俗字の字典

 タイトルは「国字の字典」(東京堂出版刊)のモジりです。
 日本語の漢字の中には「国字」と呼ばれる日本で作られたオリジナルな文字(たとえば峠とか)があります。この手の文字は漢和辞典にはなかなか載せてもらえない(つまり、学者が相手にしてくれない)ものが多いのですが、「国字の字典」でかなりの文字が採録されています。しかしながら、民間にはこれに載せてすらもらえない字がたくさんあります。その手の文字を集めてみました。
 私は2つの意味で「活字中毒」です。第1に普通の意味で「本のムシ」であるということ。第2に「Typeface Mania」で字体や文字そのものに愛情を持ってしまってます。そういうわけで、こういう文字にも愛着を持ってしまいました。この手の文字を「ご存字」でしたらぜひお知らせください。
 [後記]このページは思いのほか、多くの方におもしろがっていただけたようで、メールをたくさんいただきました。ありがとうございます ^_^
「魔」という文字の俗字。竹本泉氏のマンガの中の書き文字でよく登場する。「まだれ」の中にカタカナの「マ」を入れたもの。一種の形声文字(なのか?)。あさりよしとお氏とトニーたけざき氏、唐沢なをき氏の著作でも同じ字を使ってるのを発見した。
用例:「剣と法」
(後記:東京の「多摩」などと書く際に「多」と使われるという情報が寄せられました。かなり古くから使われているようです。こちらの方が古い用法の可能性が大です。またSHARPのZaurusの手書き文字認識でも「摩」と入力されるようです。
後記その2:1冊の本の中に、世界一、この字が多く出てくる本は
  「世の中なまほう」,竹本泉,宙出版,1998年4月10日初版第1刷
だと思われます。18回もこの文字が使われています。)
「寮」という文字の俗字。「うかんむり」の中にアルファベットの「R」(Ryoの頭文字)を入れたもの。大学構内のタテカン(たて看板)より採集。一種の形声文字(なのか?)。
用例:「恵迪
(010816追記:2000年3月に京都大学構内でタテカンを見つけたので写真(右図)に撮ってきました。)
「慶」という文字の俗字。「まだれ」の中にアルファベットの「K」(ケイ)を入れたもの。大学構内のタテカン(たて看板)より採集。一種の形声文字(なのか?)。
用例:「応大学」
(後記:「応」についても「応」の「心」を「O:アルファベットのオー」に置きかえた物を使っているのを見たという情報をいただきました。私は、こっちはあまり記憶にありません(^^;「応」は書くのがラクだから、俗字の方は使用頻度が少ないのでしょう…と思ったら、正字は「應」でした(^^; これなら俗字を使う意味もありそうです。また、「まだれ」の中に「KO」の2字を入れて、一文字で「慶応」を示す文字すらある(後述する論文より)そうです。
後記追加:下記の本で「〜を追う」として、詳しい情報があるのを見つけました。
     日本語の現場 第一集,84〜95p,読売新聞社会部編,読売新聞,
     1975年11月10日第1刷発行
この本では明朝体とゴシック体の2書体のKOの活字すら作られています。起原として、昭和24年に慶応大学文学部の西岡秀雄教授が「発明」したという話が紹介されています。ただし、戦前にもあったということで、独立に複数の人が発明したと考えてよいでしょう。)
「機」という文字の俗字。「木」へんにカタカナの「キ」を組み合わせたもの。学生運動(…ってすでに死語だな)のビラなどで、よく見られる。一種の形声文字(なのか?)。
用例:「動隊」
「〜ます」という意を表す。酒を飲む升(ます)の絵を書いて、「ます」と読ませたもの。特に店頭にかかげて、商品や特定のメニュー(特に季節商品)の在庫を表すのに用いる。
用例:「冷やしラーメンあり
「喜」の俗字。パチンコでフィーバー(777)が出ると、喜んだことに由来す…るわけはなく(笑)、喜の草書体に由来するという。これは一部の漢和字典にも出ている。左下の「七」は「十」にも書き、77歳(七十七歳)のことを日本では「喜寿」と呼び、祝う。
漢数字の「ゼロ」。なぜか、これは漢和辞典には載せてもらえない。JIS漢字コードでも、記号の領域に存在している。漢字あつかいしてもらえない、ちょっとかわいそうな文字。俗字ぢゃないけど、お仲間ということで。
