パス
    2
  8. リファレンス
     W. S. Root: "The ABCs of Bridge" (Three River Press, 1998) Chap 5.
      Eric Rodwell: "Two-Over-One: Frequently Asked Questions", (2008 May/June).

ジャンプ・シフト (オープナー)

  1. オープナーのジャンプ・シフトは,何点くらいから ?

    ―― 21 pts というのが クラシックな数字です。
    しかし,今では  19 pts くらいからジャンプ・シフトします。

  2. ビッドの意味は ?

    K 10 7
    A K Q 8 6
    9
    A Q J 8
    ( 19 HCP )
    NorthEastSouthWest
    1 パス 1 パス
    3
      オープナーがジャンプ・シフトする (新しいスートをジャンプしてビッドする) のは,ゲームを保証します。
     たとえば,この手で 1オープンしたところ,1 という答が 返ってきた …
    ここで 3 とジャンプするのが ジャンプ・シフトです。
     パートナーは 6 pts しか 保証していませんが,自分は 20 pts 持っていて,合計すると 20+6=26 pts なので,何かゲームがあります。とりあえずゲームが あることを伝えて,あとはビッドを続けます。

  3. [ゲーム・フォーシング] そのあとのビッドは ?

    ―― このジャンプ・シフトは,ゲーム・フォーシングです。
    オープナーの普通のビッドは ノン・フォーシングなので, レスポンダはパスできます。
     しかし,オープナーがジャンプ・シフトすると, ゲームのコントラクト (それが不可能な場合には,4 または 4) をビッドするまで, 二人ともパスは許されません。
     この状況を ゲーム・フォーシング と言います。


リバース・ビッド ( 逆順ビッド )

  1. [リバース不可の場合] わたしの手はこんなふう …
    8 5
    K J 10 3
    A K 9
    K J 6 3
     ( 15 HCP )
    あなたLHOPardRHO
    1 パス 1 パス
    2?

    1 オープンしました。 すると,パートナーから 1 が返ってきて …。
     ここで 2をビッドしたのです。
    ところが,終わってから
     「2リバース だから もっと良い手かと思った」
    と注意されました。4 枚の を,ここで ビッドしては いけないのでしょうか ?

    ―― こういうビッドを リバース・ビッドと呼びます。その説明をしましょう。
     オープナーとして,2 回目のビッドで 新しいスートをビッドするときには, その前に 大切な注意が必要です。 なぜなら,パートナーの 1 は  6 pts を保証しているに過ぎないからです。
     もしかして,最低の 6 点で 1 をビッドしたのかも知れない。
    その場合に,あなたが 2をビッドすると,パートナーは のどちらか良い方を選択します。 が良ければパスできますが (実際には,後述のように,パスしてはいけない)の方が都合よいと思えば  3返します。
     あなたが オープナーとして 15 pts 以下の弱い手の場合 (合計 21 pts),3 はダウンするかも知れません。
     つまり,上のような場合に 2をビッドできる ためには,3 に 耐えられるだけの強い手をあなたが持っている必要があります。 上の場合には それだけの強さが無いので,2ではなく 1NT をビッドします。
     2 回目のスートが最初のスートより高位になる 2のようなビッドを, リバース・ビッド (Reverse bid,逆順ビッド) と言います。 リバース・ビッドするためには,それなりの強さが必要です。

     リバースは 特別なコンベンションには属しませんが,ビッドを考えるときには大切です。
     オープナーも レスポンダも (そして オーバーコールした人も),オープナーが 2 回目に新しいスートをビッドした場合には,ちょっと考えてみましょう … レスポンダが 最初のスートに戻すと 3 の代になるかどうかを。


  2. [リバースに必要な強さ] リバースするためには,何点くらい必要ですか ?

    ―― 17 pts (人によっては 16 pts) が必要とされています。

  3. その数字の意味は ?

    ―― 2NT とか  3 〜 3 のコントラクトには,二人合計して 23 pts くらい必要です。そこから逆算すると,こういう数字になります。レスポンダが保証しているのは,6 pts だけですから ( 23−6=17 ) 。
     また,バランス・ハンドで この強さがあれば 1NT オープンできるので,リバースは アンバランス・ハンド (および セミ・バランス・ハンド) で使います。

  4. [おぼえ方] それでは,17 とか 16 という数字を暗記する必要があるのですね。

    ―― いいえ。
    要求される点数は上の通りですが,分かりやすい表現として

    「オープンできる手」+ エース 1 枚
    という言い方があります。
      ルールオブ 20 により「オープンできる手」を理解していれば,こちらの方が頭に入りやすい。
    8 5
    K J 10 3
    K 9 2
    K J 6 3
    ( 11 HCP )
     たとえば,上のハンドから A を抜き取って 2 で 置き換えると 右のようになって,これはオープンできる手ではありません (Rule 20)。したがって,リバースしてはいけません。
     16 とか 17 pts という数字を暗記するよりも,このように Ace 1 枚を抜き取って判断します。
     言いかえると,リバースするためには,1 トリックだけ余分に取れる必要があります。

  5. 8
    K J 10 3
    A K 9
    K Q J 6 3
    ( 17 HCP )
    あなたLHOPardRHO
    1 パス 1 パス
    2
    そうすると,さっきの私の手Q を加えた,こんな手なら リバースしていいんですね。

    ―― はい。それなら大威張りで 2 回目に 2 をビッドできます。
     ただし,ここで注意を一つ加えると,枚数情報重要です。 リバースした場合,手の強さに加えて
     「第 1 スート 5+ 枚,第 2 スート 4+ 枚」
    ということも,パートナーに同時に伝えています。
    もしも バランス・ハンドならば,この強さ 17 HCP では NT オープンできますからね。
     パートナーがビッドを考えるとき,この情報も貴重です。

  6. [リバースにならない場合] もしも オークションが このように進んだ場合,この 1リバースになるでしょうか ?

    NorthEastSouthWest
    1パス 1パス
    1
    ―― なりません。
     「 2 回目に 上位のスートをビッドすると リバース」と単純に考えるのは,間違いです。
     レスポンダが初めのスートに戻すとき,この例では 2をビッドできます。 レスポンダのビッドが 3 の代に上がってしまう場合が リバースです。

  7. [リバースとジャンプ・シフト] リバースするためには強い手が必要だということは, 分かりました。 それでは,リバースする手の上限は どのくらいなのでしょうか ?

    ―― 22+ pts の非常に強い手は 2 オープンします。
      したがって,リバースする手の上限は 21 pts と考えてよいでしょう。

  8. でも,19 pts あったら,オープナーはジャンプ・シフトするのでは …。

    ―― ジャンプ・シフトの理解を正確にしておく必要があります。
    19 pts というのは,ジャンプ・シフトするための 必要条件です。つまり,
        オープナーのジャンプ・シフトは 19+ pts を保証する.
    のですが,
        19 pts あれば 必ずジャンプ・シフトする.
    のではありません。

  9. ということは,19+ pts でも ジャンプ・シフトしないことがある …。

    ―― はい。
    リバースで強さを示せる場合には,ジャンプ・シフトしないことが多い。

  10. [最強の手では ビッド余地を残す] 分かりにくいですね。どうしてなんですか ?

    A Q 9
    K Q J 3
    3
    A K J 6 3
    ( 20 HCP )
    あなたLHOPardRHO
    1 パス 1 パス
    3
    ―― さっきのビッド経過に戻って考えましょう。
     たとえば,あなたがこういう すごい手を持っていて,ジャンプ・シフトにより この強さを伝えようと 3ビッドします。
     このジャンプ・シフトは リバースであるため ( より高位のスートであるため),1 から 3まで ピョーンと跳びます。そのあいだの 1NT から 3までを全部捨ててしまいました。
     しかし,コントラクトの種別が全く不明な状況で このように跳ぶのは 損です。
     今の場合,コントラクトとして,3NT,4,5 などが考えられる。
    ひょっとして,6 や 6 が あるかも知れません。
    あなたLHOPardRHO
    1パス 1パス
    2
    こういう場合には,2をビッドして 更にビッドを続けることにより,パートナーとの間で情報交換をする方がずっと有利です。
     このリバース・ビッド 2
       [1]  リバースできる強い手 (16+ pts)
       [2]   が 5+ 枚
       [3]   が 4+ 枚
    であることをパートナーに伝えます。
     ここで 仮にジャンプ・シフトして 3 をビッドした場合には,[1] が
       [1] 19+ pts (ゲームを保証)
    となるだけであって,[2],[3] については同じです。つまり,ジャンプすることにより 伝えられる余分の情報量は,この場合,少ないのです。


シングル・レイズに対するビッド

  1. これは,パートナーが私のオープニング・ビッドをサポートしてくれた場合ですね。

    ―― はい。
    これには,シングル・レイズとダブル・レイズ (リミット・レイズ) があります。
    リミット・レイズは,後篇 (メジャースートマイナースート) に回して,ここでは,シングル・レイズの場合だけを取り上げます。

  2. [ゲームがありうるか] どういうことに気をつけるのですか ?

    ―― ここでまず問題になるのは,この先,ゲームがあるかどうかです。
     パートナーのシングル・レイズは 6〜9 pts を示しているので,この上限 9 pts を仮定すると,さっきの一覧表で 13〜15 pts の場合には,合計しても 25 pts に届かないので,[a] パスします。 これ以上 ビッドを続けても 意味がありません (もちろん,右オポが競り合っている場合は別です) 。
     このように,パスして 自分の手の強さを否定することは,大切です。
    裏返して言うと,ここで何かビッドすると,「ゲームの可能性あり」を宣言する意味になります。
     ここから先は,スートの種類と手の強さにより  5 つの場合 (0)〜(4) に分けて考えます。

     (0) 1NT でオープンするには 強すぎたバランス・ハンド:
    18〜19 HCP のバランス・ハンドです。
    ジャンプして [n] 3NT をビッドすれば,この事情が伝わります ()。

     (1) メジャースートで最強 (19〜22 pts) の場合:
     これは,簡単です。[l] 4, 4 のゲームをビッドします。

     (2) マイナースートで最強 (19〜22 pts) の場合:
     レスポンダに下限 6 pts を仮定すると,可能なコントラクトは, 4, 4 あるいは 3NT です。
     メジャースートの場合とは異なり,4 の代のスートはゲーム未満なので,なるべく 3NT を狙います。
      こんなに強い手では,ストッパが揃っているのが普通であり,3NT をビッドできます。 もしも,ストッパの欠けたスートがあれば,ストッパのあるスートを 2 の代でビッドします。
     レスポンダは,これに協力して ストッパのある (なるべく低い) スートを 2 の代でビッドします。

     (3) マイナースートで強い (16〜18 pts) 場合:
     レスポンダが下限 6 pts ならば 2NT,3, 3 まで可能です。
    上限 9 pts ならば 3NT, 4, 4 が可能です。
    上の場合と同様にして,2NT, 3NT を目指します。

     (4) メジャースートで強い (16〜18 pts) 場合:
     オープナーの手の形により,更に場合を分けます。

    (4 ‐1) 16〜17 HCP
    バランス・
    ハンド
    5 枚のメジャースートがあっても,
    初回に 1NT オープンしたはずです。
    (4 ‐2) 18 HCP
    バランス・
    ハンド
    ここでジャンプして 3NT をビッドできます。
    (4 ‐3) 切り札が 6+ 枚
    ある
    3 の代に上げる。
    レスポンダは 6〜7 pts ではパスし,
    8〜9 pts では 4 の代に上げる。
    (4 ‐4) 切り札は 5 枚 4 枚の第 2 スートを (その内容を問わずに)
    3 の代で ビッドする (切り札がハートならば,2ありうる)。 この情報を受けて,レスポンダは,
    3 または 4 の代でビッドする。

    NorthEastSouthWest
    1 パス 2 パス
    ?
    (4 ‐1)
    A Q 9
    K Q J 9 5
    8 5 3
    A J
    (17 HCP)
  3. ごちゃごちゃしてきたので,ハンド例を挙げていただけませんか ?

    ―― では,ビッド経過がハートのシングル・レイズだとして,話を進めましょう。
     これは,5-3-3-2 型の 17 HCP バランス・ハンドなので 1NT オープンすべきでした。

  4. 今さら そんなことを言われても 困りますね。
    ここまで来ちゃったら,何をビッドすればいいのですか ?

    ―― ここまで来たら,2NT をビッドしましょう。
    たぶん,ビッドを間違えたのだと分かってもらえるでしょう。
    でも,レスポンダのビッドが 2 だったのは幸運でした。 もしも 1 だったら,どうしますか ?

  5. そうですね。3NT をビッドする強さはありません。 でも 2NT は,パスされる可能性が高い。3 だと, この強さを伝えられるけれど,ハートが 6 枚だと誤解される。

    ―― 上の手ならば,そう誤解されても問題無いかも知れません。

    (4 ‐2)
    A 9 3
    K Q J 9 5
    K 5 3
    A J
    (18 HCP)
    では,その次の (4 ‐2) … これは 3NT で問題ありません。
    レスポンダは,切り札でラフできそうならば 4 に上げます。
    バランス・ハンドでは パスします。

    (4 ‐3)
    K 10 2
    K Q 8 7 4 2
    7
    A Q 9
    (14 HCP)

  6. その次は,切り札が 6 枚.

    ―― 切り札 6 枚で 1 オープンして, シングル・レイズ 2 が 返ってきました。
     この場合には,6 枚目のハートを 2 pts と再評価します。たとえば, 右の手の場合,オープンの時点では 14 HCP + 2 LP = 16 pts ですが, シングル・レイズの後では 17 pts となります。
      それでも 19 pts に達しないこの手では,3 をビッドします。
    このとき レスポンダは,ダミー点で数えた強さに従って,パス / 4どちらかを選びます。

  7. 最後が,(4 - 4) 切り札 5 枚の場合ですね。

    ―― はい。その場合には,必ず 4 枚のスートがあります。
    この場合のハンド例は,組み合わせて示しましょう。

    オープナー ( 16 HCP )
    A 10
    K Q 10 4 3
    A 2
    K 10 7 4
      
    レスポンダ ( 7 HCP )
    7 6 5
    A 9 8
    10 9 6
    Q J 8 5
      
    NorthEastSouthWest
    1 パス 2 パス
    3
    この手を持っているオープナーは,シングル・レイズ 2 を 受けて,3ビッドします。 上の組み合わせの場合,クラブのフィットが見つかって, レスポンダは  7 pts で 4 へ行くことができます。

  8. 切り札が 6 枚で,しかも 4 枚スートがある場合には ?

    ―― おっと,その場合を忘れていました。
    ボイドやシングルトンがある場合です。 その場合にも (4 - 4) を適用します。
     ダブルフィットがあれば,沢山取れますから。
    このビッドはフォーシングなので,パートナーは 下限の手で何も言うことが無ければ  3 を返します。


レスポンダのビッド (2 回目)

  プリファー(Prefer).   …   43‐44.
  回り道ビッドからの回復.   …     44.
  リバースに答える.   …   45‐46.
  自分の長いスートを リビッドする.   …   47‐48.
  1NT へのフォーシング.   …   48‐49.
        ここでも,場合を分けて考えます。
 (A)  コントラクトの 種別既定 の場合:
  二人の手の強さに応じた適切な代で それをビッド,または パスします。
 (B)  コントラクトの種別が 未定 の場合:
  この場合には,注意を要する点が いくつかあります。
   (a) 6〜9 pts の弱い手:  パス,1NT,または プリファーする。
   (b) 回り道のビッドをしたので,最初のスートに戻す。
   (c) パートナーが リバース・ビッドした。
   (d) 自分の長い (6+ 枚の) スートを リビッドする。
   (e) ゲームが確実にあるが,種別は未だ確定できない。。
「ビッド練習」#1, #2, #3 (FSF,Cuebid)


プリファー

  1. [プリファーとは] 上の表の (a) にある「プリファー」とは ?

    A 9 5 4
    10 2
    J 8 6 2
    Q 7 6
     ( 7 HCP )
    PardRHOあなたLHO
    1 パス 1 パス
    2 パス?
    ―― たぶん,もう よく ご存じのはずです。
    あなたがこの手を持っていて,オークションが右のように進みました。
     この手は弱いので,あなたは パスして 2を選ぶか あるいは 2をビッドします。
      ここで オープナーの最初のスートに戻す選択 2 を,英語では Giving Preference と言いますが, 適切な訳語が無いので プリファー と呼びます。
    要するに,「最低の代で戻すビッド」です。

  2. [弱い手] ここでは どちらを選ぶのですか ?

    ―― パートナーのハートは 5 枚,クラブは 4 枚あります。
    どちらを選んでも,切り札は合計 7 枚あります。
    5 + 2 枚の方がプレイしやすいので,ここでは 2をビッドします。

  3. [プリファーかパスか] クラブの方が長ければ,パスすればよいのですね ?

    ―― はい。この場合はそうです。
    ただし,場合によって 注意が必要です。

  4. [8〜9 pts の場合] どんな注意が ?

    A 9 5 4
    J 2
    Q 8 2
    Q 7 6 4
     ( 9 HCP )
    ―― 上の手を少し変えてみましょう。 こんどは どうですか ?

  5. この場合は,ハートが合計 7 枚,クラブが合計 8 枚なので,パスして 2を選びます …。

    ―― ここで,さっきのビッド一覧表を見直して下さい。
    上のようにビッドしたオープナーの手の強さは どの範囲にありますか ?

  6. えーっと。それは もちろん弱い手 [c] 13〜15 pts で …。あっ,
    その他に [g] 16〜18 pts というのもある !

    ―― この場合,オープナーの手は 13〜18 pts という広い範囲にあります。
    あなたが 8〜9 pts で パスすると,ゲームを逃すかも知れません。

  7. なるほど。だったら,ここでは パスではなく,プリファーして 2 …。
    それで,もしも私のハートがシングルトンで,2 が不適当な場合には ?

    ―― そういう場合には,2NT,3 を候補にして, どれが良いかを考えましょう。 パスは危険です。
      ビッドの教本では見逃されやすい事項なので,注意しましょう。


回り道ビッドからの回復

  1. [回り道のビッド] 「回り道ビッド」というのは,メジャースートの応答の (D)(F) に 出てきたつなぎのビッドですね。

    A 9 5
    K J 2
    10 8 2
    K 8 4 2
    ( 11 HCP )
    PardRHOあなたLHO
    1 パス 2 パス
    2 パス2
    ―― はい。パートナーが 1 オープンしました。 11 pts あって,ハートをサポートできますが,ハートが 3 枚なので 初回は 2 と回り道。
     そして 次回に 2をビッドすると,こういう手だということが伝わります。

  2. [(D) の場合] ここでは  2 なのですか ? 3では いけませんか ?

    ―― 初回に 2 をビッドして  10+ pts であることが伝達済みですから,ここでジャンプする必要はありません。
    もしも,初回の回り道ビッドが 1 でしたら,ここで 3 とジャンプします。

  3. [(F) の場合] すると,13+ pts で回り道した場合には, ここで 3をビッドするのですね ?

    ―― いいえ。ジャンプして 4 をビッドします。


リバースに答える

  1. [リバースは 1 回フォーシング] さっきの リバースの 話 (オープナーの リバース) では,オープナーは  16,17〜21 pts を 持っている … ということでした。
    リバースの上限がそんなに高いとすると,レスポンダは 必ず何かビッドしなくてはいけませんね。たとえ  6 pts ぎりぎりであっても, オープナーの手によってはゲームがあるのですから …。

    ―― はい。そこで,リバースを 1 回フォーシングに取り決めます。 レスポンダは,オープナーまで ビッドの順番が回るようにしなければいけません。

  2. [レスポンダの手の強弱] レスポンダは,強い手なら いろいろビッドできるでしょうが,弱い手の場合には どう ビッドすればよいのですか ?

    ―― その前に, 「強い」/「弱い」の基準を はっきりさせる必要があります。

  3. [ルールオブ 9] どんな基準で判断すれば ?

