三番手のオープン 

© boco_san (ぼこさん) 2004/May - 2012/Jan.   メイリオ印刷 (26 ページ)

リファレンス


はじめに

  1. 三番手のオープンというのは,はじめの二人が続けてパスした場合ですね。
    それで,私にビッドの順番が回ってきた …。

    NorthEastSouthWest
    パス パス ?
    ―― はい。オークションが,このように進みました。
    ここで,South に座っているあなたがどう考えてビッドするか,という問題です。

  2. 一番手や二番手のときと比べて何か違いがあるんですか ?

    ―― はい,あります。
    あなたのパートナー (North) は,既にパスしています。
    つまり,オープンできる手を持っていません。

  3. 確かにそうですね。
    それで,そういう場合にはどんなことに注意したら いいんですか ?

    ―― 大きく分けて,2 つ あります。ひとつは,

    (1) 既にパスした (オープンできなかった) パートナーが
       新しいスートをビッドしても,フォーシングではない。
    ということです。

  4. ビッドの基本的な約束として,
    レスポンダが新しいスートをビッドするのはフォーシング
    というのがありますが,それがここでは成り立たないと …。

    ―― その約束は,レスポンダの手の上限が不明な場合の話です。
      いまは,レスポンダの手の上限が 12 pts ということが分かっています。
    ですから,三番手のオープナーは,弱い手なら,2 回目にはビッドせず, パスします。
     ゲームの可能性が無いことを知っているオープナーは, 無理して ビッドを続ける理由がありません。
      したがって,最初にオープンできなかったレスポンダが,新しいスートをビッドしても,フォーシングではありません。

  5. いまの説明は,三番手だけでなくて,四番手のオープンでも同じでしょうか ?

    ―― はい。同じです。パートナーが最初にパスしたことを忘れずに,互いにビッドする必要があります。

  6. ブリッジのビッドというのは,覚えることが沢山ありすぎて,ビッドを考えているときに,自分が最初に パスしたことさえ忘れてしまうことがある。ましてや,パートナーの 最初のパスを見落とすことも …。

    ―― それは よく分かります。自分の手を見てビッドを考えるのに精一杯だと,「パス」を見落としてしまう。 でも,「パス」というのも,それ自体で意味のあるコールです。
      「パス」を見落とさないようにするには,ビッド経過をよく見るしかありません。 自分が何をビッドするか決めたときに,もう一度 ビッド経過を確認するのがよいでしょう。 ビッドを慌ててする必要は無いのですから。

  7. それで,2 つ目は ?

    ―― もうひとつは   

    (2) 三番手のオープナーは,オープンの基準を
      少し割り引いてオープンすることがある
    ということです。

  8. つまり,普通なら (一番手や二番手なら) パスするような手でも,三番手ではオープンすることが許されるのですか ?

    ―― はい。三番手では,オープンの基準を 少し緩める方が得です。

  9. どのくらい 緩めて いいのでしょうか ?

    ―― それは,この下の方で少しずつ説明しましょう。
    緩めることに伴って,いろいろと 問題が発生するからです。

  10. それで,その「割り引きオープン」というのは,四番手のオープナーにも当てはまるのですか ?

    ―― 割り引きオープンは,三番手だけです。
    四番手のオープンについては,最後に説明します。
    三番手と四番手では,考え方が かなり違います。

  11. 三番手だけ特別のオープンをしてよいというのは,なんだか分かりにくい …。

    ―― うーん。分かりにくいというよりも,実際には 話が複雑なのです。
      三番手の割り引きオープンというのは,システムに沿って一通りビッドできる人のためのテーマです。
     したがって,まだその域に達していない人は,こんなことは忘れて,一番手でも,二番手でも,三番手でも,四番手でも,全部同じ基準でオープンすることをお勧めします。


三番手での割り引きオープンの効用

  1. さきほどの説明では,
        「三番手に限って,オープンの基準を少し緩めるのが得だ」
    ということでしたが,それはどうして … ?

    ―― その回答を,上に引用したローレンスさんにお願いすると …。
    そこには,3 つのことが書かれています。

    1. 相手側への妨害として有効である。
    2. 相手側 (左オポ) がコントラクトを得た場合,パートナーがオープニング・リードを判断しやすい。
    3. オークションが競り合いになった場合,相手側が自分たちの手の強さを過小評価する可能性がある。

  2. このうちの A は,何となく分かります。
    相手側の方が強い手を持っているのなら,パスするよりも, こっちが先に何かビッドして邪魔をする …。

    ―― はい。その通りです。
    今のビッド・システムは,とにかく,先にオープンした方がビッドしやすいように できている。オープナー側に有利なシステムです。とくに,スラムがある手の場合には,これが はっきりしています。
      これに対して,オーバーコールから最適のコントラクトに辿り着くのは,なかなか大変です。
      これが,効用の 1 番目です。

  3. その次の B も,よく分かります。
    こちらに有利になるように,パートナーからオープニング・リードを出してもらえる。

    ―― そうですね。弱い手の三番手であっても,しっかりしたスートをビッドして,それをパートナーに伝えて おけば,相手のコントラクトになっても,ディフェンスが有利に進みます。これが,割り引いてでも オープンすることの効用の 2 番目です。