(後記:小学館の「現代漢語例解辞典」には収録されているという指摘がありました。しかし、この字典では「○(まる)」と「〇(漢数字のゼロ)」を同一のものとしており、かつ「非漢字」というページで収録しています。「0:ゼロ」自体、インドで7世紀ごろに成立したもので、多分日本には仏典とともに入ってきたことが推測されます。
 天明7(1787)年ころに書かれた「たとへづくし」という本には
 零 算法に一ッ 間置(あひをく)ことをいふ 又○(まる)を代(かは)りとす
とあります(「譬喩尽」,同朋舎,213p,1979年11月20日初版第1刷発行)。すくなくとも、この時期には漢数字の「ゼロ」があったと判断してよいでしょう。
([さらに後記:990127]また、
 <喜喜>に見る符号・紋様の文字化,笹原 宏之,1990,中国語學研究 開篇,vol 7,104-107p
には、中国での用法として「(○を)「零」に当てることは元代以来のこととされる」との記述があります。つまり中国での用法として、13世紀までさかのぼることができるわけです。)
 しかし、「マル」と「ゼロ」が同一かどうかというのは、やっかいな問題です。文字規格上は「スクリプト差」ということで逃げるのでしょうか(^^;
 これと同じ問題が、JIS漢字の「×」は「バツ、ペケ」を含むのかどうかというのがあります。規格書によると、これは「乗算記号」であるとしてあります。JIS X0208:1997でも「非漢字の包摂規準」を積み残しているとありますが、面倒なテーマであります。でも単におもしろがるには、こんなに楽しいことはありません ^_^ (990211訂正:池田証寿先生のご指摘で、「包摂基準」を「包摂規準」に訂正しました。誤記です。)
歌のはじめに入れる記号。でも、横書きの時には使わない(使えない)ような気も。
用例:「ら〜らら〜…」
,
ハートマーク。中が塗りつぶされてるやつも使うことがある(竹本泉作品のタイトルデータベースでは、両者が使い分けられていたりする)。用法としては……若い女性が、かわいく発言した時に、文末に付けて感情を表現するのに使…うのだろうか(^^; 新井素子さんのSF中でもよく使われる。
用例:「あはっ
超翻訳家、柳瀬尚紀先生の「フィネガンズ・ウェイク」の日本語訳中で出てくる。「よ」と「ま」の間の文字。原文の「sとfの間の文字」に対応する。
用例:「るでた」
同じく「フィネガンズ・ウェイク」の日本語訳中で出てくる。原文の「wehpen(nephewの逆)」の訳語として、(甥(おい)の逆)を使用した。(980327追記:大漢和辞典M21690に「甥と同じ(字彙補)」として収録されている。980830追記:「五音類聚四聲篇」(1589年刊)が「川篇」を引いて、「音生[女牙]妹之子」とする。)
同じく柳瀬尚紀先生の「ナンセンス感覚」(講談社現代新書)に出てくる。デカルトの「I think, therefore I am.」は「I think they're for 1 am.」だったというジョークの日本語訳(「吾考故吾在」は「丑口考五口在」だった)に使用された文字(って横書きにしたら、無意味じゃん)。old fatherの意。
吉田戦車「伝染るんです」(1)67ページに出てくる。「新しい字を発明しました」と提示される文字。最後のコマで、登場人物に見事に「発音」されてしまう(笑)
「知の技法」(東京大学出版会)の56〜73pでも取りあげられているが、私はタイプフェイスという見方から論じたい。この文字が最後のコマで発音されているというのは、「明朝体のデザインルール」で写植文字を作ってコマの中に貼り込まれているからなのである。漫画のフキダシの中の、ゴシック体の漢字と明朝体のひらがなは、「発音されている」というコモンセンスがなければ、何もオカシさを感じることはできない。でも、この文字はよくみると「あ」の前半と、「み」の後半を左右反転させたものを合体したものだったりする。完全に「新しい文字」ってのは、作りにくい…というか、「ひらがな」を作らなければならない制限からなのか。
濾過、濾紙で使う「濾」という字の略字。字典類には全く出ていないが、化学系の本や現場では、かなりヒンパンに使われている。慮を戸と略すのは、あまりポピュラーではない気がするけれども…爐→炉の略字の場合は、盧→戸である(こっちはけっこうある)。中国簡体字でも、似たような略字(同じではない)のを使っているようだ。
アイヌ語の発音を表記するための文字。カタカナの「ト」に半濁点「゜」を付ける。これは、今度のJIS X 0213で採用されるようだ。私が学生時代に、この文字を店名に使った居酒屋を札幌の北20条で見かけた記憶がある。