    ―― だいたい,8〜9 pts が境目です。
    なぜなら,9 + 16 = 25 pts となるからです。
      9 pts 以上の手では,オープナーが (リバースする) 下限でも 何かゲームがあります。
      9 pts 以下の手では,オープナーが下限ならば ゲームはありません。
    この 9 という数字は中途半端で忘れやすいので,ルール・オブ 9 とでも呼んで,覚えておくのがよいでしょう。

  4. [弱い手で答える] それで,弱い手の場合には どういうビッドを …。

    NorthEastSouthWest
    1 パス 1 パス
    2 パス?
    ―― 次の 4 通りのビッドが どれも弱い手を伝えます。
    分かりやすいように,さっきのビッド経過 (再掲) 見ながら説明しましょう。
     [1]  自分のスートを もう一度ビッドする (2)。
       これには  5 枚必要です。
     [2]  2NT をビッドする。これには,第 4 スート() にストッパが必要。
     [3]  パートナーの 第 1 スートを 3 枚でサポートする (3)。
     [4]  パートナーの 第 2 スートを 4 枚でサポートする (3)。
     リバースは アンバランス・ハンド (および セミ・バランス・ハンド) で使います。
    したがって,パートナーは 第 1 スートに 5+ 枚,第 2 スートに 4+ 枚を保証します。 そこで 第 1 スート () のサポートは,3 枚あれば十分です。
    ただし,第 2 スート () は 4 枚が普通なので,3 枚でサポートしてはいけません。

  5. [カードの枚数に注意] ずいぶん 枚数に気を遣うのですね。

    ―― はい。自分の手を見ていると,弱い手なので どうビッドしても違いが無いように見えます。
     けれども,オープナーは 強い手を持っていて なんとか切り札のフィットを見つけようとしています。 ですから,枚数の情報を正確に伝えることが,ここではとくに大切です。
     枚数の情報が正確に伝わると,オープナーが最強の手を持っている場合には,最適のコントラクトを すぐに見つけられます。

  6. それでは,「強い」手の場合には レスポンダはどうビッドするのですか ?

    ――「強い」手の場合には,いろいろなビッドが可能です。
    でも,考えた結果が「弱い」手のビッドと重ならないように注意が必要です。
    これが 案外に難しい …。

  7. [強い手の場合] どうして難しいのですか ?

    ――「強い」手だと言っても,それは パートナーが リバースした状況だから そう言えるのであって, 自分の手だけを見ていれば (9+ pts なので),そんなに強い手には とても見えないからです。

    K 9 4 3
    J 5
    K Q 7
    10 9 5 3
    ( 9 HCP )
    NorthEastSouthWest
    1パス 1パス
    2パス?
     ですから パートナーの手がどんなに良い手であるかを想像して,ビッドする必要があります。

  8. たとえば … ?

    ―― レスポンダ South がこの手を持っていて,さっきのようにオークションが進んだ[再々掲] としましょう。
    この手では,2NT では なく  3NT をビッドします。


自分の長いスート (6+ 枚) を リビッドする

  1. [長いスート] 今度は,レスポンダが長いスートを持っている場合ですね。
    K 3
    Q J 6 4 3 2
    9 6 5
    J 9
    ( 7 HCP )
    PardRHOあなたLHO
    1 パス 1 パス
    1 パス2
    K 3
    A J 6 4 3 2
    9 6 5
    J 9
     ( 9 HCP )
    PardRHOあなたLHO
    1 パス 1 パス
    1 パス3
    K 3
    A J 6 4 3 2
    K 6 5
    J 9
    ( 12 HCP )
    たとえば,こんな手を私が持っている …。

    ―― はい。そういう弱い手の場合から …

  2. [6〜9 pts] この場合は簡単です。私の手は, ハート以外に取り柄がありません。
     ですから,パートナーが何をビッドしても,もう 1 回ハートをビッドします。

    ―― その通りです。
    では,あなたの手が少し強くて,10〜12 pts の場合には どうしますか ?

  3. [10〜12 pts] その場合には,2ではなしに 3ビッドして, パートナーをゲームへ誘います。

    ―― はい。では,あなたの手がもっと強くて 13+ pts の場合には ?

  4. [13〜 pts] この場合には …。ここで もしも 3ビッドすると, パートナーは最低限のとき パスしてしまう。
    でも,ここでは 3NT とか 4のゲームがあるはず …

    ―― はい。その通りです。
    ですから,ここでは フォーシングのビッドが必要です。

  5. [ゲーム・フォーシングのビッド] 何をビッドすれば ?

    PardRHOあなたLHO
    1 パス 1 パス
    1 パス2
    ―― ここでは 2をビッドします。
    この 2は,ダイヤモンドについては何も保証せずに,「ゲームがある」ことだけを伝えます。
     これは,「第 4 スートフォーシング」と呼ばれる コンベンションです (詳しくは,リンク先をお読み下さい)
    PardRHOあなたLHO
    1 パス 1 パス
    1 パス 2 パス
    (何か) パス3
     2は ゲーム・フォーシングなので,パートナーは何かのビッドを捻り出しますが, そこであなたが 3 をビッドすると, 上のような手であることが正確に伝わります。
     この例から分かるように,
    強い手では,なるべくビッドの余地を残す.
    ことは,ブリッジのビッドで重要な考え方です。
     面白いことに,2, 3 の どちらよりも低い 2が ゲーム・フォースしています。

1NT へのフォーシング

  1. [表題の意味] この表題は どういう意味ですか ?

    ―― こういう状況です。
    オークションが 右のように進みました。

    PardRHOあなたLHO
    1 パス 1 パス
    1NT パス?

    パートナーの手は,
       13〜15 pts のバランス・ハンドです。
        スペードも ハートも 3 枚以下です。
        ダイヤモンドは 4 枚以上でしょう。
    オープナーが このように手の強さを狭く限定したので, あなたのビッドは, ほとんどが ノン・フォーシングです。
     あなたが何をビッドしても,ほとんどパスされてしまいます。

  2. [強い手のレスポンダ] 「のれんに腕押し」ですね。 でも レスポンダの手が強くて, ゲームがありそうな場合には,それでは困ります。

    ―― そこで,フォーシングのビッドをする必要があります。
    そのための ゲーム・フォーシングとして,リバース または ジャンプ・シフト使います。

  3. [レスポンダのリバース]「リバース」というのは, 上の場合には  2ですか ?

    K 8 3
    A J 6 3 2
    9
    K J 10 6
     ( 12 HCP )
    PardRHOあなたLHO
    1 パス 1 パス
    1NT パス 2
    ―― はい。そうです。
    は,レスポンダの第 1 スート より 高位のスートなので,2は リバースです。
     たとえば 右の手では,4,3NT を期待できます。
    そこで 2 をビッドします。
     この場合,スペードが 4 枚の必要はありません。
    単に「ゲームがあるよ」と伝えるために,スペードで リバースしています。

  4. [レスポンダのジャンプ・シフト] ここでは, ジャンプ・シフトして 3でもよいのですか ?

    ―― はい。それも ゲーム・フォーシングです。
    ただし 今の場合には,2 の方が低い代でフォーシングできます。

  5. [NMF] なお,こういう状況で使える コンベンションとして,ニューマイナー・フォーシング(NMF) というコンベンションがあり,これを使うと, 1 回のフォーシングを掛けることができます。 こちらは ゲーム・フォーシングではなく, 1 回限りのフォーシングです。


ディフェンス側のビッド

  オーバーコールとダブル    …   50.
 ディフェンス側が対抗する手段としては,
    (A) オーバーコール
    (B) ダブル
の 2 種類があります。
 この 2つは,手の強さに 違いがあります。
スートでのオーバーコールは,上限 16〜17 pts までの手で使います。
一方,ダブルには
  (B1) テイクアウト・ダブル ( 〜16 pts,DP で数えて)
  (B2) 強い手のダブル (16+ pts 上限無し,LP で数えて)
の 2 種類があり,(B2) には上限がありません。
(B1) と (B2) は 外見では区別できませんが,その後の ビッド経過から どちらであるかが判明します。
オーバーコール
   オーバーコールの考えかた.   …     51.
   1 の代と 2 の代を分けて考える.   …     52.
   1 の代の オーバーコール.   …   53‐54.
   2 の代の オーバーコール.   …   55‐56.
   オーバーコールに答える.  …   57‐59.
   スート・オープンに対する NT オーバーコール.   …   60‐61.


オーバーコールの考えかた

  1. [オーバーコールの強さの基準] パートナーがオーバーコールしたとき,何点くらい持っていると思ったらよいでしょうか ?

    ―― オーバーコールする人の手の強さの範囲は とても広いので,アドバンサは どれくらいの強さなのか分からなくて 苦労します。
     JCBL 発行の講習会テキスト,小林淳三「 5 枚メジャー基礎コース」の 108 ページに 明快な答が書かれています。

     1 の代のオーバーコールに対して
    オーバーコーラーの強さを 10 pts と仮定します.
     2 の代のオーバーコールに対して
    オーバーコーラーの強さを 12 pts と仮定します.
    (注) オーバーコーラー (オーバーコールする人) のパートナーを アドバンサ (Advancer) と呼びます。 オーバーコールを前進 (Advance) させる人 という意味です。

  2. [細かい取り決めの有無] オープン側は, 点数の細かい取り決めがあるので,それに従ってビッドできます。 ディフェンス側には,それに相当するシステム無いのでしょうか ?

    ―― ディフェンス側に 細かい取り決めは ありません。 ディフェンス側にシステムが存在しないのは, ビッドの目的が両方の側で全く異なるためです。

     オープン側は,とにかくオープナーが平均以上の強さを持っているので,できることなら ゲームやスラムを目指します。
    ビッドのシステムは,この目的に沿って建設的に組み立てられています。

     一方,ディフェンス側に,スラムはほとんど考えられません。
    ゲームの可能性も低い。 何しろ 相手が 13+ pts を握っていますから。
     そのため,パートスコアの競り合いになることが多くなります。
     相手側にゲームがある場合でも,スラムを見つけにくいように競り上げる (破壊的) とか,オープニング・リードの希望を パートナーに伝えて,相手のコントラクトをダウンさせる … というのがビッドの目的に入ります。

「ビッド練習」(オーバーコール / ダブル) #1, #2, #3.

1 の代と 2 の代を分けて考えよう

  1. オーバーコールがそういうふうに考えるものだとしても,…。
    具体的にどんな手で どんなふうに オーバーコールしてよいのか …。

    ―― オーバーコールの基準は,先ほど出てきたように,プリエンプト (すなわち,ジャンプする) オーバーコールを除くと,
        1 の代 = 5+ 枚の良いスートと 10+ pts,
        2 の代 = 6+ 枚の良いスートと 12+ pts,
    です。
    ここで「良いスート」とは,絵札 5 枚 (A K Q J 10) の中の 3 枚です。
    これが 一応の 基準です。

  2. [基準からの外れ] でも,実際には この基準から外れていても オーバーコールすることがあるようですね。 それで 分からなくなってしまうのです。

    ―― 手の強さで分けると,上の基準になりますが,実際には,1 の代と 2 の代を明確に区別して考える必要があります。

      1 の代: 上の基準から外れていても,しっかりしたスートならば遠慮無くオーバーコールしてよい。
      2 の代: なるべく上の基準を守るようにする。
    とりあえず,このように はっきり区別して下さい。

  3. [安全さの違い] なぜ,オーバーコールの代によって分けて考えるのですか ?

    ―― オーバーコールの「安全さ」から この区別を言い換えることもできます。
     1 の代のオーバーコールにペナルティー・ダブルがかかることは,まずありません。たとえ ペナルティー・ダブルがかかってダウンするとしても,その被害は僅かであって,相手側にゲームが あるような場合には,こちらが却って得になります。
     ところが 2 の代のオーバーコールは,ダブルを掛けられて ダウンすることがあります。 相手側が切り札のフィットを見つけられずに困っているところへ不用意に 2 の代で割り込むと, ダブルを掛けられて 餌食になることが あります。この場合の被害は大きい。


1 の代のオーバーコール

  1. [ 1 の代の実例] それでは,とりあえず,1 の代のオーバーコールの 見本を いくつか見せていただけませんか ?

    ―― はい。
     1 の代のオーバーコールというのも,慣れないうちは判断がむずかしくて, 「HCP が足りないから」と パスしてしまうことが よくあります。
    オープンできない手でも,オーバーコールできる手は,たくさんあります。

    交流ラウンジのブリッジ教室で,1 の代でオーバーコールできる ところをパスしてしまった例を,いくつか 見てみましょう。

       [1] 1〜1オープンに 対して,迷わず 1 オーバーコールします。
     とくに,オープニング・ビッドが 1 の場合には,スペードでのオーバーコールは効果があります。
     弱い手のレスポンダが 何もビッドできなくなってしまうからです。
    K J 7 6 2
    10
    A 6 4 2
    9 8 3 ( 8 HCP )
       [2] 1, 1 オープンに 1 オーバーコールします。
     この手から見ると,相手側に いろいろなコントラクトが考えられます。マイナー・オープンなので NT も有力です。 ここで 1ビッドすると, 相手側が  のフィットを見つけられないとき,3NT に行きづらくて, のパートスコアに 止まる効果を期待できます。
    K 8 7
    A J 7 4 3
    10 7 2
    5 3 ( 8 HCP )
       [3] ここでも  1 オーバーコールします。
    もしもパートナーの手に J  が あれば,相当に強い切り札です。HCP だけに注目するのではありません。
    J  には ほとんど 値打ちがありません。
    9 8
    Q 10 9 3 2
    J 5 4
    A K 6
    ( 10 HCP )
       [4] 1 オーバーコールします。
    8 HCP ですが,5‐5 という形は強力です。 には絵札がありません。絵札が 2 スートに集中している 5‐5 の手は,見かけよりずっと強く,トリックを取るパワーがあります。
    Q J 8 3 2
    8
    7 6
    K Q 9 8 7
    ( 8 HCP )
       [5] このくらいの手でも 1 オーバーコールします。 もしも 左オポがディクレアラーになれば,パートナーから
    を打ってもらえます。
    A K 7 6 4
    9 2
    9 8 7 4 3
    9
     ( 7 HCP )

  2. でも,この最後の [5] の手だと,パートナーが を 3 枚持っていて,6 pts くらいのとき 2 に上げるはずです。
    そうすると  2 は ダウンしますね。怖いです。

    [5] のパートナー
    Q 10 3
    A Q 4
    K 10 5 2
    5 3 2
    ( 11 HCP )
    ―― 実際には,このとき パートナーの手は右のよう だったので,2 をビッドしました。 そして,ダイヤモンドが活きて,ジャストメイクしました。
     でも,おっしゃるように ダウンすることもありえます。
    だからと言って,そんなに心配する必要はありません。

  3. [ダウンする危険性と損得] どうしてですか ?

    ―― もしもひどくダウンするようなら,相手側にゲームがあります。
    バルネラビリティーにも依りますが, 2 ダウンとか 3 ダウンとかで止まるのなら,相手にゲームを作られるよりも得です。
     ですから 逆に言うと,オーバーコールするときには,HCP よりも 確実にトリックを取れるパワーが 重要です。HCP が少なくても,絵札と中堅カードが特定のスートに集中していれば,オーバーコールできます。

  4. ということは …,オーバーコールというのは,場合によってダウンすることを覚悟の上での ビッドなのですか ?

    ―― はい。その通りです。
    ダウンしたときの損害があまりにも大きいようなら,避けるべきです。

     なお,4 枚の非常に良いスートで ( 1 の代で) オーバーコールすることがありますが, これについては 後篇 で説明します。
     また,ディフェンス側の気持ちは,手の形と強さ 並びに ビッド経過により かなり変化します。 これについても,ちょっぴり触れます。


2 の代のオーバーコール

  1. [自分でもオープンできたはず …] では次に,2 の代のオーバーコール …。

    ―― こちらの方は,状況によって複雑で,簡単には説明できませんが,ひとつだけ 説明しておきましょう。それは,2 の代でオーバーコールするような手は, 原則として自分でもオープンできるということです。

  2. 確かに,上のオーバーコール基準は  2 の代で 12 pts となっているから
    ほぼ オープンできる手ですね。

    ―― ですから 自分でオープンしようと思っているところへ,相手方に先取りされてしまった … と いう場合には,2 の代のオーバーコールを検討します。

  3. [ 2 の代の実例] そういう実例はありますか ?

    J 9
    9 2
    Q J 8
    A K J 7 3 2
    ( 12 HCP )
    ―― たとえば,こんな手です。
       [1]  カードを見ると,12 HCP の良い手です。
    これなら 1 で オープンできると内心喜んでいたら,右オポさんが 1 オープンしました … ちょっとがっかり。
    でも,ここで  2 オーバーコールします。
     また,
    A 10 6
    A Q J 8 2
    10 8 7
    8 3
    ( 11 HCP )

       [2]  この場合には,1 オープンに対して  5 枚のハートで 2 と応戦します。 自分でオープンできる強さを欠いていますが,オーバーコールは十分にできます。

  4. [ 5 枚でも] 上の基準では 6 枚となっていますが,5 枚でもよいのですか ?

    ―― ハートの中身がしっかりしているこの手では,5 枚でも構いません。
    ただし,いつでも 5 枚でよいと思っていると,思わぬ落とし穴に落ちることがあります。

  5. [危険な場合] どういう場合ですか ?

    ―― オープン側の切り札が確定している状況では,2 の代のオーバーコールは 割合に安全です。 なぜなら,相手は 自分たちでコントラクトを取ろうとビッドするからです。
     ところが,オープン側の切り札が確定していない状況では,不用意な 5 枚スートを持って  2 の代で のこのこと 割り込むと,相手は 「ダブルを掛けて落とそう」と考えるかも知れません。

  6. [のこのこの例] たとえば,どんなふうに ?

    LHOPardRHOあなた
    1 パス 1 ?
    ―― オークションが このように進みました。
    相手方の切り札は 未確定です。
     ここで あなたがビッドする番です。
    もちろん,上のような しっかりした手 [1] や [2] を持っていれば,ここで それぞれ 2, 2 とオーバーコールできます。
    けれども,
    8 3
    K J 8 4 2
    Q 9 7
    A J 6
    ( 11 HCP )

       [3]  このような 5 枚スートでは,同じ 11 HCP でも危険です。
    ちょっと考えてみて下さい。あなたの左側に座っているオープナーは 13+ pts を持っています。 あなたの K と J の少なくとも片方は,左オポの手で確実に討ち死にするでしょう。
     2 の代のオーバーコールには,こうした配慮も必要です。

  7. [状況によって複雑] 最初の説明で,状況によって複雑と いうのは,そういう意味だったのですか。

    ―― はい。2 の代のオーバーコールには,こういう問題があるので,「経験から学ぶ」という 要素が強いのです。

  8. [ 1 の代では] 同じようなことは,1 の代でも必要ですか ?

    ―― いいえ。1 の代では,そういう配慮は不要です。


オーバーコールに対する答えかた

  1. [サポートが重要] オーバーコールの仕方までは,何となく分かりますが,パートナーのオーバーコールに対しては,どう考えたらよいのでしょうか ?

    ―― オープン側のビッドと大きく違うのは
        サポートがあったらすぐにサポートする
    という点です。
    競り合いを重視する現代のブリッジでは
        サポートがあれば サポートする (Support with support)
    が重視されています。

     オープナーが何かのスートをビッドしたとき,レスポンダはそれをサポートするだけの十分な切り札があっても,すぐには サポートせず,新しいスートをビッドすることがあります(回り道のビッド)。それは,二人だけでビッドして 最適のコントラクト (場合によってはスラム) を見つけるためです。

     けれども オーバーコールの場合には,両方が激しく競り合うので,自分たちの切り札を先に 見つけた側が,圧倒的に有利な立場に立ち,ビッドの代を競り上げることができます。
     ですから,オーバーコーラーのスートが 3 枚以上あったなら, アドバンサは 「直ちにサポートする」ことを考えます。 「自分にも 5 枚のスートがあるから それをビッドする」という考え方は, 原則として,危険です。
     パートナーは,あなたのスートを 1 枚も持っていないかも知れません。 3 枚もサポートがあれば,合計 8 枚ありますから,切り札として不満はありません。切り札が確定すれば, オーバーコーラーは強気でビッドを競り上げることができます。

  2. [サポートの基準] オーバーコールをサポートする基準は,どんなふうに考えたらよいでしょうか ?

    ―― 人によりさまざまで,オープン側のようにきちんとした点数の基準はありません。ひとつの目安を下に書いておきましょう。 これが絶対ということではありません。
     なお,ここでの「点(pts) 」は,ダミー点 (DP) で数えた点数です。
       (a)  6 ‐11 pts 切り札 3 枚 または 4 枚 ⇒  シングル・レイズ
       (b) 12 ‐14 pts 切り札 4 枚      ⇒  ダブル・レイズ
       (c) 12+ pts ⇒ キュービッド (オープナーのスートをビッド)

  3. [1NT] サポートできない場合には,どうすれば ?

    ―― サポートできない場合でも,ビッドできることがあります。
    ノートランプです。
       (d) 8-11 HCP で,相手方スートにストッパを持つバランス・ハンド
                ⇒ 1NT をビッドします.