  4. その次の C というのが,分からない …。

    ―― 分かりにくいかもしれません。こういうことなのです …。
      あなたが三番手で割り引いてオープンした。すると,左オポがオーバーコール,続いてパートナーもビッド, これに右オポも参戦 … 。つまり,4 人全員がビッドして競り合う … という状況です。あなたは, もちろん,2 回目にはパスするので,あとは相手側のビッドが続きます。
      ところが,あなたが割り引いてオープンしたことを,他の 3 人は知りません。
    つまり, あなたの手の強さが不明の状況で,相手側は (自分たちの手が 強いことを正しく逆算できずに) コントラクトを探すことになります。
      これが,3 番目の効用です。

  5. 三番手でオープンの基準を少し緩めると有利な理由は,何となく分かりました。
    それで,どのくらいまで緩めたらいいのかとか …。
    緩めることによって どんな問題が発生するか …。

    ―― はい。その話に進みましょう。

  6. その前に,さっきから気になっているのですが …。

    ―― 何か … ?

  7. さっきから,ぼこさん,「割り引く」とか「割り引きオープン」という 言葉を使っておられますが, それはブリッジの正式用語なんですか ?

    ―― あぁ,そのことですか(^。^)。皆さんが分かりやすいと認めれば,正式な用語になるでしょう。 英語では "Light Opening Bid" と呼びます。だから,「ライト・オープン」と言うのが普通です。
      ただ,私は日本語の中に英語を混ぜて使うのが嫌いです。たとえば,「サード・ハンドだったので, ライト・オープンした」なんて言うのは …。
    「オープン」は仕方ないとしても, なるべく日本語で表現したいのです。
    そういうわけで,ここでは,「割り引きオープン」という言葉で通します。


三番手のオープンでは どのくらいまで割り引いてよいか

  1. 三番手のオープンの基準に入る前に,普通のオープンの基準を …。

    ―― そうですね。それをまず復習しておきましょう。

  2. 12 HCP とか,分布点を含めて 13 pts とか …。

    ―― それが,オープニング・ビッドするためによく使われてきた基準です。
    でも,この頃は,ルールオブ 20 を使うのが普通です。この方が,手の強さを測る方法として正確です。

  3. ルールオブ 20 というのは ?

    ―― 1 の代でオープンするかどうか判断するための 使いやすい基準です。
    カードが配られたら,

    1. HCP を数える.
    2. 一番長いスートの枚数を数える.
    3. 二番目に長いスートの枚数を数える.
    4. 以上の 3 つの数値の合計が 20 以上ならば,1 の代でオープンする.
    という規則です。
    5
    A J 8 7 3
    K J 9 5
    Q 8 4
      ( 11 HCP )
     例として,この手を考えてみましょう。この場合
       11 (HCP)  +  5 (枚数)  +  4 (枚数)  =  20
    なので,1 オープンします。

  4. これは,一番手,二番手,四番手の場合ですね。

    ―― はい,そうです。
    1 の代の まともなオープング・ビッドの基準です。

  5. 三番手ではこの基準を下げて,ルールオブ 19, 18, 17, …。
    どこまで緩めてよいのですか ?

    ―― そういうふうに言われても,ちょっと困る …。

  6. ? ?

    ―― 確かに,そういうふうに訊きたくなる気持ちは よく分かります。でも,この割り引きの数字をいくらまでいいか,というようには答えにくいのです。

  7. でも,そういうふうに言われると,今度は,私が困る …。
    だって,一番手,二番手のオープニング・ビッドを ルールオブ 20 で判断するんだったら,たとえば「三番手では,ルールオブ 18」と言ってもらえないと, ビッドのしようがありません。つまり,「三番手だけは 2 点までは 割り引いてよい」というように言ってもらえないと …。

    ―― ここでは,手の 内容 が とくに重要で,場合によっては,4 点引きもありうる。つまり, どういうハンドなら割り引きオープンしてよいかということは,ハンドを見て判断する必要があるのです。
     でも,ここで押し問答しても始まらないから,とりあえず
         三番手では ルールオブ 18 まで割り引いてオープンしてよい.
    ということにして,話を先へ進めましょう。


三番手のオープンで考えるべきこと

  1. では,とりあえず 2 点まで割り引いてオープンできるとして,どういうことに注意したらいいんでしょうか ?

    ―― まず,普通のビッドとは,考え方が違うことに注意します。
    普通のオープニング・ビッドでは,もしかしたら ゲームスラム があるかも知れないと期待して,ビッドを始めます。
      ところが,いまの場合には,パートナーが既にパスしている。したがって, ゲームの可能性は低い。こういう状況では,
          切り札の 8 枚フィットを見つけよう
    とか,
          一番有利なコントラクトを何とかして見つけよう
    というようなことは,諦めます。そして,無難なパートスコアのコントラクトを 見つければ,それで満足します。 弱い手で欲張るのは禁物です。
      三番手の割り引きオープンで とくに注意すべきは

    パートナーが何をビッドしても 困らないように
    予め よく考えてオープンする.
    ということです。

  2. でも,それは,三番手に限らないことですね。

    ―― はい。確かに,上に書いたことは,オープニング・ビッド一般に当てはまります。パートナーの返事を 受けてから考え込むよりも,その前に,オープニング・ビッドするときに考える。これは,とても大切です。
      そして,これは,三番手のオープンではとくに重要です。 なぜかと言うと,パートナーは 6 pts ぎりぎりの手を持っていて, 割り引きオープンした あなたが最も困るようなビッドを返してくるかも知れません。

  3. ということは …。パートナーが何を答えても パスできるのが理想 ?