TVディレクターの伊奈かっぺい氏が、津軽弁の発音を表記するために提唱した文字。濁点のかわりに青森県の形をした記号を付ける。これは、冗談が半分なのだろうが、ある程度は本気だったのではないだろうか(^^; なお、この文字は記憶を頼りに書いてるので、要 典拠調査(笑)
後記:(990221)この字、調べました。下記の本に出てました。
 「津軽弁・違る弁」,伊奈かっぺい,おふいす・ぐう,15p,1994年5月13日第1刷発行
正しい字は「」とのこと。古語残存の音で、国際発音記号ではと表記するそうです。「い」と「え」の間の音とのこと。
「傘」の略字。大漢和(m366)にも補助漢字(16区36点)にも収録されているが、大阪梅田の地下街で右の写真に示したような値札を見つけたので。まだ生きてる字なんですね(それとも、単に誤字が暗合したのか)。こっちの字の方が、いかにも「カサ」って感じが出てて良い。「傘」だと何かすごく重たいカサな感じ(笑)
(後日、「」という文字を
     超芸術トマソン,233p,赤瀬川原平,ちくま文庫
     1992年7月15日第8刷発行
の看板の写真で見つけた。「傘」の中の「人」が4人でなく、2人になっている。これは、限りなく誤字に近いような気がするが…気を付けて探していると、この文字はけっこう使われている。
2003年5月5日追記:以下の本の106ページにも「2人傘」が使われているのを見つけました。けっこうポピュラーですね。
 「トランジスタにヴィーナス5」,竹本泉,メディアファクトリー,2003年4月30日初版第1刷発行)
「もののふの記」(ほりのぶゆき著、竹書房)に出てくる。「に」と読むらしい。けっして小文字のyの筆記体ではない(笑)かなの草書体なのだろうか。この本では「ん」と読むと思いこんで、タイトルなどに使っていて、4刷でようやく誤りに気付いたと書いてある…が、こんなの知ってる人って、そうはいないのでは。
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それぞれ「こ」、「ぶ」の異体字のようだ。草書体…っぽくはないのだが?「すこんぶ(酢昆布)」のパッケージに使われていた。ちなみに私は「すこんぶ」を食べたことがない…北海道ではコンブって、鍋物以外ぢゃほとんど食べないけど、関西では千切りを煮たりして、けっこう食べるみたいですねぇ。
用例:す
(980525後記:前項の「に」も含めて、これらの文字はいわゆる「変体かな」と呼ばれる「かな」であるようだ。「こ」は「古」、「ぶ」は「婦゛」の草体から由来するみたい。これらは明治期までは、新聞などにすら用いられており、活字も存在した(組版原論(府川充男著,太田出版)102pに、活字見本が出ている)。 980626後記追加:これらの「変体かな」の話題が下記の本で触れられていました。
     日本語の現場 第三集 42〜43p,読売新聞社会部編,読売新聞,
     1976年9月10日第1刷発行
厚生省が発表する「長寿者リスト」の人名として使われている写真が紹介されています。これによると、「変体かな」の名前での使用は昭和23年の改正戸籍法の施行まで認められていたとのこと。)
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将棋の棋譜で、先手番、後手番を表す記号。発音するときは「先手(せんて)」「後手(ごて)」と読む。ほとんどすべての新聞に毎日載っているのに、文字コード表にはまず入っていない記号。
用例:7六歩3四歩2六歩4四歩2五歩3三角
「ぽげむた」と呼ばれる記号。確かこう呼ぶはずなんだけど、何でそう書いてあったか思い出せない。『うる星やつら』のラムちゃんが日本語を忘れて母国語でしゃべる時にも、セリフにこの字が入っていた。
(020817後記:メールで何人かの方に「Login誌の投稿欄の“ぽげムたビゲなみょ〜ん”が由来で、厳密には異なる字ではないか」と指摘いただきました。そこで手元の資料をあさったところ、以下の記事を見つけました。
Login,1992年11号(5月22日発売),251p-287p,ログイン創刊10周年記念特集 パソコンシーン10年史クイズ,ログイン編集部
273p, Q842 ぽげムたビゲなみょ〜んに続く次期主力擬音を読者から広く募集したのだが、そこで決まった擬音は次のうちどれか?