    A J 5
    6 4
    K 10 9 3
    J 7 3 2
    ( 9 HCP )
    LHOPardRHOあなた
    1 1 パス 1NT
    たとえば こういう手を持っていて,パートナーが 1 オーバーコールしました。 ここで 1NT をビッドします。仮に右オポが 1 をビッドした場合でも, スペードが止まるので,やはり 1NT をビッドします。
     この 1NT という返事は,手の と狭い 範囲 とを 1 回のビッドで 同時に伝える良いビッドであり, 以後のパートナーの判断の良い助けになります。
     ただし,1NT は忘れやすいコールなので,注意が必要です。

  4. [2NT] その場合  2NT をビッドするには,どのくらいの強さが必要ですか ?

    ―― 12〜14 HCP です。でも,現在ではそのような手は キュービッド (2) により対応します。 1NT の場合だけ 気をつければよいでしょう。

  5. [新しいスート] サポートできない場合,自分の手が良ければ,新しいスートをビッドすることもあると思います。 その場合,新しいスートをビッドするのはフォーシングでしょうか ?

    ―― オープニング・ビッドに対する返事で 新しいスートはフォーシングです。
    しかし,オーバーコールの場合には,単に ノン・フォーシングお誘いです。
    つまり,アドバンサが新しいスートをビッドした場合,オーバーコールした人は,そのスートに 3 枚以上あれば 1 つ代を上げてサポートしますが,無ければパスして構いません。
     なお,下記「25」の本では フォーシングを採用しています。
    しかし,フォーシングに取り決めると,オーバーコールがしづらくなって ややこしい。
     オーバーコールの一つの目的が 積極的介入なので,ノン・フォーシングにしておかないと,その意味が薄れます。

  6. [キュービッド] それでは,アドバンサの手がとても強い場合には,どうするのですか ?

    ―― その場合には,(c) キュービッドします。
    なお,ここでは 上のように場合を分けて説明しましたが,慣れてくると,
    (a) と (d) 以外は,全部 (c) キュービッドで処理します。
     しかし,キュービッドというのは分かりにくいので, オープン側のキュービッドの後に これを覚えていただくのが良いと考えて, キュービッドの説明を 続編 に回しました。

  7. リファレンス
    • David Lindop: "What's Standard ?" (2007) [PDF]
      #24 (Simple Overcall), #25 (Responding to a Simple Overcall).
    •  Barbara Seagram & Marc Smith: "Bridge: 25 Ways to Compete in the Bidding" (Master Point Press, 2000),
       Chap. 3, Responding to Overcalls Without Support.
      この本では,キュービッドの使用を「切り札のサポートがある場合」に限定しています。 このため,新しいスートを持つ強い手で キュービッドは許されない。そこで 新しいスートをフォーシングに取り決めます。
       ややこしいので,この取り決めは お勧めしません。
「ビッド練習」#1, #2.

スート・オープンに対する NT オーバーコール

  1. [ 1NT オーバーコール] 1 オープンに対して 1NT オーバーコールするのは,どういう場合でしょうか ?

    ―― 普通に 1NT オープンできる 15〜18 HCP のバランス・ハンドです。
    もちろん, のストッパが必要です。

    一般に,バランス・ハンドでのオーバーコールは

    15〜18 HCP ⇒ 1NT,
    19〜20 HCP ⇒ ダブルの後,最低限の NT,
    21〜23 HCP ⇒ ダブルの後,ジャンプして NT,
    となっています。
    K 10 8 2
    K 3 2
    A 4
    A Q 10 8
    ( 16 HCP )
    たとえば 右の場合,1 に 1NT オーバーコールします。

  2. [ストッパの枚数] ハートのストッパは,1 枚でよいのですか ?

    ―― はい。1NT の場合,1 枚あれば 十分です。

  3. [ウィーク 2 に対する 2NT オーバーコール] それでは 2 オープン (Weak 2) に対して,2NT オーバーコールするのは,どういう場合でしょうか ?

    ―― それも 上と同じです。
    15〜18 HCP のバランス・ハンドで,ウィーク 2 に 2NT オーバーコールします。 もちろん, に確実なストッパが必要です。
    この 2NT は,Unusual 2NT ではありません。

  4. [ダウンが怖い] でも,2 でオープンした人は,6 枚の良い を持っているはずです。そこで 2NT をやっても, ダウンする危険がありますね。ちょっと怖いです。

    ―― 2NT をビッドしたからといって,それが最終のコントラクトになるとは限りません。 あなたが 2NT オーバーコールすれば, どんな手を持っているかが パートナーに とてもよく伝わります。あとは パートナーに判断してもらえばよいのです。怖がってパスしたのでは, あなたがどんなに良い手を持っているのか パートナーは 全然分かりません。

  5. [強いバランス・ハンド] 1 オープンに対して,20 HCP くらいのバランス・ハンドを持っている場合には,どうビッドしたらいいですか ?

    ―― 19〜20 HCP のバランス・ハンドでは,ダブルを掛けます。そしてその次に 1NT を (それが不可能ならば 2NT を) ビッドします。

  6. [ステイマン] 1NT オーバーコールの後で,アドバンサは ステイマンやトランスファを使えますか ?

    ―― たとえば,オークションが

    LHOPardRHOあなた
    1 1NT パス?
    と進んだ場合です。

     使う (Systems On) という取り決めと,使わない (Systems Off) という取り決めがありますが, On にするのがよいと思います … 新しいことを覚える必要が ありませんから。
     この場合,2 は ステイマンになります。また,ジャコビ・トランスファを使っていれば,2 は,キュービッドではなく,2 へのトランスファを要求するビッドになります。

  7. リファレンス

ダブル

  テイクアウト・ダブル.  …  62‐64.
  強い手のダブル.  …  65‐68.
  ダブルに答える.  …  69‐72.
  ペナルティー・パス.  …  73‐74.
  ダブルした人の次回のビッド.  …   75.

テイクアウト・ダブル

  1. [テイクアウト・ダブルの強さ] パートナーが,テイクアウト・ダブルを掛けました。 何点くらいを期待できますか ?

    ―― テイクアウト・ダブルをコールする人は,オープンできるくらいの強さを持っています。 ですから,ダミー点で数えて 13+ pts を期待できます。

  2. [手の形] スートの内容は ?

    ―― この条件は 特に重要なので,表にしましょう。

    相手側がビッドしていないスート 手の形

    3 スートの場合 その 3 スート すべてに 3+ 枚持っている.
    2 スートの場合 その 2 スートの 両方に 4+ 枚持っている.

  3. [なぜ重要か] この表が特に重要というのは,なぜですか ?

    ―― テイクアウト・ダブルの条件は,2 つあります。
       (1)  手の強さ,
       (2)  手の形,
    この 2 つです。
     強さ (DP で数えて 13+ pts) の方は,時と場合により 多少割り引いてダブルすることがある。 けれども (2) 手の形の方は,絶対条件です。こちらの条件は,絶対に守ります。

  4. [ダブルの例] テイクアウト・ダブルの例を見せていただけませんか。

    K J 10 9
    Q 7 4 2
    J
    A K 6 5
    ( 14 HCP )
    RHOあなたLHOPard
    1 X
    ―― はい。例として この手を考えてみましょう。
    これは (1)自分でもオープンできる手ですが,右オポが 1 オープンしました。
     5 枚のスートを持っていないので,オーバーコールはできません。
     けれども,強さの条件を満たしているし,ダイヤモンド以外の 3 スートがどれも 4 枚なので,(2)形の条件も満たしています。
    そこで,テイクアウト・ダブルします。
    これは,理想的なテイクアウト・ダブルです。

  5. RHOあなたLHOPard
    1 X ?
    [形の条件が重要] では,同じ手で,オープニング・ビッドが 1 の場合には,どうでしょうか。

    ―― この場合には, が シングルトンなので,手の形の条件が満たされていません。ここで無理にダブルを掛けると,パートナーからは (非常に高い確率で) が返ってくるでしょう。
    そこから何かをビッドするだけの 強さ (下記,16+ pts) を,この手は持っていません。
    したがって,6 枚のダイヤモンドを切り札にして,2 をプレイする結果になります。 これには,パートナーも不満でしょう。パートナーシップを損なうかも知れません。

  6. [ダブルしては いけない場合] ということは,こういう場合に 上の手でダブルしては いけないのですね。

    ―― はい。せっかく自分でもオープンできる手だと喜んでいたのに,残念ですが, ここでは パスするしかありません。

  7. [もったいない] それでは,ずいぶん もったいないですね。

    ―― はい。ここは,涙を呑んでパスします。
    これを救う手段として,バランシングという手法があります。
    初級を一通り終えてから,バランシングをお読み下さい。

  8. [パスした人のダブル] 最初にパスした人が,テイクアウト・ダブルを 掛けることもあるんですか ?

    ―― はい。あります。

    J 10 4 2
    A 10 8 3
    8
    K Q 9 8
    ( 10 HCP )
    あなたLHOPardRHO
    パスパスパス1
    ?
    たとえば,あなたがこの手を持っていて …
    この手は 10 pts なので,オープンできません。パスします。
     でも,オークション 一回り 進んで こうなりました。
    こんどは,自分がダミーになったつもりで点数を数えます。ダイヤモンドのシングルトンが, ダミー点で 3 点になるので,
         10 HCP + 3 DP = 13 pts
    という基準を満たします。テイクアウト・ダブルの見本のような場合です。
     この例から分かるように,テイクアウト・ダブルとは,自分がダミーになるつもりで する ビッドです。そういう訳で,手の形 の条件は必須です。


強い手のダブル

  1. [強い手]「強い手のダブル」というのは,どのくらい強いのですか ?

    ―― この 強さ の基準は,人により さまざまです。混乱があるようです。
    ここでは,とりあえず 尋常の強さではない と了解してください。

  2. [やさしい復習] それでは 全然分かりません (笑)

    ―― このときの判断の目安になるのが,強いバランス・ハンド を持っていて, ダブルを掛ける場合です。

    K 10
    A Q 8 2
    K Q 4
    A J 6 3
    ( 19 HCP )
    RHOあなたLHOPard
    パス 1 パス 1
    パス 2NT

    分かりやすいように,標準のビッドを復習しましょう。

  3. この復習は 簡単です。
    これは  18〜19 HCP のバランス・ハンドです。
    1 オープンします。 パートナーから 1 が返ってくれば,ジャンプして 2NT をビッドします。

    ―― それでは,同じハンドで 右オポが 1 オープンした場合には どうするか ?

  4. RHOあなたLHOPard
    1 X パス 1
    パス 1NT
    これも,復習ですね。さっき 説明がありました。
    19〜20 HCP のバランス・ハンドでは,ダブルを掛けて 次回に NT をビッドすると …。
     パートナーからの返事が 2 以上の代 (たとえば 2) ならば,2NT をビッド …。

    ―― この ダブル が「強い手のダブル」の出発点です。
    ひとまず,この強さを記憶して下さい。

  5. 確かに,この強さは尋常では ありません。
    自分ひとりで 40 HCP の約半分を握っています。
     バランス・ハンドでは,HCP のパワーだけでトリックを取ろうとするから, これだけの強さ (19 HCP) が必要なんですね。
     それでは,5 枚以上のスートを持つ「強い手」とは …。

    ――「約半分の強さ」は,バランス・ハンド以外にも共通に要求されます。
    こんな基準が良いと思います。

    強い手のダブルの基準
    (バランス・ハンド以外)

    6 枚の良いスート ⇒ 16+ pts.
    5 枚の良いスート ⇒ 18+ pts.
     この基準では,スート・オーバーコールの上限が  17 pts となります。  

    [補足] 実際には,5 枚のスートで 16+ pts という人が多いようですが,それでは 緩すぎます。 とにかく バランス・ハンドの場合に必要な強さに準じて考えます。

  6. これはまた,厳しい基準ですね。

    ―― たしかに 厳しいです。
    Mike Lawrence は,"Compete Book on Takeout Doubles" (1994) という著書の中で,一般論だが … と前置きして,
      「自分からビッドできるスートが 1つで 17 HCP 以下のハンドでは,
       ダブルではなく,オーバーコールしなさい」
    と勧めています (p. 28)。

  7. [例] そうすると,強い手のダブルの見本は ?

    K 6 2
    A K
    A K J 10 9 4
    10 2
    ( 18 HCP )
    RHOあなたLHOPard
    1 X 2 パス
    パス 3
    ―― この手なら,強い手のダブル …。
    そして,次回は,雨が降ろうが槍が降ろうが 3
    右オポが もしも 3 なら,4
    あなたのこのビッド 3 を聞いたパートナーは, さっきの X の真の意味を知ります。

  8. そういうことでしたら,「強い手のダブル」というのは 滅多に使わないのですね。

    ―― はい。伝家の宝刀かな。
    頻繁に抜くと,切れ味が鈍ります。

  9. [ダブル/オーバーコールの選択] 私は こんな手を持っています。
    9 3
    K Q 8 6 3
    A 3
    A Q J 9
    ( 16 HCP )
    LHOPardRHOあなた
    パスパス1?
    オークションは このようになりました。
    ここでは,2 と ダブルのどちらがよいでしょうか ?

    ―― 16 HCP で 5 枚の ですね。
    2が良いと思います。 ハートはメジャースートだし,パートナーに 3 枚でサポートしてもらえるかどうかがすぐに分かります。
     もしもサポートが無ければ ゲームが無いこともすぐに分かります。

  10. [予想される展開] ここで ダブルすると,どういうことになりそうですか ?

    ―― (幸運にも左オポがパスしたとして) パートナーからの返事は,2の確率が高いです。そこから こちらが 2 といけば良い方で,実際には,左オポが 2 を コールすれば, パートナーがパス。これでは,パートナーがハートを 3 枚持っていても それが隠れてしまいます。

    LHOPardRHOあなた
    パス パス 1 X
    パス 2 パス 2
        
    LHOPardRHOあなた
    パス パス 1X
    2 パス 3 ?

  11. [一歩出遅れ] ダブルを掛けると,一歩出遅れると …。

    ―― はい。その通りです。
    自分では,強い手だと自慢してダブルします。
    けれども,ビッドの上では,「一周 出遅れ」になります。
         一周 出遅れても,そこで自分のスートをビッドできる
    のが,強い手 のダブルです。
    「こちらがコントラクトを勝ち取るぞ」という宣言のようなものです。

  12. [非常に強い手] ところで,もしも ものすご〜く強い手の場合には,どうビッドしたらいいんでしょうか ?

    ―― どのくらい強い手 ?

  13. J
    A 3
    A K Q J 10 5
    A K J 6
    ( 23 HCP )
    RHOあなたLHOPard
    1 X パス 2
    パス 2 パス 2NT
    パス 3
    [夢のハンド] たとえば  2 オープンできるくらいの手だったら …。

    ―― めったにありませんが,そういうものすご〜い手の場合には,ダブルから入ります。
     そして  2 回目にも手の内を示さず キュービッド 2 3 回目に やっと 自分のスートを示します。
    レスポンダの 2,2NT はつなぎのビッドですが, あなたの 3 を受けて,スペードのストッパがあれば,3NT をビッドしてくれるはずです。
     右オポがオープンしたので,スラムの可能性はありません。
     こんなことに出会うのは,たぶん無いでしょうが,でも万一のためには覚えておくとよいですね。

  14. [英語と日本語]「強い手」の 強さ というのが,よく分かった気がします。
    ところで,「強い手のダブル」は もともと 英語で何と言うのでしょうか ?

    ―― これに相当する術語は,英語には もともと 存在しないようです。
    上記 Lawrence の本の中を 隈なく探しましたが,見当たりません。
    単に "Double and then bid a suit" と書いてあります。
     テイクアウト・ダブル強い手のダブル という 2 種類のダブルを, 概念の上で区別することは,とても有益です。
     ここでは,日本語がカタカナ語に優越しています. … と言っても「ダブル」は英語ですが。


ダブルに答える

 今度は,アドバンサに回って,パートナーのダブルに答えます。
前にも説明したように,ダブルには
  (B1) テイクアウト・ダブル ( 〜16 pts,DP で数えて)
  (B2) 強い手のダブル (16+ pts 上限無し,LP で数えて)
の 2 種類があります。パートナーのダブルが このどちらであるかは その後のビッド経過から 自然に分かります。
  (B1) の場合,ダブルの後 (原則として) パートナーは 沈黙保ちます。
  (B2) の場合,パートナーは 自分のスートを示すか,あるいは あなたのビッドを強くサポートします。
 そこで アドバンサは,さしあたり (B1) を仮定してビッドします。
 アドバンサのビッドは 次のように分類できます。
  (1) 右オポがパスした場合,0 pts でも 何か ビッドする。
  (2) 右オポが何かビッドした場合.
    5 pts 以下では,パスしする。
    6+ pts では,ビッドしする (フリー・ビッド)。
  (3) ビッドする場合.
    自分の一番長い (ビッドされていない) スートをビッドする。
    10〜12 pts では,必ずジャンプしてビッドする。
    13+ pts では,オープナーのスートをキュービッドする。
  (4) 稀に,パスして相手方のコントラクトを落とす。
    これは ペナルティー・パス と呼ばれ,極めて稀に起こる。
「ビッド練習」#1, #2.

  1. [零点でもビッドする] テイクアウト・ダブルはフォーシングだから,右オポがパスしたら,必ず何かビッドしなければいけないんですね。

    ―― はい。
    これについては,ずっと始めの方で説明しました。
    その例をここに再掲すると,

    J 5 3
    10 7 4 2
    Q 10 8
    10 9 7
    ( 3 HCP )
        
    RHO passes
    RHOあなたLHOPard
    1 パス 2 X
    パス パス/2
    こういう 3 HCP のボロの手を持っていて,オークションが このように進んだとき,パスしてはいけない。自分の一番長いスートを 可能な限り低い代で (2を) ビッドします。
      これには 慣れる必要があります。
    上の「ビッド練習」を使って ぜひ 練習して下さい。
     ただし,0 点でも何かビッドするのは,RHO がパスした場合に限ります。
    RHO passes
    RHOあなたLHOPard
    1 パス 2 X
    パス 2
        
    RHO bids
    RHOあなたLHOPard
    1 パス 2 X
    2NT パス
    RHO が何かビッドしたとき,この位置でのパス以外のコールは フリー・ビッド (Free Bid) と呼ばれ, 6+ pts を示します。

  2. [10+ pts ではジャンプ]  次に 10〜12 pts ではジャンプとなっていますが,その意味は ?

    ―― テイクアウト・ダブルは 13〜16 pts の手を保証します。この上限の場合にゲームを逃がさないためには,アドバンサがジャンプして
        「10+ pts 持っていますよ」
    と伝える必要があるからです。
     例として この場合を考えてみましょう。

    LHOPardRHOあなた
    1 X パス 3
        
    J 4 3
    A 5 4 2
    Q J 5 4
    K 10
    ( 11 HCP )

    オークションは 左オポの 1 に始まり, パートナーがこれをダブルしました。
    11 HCP のこの手では,1 つ ジャンプして 3 をビッドします。

  3. [ジャンプは怖い] 確かに 理屈の上では,ジャンプが必要でしょう。
    でも なんだか怖いです。3 の代へピョーンと跳ぶのは。

    ―― はい。誰でも 最初は怖いです。
    これも 慣れが必要です。練習して下さい。
    もちろん,頭で考えればすぐに分かることです … ジャンプしないで 2ビッドすると,私の手は 0 点に見られても 仕方ありません。テイクアウト・ダブルとは そういうコールなんです。
     冷静に考えれば,ここであなたが 3 の代へ跳びこんでも,合計 13 + 10 = 23 pts あるので,コントラクトは成立します。

  4. [キュービッド] その次の「キュービッド」というのは ?

    ―― これは,二人合わせてゲームがある場合です。
     たとえば,上の手を少し強くして …

    J 4 3
    A Q 5 4
    Q J 5 4
    K 10
    ( 13 HCP )
    LHOPardRHOあなた
    1 X パス 2
    これなら,二人合わせて 13 + 13 pts あるので,ゲームがあります。
     ここであなたが単にジャンプすると (3をビッドすると) パートナーは 下限の場合にパスしてしまう。
     それを防ぐために,オープナーのスートで このように 2 をビッドします。これを 「キュービッド」と呼びます。

  5. [キュービッドの後] その後は どうビッドするのですか ?