    ―― はい。それが原則です。話を単純化すると,

    三番手のオープナーは,レスポンダが何をビッドしても
    パスできるような手で,割り引きオープンするのが望ましい.
    ということです。

  4. たとえば,どんな手で割り引きオープンするのですか ?
    [1]  A J 3
    Q J 4
    Q J 8 5
    9 7 3
      ( 11 HCP )

    ―― この手 [1] ならば, 三番手で 問題なく 1 をビッドできます。そして,パートナーから

    1,1,1NT,2,2
    のどれが返ってきても パスします。

  5. 確かに,この手なら,どれが返ってきてもパスできますね。
    逆に言うと,レスポンダからのビッドをパスできるようでなければ, 割り引きオープンしてはいけないということでしょうか ?

    ―― そこまで言うのは言い過ぎですが,でも,それが原則です。
    パートナーの返事をパスできないようなら (あるいは低いレベルで適切なビッドを返せないようなら),割り引いて オープンすべきではありません。

  6. 上の手 [1] は,確かに理想的な形です。何が返ってきても困らない。
    そういう手の一般的な条件は … ?

    ―― 手の形の条件としては

    ビッドしたスートより上位のスートには,どれも 3 枚以上ある
    が必要です。上の例では スペードもハートも 3 枚あるので,レスポンダーからの返事が 1 でも 1 でも 困りません (パスできます) 。

    [2]  9 7
    Q J 4
    J 8 6 5
    A Q J 3
      ( 11 HCP )
  7. では,上の手でカードを少し差し替えて …
    この手で 1 オープンするのは ?

    ―― もしも 1 が返ってきたら どうしますか ?

  8. そのときには,1NT をビッドできる。だから困らない。

    ―― 三番手のオープナーが 2 回目に 1NT をビッドするのをどう取り決めるかは,パートナーとの約束次第ですが, ローレンスは

    三番手のオープナーが 2 回目に 1NT (または 2NT) を
    ビッドするのは, 割り引いていない ことを保証する.
    と取り決めるよう勧めます。
      ここで 2 回目にノートランプをビッドするのは,「割り引いていませんよ」とパートナーに伝えることになります。

  9. だったら,この手 [2] では,最初から パスするしかありませんね。

    ―― はい。その通りです。
    [3]  9
    Q J 7 4
    J 6 3 2
    A Q J 3
      ( 11 HCP )

      付け加えると,スペードがシングルトンの場合には,
    条件がさらに厳しいので,パスして様子を見る (場合によっては,テイクアウト・ダブルを掛ける) しかありません。

  10. この手 [3] は,ルールオブ 20 に 1 点だけ足りない。
    でも,形が悪いのでパスですか …。

    ―― はい。
    何点割り引くか ということよりも,手のが重要です。

  11. [4]  A 9
    Q J 4
    J 6 3 2
    A Q J 3
      ( 11 HCP )
    では,スペードの 2 枚が,ちびではなくて,絵札で
    この場合には ?

    ―― この場合には,オープンしないのはもったいないので, 1 オープンします。 スペードが 2 枚ですが,Ax の 2 枚なので 1 が返ってきたら,パスします。

  12. [5]  J 6 3 2
    A 9
    Q J 4
    Q J 7 3
      ( 11 HCP )
    それでは,また少し変えて …。
    こんな場合には ?

    ―― ここで 1 オープンして,1 が返ってきた場合には, どうしますか ?

  13. その場合には,1 をビッドできますね。

    ―― はい。
    ですから,この場合には,1 で 割り引きオープンします。

  14. NorthEastSouthWest
    パス パス 1C パス
    1S パス 2S/パス?
    この手 [5] で,もしもパートナーが 1 をビッドしてきたとき, スペードがこちらにも 4 枚あるので, 普通なら 2 を ビッドしますが,三番手で割り引きオープンしたときには,どうするのですか ?

    ―― ローレンスによると

    この 2 のように,レスポンダのスートをサポート
    するのは, まともなオープン (よりも良い手) を示す.
    となっています。つまり,割り引きオープン (あるいは ミニマム・オープン) の場合には,サポートできても,それを示さずにパスします。 サポートを示すのは,ゲームの可能性を探る意味を持ちます。
      ですから,上の手 [5] の場合には,2 をビッドせずに, パスします。

  15. NorthEastSouthWest
    パス パス 1C パス
    1S 2H 2S
    でも それは,右オポが パスした場合なのでしょうね。
    右オポさんがオーバーコールした場合には … ?

    ―― その場合には,もちろん,2 をビッドして競り合います。 この場合,あなたが割り引いてオープンしたことは, 他の誰にも分かりません。

  16. ところで,さっきの説明では,ビッドしたスートより上のスートの長さに注意するということでした。下のスートについては,何も考えなくていいんでしょうか ?
    [6]  A J 3
    Q J 4
    Q J 9 6 2
    7 3
      ( 11 HCP )
      たとえば,この手 [6] で 1オープンして,パートナーから 2 が返ってきた場合には ?