274p, Q880 写植記号BA-90と、ぽげムたマークは非常によく似ているが、1ヵ所だけ違いがある。その違いを20字以内で述べよ。
283p, 【A880】ぽげムたマークのほうは毛が1本生えてる。ちょうど20字、100点。
1992年以前のLogin誌を調べれば、発祥が判明しますが…この手の雑誌、収蔵館が少ないんだよね。
私が見たのは「ぽげむたぽげむた」とぽげむた2文字に振り仮名として振ってあったはずです。「べ〜しっ君」とかログイン系の漫画だったかしらん。)
「薬」の俗字。2人の方からメールで教えていただきました。「くさかんむり」に「カタカナのヤ」を付ける。製薬会社や大学の薬学部などではポピュラーらしい。でも、会社の同僚の自称「ペーパー薬剤師(薬剤師免許を持ってるけど、薬剤師の仕事をしてない人を言うらしい。ペーパードライバーと同様な用法)」に聞いてみたら、「知らな〜い」とのこと。後述する論文にも、この文字は出てこない。
,
「漫符」の「汗」と「怒り記号」が写植文字として小説中に出てきた例。う〜ん、少々のフッ飛んだ用法には動じない私でも、これには驚いたぞ(^^;。下記に用例を示した。
9p11行目 「うん、誰もこっち見てねぇ
56p1行目 いんだか、よくないんだか……
66p10行目 たものをな
68p5行目 「あいーん! せっかくの特殊メイクがっ
72p9行目 「専用棒って、専用棒って
92p7行目 「セイさん……それって……
97p17行目 「オイ
110p16行目 「ハイ……わかりません……ハイ
135p15行目 「こ……こいつ暗ぇな
138p4行目 「……シブいもの見すぎ
147p8行目 「ああ〜っ
177p14行目 「…………
177p15行目 「…………
179p7行目 「……野生化している――
214p16行目 「…………
253p9行目 「別れやしねーぞッ
すべて、
 『早咲きのMay Rose』,尾鮭あさみ,角川ルビー文庫,平成11年5月1日初版発行
より引用。
「小書きのン」 次のような用例があります。
1),350p10行目 から、こっちもうかうかしてらンないや。――カメラ取
2),294p6行目 は、どうもつンのめってしまうような気がする。そこで急ぎ予定を
3),159p9行目 あろう。しかし、この赤ン坊がまわりまわって人参と
4),168p3行目 た迂儒諸公の目をひンむいてやろう。
7),290p12行目 「ばかもン! 墓道の両側にいきどまりのちいさなみちがあったろう。それだ」
8),178p13行目 ら、モウ五ン合気を付けよう」
9),253p14行目 或いは、三ン角四角になって、
また、次の例は、実際に小書きにしたわけではありませんが、小書きの「ン」について言及しています。
5),17p8行目 としてほしかった。あるいは「ばか」の下に小さいカタカナの「ン」がつくこともある、と
また、次の例では、ひらがなの小書きの「ん」を使っています。
6),325p8行目 さて、行こう、ワクワクの国[ん]に! ぞくっ!