    ―― パートナーのハートの枚数や,スペードのストッパの具合によって 4 とか 3NT を目指してビッドします。

  6. [NT] この他に ノートランプがありそうですね。

    ―― はい。標準的には,

    Q J 8 5
    Q 4
    J 9 7
    K 7 5
    ( 9 HCP )
    LHOPardRHOあなた
    1 X パス 1NT
      6〜10 HCP, ストッパあり ⇒ 1NT.
    となっています。
     ただし,ノートランプは ちょっと要注意です。
     たとえば こんな手ならば,上の場合に 1NT をビッドできます。 しかし,相手スートのストッパについては,よくよく注意が必要です。

  7. [ストッパに注意] あっ,そうですね。私のパートナーは テイクアウト・ダブルを掛けたのだから,スペードの枚数が少ない …
    たぶん,1 枚とか 2 枚。

    ―― このスペード 4 枚がダミー (パートナー) にあればよいのですが,今は その反対です。 その辺の位置関係まで頭に入れて,ビッドを選択しましょう。
      2NT の場合は,さらに条件が厳しいので
     11〜12 HCP, ダブル・ストッパあり,4 枚のメジャースート無し ⇒ 2NT
    とされています。


ペナルティー・パス (テイクアウト・ダブルをパス)

  1. 先日,わたしはこんな手を持っていました。ボロのスペードが 6 枚あります。 なんだか作った手のように見えますが,これが 実際にあったのです。
    9 7 6 5 4 3
    8 6
    10 6 3 2
    J
    ( 1 HCP )
    あなた LHO Pard RHO
    パス 1 X パス
    パス !

     オークションは,私から始まりました。何もビッドできる手ではないので,私はパスしました。 すると,バルの LHO が 1 オープンし,パートナーが それにテイクアウト・ダブルを掛けました。RHO はパス。そして 私に順番が回ってきました。

    ―― なるほど …。そこで何をコールしました ?

  2. 私の手は弱いけれど,スペードが 6 枚もあるからダウンできると思って,パスしました。

    ―― それで,その結果はどうなりましたか ?

  3. 結果は,1X が 3 メイクして  560 点取られました。

    ―― それは痛かったですね。4 をメイクされたのと(620点)大して変わらない失点です。 ダブルなしで 1 とか 2 を 3 メイクなら,140 点の失点で済んだでしょう。

  4. はい。ですから,私がパスしたのは間違いだったということは,結果から分かるのですが, でも こういう場合にどう判断したらよいのですか ?

    ―― 上の手で 1 をパスするのは間違いで,2 をビッドすべきです。
    でも,どう場合にパス (ペナルティー・パス) してよいか … という問題ですね ?

  5. はい,そうです。
    スペードに HCP をたくさん持っている必要があるのでしょうか ?
    でも,そういうことは ありえないように思うし …。

    ―― ペナルティー・パスするためには,確かに ある程度の強さが必要です。
    でも,その前に全体の状況を復習しましょう。
     LHO の 1 は,オープンできる強さと 5+ 枚のスペードを保証します。
     これに対して,パートナーのダブルは,やはり オープンできる強さと,短いスペードを保証します。
    つまり,LHO は スペードを中心として強いカードを持っている。
    それに対して,パートナーはスペード以外のスートに強さを持っている。
     コントラクトが 1 だとして,パートナーの強いカードで有効にトリックを取るためには,その前に切り札が早く無くなってしまう必要があります。

  6. たしかに そうですね …。

    ―― そのためには,あなたのスペードがしっかりしていて 逆刈りできるような内容でなければいけません。

  7. 具体的に言うと,どんな内容 ?

    ―― その前にもう一つ …。
     あなたがペナルティー・パスすると,ダブルを掛けたパートナーは 必ず切り札から 打ち出します。 つまり,あなたの切り札が第 1 トリックからフィネスに掛かります。このフィネスに耐えられるような内容でないと,損をします。 「しっかりした内容」というのは,そういう意味でもあります。
     これは下記の本に載っている例ですが,
          K 10 6 5 4 2
    という スカスカ の 6 枚で,ペナルティー・パスしてはいけないと書かれています。 ここでは 枚数 とか HCP の問題ではなくて 内容 が問題なのです。
    同じ 3 HCP でも
          Q J 10 9 7
    のような 5 枚なら,逆にこちらから切り札を刈って追い出すことができます。
     このようなしっかりした切り札を持っていて,しかも(オープンできる強さを持っているパートナーの手と組み合わせたときに) 確実にダウンできそうなときに,ペナルティー・パスします。

  8. だったら,ペナルティー・パスする機会は,ほんとに少ないのですね。だって,そんな手が 来ることなんて,滅多にないでしょうから。

    ―― はい。

  9. リファレンス
    Michael Lawrence: "Complete Handbook on Takeout Doubles" (Magnus Books, 1994), Chap. 17, Hand 21.

ダブルした人の次回のビッド

 ここでまた 役割を入れ替えて,ダブルした人の立場に戻り,アドバンサのビッドにどう答えるかを考えます。
  (B1) テイクアウト・ダブル ( 〜16 pts ) の場合
   ほとんどの場合,パスする。
   ただし 上限の手では,シングル・レイズして ゲームを打診する。
  (B2) 強い手のダブル (16〜 pts )
   フィットが見つかれば,
        手の強さにより シングル / ダブルレイズ.
   フィットが無ければ,自分のスートをビッド (18〜 pts).  
「ビッド練習」
  1. [上限の手では] テイクアウト・ダブルで 上限の手の場合に,打診するとは …。

    ―― さきほどのビッド経過に戻りましょう。さっきのあなたは,ジャンプして 3 をビッドしましたが, ここでは,パートナーが 2 をビッドしました。

    RHOあなたLHOPard
    1 X パス 2
    パス ?
    Q 9 3
    K 8 6 3
    A J 4
    A Q 9
    ( 16 HCP )
    このパートナーの手の強さは ?

  2. ジャンプしていないから  0〜9 pts の範囲です。

    ―― 一方,テイクアウト・ダブルしたあなたの手が 上限 16+ pts の場合,たとえば 右のようならば,パートナーが上限の 9 pts を持っていると,ゲームの可能性があります。 そこで  3 をビッドして, 問い合わせます。

  3. [強い手の場合] 強い手のダブルでも同じように考えるのですか ?

    ―― はい。
    16〜18 pts ではシングル・レイズ,19〜 pts ではダブル・レイズします。


レスポンダの競り合い

  概 観.  …    76.
  レスポンダの競り合いかた.  …    77.
  ネガティブ・ダブル.  …  78‐82.
  ネガティブ・ダブル使用時のビッド一覧表.  …    82.
  テイクアウト・ダブルに対抗する.
   (リダブルと Jordan 2NT).
 …  83‐84.

概 観

 ブリッジのテーブルで,パートナーが オープンしました。
 あなたは 何をビッドしようかと待っています。
 そこへ 右オポが オーバーコールして きました。
 ディフェンダが オークションに割り込んでくると,ちょっと いやな気がします。
 なぜかというと,オーバーコールのために 使えるビッドの種類が減るからです。
 けれども 物は考えよう … 確かに使えるビッドは 減ります。
 でも,その代りに ネガティブ・ダブル (Negative Double) や リダブル という手段が使えるようになります。 これにより,普通ならば パスを強いられる手でも 堂々と手の内容をパートナーに伝えることができます。
 こういう手段を覚えると,ブリッジの世界が一回り広がって 楽しみが増えます。


レスポンダの競り合い方

  1. [考え方] パートナーのオープンに対して,オーバーコールやダブルが入ったとき,どう考えるのですか ?

    ―― 5 pts 以下の弱い手では,パスします。
    これは,介入が無い場合と同じです。
     6+ pts あって,何か はっきりビッドできる場合については,
    「オーバーコール」と「ダブル」に 場合を分けて,以下に説明します。
    問題は ビッドできる ぎりぎりの場合です。

  2. [例] どんな場合ですか ?

    J 7 3
    9 5 3
    A 9 7
    K Q 8 2
    ( 10 HCP )
    PardRHOあなたLHO
    1 2 ?
    ―― たとえば,あなたが右の手を持っていて,パートナーが 1 オープンしました。これに RHO が 2 オーバーコール … 。
     ここで,もしも 2 オーバーコールが 無ければ ….

  3. オーバーコールが無ければ,ビッドは容易です。
    いったん,2 をビッドして回り道します。
    そして 次回に 2 (あるいは 3) をビッドすれば, 10〜12 pts で 切り札 3 枚ということが 伝わります。

    ―― 右オポは,あなたのその 2を邪魔しようと,2をビッドしました。

  4. ここでは,どうすれば …

    ―― スペードのサポートと 10 pts を示す機会は,今しかありません。
    ここでは 3 をビッドします。

  5. でも そうすると,切り札が 3 枚なのか 4 枚なのか はっきりしませんね。

    ―― 仕方ありません。
    オーバーコールが入ると,そこまで木目細かくビッドすることは できません。


競り合いのビッド,ネガティブ・ダブル

  1. [パスするしかない?] 私は この手を持っていて
    8
    J 7 4 3
    A K 10 6 3
    10 3 2
    ( 8 HCP )
    PardRHOあなたLHO
    1 2 ?
    オークションが このように進みました。8 HCP のこの手では,どんなビッドができるでしょうか ?

    ―― 2 の代でハートをビッドするには,10 pts と 5 枚のハートが必要です。
     また  5 枚のダイヤモンドで 2 をビッドするには,10 pts が必要です。
     今は 9 pts しか無いので,どちらもできません。
    オーバーコールが無ければ 1NT をビッドするところですが,それもできません。 結局,標準のビッドでは パスするしかありません。
     ところが,ネガティブ・ダブル (Negative Double,NegX,"ネガダブ") というコンベンションを使っていると, ここで ダブル を掛けます。

    PardRHOあなたLHO
    1 2 X
    その意味は,
    ビッドされていないメジャー・スートに 4 枚を保証
    します。 (いまの場合は 4 枚を示します)

  2. [ダブルの後は] ダブルの後は オークションが どう進むのですか ?

    ―― オープナーは,あなたが (ありえないことですが) 1を ビッドしたと想定して,自分のビッドを考えます。
     たとえば が 4 枚あって下限の手ならば  2 をビッドします。 ネガティブ・ダブルのおかげで 4‐4 フィットが見つかって,大成功でした。

  3. [慣れないうちは分かりにくい] ちょっと分かりにくい ビッドですね, ネガダブというのは。

    ―― はい。
    でも,テイクアウト・ダブルを理解していれば 難しくありません。
     「オープナーに対して レスポンダが テイクアウト・ダブルを掛けている」
    と思えばよいのです。

  4. [強さの目安] ネガティブ・ダブルをコールするには,どの程度の強さが必要ですか ?

    ―― 大まかな目安として …
        1  の 代では 6 pts
        2  の 代では 8 pts
        3  の 代では 10 pts
    といったところでしょうか。上限はありません。
    したがって,かなり強い手でも ダブルすることがあります。

  5. [「代」の意味]「 1 の代」とか「 2 の代」とは どういう意味ですか ?
    上の例が「 2 の代」だということは分かりますが …。

    ――「オーバーコールの代」ではなく,オープナーの次のビッドの代です。
    あなたのダブルが そのままオープナーまで流れていったとき,オープナーは を 4+ 枚持っていれば  2をビッドする … つまり,あなたのネガティブ・ダブルは,オープナーに「 2 の代」でビッドすることを 要求しています。

  6. [ 3 の代] では,その上の 3 の代で 10 pts 必要なのは なぜですか ?

    ―― オープナーに 3 の代のビッドを要求するネガティブ・ダブルですね。
    ネガティブ・ダブルは フォーシング なので,13 pts のオープナーも何かビッドします。 それでも 3 の代のスート・コントラクト (または 2NT) ができるため には,合計で 23 pts くらい必要です (ルール・オブ 23)。 したがって,あなたが 10+ pts を持っている必要があります。

  7. [メジャースートだけが対象] 4 枚必要なスートは だけですか ?

    ―― はい,4 枚必要なのは,メジャースートだけです。

  8. [マイナーよりもメジャー] さっきと 同じ手で[再掲]
    8
    J 7 4 3
    A K 10 6 3
    10 3 2
    ( 8 HCP )
    PardRHOあなたLHO
    1 1 X ?
    もしも,パートナーが 1 オープンして,右オポが 1 オーバーコール した場合, 私はパートナーの  1サポートできますが,それでもダブルでしょうか ?

    ―― はい,サポートできます。
    でも 直ちに をサポートせずに, ネガティブ・ダブルを掛けて, が 4 枚あることを伝えます。
     オーバーコールが無い場合を考えれば,分かるでしょう。 もしもオーバーコールが無ければ, あなたはここで 1 をビッドするはずです[復習]
    その 1 の 代りに,ここで ダブルをコールします。

  9. [その後の経過] この後のビッドは どう進むのですか ?

    ―― オープナーは,
     (a)   を 4 枚持っていれば をビッドします。
     (b)   が 3 枚以下で, が 4 枚あれば 2 をビッドするので,そのとき, あなたが 2 をビッドして に戻します。

    (a) 
     
    PardRHOあなたLHO
    1 1 X パス
    2
       
    (b) 
     
    PardRHOあなたLHO
    1 1 X パス
    2 パス 2

    ネガティブ・ダブルを使うので,分かりにくい経過になりますが,

    オーバーコールのために隠れてしまった
    メジャースートの 4‐4 フィットを見つけよう.
    というのが,ネガティブ・ダブルの目的です。

  10. ネガティブ・ダブルは,ジャンプ・オーバーコールに対しても 使うのでしょうか ?

    6 5
    A
    Q J 10 7 3
    A Q 7 5 2
    ( 13 HCP )
    PardRHOあなたLHO
    1 3 ?
    ―― はい,使います。
     たとえば,こういう手を持っていて,オークションが 右のように 進みました。13 HCP の この手では, ダブルを掛けます。テイクアウト・ダブルと似た感じです。
     この場合には,メジャースートが両方ともビッドされた後なので,ネガティブ・ダブルは 両方に 4+ 枚を保証します。こうして の うちの良い方を パートナーに選んでもらいます。

  11. [ 4 の代] ジャンプ・オーバーコールに対して,ネガティブ・ダブルをコールするには,どの程度の強さが必要でしょうか ?

    ―― 普通のネガティブ・ダブルは  6 pts からですが,こんなに高い代では 具体的に考える必要があります。
     上の場合,パートナーに対して 4 の代で マイナースートをビッドするように要求しているので 合計 26 pts 必要です。 オープナーが下限 (13 pts) だとして,あなたもオープンできる強さが必要です。

  12. [どの代まで] 最後の例では  3 に ネガティブ・ダブルを掛けていますが,ネガティブ・ダブルは, どの代まで使うのですか ?

    ―― その問題がありますね。どの代までにするかを,パートナーと取り決めておく必要があります。 初めて使うなら,2 くらいまで。

  13. [ペナルティー・ダブルとの区別] オーバーコールが 2 までのときには, ダブルが ペナルティー・ダブルではなくて,ネガティブ・ダブルということですね ?

    ―― はい。そうです。
    ネガティブ・ダブルを使っていると,プリエンプトのオーバーコールに対しても, ネガティブ・ダブルが有効なことがだんだん分かってきます。 そうしたら オーバーコールが 4の ときまでネガティブ・ダブルを使うのがよいでしょう。

  14. A Q 7 6 2
    Q 8
    Q 7 6
    10 3 2
    ( 10 HCP )
    PardRHOあなたLHO
    1 1 パス
    [ペナルティー・ダブルは無し?] ネガダブを使うと,オーバーコールされたスートに 私が良いカードを持っているとき, ダブルを掛けられなくなる。
     ダブルの意味が変ってしまったから …。
    ペナルティー・ダブルは 無くなるんですか ?

    ―― あなたの位置 (オーバーコールの直後位置) で この手を持っていれば, 残念ですが パスするしかありません。
     でも,ペナルティーのダブルが消えたわけではありません。バランシング位置にいるパートナーが リオープンのダブル を使います。 したがって,あなたは 安心してパスできます。

  15. ネガティブ・ダブルについて もっと知りたいのですが …。

    ―― ネガティブ・ダブルの説明は これだけでは不充分なので,「ビッド練習」の中の説明もお読み下さい。
    北ブリッジ倶楽部ホームページの初級室 A 級コンベンションもお勧めします。


オーバーコールに対してネガティブ・ダブルを使う場合の一覧表

強さ ビッド経過 条件
6+ 1‐1‐1 4+ 枚, 3 枚以下.
6+ 1‐1‐X 両方とも 4+ 枚.
6+ 1‐1‐X 4 枚.
6+ 1‐1‐1 5+ 枚.
8+ 1‐1‐X 4+ 枚.
10+ pts も 4 枚ならば ダブル.
 10+ 1‐1‐2 5+ 枚.
 8+ 1‐2‐X 4+ 枚.
 8+ 1‐2‐X どちらかが 4+ 枚.
弱い手では のサポートが必要.
 10+ 1‐2‐X 両方とも 4+ 枚.
 8+ 1‐1‐X 両方とも 4+ 枚.


競り合いのビッド,テイクアウト・ダブルに対抗する

 上で見たように,オーバーコールが入った場合には,ネガティブ・ダブルというコールが可能になりました。
 今度は,ダブルが掛かった場合を考えます。
 この場合には,
   10+ HCP の手を示すために リダブルを使います。
   そして  2 以上の代の (2NT を除く) ビッドは, すべて 9 HCP 以下の弱い手を示します。
 ここでは,レスポンダの手の強さを pts ではなく,(例外的に) HCP で計ります。
  1. [2 以上の代の応答] 私がレスポンダで,パートナーが 1 をビッド, それにダブルが掛かりました。
    つまり,オークションがこう進みました。
    PardRHOあなたLHO
    1 X ?
    Q J 10
    J 9 5 2
    A 9 7 4
    8 3
    ( 8 HCP )
    右のように 切り札を 4 枚サポートできる手では,何をコールすればいいでしょうか ?

    ―― [1] ここでは  3 をビッドします。
    もしもオーバーコールが無ければ,2 を ビッドするところです。
     でも 今はダブルが掛かったので のサポートを はっきり示して, 競り合うことが大切です。

  2. [10+ HCP ではリダブル] それでは この場合には ?

    K J 10
    Q 2
    A 10 9 7 4
    J 8 7
    ( 11 HCP )
    ―― [2] リダブル をコールします。
    一般に,絵札で 10+ HCP を持っている場合,
    ダブルに対して リダブル をコールします。
    また,[1] のような 3 (2 以上の代のビッド) は,すべて 9 HCP 以下の手を示します。

  3. [リミット・レイズもリダブル?] リダブルというのは,こんな手の場合にも … ですか ?   普通なら リミット・レイズ  3 する手ですが …。
    8 5
    K J 10 3
    A K 9
    10 9 6 3
    ( 11 HCP )
        
    PardRHOあなたLHO
    1 X XX
    ―― はい。標準のビッドでは,その場合にも リダブルです。
    ダブルが掛かると,3 は背伸びしたビッドになり,パートナーを 4誘う意味は無くなります。

  4. [Jordan] でも そうすると (リダブルすると) ,たとえば 私の左オポさんが 1 をビッドできて, スペードでのフィットを簡単に見つけてしまう可能性がありますね。

    ―― はい。その通りです。
    で …,それを防ぐためのコンベンションとして
      [3]  2NT
    というコールがあります。これが,この場合には リミット・レイズの代用として使われます。

    PardRHOあなたLHO
    1 X 2NT
    これを受けて,オープナーは,下限の手だったら 3 を,15 pts あれば 4 をビッドします。
     この 2NT を,「トラスコット (Truscott) 2NT」と呼びます。あるいは, ジョーダン (Jordan) とも呼びます。最初に考案したのは Truscott だったのですが, それを普及させた Jordan の名前が よく使われます。
  5. なお,上記の続きとして,テイクアウト・ダブルに対抗する 1 の代のビッドを,続編で説明します。


強い手のオープン

概 観  …    85.
  2 オープン  …  86‐94.
    オープンの基準  …    86.
    レスポンダの答えかた  …  87‐88.
    その後の進行  …  89‐92.
    2 オープンへの介入.  …  93‐94.
ストロング 2 オープン  …    95.

概 観

 旧いビッド・システムでは,2, 2, 2, 2 は,どれも非常に 強い手を表すビッドであり,デマンド 2 (Demand 2) と呼ばれていました。
オープンの条件は 25+ pts でした。
 つまり,パートナーが ほんとの 0 点でも,ゲームがある場合です。
 けれども,実際にプレイすれば分かるように,そんなにすごい手は殆んど来ません。そこで,めったに来ない デマンド 2 のために 2 の代のビッドを予約しておくのはもったいない … ということになり, 2, 2, 2 が ウィーク 2 として使われるようになりました。
 その結果,4 種類のデマンド 2 (および 2NT オープンを越えるバランス・ハンド ) を全部まとめて 2 が 一手に 引き受けることになったのです。
この 2 を,ストロング・アーティフィシャル 2 オープン (Strong Artificial Two-Club Opening) と呼びます。
 これだけの場合をまとめて引き受けるので,これに対する応答の仕方は複雑です。また,オープンの条件が 25 pts より下がったので,応答が単純ではありません。

 なお,アーティフィシャル 2 を使わない場合には,2, 2, 2, 2 を 21 pts くらいからオープンするのが普通であり,ストロング 2 と呼ばれています。
 ストロング 2 については,次項で説明します。


 初心者の方には,2 は むずかしいビッドです。
けれども 実際には,ウィーク 2 を使うのが普通であり,2 を使わずに 避けてくれる人は,殆んどいないので (ストロング 2 を使う人は殆んどいないので) ここで説明することにしました。


2 オープンの基準

  1. [オープンの条件] 2 でオープンするための条件は ?