    ―― 2 をパスします。

  17. でも,パートナーのクラブは 4 枚かも知れませんね。

    ―― これも,パートナーとの取り決めに属することですが,割り引きオープンを しやすくするために,

    三番手のオープナーが 1 の代でオープンしたとき,2 の代 で新しい
    スートをビッドするレスポンダは,そのスートに 5 枚 を保証する.
    と約束します。
      よくご存じのように,5 枚メジャーのシステムでは,1 オープンに対して 2 を ビッドするには,5 枚のハートが必要です。
      それを,1‐2 に限らず
         1‐2, 1‐2, 1‐2
         1‐2, 1‐2
         1‐2
    これら全てに適用します。

  18. それなら,安心して 2 をパスできそうです。

    ―― 上のように取り決めておけば,右の手 [7] で 1オープンできます。

    [7]  8 7 5 3
    A J 9 6
    A Q 9 8
    3
      ( 11 HCP )

  19. ここで,もしもパートナーが 2 をビッドすると,
    それでもパス … 。 切り札は合計 6 枚しかありませんが …。

    ―― はい,クラブは合計 6 枚しかありません。 でもパートナーは 2 の代をビッドする強さ 10 pts を持っているので, 何とかなるでしょう。

    [8]  9
    A Q J 7 4
    J 7 3
    J 8 5 2
        ( 9 HCP )

  20. さきほど [3] で,スペードが シングルトンの場合は厳しいという説明がありましたが, が良い 5 枚の この手の場合には ? ここで 1 オープンするのは,どうでしょうか ?

    ―― この手 [8] の場合,やはり パートナーから 1 が返ってくると困ります。
    そこで,1 ではなしに,2 オープンします。つまり,ここでは 自分にとって都合の悪い返事 (1) が返ってくるのを防ぐために,2 の代でオープンします。
      この例から分かるように,三番手のウィーク 2 オープンは,6 枚を保証しません。

  21. [9]  A J 10 7 4
    8
    K 7 3
    Q 8 5 2
      ( 10 HCP )
    その反対に,スペードが 5 枚でハートが 1 枚のときには, 1 オープンしていいですね ?

    ―― はい。2 がレスポンダから返ってくると厳しいですが,でもハートが 5 枚と 10 pts あるはずだから,無理に 2 をビッドせずにパスします。
      同じスートを リビッドするのは (ここでは 2),原則として, 割り引いていない ことを保証します。

  22. もしも 1NT が返ってきた場合には ?

    ―― やむを得ません。2 をビッドしましょう。

  23. 割り引いてオープンする場合の注意はこれで一通り終りでしょうか ?

    ―― はい。
    細かく場合を分ければいろいろありますが,これでひとまず終りです。

  24. さっき出てきた説明で,
    パートナーのスートを上げるのは,
    割り引いていないことを保証する.
    というのがありました。でも,それは状況によるのでは ?

    ―― あっ,そうです。発生頻度は少ないですが,でもそれは重要です。
    [10]  A 9 7 4
    8
    K Q 7 3
    Q 8 5 2
      ( 11 HCP )

    たとえば,ハートがシングルトンの手 [10] は,ルールオブ 20 のカウントが 19 です。三番手で 1 と割り引きオープンしたところ, うれしいことに,パートナーから 1返ってきた。こういう場合に,「割り引いてオープンしたのだから」と義理堅くパスするのは,間違いです。
      パートナーが 1 をビッドしたから 自分がダミーになるので,この手をダミー点で再評価すると 14 pts になります。 もしも,パートナーが上限 (12 pts) を持っていれば,ゲームがあります。
      ですから,ここでは 2 をビッドします。


ドルーリィ (Drury)

  このコンベンションの正式名称は 逆ドルーリィ (Reverse Drury) ですが, 今では,「元祖ドルーリィ」(Regular Drury) を採用する人は少なくて,逆ドルーリィだけが使われているので, ここでは,逆ドルーリィを 単に ドルーリィと呼びます。

三番手のオープンに対して困ること

  1. これまでの説明で,三番手のオープンが どういうものか分かりました。
    でも,そうすると,困ることがありますね …。

    ―― はい。

  2. マイナー・スートでのオープンだったら,1 の代でビッドが行ったり来たりするから,あまり 問題無いのかも知れません。でも,メジャー・スートでオープンした場合には,ビッドの代がすぐに 2 に上がってしまうから …。

    ―― はい。その通りです。
    1 とか 1 で三番手が オープンしたときに,問題が発生します。

  3. (A) A 8 4 2
    Q 9 6
    J 8 7 3
    K 8
      ( 10 HCP )
    NorthEastSouthWest
    パス パス 1S パス
    2S,3S?
    私がすぐに思いつくのは,レスポンダが リミット ・レイズする場合です。
      たとえば, パートナーの 1 オープンに対して,私が こんな手 (A) を持っている。スペード 4 枚と 10 HCP があるから, 普通なら 3リミット・レイズします。
     でも,パートナーが割り引いてオープンしているのだったら,3 はダウンしますね。

    ―― はい。ですから,三番手のオープナーに対して,上の手でダブルレイズしては いけません。

  4. でも …,だからと言って,上の手で 2 をビッドすると,今度はゲーム (4) を逃がすことがある …。

    (B) A 8 4
    Q 9 6 2
    J 8
    K 8 3 2
      ( 10 HCP )
    ―― そうですね。
    別の意味で具合の悪い手が,もう一つあります。
    この場合には,どうでしょうか ?

