TWO-OVER-ONE
by Eric Rodwell
フォーシング 1NT

 2/1 GF を使うことに取り決めると,2 の代で新しいスートをレスポンダがビッドするのは,マラソン・ビッドであり,ゲーム・フォーシングです。
 このため,11〜12 pts を持つレスポンダは 1, 1 オープンの場合に窮地に立たされます。
East
8 4
A J 4
K Q 10 7 4
8 5 2
 たとえば,レスポンダが右の手を持っていて,1 オープンに答える場合を考えましょう。
WestNorthEastSouth
1Pass?
 標準システムの場合,この手は 1NT には強すぎるので,East は 2をビッドします。 この 2は,1 回のフォーシングですが,ゲーム・フォーシングではありません。
 他方,2/1 システムでは,2は ゲーム・フォーシングです。
 10 HCP + 1 LP の この手には,ゲームを請け合う強さはありません。
 この板ばさみを避けるため,2/1 システムでは,1NT の範囲を 6〜10 pts から 6〜12 pts に拡げます。
1.  フォーシング 1NT 応答。
2.  オープナーは良い方のマイナースートで応える。
3.  3 枚の切り札で リミット・レイズ。
4.  弱いサポートを示す。
5.  フォーシング 1NT が当てはまらない場合。
 5-1.  1, 1 オープンの場合。
 5-2.  レスポンダが初回にパスした場合。
 5-3.  右オポがオーバーコールした場合。

1.  フォーシング 1NT 応答.
 1NT で答える範囲を 〜12 pts にまで拡張しても,未だ問題は残ります。
(標準システムでは,1NT 応答に対して 13〜14 pts のバランス・ハンドを持つオープナーは,ゲームが無いのでパスします)
 ところが,範囲が 12 pts まで拡がったので,13〜14 pts を持つオープナーのパスを容認すると,合計 25〜26 pts でもパスする結果,ゲームを逃すことがあります。
 これを回避するために,2/1 システムでは,1, 1 オープンに対する 1NT 応答をフォーシングに取り決めます。すなわち,オープナーは もう 1 回ビッドする義務があります。ただし,この フォーシング 1NT は,1 回だけのフォーシングであり,ゲーム・フォーシングではありません。
 フォーシング 1NT を導入しても,標準ビッドとの違いは 大きくはありません。かなり多くの場合,どちらのシステムでも オークションは同じ経過を辿ります:
West
A Q 8 7 3
K 6 4
K J 6 3
5
    
East
K 4
Q 8 7 3
Q 5
9 7 6 4 2
    
WestNorthEastSouth
1Pass1NTPass
2Pass2Pass
PassPass
 West が 5 枚のメジャースートで 1 オープンします。East は 7 HCP の弱い手なので,1NT 以外には何もビッドできません。West が第 2 スートを 2 により示すと,East は オープナーの第 1 スートを選択 (プリファー) して 2戻します。こうして, このペアは スペードのパートスコアで止まります。
 切り札のフィットは合計 7 枚しかありませんが,1NT や,4-3 の 2 より良いコントラクトです。
 2/1 でも標準システムでも,あるいは他のどんなシステムでも,同じコントラクトに 到達するでしょう。
2.  オープナーは良い方のマイナースートで応える
West
A Q 8 7 3
K 6 4
K J 6
5 3
 ただし,ハンドによっては,1NT がフォーシングであるために,違いが生じます。 オープナー West が右の手を持っていると
WestNorthEastSouth
1Pass1NTPass
?
下限のバランス・ハンドで,4 枚の第 2 スートが無いにも拘らず,1NT をパスできません。オープナーは ここで何をビッドすればよいでしょうか ?
 このように下限のバランス・ハンドで,しかも 4 枚のスートが他に無ければ,オープナーは 3 枚のマイナースートを ビッドします (ただし, どちらも 3 枚の場合には,2)。これは,ちょうど オープナーが 3 枚で 1, 1オープンするのと似ています。
 このような場合,1NT コントラクトが最善のことがありうるので,上の取り決めは いささか奇妙に見えるかも知れません。しかし,実際には,フォーシング 1NT を使うと,標準システムより良いコントラクトが得られます。
West
A Q 8 7 3
K 6 4
K J 6
5 3
    
East
K 2
Q 8 3
Q 10 7 5 3
9 6 4
    
WestNorthEastSouth
1Pass1NTPass
2PassPassPass
 標準システムでは,この 1NT をオープナーは パスしますが,ここでは それよりも 2が良いコントラクトです。
West
A Q 8 7 3
K 6 4
K J 6
5 3
    
East
6 2
Q J 9 8 7 3
Q 3
9 6 4
    
WestNorthEastSouth
1Pass1NTPass
2Pass2Pass
PassPass
 ここでも 2 は,1NT より ずっと良いコントラクトです。
3.  3 枚の切り札で リミット・レイズ.
 フォーシング 1NT を使うと,11〜12 pts と 3 枚のサポートを持つレスポンダが, オープナーのメジャースートに容易に誘いを掛けることができます。
West
K Q 8 7 3
4 2
K 5
A 9 7 4
    