    ―― この条件は,バランス・ハンド と それ以外のハンドで異なります。

    (A) バランス・ハンドの場合には,22+ HCP です。
     (22 という数字は,暗記ではなく 例の「点数幅」を使って思い出します。)

    (B) バランス・ハンド以外では,22+ pts (人によっては 23+ pts) 。
    切り札の枚数により細かく数えるやり方もありますが,自分で実際に使いやすいように,適当に基準を設定して下さい。
     なお,この基準に達していなくても,確実に 9 トリック取れて 17+ HCP ならば,2 オープンして構いません。2 というビッドは
          「わたし一人で 9 トリック取ります」
    という宣言のようなものですから …。
     ただし,この後の説明から分かるように,マイナースート (とくに ) の場合には,10 トリック取れることが必要です。

    つまり,細かいことを無視して大まかに言うと
          「ゲームに あと 1 トリック」
    … という状況で使うのが 2 オープンです。
     2 オープンでは レスポンダのビッドが重要ですが, 上のことを逆に表現すると,レスポンダは どんなに弱い手であっても ビッドのやり取りの中で
      「自分のこの手なら 1 トリックだけ オープナーを助けてあげられる」
    と思えば,ゲームをビッドします。

     Karen's Bridge Library には,2 オープンに適した手と適さない手が 例を挙げて説明されています。
     2 は滅多に現れないので,「ビッド練習帖」で予行練習しましょう。
    「 2 のビッド練習」オープン,レスポンス

レスポンダの答えかた

  1. そのあとのビッドは ?

    ―― 非常に多くの場合,レスポンダは 2をビッドします。
    バランス・ハンドとそれ以外に分けて説明しましょう。

  2. (A) バランス・ハンドの場合
    NorthEastSouthWest
    2パス 2パス
    2NT

    レスポンダが 2をビッドするとして話を進めると,オークションが右のように進みます (もしも 25+ HCP あれば,2NT ではなしに 3NT をビッドします)。
    この後は,普通の 2NT オープンと同じです。
     オープニング・ビッドが なので ちょっとヘンな気がしますが,ステイマン ( 3) も普通に使えます。
     ジャコビ・トランスファ( 3,3) も,ガーバー( 4) も,定量 4NT も使えます。

  3. (B) レスポンダの答えかた (オープナーの手が バランス・ハンド以外とする)
       場 合 レスポンダのビッド
      (1)    0 ‐7 pts 2
      (2)  8+ pts 下記の場合を除き, すべて
    待機ビッド (Waiting bid) 2
      (3)  8+ pts
    しっかりした
    バランス・ハンド.
     ⇒  2NT
      (4)  8+ pts
    非常に良いスートあり.
     ⇒  それをビッド,
    2,2,3,3
          「非常に良いスート」とは,
    (4a) A, K, Q  のうちの 2 枚以上を含む 5 枚のスート,または
    (4b) A, K, Q, J, 10  のうちの 3 枚以上を含む 6 枚のスート.
     これで分かるように,殆んどの場合 レスポンダは 2をビッドします。

  4. [厳しい条件の理由] そんなに非常に良いスートなんて滅多に無いと思いますが …。 なぜ,そんなに厳しい条件をつけるのですか ?

    ―― たしかに,そんなことは滅多にありません。
    でも,これは とても大切な条件なのです。なぜかというと …。
     レスポンダが 8 pts 持っていれば,合計 30+ pts なので,スラムの可能性が高い。そこで,ビッドの代をなるべく低く押さえて,互いに 何度もビッドする必要があります。

    [1] North East South West
    2パス 2パス
    3パス ?

     もしも,レスポンダ (South) が 8 pts あるからというので,大した内容のない 5 枚の 2 をビッドすると, オープナーの本命スートが の場合,これを示すのが 3 の代になってしまいます。
    [2] North East South West
    2パス 2パス
    2パス 2パス
    ?
     その反対に,レスポンダが待機ビッド 2 をすれば,オープナーは 自分の本命スート を 2 の代で示すことができ, おまけに レスポンダも 2 を ビッドできます。
     この方が ビッド余地が広いので,スラム探索に有利です。
     待機ビッド 2 は,オープナーに本音を告白してもらうための「つなぎのビッド」です。この告白をなるべく低い代でしてもらいましょう。

     平たく言うと,[2] …
       2  あっ,すごい手だ。
       2  そう,どんな手か切り札だけでも教えて …。
       2  切り札は 。ほかにも言いたいことあるけど,そちらは ?
       2  こちらの も まぁまぁですよ。
    というような会話が,本来なのです。
    この順序が逆になると,[1] …
       2  あっ,すごい手だ。
       2  そうかも知れないけれど,わたしの も まぁまぁですよ。
       3  本命は なんだけど …。


その後の進行

  1. [2 度目の否定] (Second Negative) それでは,レスポンダが 2 と答えたとして,その後はどうなるのでしょうか ?
     2 という返事だけでは,強いか弱いか全然わかりませんね。

    ―― はい。その次の (2 回目の) ビッドが,ポイントです。
    レスポンダは,0−3 pts のごく弱い手の場合には,「2 度目の否定」(セカンド・ネガティブ) というビッドをします。
     これをきちんと覚えることが大切です。
     ここまで できなければ, ストロング 2 は 使いものになりません。
     「2 度目の否定」とは,
         3,3,3NT
    の中の可能な一番低いビッドです。
    英語では,"Cheaper Minor" と呼びます。
     まちがいが無いように,オープナーのビッドが,2, 2, 3, 3 の 4 通り全部の場合について,セカンド・ネガティブのビッドを書いておきます。

     ◇ オープナーの本命ビッドが 2 の場合の セカンド・ネガティブ:

    NorthEastSouthWest
    2パス 2パス
    2パス 3
     この場合,3 までフォーシングです。
    もしもオープナーがこの後に 3 をビッドすれば, レスポンダはパスしても構いません。
    それ以外の場合には,パスしてはいけません。

     ◇ オープナーの本命ビッドが 2 の場合の セカンド・ネガティブ:

    NorthEastSouthWest
    2パス 2パス
    2パス 3
     この場合には,3 までフォーシングです。
    もしもオープナーがこの後に 3 をビッドすれば, レスポンダはパスしても構いません。
    それ以外の場合には,パスしてはいけません。

     ◇ オープナーの本命ビッドが 3 の場合の セカンド・ネガティブ:

    NorthEastSouthWest
    2パス 2パス
    3パス 3
     この場合には,4 までフォーシングです。
    もしもオープナーがこの後に 3NT または 4 を ビッドすれば, レスポンダはパスしても構いません。 それ以外の場合には,パスしてはいけません。

     ◇ オープナーの本命ビッドが 3 の場合の セカンド・ネガティブ:
    NorthEastSouthWest
    2パス 2パス
    3パス 3NT

     この場合には,4 までフォーシングです。
    3NT で終わることもありえます。
    もしもオープナーがこの後に 4 をビッドすれば, レスポンダはパスしても構いません。それ以外の場合には,パスしてはいけません。

     ときどきうっかりすることがあるのですが,4+ pts の場合には,自分のビッドがセカンド・ネガティブにならないように 注意が必要です。

  2. [ちょっと怖い] マイナースートでは,3NT を除けば,最低でも 4 の代まで上がってしまうんですか !

    ―― はい。その通りです。
    レスポンダが 0 点のとき,ビッドの代は,最低でも, 上に "フォーシング" と書いた代まで するするっと自動的に上がります。 いまの 2システムでは, これを避けようがありません。 ですから,マイナースートを切り札として 2 オープンを する場合には,1 の代のオープンとよく比較して判断する必要があります。

  3. よく,2 はゲーム・フォーシングだから,レスポンダはゲームになるまで パスできない … と言いますが,そうとは限らないんですね。

    ―― 2オープンが まともならば,たいていの場合,ゲームがあります。ですから,2ほとんどゲーム・フォーシングです。 でも,上の説明から分かるように,レスポンダが ほんとの 0 点の場合には, その前で止まります。

    NorthEastSouthWest
    2パス 2パス
    2パス 3パス
    3パス ?
     たとえば,オークションが右のように進んだ場合,既に 2 度目の否定をしたレスポンダは,自分の判断でパス,または 4 のどちらかを選びます。
     オープナーは,おそらく 6+ 枚の を持って いるでしょう。もしも に 2 枚の (絵札でない) サポートがあって 0 - 3 pts の範囲の上限ならば (役に立ちそうな King を 1 枚持っていれば), レスポンダは,非常に良い手なので 迷わず 4 をビッドします。

  4. ちょっとチャチャを入れるようで 申しわけありませんが,どうしてそんなボロのハンドが「非常に良い」ハンドなのですか ?

    ―― レスポンダは自分の手の強さを 2 回否定しました。オープナーは,それを承知の上で,レスポンダにビッドを 求めています。そういう場合には,既に通知した範囲の中で上限の手は,「非常に良い」手なのです。
     自分の手が「ボロ」であるか「非常に良いか」は,絶対的に決めるものではありません。パートナーとの組み合わせに ( あるいは 相手側のビッドの状況にも ) 依存して決まります。HCP の数値だけに依存して良いとか悪いとか決めるのではありません。

  5. [レスポンダの手の強さの区別] それでは,セカンド・ネガティブではない場合,4 pts 以上と 8 pts 以上を,どうやって区別するのですか ?

    ―― だんだん話がこまかくなってきますね。
    8 pts 以上の場合には,スラムを狙って何かのスートをビッドできます。

  6. [4〜7 pts] 多分,そうでしょうね。では,その中間の 4〜7 pts の場合には ?

    ―― 4〜7 pts の場合が,ややこしい。
    この場合に,点数だけで考えるのはいけません。状況を踏まえる …。

    NorthEastSouthWest
    2パス 2パス
    2パス ?
     パートナーは強い手を持っていて,あなたの手によってはスラムがあるかも知れないと思っている。そのことを頭に入れて,ビッドします。
     パートナーの本命スートを としましょう。
    [1]   J 7
    10 5 3
    A 6 4 2
    8 7 4 3
    ( 5 HCP )
    [2]   7 4 2
    10 5 3
    K Q 4 3
    7 6 2
    ( 5 HCP )
    [3]   7 4 2
    10 5 3
    7 6 2
    K Q 4 3
    ( 5 HCP )

     オークションが右のように進んで,South にいるあなたの手が [1] ならば,すぐに 4 をビッドして, スラムに関心が無いことを伝えます。
    これは,「1 トリックだけ助けてあげられる」場合です。

     また 切り札が 3 枚の [2] では,3 をビッドします。
    オープナーのダイヤモンドが xx ならば,その 片方を助けられます。

     ここで を入れ替えたハンド [3] の場合, 頭に浮かぶのは,3 と 4 です。この場合,うっかり 3ビッドすると,「2 度目の否定」になります。
     ただし,3 は 最も低い代でパートナーをサポートして パートナーにその強さを更にビッドさせる意味を持つので (下記 Lawrence,Hand 10),ここでは 4 を選びます。
    クラブで 1 トリックを保証します。

    [4]   9 5
    K 8 7 4
    J 9 2
    Q 10 4 3
    ( 6 HCP )
     一方,こちらは 切り札 2 枚のバランス・ハンドです。
    ここで 2NT をビッドします。8+ pts のこともあります。
    [5]   J 9 2
    10 5
    K 8 4 3
    K 9 6 2
    ( 7 HCP )
    NorthEastSouthWest
    2パス 2パス
    2パス 3パス
    4パス 4パス
    4NTパス 5
     もしも こんな手 [5] だったら 3 をビッドします。
    切り札 3 枚のサポートがあり, に第 2 コントロールがあります。 オープナーは,これを受けて キュービッドを開始します。
     オープナーのキュービッド 4 に対して ダイヤモンドの コントロールを 4 により示します。
     A を持っているオープナーは,ブラックウッド 4NT により Ace の枚数を確認するので,そのとき 5 を答えると あなたのキュービッドが K を示すことが伝わります。

  7. [分類] こうして見てくると,
    (1) 2 度目の否定 = サポート無し,
    (2) 3 = 強力サポートあり (場合によっては,スラム ? ) ,
    (3) それ以外のビッド = 1 トリックなら 助けてあげられるかな.
    といった感じでしょうか。

    ―― はい。私は,いまのところ そんなふうに整理しています。
    でも,2 の後はむずかしいですね。

  8. リファレンス:
     Mike Lawrence: "How Well do You and Your Partner Understand Each Other?  Bidding when You Open 2"

2 オープンへの介入

  1. [2NT オーバーコール] 話が変りますが,2 オープンに 2NT オーバーコールするのは,アンユージュアルですか ?

    ―― はい。 に 5 枚ずつを保証します。
    レスポンダの 2 を邪魔する効果があります。

  2. [弱い手でのオーバーコール]  2 へのオーバーコールは,どう考えたらよいですか ?

    ―― 普通とは 逆の考え方をします。
    とにかく,2 をオープンした側に ゲームがあるのは当たり前です。
    でも,ひょっとして,スラムがあるかも知れない。自分の手が弱いときには,とくにそう思います。
     ですから,弱い手では積極的にオーバーコールして, スラムを見つけにくくします。2 のビッドを妨げたり,オープナーの本命ビッドを 3 の代に吊り上げます。
     こちらがある程度の手ならば (たとえば,オープンできるくらいの手ならば),向こうにスラムは無いので 黙っています。
     つまり,普通にプリエンプト (ジャンプ・オーバーコール) するような場合が, とくに有効です。 テイクアウト・ダブルは,ビッドの余地を奪わないので,全く意味がありません。

  3. [その実例] 具体的な例を見せていただけませんか。

    右オポわたし左オポPard
    パス パス 2 2!
    X 3 X パス
    パスパス
    K J 10 8 5
    10
    9 8 7 3 2
    10 2
    ( 4 HCP )
    ―― こんな実例があります。ビッドは,こんなふうに進みました。はじめの二人が,続いてパス。
     そこへ,左オポさんが 2 … ものすごい手のはずです。
     ところが,そこへ私のパートナーは,不利なバル状況でしたが,2! とオーバーコール。 このとき,パートナーの手は わずか 4 HCP でした。

  4. こんな手でオーバーコール ?!
    「 2 に対して,弱い手では積極的にオーバーコール」の見本ですか …。

    ―― はい。この手だけを見ていると,相手側に 4 が ほとんど確実に ありそうで,ひょっとすると 6 もありえます。
    4 を阻止することは無理でも,6 をなんとか邪魔しようとしたのです。

    A Q 4
    J 8 5 3
     —
    A 9 7 6 4 3
    ( 11 HCP )
     これにダブルが掛かって,私がビッドする番です。
    私の手は こうでした。 相手にスラムは たぶん無いでしょう。 そこで,1つ 上げて 3 を ビッドしました。
     もしも A を持っていなければ,4 をビッドしていただろうと 思います。

     結局,コントラクトは 3X となって,これが 1 ダウン。
    こちらが バル だったので,−200 点でした。
     全部の手を開いて見ると,オープナーの は ボイド で,4(+420点) も 5(+400点) も ありました。しかし 2 というビッドは 必ずしもゲーム 4 まで保証しませんし,オープナーの 本命スートが不明のままで,右オポさんも判断が難しかったようです。
     結局,私のパートナーの判断の勝ちでした。


ストロング 2 オープン

  1. [どこかに説明が] 私は,ほんとにまだブリッジを始めたばかりなので,そういう複雑なビッドは したくありません。
     代りに,ストロング 2 というのを説明していただけませんか ?

    ―― 入門用のブリッジの本には,ストロング 2 の説明をしているものが全く無いようです。 そのためなのか,実際にプレイすると,"ストロング" の基準が人によってまちまちで,私も困っています。
    インターネットでは,Karen Walker さんのホームページに Opening 2-bids (strong) という項目があります。ハンド例も載っています。

  2. [強さの目安]  2 の代のオープンの基準は?

    ―― 切り札は良い 5 枚 (できれば 6 枚) が必要であり,
    強さは 21+ pts,または
      では,8½ 〜9 トリックを保証します.
      では,9½ 〜10 トリックを保証します.
    つまり,アーティフィシャル 2 とほぼ同等の強さです。

  3. [2NT 応答] ストロング 2 オープンに対して,弱い手では何と答えるのですか ?

    ―― 6 pts 以下で,切り札に A も K も無ければ,2NT をビッドします。
    アーティフィシャル 2 オープンの場合には,2NT はノートランプ向きで 8+ pts を意味します。
     2NT の意味が全然違うので,注意して下さい。

  4. [2NT オープン] ついでにもう 1つ。
    ストロング 2 を使う場合,2NT オープンは どの範囲で使うのですか ?

    ―― Karen Walker さんによると,1NT を 15〜17 HCP で オープンする場合, 20〜22 HCP で 2NT オープンします。

  5. [どちらであるかを確認する] オンラインのブリッジで (たとえば,ヤフーのブリッジで) ストロング 2 を使ってもいいでしょうか ?

    ―― はい。もちろん いいですよ。
    チャットで はっきり「ストロング 2」と言うのがよいでしょう。


プリエンプト

プリエンプトの意味.  …       96.
ルールオブ 2 アンド 3.  …     97‐98.
プリエンプトの例と反例.  …     99‐102.
プリエンプトに答える.  …   103‐105.
ウィーク 2.  …   106‐108.
ウィーク 2 に答える.  …   109‐110.
フィーチャーとオガスト.  …   111‐113.

プリエンプト (Pre-empt) の意味

  1. [原義] 「プリエンプト」って,どういう意味ですか ?

    ―― もともとは,先に (pre) 買う (empt) という意味で,誰かが必要とする物を 先回りして買い占めて,値段を吊り上げることです。
      ブリッジのビッドの場合は,相手側にゲームやスラムがありそうなとき,ダウン覚悟で先に無理なビッドを仕掛けて 相手を締め出すのが,プリエンプトです。
     日本語で言えは,「先着ビッド」あるいは「先買いビッド」でしょうか。
    シャットアウト・ビッド (Shutout Bid, 締め出しビッド) とも呼びます。
     でも その本題に入る前に,ルールオブ 2 & 3 を知っておく必要があります。


ルール オブ 2 アンド 3 (Rule of 2 and 3)

  1. この「ルール」は どういうルールですか ?

    ―― 相手側に ほとんど確実にゲームがありそうなとき,こちらが無理なビッドをすることがあります。 そのとき,もちろん ダブルが掛かります。
     このダブルを覚悟の上で,どの程度まで 無理な ビッドが許されるかを教えるのが このルールです。

  2. ルールの名前の中の 2 とか 3 という数字は 何を意味するのですか ?

    ―― 許される 無理 の度合いは,双方のバルネラビリティーに依存します。

    味方がバルのときには,2 ダウンまで許される.
    味方がノン・バルのときには,3 ダウンまで許される.
    というのが,この ルール の内容です。

  3. どうして,そういう結論になるのですか ?

    ―― デュプリケート・ブリッジの得点表を使って計算した結果がこうなります。
    たとえば,味方がノン・バルの場合について 失点の表を作ると,

    味方がノン・バルの場合の失点表
    味方 失点相手方
      1 ダウン−100
      2 ダウン−300
    −420   4 メイク (ノン・バル)
      3 ダウン−500
    −620   4 メイク (バル)
      4 ダウン−800
      5 ダウン −1100
     もしも バルの相手方が 4 を達成すると, こちらは 620点 の失点になる。この場合,味方 (ノン・バル) は 3 ダウンしても −500点なので, 3 ダウンの方が 120 点 だけ得です。
     相手方がノン・バルの場合には,こちらが 3 ダウンすると損ですが,80 点の損を小さなものと考えれば,上のルールが成り立ちます。
     味方がバルの場合については,自分で失点の表を作ってみて下さい。
    味方がバルの場合の失点表
    味方 失点相手方
      1 ダウン−200
    −420   4 メイク (ノン・バル)
      2 ダウン−500
    −620   4 メイク (バル)
      3 ダウン−800
      4 ダウン−1100
      5 ダウン −1400

  4. ヤフーブリッジでプレイする場合には,バルとかノン・バルとかをどう考えたらよいでしょうか ?