  5. この場合 (B) だと …。 こんどは切り札 (スペード) が 3 枚だから,普通なら, いったん 2つないで, 次に 3 をビッドします。
    NorthEastSouthWest
    パス パス 1S パス
    2C パス (何かをビッド) パス
    3S

    ―― 次のビッドというのは … ?
    そう うまく行けば いいのですが …。

  6. あっ,そうか。私は最初にパスしたから,2 は ノン・フォーシングなんですね。
    パートナーは,2 をパスするかも知れない。私のクラブが 5 枚だと思って。
    そしたら,スペードでフィットがあることが伝わらずに,ビッドが終わってしまう …。
    どうして,こういう ややこしいことが起こるのか …。

    ―― その原因は,2 つあります。
       (1) 1 つは,三番手オープナーが割り引いてオープンしている可能性があることです。 そのため,(A) では 通常のリミット・レイズができません。
       (2) もう 1 つは,あなたが 最初にパスしているので,何をビッドしてもフォーシングではないということです。 これが (B) の場合です。

  7. だったら,パスしたハンドで フォーシングのビッドができるといいですね。

    ―― はい。初回にパスした人が 1 回だけのフォーシングを掛けるのが,ドルーリィというコンベンションです。


ドルーリィ ( 1 オープンの場合)

  1. どういう条件で,そのドルーリィというのを使うのですか?

    ―― 条件を箇条書きにすると
      (1) あなたは 最初にパスした。
      (2) パートナーが 三番手で 1 (または 1) オープンした。
      (3) 右オポは パスした。
      (4) あなたは 3 枚以上の切り札と 10 HCP 以上を持っている。
    NorthEastSouthWest
    パス パス 1S パス
    2C
    この 4 条件の下で 2 をビッドするのが,ドルーリィ・コンベンションです。 この 2 は 人工的なビッドであって,クラブについては 何も保証しません。

    私は最初にパスしたけれど,
    切り札 3 枚以上と 10 HCP 以上はあります.
    と伝えるビッドです。

  2. これはフォーシングで,オープナーは何かビッドしなくちゃいけないんですね。

    ―― はい。1 回だけのフォーシングです。

  3. オープナーは,どう答えるのですか?

    ―― オープナーの 2 回目のビッドを 手の強さの順序に従って書くと
       (A)  2 = 割り引いてオープンした。
       (B)  2 = まともなオープンだが,4 の自信はない。
       (C)  2 = まともなオープンで,ハートが 4 枚ある。
       (D)  4 = レスポンダがそういう手なら,確実にゲームがある。
       (E)  それ以外のビッド = 少なくともゲームがある強い手。
    となります。
     このうち,とくに (A)(B) をしっかり押さえておく必要があります。

  4. それぞれ,説明していただけませんか?

    ―― はい。まず最初に
     (A) 2 = 割り引いてオープンした場合。
    (A) K Q 10 8 5
    K 9 2
    10 7
    Q 6 3
      ( 10 HCP )
    NorthEastSouthWest
    パス パス 1S パス
    2C パス 2S
    これは,簡単です。 2 を ビッドすることにより,まともな オープン (Full Opening) では なかったことを伝えます。
      こんな手 (A) で 1 オープンした場合です。
    ライト・オープン (Light Opening) とか,サブミニマム・オープン(Sub-minimum Opening) と 呼ばれる場合です。
    これに対して,あなた (レスポンダ) は 2 をパスします。

    ―― 次は,
    (B) K Q 7 6 4
    9 8
    A J 3
    K 9 6
    ( 13 HCP )
     (B) 2 = まともなオープンだが,4 の自信は無い。
    NorthEastSouthWest
    パス パス 1S パス
    2C パス 2D
    この 2 は,人工的なビッドです。ダイヤモンドについては,何も言っていません。
    割り引いていないけれども,ミニマムのオープンであったことを伝えます。
    たとえば,右の手 (B) の場合です。
    たぶん,これくらいが 2 を ビッドする最低限でしょう。
    2 というおかしなビッドだけれど, その意味は, 「3½ を ビッドしている」と言えば,分かりやすいでしょうか。

  5. つまり,自分の手だけではゲームがあるとは言えないので,判断を パートナーに委ねている (誘っている) のですね。

    ―― その通りです。3 番目は
    (C) K J 10 5 3
    Q J 7 2
    A Q
    5 3
      ( 13 HCP )
     (C) 2 = まともなオープンで,ハートが 4 枚ある。
    NorthEastSouthWest
    パス パス 1S パス
    2C パス 2H
    これは,スペード 5 枚,ハート 4 枚の まともな手で,割り引きせずに 1 オープン した場合です。

  6. この場合,レスポンダは,何を答えるのですか?