East
A J 2
Q 8 7 3
J 9 6 2
K 8
    
WestNorthEastSouth
1Pass1NTPass
2Pass3Pass
PassPass
 標準システムでは,リミット・レイズに 切り札が 4 枚必要なので,3 枚のこの手では  2から始めます。これに対する West のビッドは難しく, 以後のオークションに混乱を招きかねません。
 他方,2/1 システムでは,East は フォーシング 1NT から始めます。West が 2 をビッドすれば,3 に ジャンプして,11〜12 pts と切り札 3 枚を示して,West をゲームに誘います。West は 下限の手なのでこれをパスして, 具合良いコントラクトに止まります。
4.  弱いサポートを示す.
 さらに フォーシング 1NT を使うと,オープナーのメジャースートに対する まともなサポートと弱いサポートを 区別して示すことができます。
  8〜10 pts では,2 の代へ直ぐに上げます。
  5〜7 pts では,1NT を経由して,次回に オープナーのメジャースートをプリファーします。
West
A 5
K J 8 7 3
7 3
A K 8 5
    
East
J 6 4
9 4 2
Q 9 5 2
Q J 4
    
WestNorthEastSouth
1Pass1NTPass
2Pass2Pass
PassPass
 East の選択  2は弱い響きを持つので,West は それ以上ビッドする積もりにはなりません。もしも East が直に 2をビッドすれば,West は ゲームに向かって進むでしょう。
5.  フォーシング 1NT が当てはまらない場合.
 下に示す 3 通りの場合には,1NT は フォーシングではありません。
1NT がフォーシングでない場合。
[5-1]  1, 1 オープンの後。
[5-2]  レスポンダが それ以前にパスした場合。
[5-3]  レスポンダの右オポが パス以外のコールをした場合。
5-1.  1, 1 オープンの場合.
 1, 1 オープンの場合,レスポンダは
  メジャースートを 4 枚持っていれば,1 の代でビッドできる。
  4 枚のメジャースートが無い場合には,
  (1)  6〜10 pts のバランス・ハンドでは,1NT をビッド。
  (2) 11〜12 pts のバランス・ハンドでは,2NT にジャンプ。
  (3) 13〜15 pts のバランス・ハンドでは,3NT にジャンプ。
(1) West
A 10 7 5
A Q 8 3
8 5
A 9 4
    
East
J 6 3
K 10 5
K Q 10
8 7 5 2
    
WestNorthEastSouth
1Pass1NTPass
PassPass
 East は,お粗末な 4 枚のサポートで クラブを上げる必要はありません。その代り,1NT をビッドして  6〜10 pts を示します。レスポンダが 1, 1 をビッドしなかったので,メジャースートでのフィットが無いことを West は知ります。そして 1NT のパートスコアで満足します。
(2) West
A 5
A 8 3 2
K Q 10 4
8 4 2
    
East
K 7 6
K 9 4
J 3
A 10 7 5 3
    
WestNorthEastSouth
1Pass2NTPass
PassPass
 East は 2NT にジャンプして,West を 3NT に誘います。West は下限の手なので,これをパスします。この場合,1NT をフォーシングの意味に使う必要はありません。
5-2.  レスポンダが初回にパスした場合.
 レスポンダが初回にオープンできず,パスすれば,その手が 13 pts 未満であることをオープナーは悟ります。したがって,自分の手がオープンできる下限ならば 1NT をパスできます。 このパスは,オープナーが 三番手,四番手で 13 pts 未満軽い オープンをした場合に殊に有用です。これにより 高過ぎる代に行かずに済みます。
 要するに,初回にパスしたレスポンダにとって,1NT という応答は,オープナ―が良い手の場合に備えた保険です。
West
K J 4
4 2
K J 10 3
10 8 6 3
    
East
Q 7 2
A J 8 6 3
Q 2
J 7 5
    
WestNorthEastSouth
PassPass1Pass
1NTPassPassPass
 West がパスした後,三番手の East は 10 HCP + 1 LP = 11 pts の手で,軽く 1 オープンします。West が 1NT を答えると,East はそれ以上ビッドする必要がありません。コントラクトは 1NT に落ち着きますが,それでも高過ぎます。
5-3.  右オポがオーバーコールした場合.
 相手側のオーバーコールが入った場合には,レスポンダのノートランプを自然ビッド に取り決めると うまく行きます。このビッドは,相手側スートでの何かの強さを示し,ノートランプへの 志向を表します。1NT は,(5-1) と同様に 6〜10 pts を示します。
 相手スートに強さが無いノートランプに不向きな手の場合には, 他の手段もあります。
    ぎりぎりの手の場合,パスして オープナーの手の様子を見る。
    ネガティブ・ダブルにより メジャースートを示す。
    キュービッドして,オープナーをサポートする。
    新しいスートを 2 の代でビッドする。 (これが仮に レスポンダの初回のビッドだとしても,オーバーコールが入ったので) このビッドは 1 回のフォーシングですが,ゲーム・フォーシングではありません。
West
7 3 2
A K 9 6 2
A 5 4
Q 9
    
East
K Q 10
5 4
Q 8 6 3
J 10 8 4
    
WestNorthEastSouth
111NTPass
PassPass
 1 オーバーコールに対して,East は自然な 1NT 応答を選びます。
West はそれ以上に行く必要がありません。
 Eric Rodwell:"The Forcing 1NT Response" (2007 March/April)