    ―― 少なくとも,ブリッジを始める人にとって,バルネラビリティーまで考慮に入れてビッドするのは 大変なので,ノン・バルだとしてビッドするのがよいと思います。したがって,3 ダウンまで「無理」をしても よいでしょう。


プリエンプトの例と反例

  1. 準備が終わったようなので,プリエンプトのハンド例をお願いします。

    ―― はい。具体例を見ながら プリエンプトの説明しましょう。

    [a] 4
    9 8 7
    A Q J 7 6 3 2
    8 4
    ( 7 HCP )
      [a] 3オープンします。
    僅か 7 HCP ですが,7 枚の良いダイヤモンドがあるので,3 の代でプリエンプトする理想的な手です。

  2. [プリエンプトの代]  7 枚では 3 の代ですか ?

    ―― はい。一般に,プリエンプトの代は
        6 枚の良いスート ⇒ 2 の代,
        7 枚の良いスート ⇒ 3 の代,
        8 枚の良いスート ⇒ 4 の代
    です。これは,「プリエンプトの公式」です。

  3. [そのわけ] どうして そういうことになるのですか ?

    ―― ここでは,あくまで「良いスート」が前提です。
    上の ハンド [a] のように,切り札の負けが K だけと想定できる場合には, 切り札で 6 トリック取れます。
     ノンバルで 3 ダウンまで許容すれば,他の札が全部負けるとしても, 6 + 3 = 9 トリック, すなわち,3 の代で プリエンプトできます。

    [b] Q J 6
    K 9 8 6 5 4 2
    K 9
    6
    ( 9 HCP )
      [b] パスします。
    この手でのプリエンプト 3 には, 問題点が 2 つあります。
      1. 切り札が弱くてスカスカである。
      2. サイド・スートに K,Q,J がパラパラ浮いている。
    こういう スカスカパラパラ の手は 攻めに弱い。
    K,Q,J は自分から勝てる札ではありません。 むしろ,受けに回ったときに トリックを取る (いわば,カメレオンのようなカードです)。
      この手 [b] を,上の [a] と比べてみましょう。
    防戦能力ゼロの [a] では,積極的に攻めに回ります。
    バルでも,3 をビッドします。守っても意味が無いからです。
    一方,防戦能力のある [b] では,ダウン覚悟のプリエンプトは無意味であり, 守りを選びます。
      言い方を変えると,[a] には HCP の無駄が無く,[b] には無駄が沢山あります。

    [c] A K Q 10 7 5 3
    5 3 2
    6
    10 7
    ( 9 HCP )
      [c] 1 オープンします。
    このように偏った手が来ると,プリエンプトをすぐに思い浮かべますが, よく見ましょう。スペードに たぶん 負け札はありません。ルールオブ 20 に 1 点不足ですが,1 オープンします。

  4. [何か損?] ここで 3 ではなくて,1 というのは, 何か損のような気がするのですが …。

    ―― 自然な気持ちとしては,そうかも知れません。
    しかし,よく考えて下さい。
     3 プリエンプトは 3 ダウンを覚悟のビッドです。
    6〜7 トリック取れるこの手で,そんな覚悟が必要ですか ?

      例をいくつかご覧戴いたので プリエンプトの補足説明に入りましょう。

  5. [良いスート] たぶんスートの中身も良い必要があるのでしょうね。

    ――「良い」という言葉の中身ですが,標準的には,
       A,K,Q のうちの 2 枚を持っている.
     あるいは,
       A,K,Q,J,10 のうちの 3 枚を持っている.
    ことです。しかし 実際には これから外れていても プリエンプトします。
      とくに近年は,競り合いの激化に伴い,「良い」の基準が格下げされてきました。その場合,スートの木目 (きめ,肌理,Texture) が問題になります。

  6. [きめ] 何のことですか ?「きめ」とは。

    ―― 次の 2 つの 7 枚スートを比べてみましょう。
       [1] K 10 8 7 6 4 2
       [2] Q J 10 8 4 3 2

  7. [スカスカと木目細かい] あぁ,なるほど。この 2 つは,HCP が同じですが,[1] の方はスカスカです。 それに比べて [2] の方は木目細かい
    板の木目 (もくめ) が詰まっている感じがします。

    ―― これ以上の説明は不要でしょうが,プリエンプトするには HCP より 木目の細かさが重視されます。

  8. [説明は必要!] 説明不要ということですが,漠然となら分かりますが 具体的に言うと ?

    ―― 上の木目細かい [2] では,切り札で AK に 2 つ負けます。
    他の札が全部負けるとしても  5 トリック取れます。 この 5 トリックは確かな数字です。
     したがって [2] を持っている人は,3 ダウン覚悟なら 5 + 3 = 8 すなわち,2 を ビッドできる。
      けれども,スカスカの [1] では こういう計算ができません。パートナーにエントリも無い最悪条件下では, 自分から切り札を打って,切り札でいくつも負けます。結局,この [1] では 相手方の A, Q, J  に負けて  4 トリックしか計算できません。

  9. [ボロ負け] つまり 「木目細かい」とは,「ボロ負けしない」という意味なんですね。

    ―― その通りです。
    いくら疑心暗鬼で先買いに走っても,ボロ負けしたのでは 意味がありません。 でも,ブリッジ用語として そういう俗な言い方は できないので,上品な木目細かい表現を使います。

  10. プリエンプトのビッドは,何ダウンくらいを覚悟していると思えばいいでしょうか ?

    ―― ルール オブ 2 & 3 に合わせて考えます。
      味方がノンバルの場合,あなたのパートナーは,3 を良い 7 枚の ビッドしています。 で 1 トリックは負けるとして,残りの 6 トリックを取れば 3 ダウンになります。

  11. [強さの範囲] プリエンプトする手の強さは,どのくらいの範囲ですか ?

    ―― SAYC では,5〜11 HCP となっています。
      [1] この上限近くでは,1 の代でオープンできることがあるので, ルールオブ 20 に立ち戻って判断する必要があります。
      [2] それ以外の場合には,HCP は判断の基準になりません。
    はじめのうちは,何でも点数に頼って判断するので,そういう質問が出るのは自然です。 けれども,プリエンプトのビッドが飛び出すようなボードでは,誰の手も偏っています。
     そういう場合には,切り札スート以外に パラパラ 浮いている Q や J は 殆んど 役に立ちません。 ですから,ポイント・カウント法は 役に立ちません。
    「ブリッジ」のほかに 「スペード」をご存じならば,とてもよくお分かりいただける筈です。
      7 枚スートで 3 の代のプリエンプトの場合,勝つ札を数えましょう。
    サイド・スートの A, K が 合計 6 トリック;切り札の勝負が 7 トリック;
    合わせて  13 です。サイド・スートの  Q, J  が勝つ余地はありません。
    つまり,サイド・スートの  Q, J  の HCP を数えることは 無意味です。


プリエンプトに答える

  1. それでは,私がレスポンダの場合,とても良い手を持っていて,ゲームがありそうだと 思ったときには,どうやって判断したらよいでしょうか ?

    ―― 取れるトリック数を,具体的に数えます。
    3 の場合だったら, パートナーがダウン覚悟の 3 トリックに 1 トリックを上積みできれば 4 をビッドします。
      つまり,あなたのカードが 4 トリックを生み出せると判断すれば,4 に 上げます。

  2. と言うと ? 4 トリック取れるかどうかの判断は どうやって ?

    ―― 特別の数え方があるわけでは ありません。
     切り札 () とそれ以外のスートを分けて考えます。
       : あなたが A,K,Q のうちのどれかのカードを持っていれば,パートナーが負ける予定の 1 トリックを埋め合わせることができます。
       以外のスート: 上にも説明したように,単独の Q や J には価値がありません。そこで,たとえば,
       A K Q  …  3 トリック
       A Q   …  1.5 トリック
       A Q J   …  2  トリック
       K x    …  0.5 トリック
       Q x x   …  0  トリック
    などのように数えて,合計します。要するに,原始的な数え方です。
    もちろん,負け札を数えることも必要です。

  3. ハンドの例は ?
    [a] K J 2
    K Q 4
    A J 4 2
    Q 9 2
    ( 16 HCP )
       
    NorthEastSouth West
    3 パス 3NT
    ―― この手を持っていて,パートナーが 3 オープンすれば,3NT をビッドします。
     この場合には,マイナースートでのプリエンプトなので,このようにストッパが揃っていれば,5 より 3NT を狙います。クラブで 6 トリックを見込んでいます。
    [b] A K 9 5 2
    8 5
    A 8 7 6
    A 7
    ( 15 HCP )
      
    NorthEastSouth West
    3パス4
    この場合には,こちらで 4 トリック取れることが確実なので,4ビッドします。切り札で 9 − 3 = 6 トリックを見込んでいます。
    こういうことがあるので,North のプリエンプト 3 は,3 ダウンまで 許容する内容でなければいけません。もしも 4 ダウンまでありうると,South の計算が狂います。
    [c] J 8 5 4 3
    10 9 4
    Q J 6 3
    3
    ( 4 HCP )
       
    NorthEastSouth West
    3 パス 4
    ただし,あなたの手も このように荒れていて,シングルトンがある場合には, あなたの手で切る可能性が出てきます。もしも,二人合わせて 10 枚の 切り札があり,しかも,あなたの手にシングルトンがあるならば, 取れるトリックを数えるのは止めにして,4 の代に上げます。
    [d] 3
    10 9 4
    Q J 6 3
    J 8 5 4 3
    ( 4 HCP )
       
    NorthEastSouth West
    3 パス 4
    この手を持っていて,パートナーが 3 オープンした場合には,ダウン覚悟で 4 を ビッドします。この場合,相手側には 4 があるでしょう。
     でも,4 をビッドしたあなたの手が [b] 強いのか [d] 弱いのか 相手には分かりません。

  4. ところで,プリエンプトのオープンに対して,レスポンダが新しいスートをビッドするのは,フォーシングでしょうか ?

    ―― はい。1 回フォーシングです。
      ただし,そういう返事を返すことは,ほとんどありません。
    この上に説明したように,パートナーの長いスートを 切り札にして何トリック取れるかを考えます。 そうでないと,パートナーの長いスートが全くの無駄になってしまうからです。
     とは言え,非常に強い手の場合には,新しいスートをビッドすることもありえます。
      「レスポンダが新しいスートをビッドするのはフォーシング」
    という約束は,ここでも成り立ちます。正確に言うと
      「ゲーム未満の代で 新しいスートを返すのは フォーシング」です。

  5. あなたLHOPardRHO
    3 パス 3 パス
    ?
    たとえば,オークションが右のように進んだとき,パートナーの 3 はフォーシングだから, 私は何かビッドしなくちゃいけない …。何をビッドすればいいんでしょうか。

    ―― 全体の状況をよく理解する必要があります。
    あなたの 3 は,3 ダウンを覚悟のプリエンプト。それに対して,パートナーの 3 も同じく 3 ダウンを覚悟のプリエンプト … というのは,全く意味がありません。
    パートナーの 3 は,非常に良い手で 4 を狙っているのです。
      ですから,あなたに のサポートが 3 枚あるとか,あるいは 2 枚でも Qx くらいなら,4 を 返します。

  6. をサポートできない場合には ?

    ―― その場合には,4 をビッドします。この 4
       「さっきの 3 以上に,お知らせすることは何もありません」
    という意味です。あとは,パートナーが判断してくれるはずです。

  7. ここまでの説明は,3 以上の代のプリエンプトが中心でした。
    2 の代のプリエンプトでも
      [A]  レスポンダが新しいスートをビッドするのは フォーシング.
    というのは,同じですか ?

    ―― 5〜10 HCP で 6 枚の良いスートを持っているとき,2, 2, 2 で プリエンプト・オープンすることを,ウィーク 2 と言います。
    ウィーク 2 に対する取り決めは,上の [A] が多いですが,
      [B]  レスポンダが新しいスートをビッドするのは ノン・フォーシング.
    という取り決めも,初心者には有力です。
     ちなみに 「25 のコンベンション」は,[A] を採用しています。

      3 以上の代のプリエンプトとその答え方は,ここで終わりです。
      以下,2 の代のプリエンプト (ウィーク 2) へ話が続きます。
      なお,強い手を持つディフェンス側がプリエンプトに対抗する手段は,続編で説明します。


ウィーク 2

  1. ウィーク 2 を,あらためて 説明していただけませんか ?

    ―― はい。
    ウィーク 2 は プリエンプトのビッドで,上の説明に含まれていますが,でも プリエンプトの中では一番よく現れるビッドなので,ここで 別に取り分けて 説明しましょう。
     2, 2, 2 で オープン (またはジャンプ・オーバーコール) するのが,
    ウィーク 2 です。

    ウィーク 2 (あるいは,2 の代のジャンプ・オーバーコール) の条件の基本は

    1. (1)  5 〜10 HCP である。
    2. (2)  6 枚のしっかりしたスートがある (A〜10 のうちの 3 枚)
    です。このほかにウィーク 2 の望ましい条件として
    1. (3)  ほかに 4 枚のメジャースートが無い。
    2. (4)  ボイドが無い。
    3. (5)  5 〜10 HCP であっても,Q や J  がサイド・スートに パラパラ散らばっている手でウィーク 2 すべきではない。
    があります。

  2. ずいぶん,いろんな条件があるのですね。

    ―― はい。これを はみ出してビッドすることもありますが,でも 原則を理解しておくことは大切です。

  3. はじめに,(1) HCP の条件が 10 HCP までとなっていますが,11 HCP の場合には ?

    [a] 3 2
    K Q J 8 4 3
    A J 5
    7 4
    ( 11 HCP )
    ―― その場合には,1 の代でオープンできます。
    6 枚のスートと 11 HCP があれば ルール・オブ 20 の 条件を満たします。たとえば この手なら
     ハート 6 枚 + ダイヤモンド 3 枚 + 11 HCP = 20
    となるので 1 オープンします。

    [b] 3 2
    8 4
    J 7 5
    K Q J 8 4 3
    ( 7 HCP )
  4. それでは, が 6 枚の場合には どうするのでしょうか ?

    ―― うーん。2 オープンしたいところですが,それダメ。 2 オープンは,非常に強い手を示すことになっていますから … 。
    仕方がないので,この手では 3 オープン します。
      このように,3 オープンは 7 枚よりも 6 枚のことが多いので,レスポンダは注意する 必要があります。

    [c] 9 8 5 4 3 2
    6 2
    K J
    10 7 6
    ( 4 HCP )
  5. では 次に,こんな手の場合。
    これで 2 オープンしていいでしょうか ?

    ―― ボロの 6 枚ですね。たしかに, を切り札にすれば,3 トリックは取れるかも知れない …。
    プリエンプト・オープンには,いくつかの目的があります。
    その一つは,もちろん,「相手側への妨害」です。
      でも,そのほかに,パートナーに オープニング・リードの情報を伝えるという目的もあります。
      この手で 2 オープンして左オポがディクレアラーになった場合, パートナーは,間違いなく を打ち出してくるでしょう。
      「しっかりしたスート」が必要なのは,そのためでもあります。
    このハンド [c] では,パスします。

  6. 上の 4 つの条件のうちで,条件 (1)(2) は何となく分かりますが,
    条件 (3) には どういう意味があるのですか ?

    ―― もしも 4 枚のメジャースートがあって,パートナーも同じスートに 4 枚を持っていると,それを切り札にした場合,あなたの 6 枚のサイド・スートがトリックを 取る大きな助けになります。
     こういう場合に あなたが ウィーク 2 オープンしてしまうと,ゲームを取り損ねる可能性があります。
      ですから,4 枚のメジャースートがあるときには,ウィーク 2 オープンしない方が良いのです。
     ただし,パートナーが既にパスした場合 (あなたが三番手の場合) には,この条件を無視して構いません。

  7. 3 枚のメジャースートを持っているときでも,ウィーク 2 はいけないと言う人がいるようですが …。

    ―― そう言う人もいますね。これについては,私が計算した確率の数字をここに挙げておきます。 結果は,その表を見れば分かるように
       自分が 4 枚のスートを持っているとき,
         パートナーが同じスートに 4 枚以上を持つ確率 = 33.7 %
       自分が 3 枚のスートを持っているとき,
         パートナーが同じスートに 5 枚以上を持つ確率 = 18.1 %
    です。上の方は 3 回に 1 回 の割合で起こり,下の方は 5.5 回に 1 回 の割合で起こります。 ここから先は 自分で判断するしかありませんが,3 枚の場合にまで神経を使うのは,却って損だと私は思います。
     それから 念のために書き添えておくと,上の確率の数値は,自分が他のスートに 6 枚持っているかどうかとは 無関係です。

  8. それでは,条件 (4) は ? 「25」の本でも,ボイドはいけないように書いてあるけれど その説明が無いものですから …。

    [d] K Q 9 7 6 2
    9 7 3
    Q 10 8 4
     ―
    ( 7 HCP )
    ―― ボイドがある手は 見かけよりずっと強力です。
    たとえば がボイドのこの手の場合, パートナーの手によっては  4 とか 5 があるかも知れない。
      のボイドは,非常に強力です。
    ただし,この条件も パートナーがパスした場合 (あなたが三番手の場合) には,無視して構いません。

  9. [案外多い] 実際に ウィーク 2 を使ってみたところ,その機会が案外に多いですね。 私がビッドしすぎなのかな。

    ―― ひとりに 6 枚のスートが配られる確率は,きちんと計算すると,16.5% あります。 ほぼ 6 回に 1 回の割合です。
    ちなみに,その次が 4 枚で 35.1%,5 枚が 44.3% で一番多い。


ウィーク 2 に答える

  1. ウィーク 2 オープンに対して,レスポンダは どう考えたらよいですか ?

    ―― レスポンダのビッドは,次の 4 種類です。

    • (1)  パス.
    • (2)  オープナーのスートを上げる (オープナーは,これを必ずパス).
    • (3)  2NT をビッド (問い合わせ,フォーシング).
    • (4)  新しいスートをビッド (ゲーム未満ならば フォーシング).

  2. どれが多いのですか ?

    ―― 非常に多くの場合,(1) パス,または (2) 上げる を選びます。

  3. それはなぜ ?

    ―― たとえば,ウィーク 2 オープンから パートナーの持っているカードを想像しましょう。
      パートナーは に良い 6 枚のカードを持っている。それ以外は貧弱です。 なので,なるべくパートナーの長い 活かそうと考える …。
      ここが 大切です。 を 切り札にして何トリック取れるかを数えます。
    この数え方はさっき説明しましたね。そして,取れるトリック数に応じた代で を ビッドします (あるいは,パスします) 。これが基本です。
      慣れないうちは,パートナーの手を想像できないために,自分の手たけで ビッドを考えがちですが,この基本を大切にして下さい。

  4. ハンドの例を挙げていただけませんか ?

    [a] K Q 3 2
    Q
    A K 7 4
    K Q 6 2
    ( 17 HCP )
    NorthEastSouth West
    2 パス 4
    ―― こんなハンド …。
    この場合には,パートナーの 2 に対して 4 と応えます。
      慣れないうちは,ここで 3NT をビッドしたく なるものです。けれども,パートナーの手を想像してみれば  3NT は具合悪いことが判ります。
     NT のカード・プレイには エントリが必要です。
     もしも パートナーの手に しかエントリが無ければ,パートナーの は 無用の長物になってしまいます。
      パートナーの 2 は 「 を切り札にして 5 トリック取れます」と言っているので, それを信頼しましょう。自分の手で 5 トリック補えるのならば,5 + 5 = 10 トリック取れるので  4 をビッドします。
    補う 5 トリックの内訳は, 1, 1, 2, 1 トリックです。

  5. それでは 同じタイプで これより弱い手の場合には ?

    [b] K 9 3 2
    8
    K 10 7 4
    A Q 6 2
    ( 12 HCP )
    ―― この場合には  2 をパスします。
    2NT などというビッドは,考えません。
    2NT は,すぐ下で説明するように 別の意味に使います。

  6. ひとつ上げて 3 をビッドするのは どんな場合ですか ?

    ―― 上に説明したように考えて,合計 9 トリック取れそうなら (自分の手で 4 トリック補えると思えば),  3 をビッドします。
      しかし 多くの場合,それよりも弱い手で 3 をビッドします。

    [c] 10 7 4 3
    K 9 4
    6 4
    A Q 6 2
    ( 9 HCP )
  7. たとえば … ?