    ―― もしもハートが 4 枚あれば,ハートを切り札に選ぶ方が良いので, 手の強さに応じて,3 または 4 をビッドします。
     [注:一般に 5‐3 フィットと 4‐4 フィットが共存する場合には,4‐4 の方を 切り札に選びます。5 枚のサイドスートは,エスタブリッシュによりトリックを稼ぎます。]
      4 番目は
    (D) A J 9 7 5
    10
    A Q 7 6
    K J 3
      ( 15 HCP )
     (D) 4 = それなら,確実にゲームがある。
    NorthEastSouthWest
    パス パス 1S パス
    2C パス 4S
    これは,分かりやすい。
    レスポンダの手が 切り札 3 枚と 10 HCP でも ゲームがあるためには,オープナーの手は 少なくとも 15 pts 必要です。

  7. 五番目の (E) その他のビッド … というのは?

    ―― ごたごたするので,ここでは省略しましょう。
    2NT 以上のビッドは,とにかく,最低でもゲームのある強い手を示します。
    NorthEastSouthWest
    パス パス 1S パス
    2C パス 3S
    ただし,めったに無いことですが,3 だけは ここで説明しておきましょう。

  8.  3 は,普通だったら,4 への お誘いですね。

    ―― はい。普通ならそうです。でも今の場合には,2 がその役目を 引き受けています。 ですから,3 は全く別の意味を持ちます。
    これは,スラムを狙うような強い手を意味します。

  9. だったら,3 に対してレスポンダは何をビッド ?

    ―― 3 は,キュービッドの開始を要求します。
    したがって,レスポンダは Ace (または King) のあるサイドスートを 4 の代でビッドします。 無ければ,4 をビッドします。

  10. ここまでで,1 オープンの場合は一通り終わりですか ?

    ―― はい。

  11. ふーっ。これを全部覚えるなんて,なんだか大変だ …。

    ―― 一度に全部なんて無理ですよ。さっきも言ったように,(A)(B)場合が 大切ですから,まず,これがきちんとできるようになって下さい。

  12. でも その (A)(B) の間の線引きが難しそうですね。

    ―― はい。上の説明では,分かりやすいように
      (A) 割り引いてオープンした.
      (B) 割り引いていない.
    というように分けましたが,実際には,これは 正確ではないのです。

  13. というと …。正確には ?

    ―― 正確に言うと,レスポンダが最初にパスするような手の
      (A) 上限でも,ゲームがなさそう。
      (B) 上限ならば,ゲームがありそう。
    と分類すべきなのです。
      パートナーは,初回にパスしたので,せいぜい 12 pts しか持っていません。 それを自分 (オープナー) の手と組み合わせて,
        「レスポンダが上限ならゲームがあるか ? 」
    という判断をして,この線引きをします。
      そういうわけなので,12 HCP の平らな手 [a] では,
    [a] A J 9 7 5
    K 10 5
    8 7
    A 9 4
    ( 12 HCP )
    NorthEastSouthWest
    パス パス 1S パス
    2C パス 2
    [b] K J 8 7 2
    3
    A 10 9 6
    A 7 4
      ( 12 HCP )
    NorthEastSouthWest
    パス パス 1S パス
    2C パス 2
    普通のオープンの基準 (Rule of 20) を 満たしているけれども, 2 をビッドします。 同じ 12 HCP でも,形の良い [b] の場合には,2 をビッドします。

  14. 確かに それはそうなのでしょうけれど …。
    でも,そういうふうに言われると,ドルーリィは,私には とても難しそうに見える …。

    ―― では,別の言い方をしましょう。よく

    「オープンできる手」+ 「オープンできる手」 ⇒ ゲームがある
    と言います。つまり,ふたりともオープンできるくらいの手を持っていれば,
    ほとんど必ず 何かゲームが ある。
    ところが,今の場合には,パートナーがパスしている。だから
    「パスした上限の手」+ 「少し余裕のある手」 ⇒ ゲームがある
    となる。この「少し余裕のある手」を伝えるのが (B) 2 という ビッドです。
    したがって,Rule of 20 を満たしていても,20 点ぎりぎりで オープンした場合 (A) には, 2 をビッドしてはいけません。

      もっとも,これはパートナーのオープンの判断とも 関係するから 単純ではありません。 難しそうでしたら,とりあえずは,単純に
        「13 HCP ない/ある」で (A) / (B)
    判断してみましょう。


ドルーリィ ( 1 オープンの場合)

  1. 三番手のオープナーが 1 ではなくて,1 オープンした場合には ?

    NorthEastSouthWest
    パス パス 1H パス
    2C
    ―― 三番手オープナーが 1 オープンした場合も,考え方は 全く同じです。
    さっきと同じ条件の下で,このように 2 をビッドするのが ドルーリィです。

  2. これに対する オープナーのビッドは ?