    ―― たとえば こんな手です。
    ここで 3をビッドしてもダウンすることは明らかです。 でも 味方に切り札が 9 枚あることが分かっているので,それを頼りに (ほとんど それだけを頼りに)  3 をビッドします。
    相手側の方が ずっと良い手を持っている筈なので,それを牽制します。
      このように 9 枚の切り札で 3 の代をビッドするのは,「合計トリック数の法則(LoTT) 」に基づきます。

  8.  3 に上げるのが そういう意味だとすると,2 をビッドした オープナーは, ずっと黙っていなければいけませんね。

    ―― はい,それはとても重要です。一般に
        プリエンプターは,2 度鳴かない
    とか
        RONF (Raise is the Only Non-Forcing bid.)
    と言います。
      ですから,プリエンプト (オープンでもオーバーコールでも) をするときには,目いっぱいの代で 思い切って ビッドします。
      そして その後は,ず〜っと黙っています。必要な情報を 最初にパートナーに伝えたので,あとは パートナーに判断してもらいます。


2NT コンベンション (フィーチャーとオガスト)

  1. レスポンダが良い手の場合には,4 がメイクするかどうかの判断が 微妙なことがありますね。オープナーの手が良ければメイクして,悪ければダウンすることも …。

    オープナー RHO あなた LHO
    2パス 2NT
    ―― はい。判断が微妙な場合,レスポンダは 2NT をビッドして「問い合わせ」をします。 この 2NT は  1 回フォーシングです。

  2. その 2NT をビッドするのは 何点くらいから ?

    ―― 点数よりも 何トリック取れるかが ここでは特に重要ですが,でも目安としては  13 HCP くらいからです。

  3. その根拠は ?

    ―― パートナーの手が一番良い場合を想定すると,10 HCP です。
    これに 6 枚カードの LP 2 pts を加えると, 12 pts となります。
    レスポンダのあなたが 13 pts を持っていると,合計で 25 pts …。
    これなら ゲーム (3NT, 4) の可能性があります。

  4. じゃぁ,13 pts 持っていたら,いつでも 2NT と ?

    ―― いいえ,そうではありません。13 pts は 必要条件です。
    これくらいの強さがあれば,ゲームがあるかも知れないと考えてみる …。
    もちろん,サイド・スートに  Q  とか  J   がパラパラ浮いている手では 意味が ありません。 あくまでも トリックを取れるかどうかが重要です。

  5. それで その 2NT には どう答えるのですか ?

    ―― この答えかたは,
      (1)  フィーチャー (feature-showing)
      (2)  オガスト (Ogust)
    の 2 通りがあります。
    どちらを使うかは,パートナーと あらかじめ取り決めておきます。

    2NT 問い合わせに対する ウィーク 2 オープナーの答えかた

    フィーチャー 2NT

    • 8〜10 HCP の場合:
       切り札以外に A または K があれば  3 の代でそのスートをビッド.
       切り札に A K Q ( または A K J ) が揃っていれば  3NT をビッド.
    • 5〜7 HCP の場合:
        最初にビッドしたスートを 3 の代で リビッド.

    オガスト 2NT

    切り札の内容と HCP を,5 通りのビッドにより示します。
    切り札の内容  3 枚あり  2 枚あり  1 枚あり
     A K Q のうち 
    3NT
    8〜10 HCP 3 3
    5〜7 HCP 3 3

  6. どんなふうに これを使うのですか ?

    [d] A J 5
    K 9 4
    6 4
    K Q 6 2
    ( 13 HCP )
    NorthEastSouthWest
    2 パス 2NT
    ―― 右の手を持っていて,パートナーが 2オープンしてきた。 ここで 2NT をビッドします。フィーチャー 2NT を使っていて,オープナーの返事が 3 ならば,4 を確実にビッドできます。

  7. フィーチャーとオガストのどちらを使えばよいのですか ? … あるいは,どうして 2 通りが あるのですか ?

    ―― ブリッジの本が標準として採用しているのは,フィーチャーです。
    これには 次のような理由がある。
      ウィーク 2 の基本として,切り札の内容が良いことが必要です。
    具体的には,前に書いたように
         A K Q  のうちの   2 枚
    あるいは
         A K Q J 10  のうちの   3 枚
    という基準です。
     この基準を守っている限り,フィーチャーを使うのが分かりやすい。
    オープナーのカードについて 具体的な情報が得られるので,レスポンダは判断しやすい。
      ところが 実戦では,本に載っているハンドばかりが出てくるわけではありません。そこで 実際には,この基準を満たさない切り札でも,ウィーク 2 をビッドすることがある。
      その結果,本来は必要ないはずの切り札の質を 問い合わせる」必要が生じます。この必要に応えるのが オガストです。

  8. それでは 最後に,ウィーク 2 オープンに対して 新しいスートをビッドするのは ?

    ―― これは,レスポンダがほんとに良い手を持っている場合です。
    自分のスートでゲームが狙えるような場合です。
    3NT を狙っていることもあります。

  9. この場合もフォーシングなんですね ?

    ―― はい。レスポンダがジャンプしてゲームをビッドした場合にはパスしますが,ゲームに達しない代で新しいスートを ビッドした場合には,1 回フォーシングです。ウィーク 2 オープナーは 何かビッドしなければいけません。

  10. その場合に オープナーは 何をビッドすればよいのですか ?

    ―― レスポンダのスートを 3 枚 (あるいは Qx の 2 枚) 持っていれば,サポートします。
     サポートできない場合には,フィーチャーの答え方をします。


スラムをビッドする

スラムに必要な手の強さ.   …   114‐115.
ブラックウッド (Blackwood).   …   116‐117.
ボイドがある手での答えかた.   …   117‐118.
5NT で止まるには ….   …      119.
ブラックウッドの間違った使いかた.   …   120‐121.
ブラックウッドだけでは足りない.   …   122‐123.
定量 4NT (ノートランプでのスラム).   …   124‐126.
ガーバー (Gerber).   …      127.
ガーバーの間違った使いかた.   …   128‐129.
4NT の意味が不明な場合.   …      130.
ステイマンに続くスラム・トライ.   …   130‐132.

スラムに必要な手の強さ

  1. 私は まだブリッジを始めたばかりです。
    いつかは,スラムをビッドしてメイクしたい …。

    ―― 始めのうちは,スラムを考えずに,ビッドの考え方に慣れることをお勧めします。 ゲームがあるハンドだったら,確実にゲームをビッドできるようになる … これが,最初の重要な目標です。スラムは, それができるようになった後で考えましょう。

  2. それにしても,スラムを作るには どの程度の強さがあれば ?

    ―― 大まかな目安として,
      スモール・スラム (12 トリックを取る) には,33 pts
      グランド・スラム (13 トリック全部を取る) には,37 pts
    が必要だと言われています。

  3. この点数 (pts) というのは,ダミー点を含めた数字ですか ?

    ―― HCP に 長さ点 (LP) または ダミー点 (DP) を 加えた数字です。

  4. [経験値の確かさ] それで … ずっと前に出てきた ぼこさんの 何とか言うソフトウェアを使うと 上の数字を確認できるのですか ?

    ―― はい,できます。
    スラムについて BridgeGame25 により得られたグラフを示しましょう。
     経験値として広く知られている 33 pts より 1 pt だけ少ない 32 pts で
    スモール・スラムの成功確率が 65〜70% に達します。
     この数字 32 pts は 6NT と 6 スートに ほぼ共通です。

  5. これだけの点数を持っていれば,スラムが必ずできるということ ?

    ―― いいえ,そうではありません。
    二人合わせてこれだけの強さでも,スラムができないこともあります。
    その反対に,これより弱い手でも スラムができることがあります。
      とくに,スート・コントラクトでは, 切り札でラフすることによりトリックを取れるので,合計 30 pts くらいでスモール・スラムができることも 珍しく ありません。大まかな目安の数字とお考えください。

  6. では,二人合わせて それだけの点数を持っていることが,ビッド経過から分かったら,スラムを ビッドしてよいのですか ?

    ―― はい。それでよいのですが,スート・コントラクトでは,確認のために (念のために) ブラックウッド というコンベンションを使います。

  7. どうして確認が必要なのですか ?

    ―― Ace が 2 枚抜けていると,スラムがダウンします。そこで,Ace が 3 枚揃っていることを確認する 必要があります。そのために使うのが ブラックウッドです。


ブラックウッド (Blackwood)

  1. たとえば,どんなふうに ?

    ―― あなたは こんな手を持っている …

    A K Q 2
    K Q 8 3
    A J 5 4
    9
    ( 19 HCP )
    LHOPardRHOあなた
    パス 1 パス 4NT
    19 HCP の良い手です。そこへ パートナーが 1 オープンしました。 あなたは の良いサポート 4 枚の強い手を持っています。 を切り札にすることに異存はありません。 あなたは,A は 2 枚持っています。 そこで,4NT をビッドして パートナーに A の枚数を尋ねます。 これが,ブラックウッド(Blackwood) と呼ばれるコンベンションです。

  2. それに対して,パートナーは何と答えるのですか ?

    ―― A の枚数に従って,次のように答えます。
         5 … A が 0 枚,または 4 枚のとき
         5 … A が 1 枚のとき
         5 … A が 2 枚のとき
         5 … A が 3 枚のとき

  3. なるほど。それで,パートナーの返事がもしも 5 ( 0 枚 ) だったら,私は 5 をビッドすればいい。 もしも返事が 5 ( 1 枚 ) だったら,A が合計して 3 枚あるから,6 ( スモール・スラム ) をビッドする …。

    ―― はい。その通りです。
    この例のように,手の強さが十分あることが分かっていて,
    その上でエースの枚数を 念のために確かめる …。
    これが,ブラックウッドの基本です。

  4. ブラックウッド 4NT で A が 4 枚そろっていることが分かって, さらに K の枚数も知りたいということもあるでしょうが …。

    ―― その場合には,さらに続けて 5NT をビッドします。
    これに対して,パートナーは,K の枚数に 従って
         6 … K が 0 枚のとき
         6 … K が 1 枚のとき
         6 … K が 2 枚のとき
         6 … K が 3 枚のとき
         6NT … K が 4 枚のとき
    と答えます。
      念のために付け加えると,この 5NT をビッドするときには,切り札が 4 枚そろっていることが前提です。 切り札が欠けているのに,欲張って 5NT をビッドしてはいけません。グランド・スラムの有無を探るのが,ブラックウッド 5NT の 目的です。


ボイドがある手でのブラックウッドへの答え方

  1. ブラックウッドでは,A の枚数を答えるという説明でしたが,ボイドがあるときには,どうしたらいいでしょうか ?  ボイドも含めて答えるというのは … ?

    ―― それは 危険です。先ほどのあなたの手に対して
    パートナーがこんな手を持っているとしましょう。

    (パートナー)
     ―
    A J 10 5 4 2
    K 10 8 3
    K Q J
    ( 14 HCP )
        
    (あなた)
    A K Q 2
    K Q 8 3
    A J 5 4
    9
    ( 19 HCP )
    ここで もしもパートナーが,A 1 枚に加えて, がボイドなので,実質的に A が 2 枚であると考えて, 4NT に対して 5 を答えると,あなたは A が 4 枚全部そろっていると 誤解する。そして,さらに 5NT をビッドするでしょう。そこで,K も 4 枚 そろっていることが分かると, 喜んで 7 を ビッドするでしょう。 でも A が欠けているので,グランド・スラムはダウンします。

  2. それでは,ボイドがある手では ブラックウッドに対して何と答えるのですか ?

    ―― 次のように約束します。
      (1) A  1 枚とボイドがある手:
      ボイドのスートを 6 の代でビッドします。
      ただし,6 の代が 切り札のスモール・スラムを越えるときには,スモール・スラムをビッドします。

    LHOPardRHOあなた
    パス1パス4NT
    パス6
    たとえば 上の例のオープナーは A と のボイドを持っています。
      あなたのブラックウッド 4NT に対して,もしも 6 を ビッドすると 6 を越えてしまうので, 6 をビッドします。 これにより,オープナーの がボイドであり, または に A があることが分かるので,あなたは 6をパスします。

  3. もしも,オープナーからの返事が 6 だったら ?

    ―― その場合には,二人の手は最高です。グランド・スラムが確実です。
    7をビッドしましょう。

  4. A が 2 枚でボイドがある場合には ?

    ―― (2) A 2 枚とボイドがある手では, 5NT をビッドします。

  5. それでは,A が 0 枚とか 3 枚で,ボイドがある場合には ?

    ―― そういう場合には,ボイドを伝えることに大して意味がありません。
    普通に 5 とか 5 をビッドします。


5NT コントラクトで止まるには

  1. ブラックウッドを使っていて,困ることがあります。
    (あるいは ) が切り札の場合です。
    4NT で A の枚数を訊いて,その結果,A が合計 2 枚で スラムが無いことが分かった。そこで 5 の代で止まりたいのですが,もう それは無理。せめて 5NT で止まりたい。
      でも,ここで 5NT を自分がビッドすると パートナーはブラックウッドの 続きだと誤解します。どうしたらいいんでしょうか ?

    K 2
    Q 3
    K Q
    A K J 10 6 4 3
    ( 18 HCP )
    PardLHOあなたRHO
    1 パス 2 パス
    3 パス 4NT パス
    5 パス ?
    ―― 確かに そういうことは ありえます。
    たとえば,あなたがこの手を持っていて パートナーが 1 オープンしました。
     ビッドの経過から もしも パートナーに A が 2 枚あれば 6 ができるので, ブラックウッド 4NT をビッドしました。ところがパートナーの A は 1 枚。スラムは無い。5 には もう戻れません。 愕然 !
      ここで可能なコントラクトは 5NT です。
    でも,自分から 5NT をビッドすると,ブラックウッドの継続になってしまい, 5NT で止まることはできません。
    PardLHOあなたRHO
    1 パス 2 パス
    3 パス 4NT パス
    5 パス 5 パス
    5NTパスパス

      ここでは,プレイ不可能なスート (Unplayable Suit) をビッドすることにより, パートナーに 5NT でサインオフしてもらいます。
      オークションは,結局 次のようになります。
    突然 現れた にパートナーは驚くでしょうが その意味を理解するはずです。

ブラックウッドの間違った使い方

  1. ブラックウッド (4NT) というのは,結局のところ,パートナーをスラムへ誘うためのビッドなのでしょうか ?

    あなたLHOPardRHO
    1 パス 2 パス
    3
    ―― そうではありません。
    いま 誘う という言葉が出ましたが, 右のビッド経過で 3 は まさしく パートナーをゲーム (4) に 誘う ビッドです。この 3
      「パートナーさん,もしも良い手なら 4 をビッドして下さい。
       さもなければ,パスして下さい」
    と言っています。
      ところが,ブラックウッド 4NT は,そういう意味の (パートナーの手の 強さ を知るための) 誘いのビッドでは ありません。
    ここのところがよく誤解されるようです。ブラックウッド 4NT は
     「パートナーさん,二人の手が十分強いことは 既に 分かっています。
      たぶんスラムができるでしょう。
      でも,念のために A の枚数を確認させて下さい。
      A が 2 枚抜けていてダウンするのは,恥ずかしいですから」
    と言っているのです。
      よく思い違いがあるので,あたりまえのことですが,強調しておくと
      ブラックウッドを使って知ることができるのは  A の枚数だけである。
      手の強さについての情報は何も得られない。

  2. うーん。ブラックウッドは 分かりやすい単純なビッドだと思っていたのですが …。

    ―― ブラックウッドは  A の枚数を尋ねる人工的なビッドです。使い方は単純で分かりやすいので,非常によく使われています。 でも,
       「点数ありそうだから,とにかくまずブラックウッド。
        あとは,パートナーの返事を待って考えよう」
    というようなのも,結構見かけます。しかし,これは ブラックウッドの間違った使い方です。 ブラックウッドについては, 山田和彦さんの講座に丁寧な説明があります。ぜひお読み下さい。

  3. ブラックウッドに向いてないハンドがあるのですか ?

    ―― はい。あります。
    次の場合には,ブラックウッドすべきではありません。
      (1) 切り札が確定していない。
      (2) 二人合わせて 12 トリック取れるだけの強さを持っていることが確認できていない。
      (3) ボイドを持っている人が,ブラックウッドを使ってはいけない。
      (4) すぐに負ける 2 枚の札を持っている人が,ブラックウッドを使ってはいけない。

  4. この条件 (2) で,「12 トリック取れる手」というのは,ずいぶん厳しい条件だと思うのですが …。

    ―― ここに書いてあるのは,「12 トリック取るだけの 強さ が必要」という意味です。
     たとえば,スモール・スラムの成否が Q のフィネスに懸かっているとしましょう。 つまり,
       Q のフィネスが 利けばメイク,利かなければ ダウン.
    という状況です。

  5. そういうことも ありますね …。

    ―― その場合には,スラムをビッドすべきなのです。

  6. ということは … 成功確率 50% なら,スモール・スラムをビッドしてよいということですか ?

    ―― はい。一般に そう考えられています。
    話をもとに戻すと,(2) で言っているのは,
       そのフィネスが利いたのにダウンした.
    という場合には,本来 ブラックウッドすべきでない,ということです。


ブラックウッドだけでは足りない …

  1. 上の説明では,スートのコントラクトだからといって
       「ブラックウッドを気安く使うのは間違いだ」
    ということでしたね。その前に手の強さを確かめる必要があると …。
    それから,ブラックウッドには向いてない手もあるとも …。

    ―― はい,そうでした。

  2. でも スラムに行くためのビッドで 私が知っているのはブラックウッドだけ … ほかにも スラムの判断をするための手段が あるのでしょうか ?

    ―― はい。あります。
    でも,どういうビッドの仕方があるかと言う前に,コントロールという概念を知っておくとよいでしょう。

  3. コントロールとは ? …。

    ―― スートのコントラクトでスラムを達成するには,もちろん,切り札が強いことが必要です。 でも そのほかに サイド・スート (切り札以外のスート) でも負けられません。
     ブラックウッドを使って A の枚数を確認するのは,そのためです。
    A を持っていれば そのスートで (逆にラフされる場合を除いて) 必ず勝てる。
    そういう意味で,
         [1] A は,第 1 コントロール
    と言います。もちろん,A の代りにボイドも有効なので
         [2] ボイドは,第 1 コントロール
    です。また スモール・スラムの場合には,1 トリック負けてもよいので,第 2 コントロールも意味を持ちます。 すなわち
         [3] K は,第 2 コントロール
         [4] シングルトンは,第 2 コントロール
    です。

  4. そういうのは,「ストッパ」と呼ぶのではありませんか ?

    ―― ノートランプのコントラクトで,たとえば
          Q J 10
    を持っていれば, が止まる。この 3 枚は の確実なストッパです。
    しかし スラムの場合には,この 3 枚は無力です。 で 2 回負けてしまいます。
    したがって,スラムを考えるときには 上の 4 種類のコントロールだけが有効です。

  5. はい。それで,その「コントロール」と ブラックウッドとの関係は … ?

    ―― ブラックウッド 4NT は A の枚数を尋ねます。 ここで調べているのは 上の 4 種類のコントロールの中の [1] だけです。 ブラックウッドを使った場合,A  が 3 枚あれば スモール・スラムをビッドするでしょうが, でも  A  の無いスートで 2 トリックを失う危険が残っています。
      コントロールについて 詳しく調べることができれば,スラムを正確にビッドできるはずです。
      また,有効なコントロールを揃えて持っていれば,少ない HCP でも
    (33 pts 無くても) スラムを達成できます。

  6. そうでしょうね。それで そのコントロール を互いに確認するビッドは ?

    ――「コントロールを示すビッド」(Control Showing Bids) というのを使います。
      また 切り札がメジャースートの場合には,その前段階として 「スプリンター」「ジャコビ 2NT」 が有効です。これらのコンベンションについては 別に説明します。
      この他に,4 枚の Ace に切り札の King を加えた 5 枚のカードの枚数を問い合わせる RKCB (Roman Key Card Blackwood) というコンベンションもあります。

     北ブリッジ倶楽部ホームページ: A 級コンベンション,RKCB をごらん下さい。


ノートランプでのスラム,定量 4NT

  1. ここまでのスラムは スート・コントラクトの場合でしたね。
    ノートランプでスラムに 行くにはどうすれば ?

    ―― ノートランプでのスラムは,オープニング・ビッドがノートランプのことが多いので,その場合に 話を限りましょう。
    次の 4 つの場合に分類できます。

    Pard LHO あなた RHO オープナーの HCP 
    (A) 1NT パス ? 15〜17 (3 点幅) 
    PardLHOあなたRHO
    (B) 1 パス 1 パス
    2NT パス ? 18〜19 (2 点幅) 
    PardLHOあなたRHO
    (C) 2NT パス ? 20〜21 (2 点幅) 
    PardLHOあなたRHO
    (D) 2 パス 2 パス
    2NT パス ? 22 〜          

  2. それで 私の手がノートランプに向いていて,6NT とか 7NT が狙えそうな場合には どうビッドすれば ?

    ―― その場合のビッドの仕方は簡単です。定量 4NT を使います。
    ただし,その前提になるのは
         6NT  … 33 pts
         7NT  … 37 pts
    という数字です。

     レスポンダの強さ  6NT の可能性 
    (a) 15 ptsなし
    (b) 16 pts不明
    (c) 17 pts不明
    (d) 18 ptsあり
      例として (A) の場合について,6NT の可能性を考えましょう。
     1NT オープンは 15〜17 HCP を保証します。 このとき,レスポンダの点数により 右の 4 通りがありえます。

  3. たしかに,この 4 通りです。
     (a) 15 pts の場合には,オープナーの上限が 17 HCP だから合計 32 pts 以下であり,スラムは無い。
    一方 (d) 18 pts の場合には,オープナーの下限が 15 HCP だから,合計 33+ pts あって,6NT は 可能である。 この 2 つの場合には,レスポンダが自分ひとりで判断できます。

    ―― したがって,(b) と (c) の場合に,レスポンダは 4NT をビッドして 問い合せます。この 4NT を ブラックウッドと区別して 「定量 4NT」と呼びます。

  4. その定量 4NT に対して,オープナーは どうビッドするのですか ?

     オープナーの HCP  オープナーのビッド 
    15 HCPパス
    16 HCP5NT
    17 HCP6NT
    ―― 右の表に従って答えます。
    オープナーのビッドが 5NT ならば 16 HCP であることが分かるので,あとは レスポンダが自分で判断します。

  5. ふーぅっ。数字がたくさん出てきて …。 この数字を全部覚えるんですか ?
    それに,このほかに (B), (C), (D) の場合もあるんですね …。

    ―― 覚える必要は 殆んど無いのです。
    記憶する必要があるのは,33, 37 というマジック・ナンバー。
    それに 15〜17 HCP.  あとは,3 点幅,2 点幅,2 点幅。
    それから後は,その場で考える。

  6. みなさん,そうやってその場で考えているんですか ?

    ―― はい。その場でその度に計算しています。
    上に説明した考え方を理解して下さい。
    理解すれば,ほとんど暗記の必要が 無いことが 分かるはずです。

  7. ここで出てきた 4NT というビッドは,A の枚数を訊いているのではないんですね ?

    ―― この 4NT は ブラックウッドではありません。
    定量 4NT (Quantitative 4NT) と呼ばれています。
    点数の数値 (量) だけでスラムに行くか行かないかを判断しています。
    言い換えると,定量 4NT は パートナーを スモール・スラムに 誘う ビッドです。

  8. でも そうすると,ちょっと分からないことが出てきた …。
    スート・コントラクトの場合には,あんなに A の枚数に気を使って 「念のために」ブラックウッドで A の枚数を確認しましたね ?
    ノートランプの場合には,その必要が無いんでしょうか ?

    ―― スモール・スラムに必要な 33 というのが 微妙な数字です。
    A が 2 枚欠けていると,33 HCP には 1 HCP だけ 足りません。

  9. 確かに,HCP だけだとそうですね。でも レスポンダは 長さ点 (LP) を加えて点数を数えるから, A が 2 枚抜けることもありうるのでは ?

    ―― たしかにありえます。
    もしも その 2 枚がディフェンダの手にあれば, 6NT は ダウンします。
    その危険は確かにありますが,でも 6NT に絶対に必要なのは 手の強さです。もちろん, 手の強さと A の枚数を両方とも確認できれば言うことはありませんが,ノートランプのコントラクトで その両方を確認することはむずかしい。そこで,おっしゃるような危険は小さいと考えて,あくまで定量で スラムの判断を決めようというわけです。

  10. ノートランプでスラムに行くときに,A の枚数を確認するのがガーバーだと思っていたのですが …。

    ―― いいえ。そうではありません。
    それも よくある誤解です。
    では,ガーバーへ話を進めましょう。


ガーバー

  1. ガーバーも,(ブラックウッドと同様に) A の枚数を尋ねるビッドですね ?

    ―― はい。
    パートナーが 1NT または 2NT をビッドした直後に 4 をビッドするのが, ガーバー (Gerber) コンベンションであり,A の枚数を尋ねます。
    たとえば,

    PardLHOあなたRHO
    (a) 1NT パス 4
        
    PardLHOあなたRHO
    (b) 1 パス 1 パス
    1NT パス 4
  2. ほら !
    やっぱり ノートランプで A の枚数を確認するビッドじゃないですか …。

    ―― そこに誤解があるのです。
    確かにパートナーがノートランプをビッドした直後に ガーバーを使います。 でも,その目的が違います。
     ガーバーは ノートランプ以外のコントラクトを狙うときに使いまです。

  3. …・ ?

    ―― それについては,すぐ下で説明しましょう。
    とりあえず,ガーバーの説明を続けると …,
    パートナーはこれに対して,次のように答えます。
         4 … A が 0 枚,または 4 枚
         4 … A が 1 枚
         4 … A が 2 枚
         4NT … A が 3 枚
    さらに,A が 4 枚揃っていることが分かった場合には,これに続けて 5 をビッドして, K の枚数を訊くこともできます。そのときには
         5 … K が 0 枚
         5 … K が 1 枚
         5 … K が 2 枚
         5NT … K が 3 枚
         6 … K が 4 枚
    を答えます。


ガーバーの間違った使い方と正しい使い方

  1. それで,ガーバーをどう使うか … なのですが。
    私の考えでは,上の (a) の場合,もしも 私が 長さ点 (LP) を含めて 18 pts を持っているとき,1NT をビッドしたオープナーは 最低でも 15 HCP を持っているから,合計 33+ pts ある。そこで ガーバーを使って A の枚数を確認すれば,正確に 6NT をビッドしてメイクできると思うのですが …。

    ―― それは 合理的な考え方です。
    私も はじめの頃は 素直にそう信じていました。
    ブリッジの本のガーバーの項にハンド例が無く 単に「A の枚数を尋ねる」とだけ書いてあるのを読むと,そう考えるのが自然です。

  2. こういうふうに ガーバーを使うのは おかしいと … ?

    ―― いいえ,パートナーと相談して,そういうふうに ガーバーを使うのは 問題ないと思います。
     でも,そうすると 一つ損をすることがある …。

  3. どういう損が ?

    ―― あなたが 18+ pts を持っていないと 6NT をビッドできませんね。
    実際には,16〜17 pts でも その可能性があるのに。

  4. なるほど,それは損ですね。

    ―― もしも,無理して 16〜17 pts でガーバーを使うと,たとえ Ace 3 枚を確認できたとしても, 今度は手の強さが不足していて ( オープナーが 15 HCP の場合 ) ,ダウンするかも知れません。
      ブラックウッドのところでも触れたように,スラムを作るための基本的な要件は, 二人合わせた手の強さです。これが無いことには,話になりません。
      そういうわけで,現在のビッドの流儀では,ノートランプの場合,定量 4NT を使ってスラムを見つけることに なっています。

  5. Ace の枚数を問題にしないんですね ?

    ―― スモール・スラムを 33 pts ということにすれば,A が 2 枚抜けることは少ない。それよりも 手の強さを重視して考えます。

  6. だったら,ガーバーは どういう目的で使うのですか ?

    K Q J 9 7 4 3
    K Q 8
    A 2
    5
    ( 15 HCP )
    PardLHOあなたRHO
    (b) 1 パス 1 パス
    1NT パス 4
    ―― 全く別の意味で使います。
    たとえば この手で パートナーが 1オープンした場合には,上の (b) のようにガーバーを使います。 この場合,パートナーからの返事が
       4 (A なし) または 4 (A 1 枚) ならば  4 で止まります。
       4 (A 2 枚) ならば  6をビッドします。
      ガーバーを使うのは,このように 偏った手を持っていて,A の枚数だけから最終コントラクトを容易に決められる場合です。
      ガーバーは,このような性格のビッドなので,4 をビッドする前に よく (ブラックウッドの場合よりも よく) 考える必要があります。

  7. だったら,ガーバーを使う機会は 少ないのですね。

    ―― はい。ブラックウッドに比べて 出番は ずっ〜と少ないです。

  8. そんなら,ブリッジの入門書に ガーバーなんて書かないほうが良いのでは ?

    ―― はい。そう思います。
    実際,ブラックウッドしか説明していない本もあります。
    その方が 入門向きです。
     ブラックウッドとガーバーを続けて説明すると,似たようなものと 誤解する恐れがあります。
      まだ釈然としないようでしたら,下のリンク先をごらん下さい。
    英語ですが,ガーバーを使うハンド・ビッド例が 目の前に 3 つ 現れます。

  9. リファレンス
     David Lindop: "What's Standard ?" (2006) [PDF],  #22, Slam Bidding, Part Ⅳ: Gerber.


4NT の意味が不明な場合

  1. 結局,4NT というビッドは 2 通りに使われる。
     (1)  ノートランプを目指す場合には,4NT は定量の意味になる。
     (2)  切り札が確定している場合には,4NT は ブラックウッド
     この違いは,非常に はっきりしているはずなのですが,でも …。
     ビッドのやりとりが長くなると, どちらだか分からなくなることがあります。そういう場合には,どうしたら … ?

    ―― そういう場合に,「定量」と解釈してパスするのは 損をする危険が大きい。 判断がつかない 場合には,「ブラックウッド」と解釈して A の枚数を答えるのが良いでしょう。


ステイマンに続くスラム・トライ

  1. 1NT オープンにステイマン 2 を使うと,その後の 4NT は どういう意味なりますか ?

    NESW
    1NTパス2パス
    2パス4NT
    ―― 最初に,簡単な場合から …。
    この 4NT の意味は ?

  2. これは 簡単です。この 4NT は定量 4NT です。
     South は のどちらかを 4 枚持っていたので,ステイマン 2 を使いました。そして North がどちらも持っていないことを知って, でも とても強い手なので,6NT があるかどうかを打診するために 4NT をビッドしたのです。
    NESW
    1NTパス2パス
    2パス4NT

    ―― その通りです。では,この場合には ?

  3. ここでは,
      (A) South は を 4 枚持っていたので ステイマンを使いました。 ところが North が持っているのは 4 枚だと分かったので, さっきと同じように定量 4NT。
     いゃ,それとも
      (B) South が 自分も を 4 枚持っていて, でフィットしたことが分かったので,A の枚数を知りたくて ブラックウッド …。
     どっちなのかな ?

    NESW
    1NTパス(2)パス
    (2)パス4NTパス
    ?
    ―― この 4NT は,さっきと同じ定量 4NT です。
    つまり (A) が正しい。
    2 と 2 を括弧で括って考えます。

  4. ここで オープナーは何をビッドするのですか ?

    オープナーの
    HCP
     オープナーのビッド 
    2〜3 枚 4 枚
    15 HCPパス5
    16 HCP5NT  5/6
    17 HCP6NT 6
    ―― レスポンダは,スペードを 4 枚持っているので ステイマン 2使いました。 ところが,オープナーの返事は 2でした。
     それでも定量 4NT をビッドしたのは  16〜17 pts を持っているからです。
      この 4NT に対して,オープナーは
    の枚数と手の強さに従って 右のようにビッドします。

  5. だったら,もしも レスポンダ South が 4 枚ではなく を 4 枚持っていて,
       「切り札は に決まった。6 があるかも知れない」
    と思ったら,何をビッドするのですか ?

    NESW
    1NTパス2パス
    2パス 5
    ―― 5 が自然です。
    これは パートナーを 6誘う ビッドです。
    すなわち,
    「もしも North が 1NT オープンする上限だったら      6 をビッドして下さい。
      下限だったらパスして下さい。」
    と言っています。
     スラムに誘うこのようなビッドを見るのは,初めてかも知れません。
    しかし,ゲームに誘うビッド (3) は よくご存じでしょう。

  6. それで,もしもブラックウッドと同じような意味で A の枚数を訊きたければ ?

    ―― そういう必要はあまり無いでしょう。
    この場合には,手の強さだけで決められる。

  7. でも,さっき スートでのスラムには コントロールが必要だって …。

    ―― あっ,逆手を取られたか …。
    今の場合には パートナーがバランス・ハンドで 1NT オープンしています。
    したがって,手の強さがあれば十分で コントロールを さほど気にしなくてよいでしょう。

  8. でも,A の枚数をどうしても知りたかったら ?

    NESW
    1NTパス2パス
    2パス4
    ―― その場合には ガーバーを使います。
    これは,ガーバーの例外的な使い方です。
    ガーバー 4 は, を切り札にして A の枚数を North に尋ねます。ここで South は を 2 回ビッドしていますが, どちらも人工的な意味であり, については 何も言っていません。でも,このガーバーは誤解を生じやすいので,なるべく避けるのがよいでしょう。

  9. NESW
    1NTパス2パス
    2パス 3
    だんだん話が複雑になってきた。
    もしもここで (ステイマンに続けて) 3 をビッドすると, どういう意味になるんですか ?

    ―― 5 枚の良い を持っていて,もしもオープナーと でフィットすれば でスラムがあるような手です。
    つまり,でスラムを狙う場合に ステイマンを経由してビッドします。
      1NT オープンに対して長い を持っている場合の対応は 別に説明します。


コンベンション (初級)

  コンベンションとは   …     133.
  コンベンションの必要性   …   133‐134.
  初級コンベンション   …     135.

コンベンションとは

  1. 私は ブリッジを始めたばかりで,"コンベンション" というのを ほとんど知りません …。 そもそも,"コンベンション" って何ですか ?

    ―― コンベンションの分かりやすい例は,ステイマン (Stayman) です。
    本来,2 というビッドは の強さを示します。しかし ステイマンでは,1NT オープンしたパートナーとの間で 4 枚のメジャースートの フィットを探すために 2 というビッドを転用します。
     このように,本来のコールの意味とは違う意味に転用されたコールを,コンベンション(conventions) と呼びます。


コンベンションの必要性

  1. それで,そのコンベンションというのは,よく使うものなのですか ?

    ―― ステイマンや ウィーク 2 のようなコンベンションは よく使われます。 しかし,普通に "コンベンション" と言うときには,もっと特殊な転用ビッドを指します。 そういうコンベンションが使われる機会はそんなに多くありません。

  2. そうですか … ブリッジを勉強するのは (あるいは,ブリッジに上達するのは) コンベンションを 覚えるのと同じなのかと思っていましたが …。

    ―― いいえ,それは間違いです。絶対に間違いです。
    たしかに,いろいろなコンベンションをよく (正確に) 理解して,使うべきところで使えば,良い成果が 挙げられます。でも そういう機会はそんなに多くありません。圧倒的に多くの場合に重要なのは 判断 (judgement) だと 言って間違いありません。
     ビッドやカードプレイの経験を通して ブリッジの考え方を身につけ,その場に応じて正しい判断ができるように なることが,ブリッジの本来の勉強です。その過程で,「コンベンションを覚えたほうがいいかな」と 必要を感じたら,少しずつ覚えていけばいいでしょう。はじめから無理をしてコンベンションを丸暗記しようなどと考えるのは,馬鹿げています。

     分かりやすく言うと (却って分かりにくいかも知れないが)
         ふつうのビッド  =  自然言語
         コンベンション  =  人工言語
    という言い方も できます。
     「自然言語」は 私たちが 普通に書いたり話したりしている言語です。
     「人工言語」は 特別の符牒に特別の意味を持たせた人工的な言語です。
    私たちがこの世に生まれてきて身につけるのは,もちろん 自然言語です。これを上手に使えるようになるだけでも 大変です。
     ブリッジの世界でも,これは同じです。
     自然言語だけでも かなりの奥行きがあります。

  3. でも 実際にブリッジすると,知らない言葉をあれこれ言う上級者がいて,肩身の狭い思いをすることがあります。

    ―― 知らないことを言われたら,「知りません」と はっきり言えばいい。
    初級者に肩身の狭い思いをさせる上級者は,あなたの目には「上級者」と映るかも知れませんが,ほんとの 上級者ではありません。たぶん,あなたよりは少し経験のある初級者です。

  4. そぅなんですか …。では,ほんとの上級者というのは ?

    ―― ほんとうの上級者は,あなたに合わせてビッドすることができます。
    つまり,特殊な飛び道具に頼らずに, 相手に合わせてビッドができるくらいにビッドの意味を理解していなければ,ほんとの上級者とは言えません。 そういう人は,概して親切です。
     あなたの知らないことが,とても基本的で どうしても必要なことだったら,説明してくれるかも知れません。 説明が面倒なら それを避けたビッドを考えてくれる筈です。

     ヤフー! ブリッジ・交流ラウンジのブリッジ教室でアドバイザをお引き受けして間もなく (2001 年冬),この教室の開設者である かずちゃん (skazumi さん) とお話したことを思い出しながら,ここまでを書き綴りました。


初級コンベンション

  1. 話を戻して … それにしても,どんな「コンベンション」が基本的なのでしょうか ?

    ―― さっきも言ったように,無理して覚える必要は無いのですが …。
     「25 のコンベンション」は 読みやすくて評判の高い本です。これは 必要度の順序を示しているという点でも良い本です。
     そこに書かれている順序を 私なりに少し並べ替えると …
      (1)  テイクアウト・ダブル.
      (2)  ステイマン (1NT オープンへの 2応答) .
      (3)  ウィーク 2.
      (4)  ネガティブ・ダブル.
      (5)  ブラックウッド.
      (6)  リバース・ビッド.
      (7)  ストロング・アーティフィシャル 2 オープン.
    といった感じです。
     普通の順序と大して変りありませんが,ネガティブ・ダブルが 4 位に入っているところだけが,少し違います。
     ネガティブ・ダブルが使えると,ビッドの機会が増えます。
    ブリッジの世界が 一回り広がるような感じで 楽しさがふえるので,ビッドが 一通りできるようになったら なるべく早く これに慣れることをお勧めします。
     畳の上の水練ではなく,実戦の中でブリッジを覚えていくのなら,こんな順序が良いと思います。これ以外は (ジャコビ・トランスファも) 当分のあいだ 必要ありません。

  2. リファレンス:
    Barbara Seagram & Marc Smith: "25 Bridge Conventions You Should Know" (Master Point Press, 1999), pp. 190, \1,622.
    日本語訳:「25 のコンベンション」(JCBL, 監修: 神初 穣) \2,500.


ビッドの一覧表

  どんなのがあるか   …   136.
  どう使うか   …   137.

どんなのがあるか

  1. どういう場合に何をビッドするか … というビッドの一覧表のようなものは 無いのでしょうか ?

    ―― あぁ …,"カンペ" とか "虎の巻" のようなものでしょうか …。

  2. はい。ビッドというのは とても複雑ですから …。
    自分で作ればよいのでしょうが。

    ―― [1]  JCBL ホーム ページ 「商品販売・入門書籍」 に『ビッドの仕方』(2011.1,日本ブリッジ教師会) という 2 ページのリーフレットがあります。  これでは簡単すぎるというのなら
      [2] 「ゲームの為なら闇夜も駆ける」という sira_sawa さんのホームページに 5 枚メジャーシステムの一覧表があります。
    「コントラクトブリッジ」の中の「5 枚・メジャー・スタンダード・システム」をクリックします。
     これをそのまま印刷すると見づらいので,ちょっぴり手を加えて 6 ページ (両面印刷で 3 枚) に整形しました。 5m.html
      [3] ただし,このどちらも 私の感覚ではちょっと旧いので,別に自作しました。
    A4 サイズで見やすく色刷りできるようにしてあります。 SAYC.html
    現在のバージョンは メイリオ・フォントに対応しており,液晶画面で見るよりも きれいなプリントが得られます。


どう使うか

  1. それを印刷すると,全部で 9 ページ (裏表印刷で 5 枚) になりました。
    これを全部覚えるのですか ?

    ―― いいえ。これを全部あたまから覚えるのは 意味がありません。
    オンラインのブリッジで,その一覧表を見ながら ビッドしても いいでしょう。

  2. こういう表があると,自分が使えるビッドと使えないビッドを区別できますね。

    ―― そういう使い方もありますね。
    まぁ 地図のようなものと思えばよいでしょう。

  3. それにしても,ブリッジのビッドが一通りできる人は,これを全部覚えているんですか ?

    ―― ほんとに全部覚えているか … と言われると,100% の自信はないけれど まぁ一通りは頭に入っているつもりです。 忘れている場合には,自分の理解を元にして 組み立て直します。理解してあれば,その場で組み立てが利きます。

  4. そぅなんですか …。

    ―― こんな表を初めて見ると,圧倒されてしまうかも知れない。けれども 地図いうのは,単に地図だけを 見ていても 頭に入るものではありません。
     実際にどこかへ行ってみて,帰ってきたら 地図を眺めてみる … そうすると実際の地理がよく分かる。次はまた 別のところに旅行してみる。帰ってきたら,地図を見て確認する … こういうことを繰り返すうちに, だんだん地図を覚えてしまう筈です。