    ―― それもさっきと同じです。念のために繰り返すと
       (A) 2 = 割り引いてオープンした。
       (B) 2 = まともなオープンだが,4 の自信はない。
       (D) 4 = レスポンダがそういう手なら,確実にゲームがある。
       (E) それ以外のビッド = 少なくともゲームがある強い手。
    です。

  3. さっきと比べると,(C) が抜けていますね。
    ここでは,2 ということになるのかな …。

    ―― 2 は,分類の (E) に入ります。
    リバースなので,ゲームを保証します。

  4. それから, 3 が キュービッドの開始を要求する強い手なのですね。

    ―― はい。その通りです。


長いクラブを持っているとき

  1. コンベンションというのは,初めて聞くと いいことづくめのように聞こえるけれど …。
    確かに ドルーリィを使うと,パスした手の方からフォーシングを 1 回だけ掛けられる。
    これは,すばらしい。でも,その代償として,クラブを持っているときに,それを自然にビッドできなくなりますね。

    ―― はい。その通りです。
    この埋め合わせを うまくつけることはできませんが,
       ◇ 弱い手ならば,1,1 を パスする.
       ◇ 11 HCP 以上のバランス・ハンドならば,2NT.
       ◇ 10 HCP 以上で 6 枚以上のクラブなら 3.
    といったところです。この他に
       ◇ 2 をビッドして,さらに 3 をビッドする.
    というのもありますが,メジャー・スートの切り札 3 枚のサポート無しで このようにビッドするのは危険です。

オーバーコールが入ったら …

  1. 三番手のオープンの後で,オーバーコールが割り込んだ場合には,ドルーリィはどうなりますか ?

    ―― これには,2 通りの考え方があるようです。
       (1) ドルーリィは Off となり,2 は自然なビッドとなる。
       (2) 2 がビッドできる限りは,ドルーリィが使える。
    どちらにするかは,パートナーとの打ち合わせ次第ですが,使える限りは使うという (2) の 方が有利でしょう。

  2.  2 がビッドできる場合というのは,そんなに多くありませんね。

    ―― はい。次の 3 通りだけです。
    NorthEastSouthWest
    パス パス 1H X
    2C
      
    NorthEastSouthWest
    パス パス 1S X
    2C
      
    NorthEastSouthWest
    パス パス 1H 1S
    2C

  3. オーバーコールが 2 の場合には ?

    NorthEastSouthWest
    パス パス 1S 2C
    X
    ―― その場合には,ダブルが 2 の代りをします。
    このダブルが,ドルーリィを意味します。

  4. オーバーコールが 2 以上の場合にはどうすれば ?

    ―― その場合,ドルーリィは使えません。
    そこで,ダブルレイズ と キュービッドを使い分けます。
    最初に出てきた (A) のタイプ (4枚) では 3 をビッドします。
    また,(B) のタイプ (3枚) では,3 の代でキュービッドします。
    (A) 
     
    NorthEastSouthWest
    パスパス1S2
    3
       
    (B) 
     
    NorthEastSouthWest
    パスパス1S2
    3


四番手のオープンに対して ドルーリィを使うか

  1. これまでは,三番手のオープンに対してドルーリィを使うということでしたが,四番手のオープナーに 対しても ドルーリィを使うのでしょうか ?

    ―― 三番手のオープンに対して ドルーリィを使う理由は,2 つありました。

  2. はい。
    ひとつの理由は,三番手オープナーが割り引いてオープンするかも知れない。

    ―― 四番手のオープナーは,割り引きオープンする必要がありません。

  3. もうひとつは,レスポンダがフォーシングのビッドを掛けられないこと。

    ―― こちらの理由は,三番手オープンでも四番手オープンでも同じです。
    レスポンダは,何を答えても パスされる可能性があります。
    フォーシングを掛けるには,ドルーリィしか手段がありません。
    ですから,四番手の 1,1 オープンに対しても, ドルーリィを使います。

    なお,四番手のオープンについては,すぐ下で説明しています。
    三番手の場合と比べて,考え方は だいぶ違います。


2 通りのドルーリィ (Two-Way Drury)

  1. この表題に書いてある「2 通り」というのは ?

    ―― 2 を人工的なビッドとして使うのがドルーリィですが,だったら,2 も 人工的なビッドとして使おう,というのが,「2 通り」の意味です。
    すなわち,
       切り札が 4 枚の (A) では,2
       切り札が 3 枚の (B) では,2
    をビッドする … というのが,Two-Way Drury です。

  2. でも そうすると,(A) の場合に,オープナーは,2 巡目に 2 をビッドできませんね。

    ―― はい。それは,無し になります。その代りに 2NT を使います。
    つまり
       (B) 2NT = まともなオープンだが,ゲームの自信はない。
    という意味です。この NT も 人工的なビッドであって,ノートランプを志向しているわけではありません。

  3. そうすると,コントラクトは最低でも 3 になるんですか。

    ―― はい。オープナーが割り引いていないし,合計 9 枚の 切り札があるので,3 はメイクします。 心配する必要はありません。

  4. レスポンダが 切り札枚数を知らせることに どんな意味があるのですか ?

    ―― 場合によっては,オープナーが自分でゲームに行けると判断できるように するためです。
      一番手 / 二番手のメジャー・スート・オープンに対して, 切り札 (A) 4 枚 と (B) 3 枚 では ビッドの仕方を変えることを 思い出して下さい。 その理由は,前にも説明したように, ダミーに切り札が 4 枚あると, 1 トリック余分に取れるからです。それと同じように,ここでも区別をつけます。

    K Q 9 5 3
    A J 3
    5
    Q J 7 5
    ( 13 HCP )
    もしもオープナー (South) の手が右のようであれば, 形が良いので,(A) 2 を受けて, 直接に 4 を ビッドできます。
    (A) A 8 4 2
    Q 9 6
    J 8 7 3
    K 8
      ( 10 HCP )
    NorthEastSouthWest
    パス パス 1S パス
    2D パス 4S
    (B) A 8 4
    Q 9 6 2
    J 8
    K 8 3 2
      ( 10 HCP )
    NorthEastSouthWest
    パス パス 1S パス
    2C パス 2D パス
    2S パス パス

  5. リファレンス:
    Anna Marsh: “SA-YC OKBridge-Style Simplified”
      2 を併用するドルーリィを強く推奨しています。

四番手のオープン

  1. [四番手と一番手,二番手] さきほどの説明では,三番手と四番手で違いがあるということでしたが …。

    ―― はい。四番手では,どういう方針でオープンするかが重要です。
    オープニング・ビッドの方針は
       (1) 一番手,二番手
       (3) 三番手
       (4) 四番手
    この 3 つで だいぶん違います。
    三番手の場合には,まだビッドしていない人が ひとり残っています。 左オポです。この左オポが もしかして強い手を持っているかも知れない。だから,少し弱い手でも 先手を打って割り引きオープンをします。もちろん,それがダウンする危険はあるのですが,でも, ブリッジというのは,先にビッドした方が有利なゲームです。

  2. [四番手は パスすれば おしまい] はい。そこまでは,はじめの方に説明がありました。

    ―― ところが,四番手の場合には,自分がパスすれば,そのボードは終わりです。無理して 危険なビッドをする必要はありません。

  3. そうですね。だったら,割り引きオープンはしないで,(1) 一番手,二番手と同じようにビッドすればいいですね。

    ―― ほんとに良い手なら,それで問題はありません。
    6 5
    Q 6
    K Q 9 7 3
    A J 3 2
    ( 12 HCP )
    NorthEastSouthWest
    パス パス パス 1D

    しかし,手の形によっては,オープンの判断が微妙です。
      たとえば, あなたが四番手で この手を持っているとします。

  4. [オープン後を予想する] これは,普通に 1 オープンできますね。

    ―― はい。確かに普通の基準でオープンできます。
    では,1 オープンした後 どうなるかを予想してみて下さい。

  5. 予想と言われても …。

    ―― あなたのカードは,マイナー・スートに偏っていますね …。

  6. [寝た子を起こす] はい …。あっ,そうか。
    相手側がメジャー・スートを持っている。だから, でオーバーコールされそう。

    ―― 黙ってパスしていれば,パスアウトになった筈なのに,1 オープンすると,逆に メジャー・スートでコントラクトを取られてしまいます。
    つまり,寝た子を起こす 結果に終わる可能性が高い。

  7. そう言えば,そうですね。

    ―― ですから,この手は,普通の基準ではオープンできるけれど,メジャー・スートが少ないので,四番手ではパスします。

  8. だったら,その判断をどうすれば … ?

    ―― そのために「ルール オブ 15」と呼ばれる判断基準があります。
    これは

    HCP + スペードの枚数 ≧ 15
    ならば オープンする … という規則です。

  9. さっきのハンドに当てはめると …,12 HCP にスペードが 2 枚
          12 HCP + 2 = 14 < 15
    だから,四番手ではオープンしないことになる。
    それで,スペードの枚数を加えることには どんな意味が ?

    ―― もしも四番手のオープナーがスペードを 4 枚 持っていれば …,
    A J 3 2
    Q 6
    K Q 9 7 3
    6 5
    ( 12 HCP )

    たとえば,さっきの手でスペードとクラブを入れ換えて, この手ならば,1 オープンして,もしも 1 オーバーコールが あっても,1 をビッドできる。
      あるいは,もしもパートナーもスペードを 4 枚持っていて, ネガティブ・ダブルを掛けてくれば,スペードのフィットが見つかる。そうやって,自分の側が コントラクトを取ることができます。
      つまり,寝た子を起こす結果にはならない。

  10. 四番手オープナーのスペードは 3 枚のこともありますね。

    ―― 自分が 3 枚持っている場合には,残りは 13 − 3 = 10 枚です。
    この 10 枚が 三人に均等に分かれているとすると,(5枚持っている人はいないので) 1 オーバーコールは無いでしょう。
    結局,最初の三人がパスした状況では,より多くの HCP と より多くのスペードを持っている側が得点する可能性が高いのです。

  11. A J 6 5 3
    4 2
    J 8 7
    A 7 6
    ( 10 HCP )
    四番手では ルール オブ 15 を使って判断するということなら, スペードが 5 枚で 10 HCP の この手でも,四番手で オープンしてよいのですか ?

    ―― いいえ,そうではありません。それでは 考え方が逆です。
    さっきも説明したように,ルール オブ 15 というのは,寝た子を起こさないための判断基準です。
      もちろん,それ以前の問題として,まともにオープンできる手でなければいけません。 まともにオープンできる手でオープンしたときに,それが 寝た子を起こしてはいけない … そのための判断に使うのが,ルール オブ 15 です。
    A J 10 9 6
    4 2
    K 8 3
    K 7 6
      ( 11 HCP )

      ただし,スペードの中身が堅ければ, これくらいで 1 オープンすることはあるようです。 この手は,ルールオブ 20 の基準に 1 点だけ不足しています。