1) 『小松左京コレクション[4]』,小松左京,ジャストシステム,1995年12月4日初版第1刷発行,初出は『大阪夢の陣』(『オール読物』1982年2月号)
2) 『西遊記の秘密』,中野美代子,福武文庫,1995年4月10日第1刷発行
3) 『孫悟空の誕生』,中野美代子,福武文庫,1987年1月16日第1刷発行
4) 『スクリブル』,中野美代子,筑摩書房,1995年12月20日第1刷発行
5) 『新解さんの謎』,赤瀬川原平,文藝春秋,平成8年7月15日第2刷
6) 『中国の青い鳥』,中野美代子,平凡社,1994年12月15日初版第1刷
7) 『契丹伝奇集』,中野美代子,日本文芸社,1989年11月30日第1刷・1991年2月25日第4刷発行
8) 『江戸の戯作絵本(4)』, 小池正胤・宇田敏彦・中山右尚・棚橋正博 編, 現代教養文庫, 1983年3月30日初版第1刷発行, 1997年4月5日第5刷発行
9) 『江戸の戯作絵本(3)』, 小池正胤・宇田敏彦・中山右尚・棚橋正博 編, 現代教養文庫, 1982年4月30日初版第1刷発行, 1997年4月5日第6刷発行

他に新JIS漢字の公開レビュー資料のうち、非漢字不採用文字一覧(第三部)にも教科書からの用例として1678番に頻度1としてあげられている。また、
 『黄表紙の片仮名』,久保田篤,1999,國語と國文学,76,151-165p
に「小書きのン」の用例が出ています。他に小書きの「ト・チ・タ・レ・キ・ス・リ」なども出てきますが…さて、こういうのは「組版の機能で実現する」べきものでしょうか。

俗字の基準

 このページで取り扱う文字の選定基準についてまとめておきます。しかしながら、これらの基準を厳密に運用しているわけではありません。変だったり、おもしろければ、OK。
1. JIS X 0208:1997(通称 JIS漢字)またはJIS X 0212:1990(通称 JIS補助漢字)に収録されていない
これらの規格に収録された文字は、一般に知られているはずなので…
2. 角川新字源、諸橋大漢和、国字の字典に収録されていない
これらの辞書に収録されているなら、あえてここで取りあげるまでもない。
3. 現代日本語として使用されていること
1980年代以降で、私が実際に目にしたり使用した文字に限ります。仏典や漢籍、古文書の文字は私は読めないのと、あんまり興味がないので。また、中国漢字も除きます。
4. かならずしも漢字である必要はない
変な文字であれば、ひらがなや記号、漢字に準じた文字類も取りあげます。

補遺

 最初に「学者が相手にしてくれない」と書きましたが、このページを読んだ方から、次の論文を紹介していただきました。
     位相文字の性格と実態,笹原 宏之,1992,早稲田日本語研究,1,40-52p
 完全に学者に相手にしてもらえないわけではないようで(笑)、これにこのページで触れた文字の多くが収録されています。しかしながら、実際にどういう文字が、人の目に触れるかというサンプルの意味で、私のページも意味があるでしょう(^^; そのため、この論文から新たに文字を引くことはしません。ただ、この論文で紹介されていた「警察文字」については、実物を見つけたら写真を添えて、このページで紹介したいと思います。(後記:なかなか見つかりません;_;)
 また、「俗字」というのは、漢和字典の意味では「正字」に対応する語であり、「略字」とほぼ等しい語であるようです。このページで使っている「俗字」は「俗っぽい文字」のことだと思ってください。つまり、「アカデミックでない文字」を意図しています。

付録:俗訓の辞典

 この手の言葉も収集しております。まだあまり集ってないので、イソウロウもーどにしておきます。
緑夢(ぐりむ)
テレビで話題の、実在する人名らしい(よく知らないが)。芝野耕司 編著「JIS漢字字典」(日本規格協会)の361ページのコラムに出ていた。童話作家のグリムと、緑→green→グリーンをかけてあるらしい。
妹恨(しすこん)
シスコン(sister complex:「妹が好き!」というやつですな)のこと。沙村広明「無限の住人(4)」(講談社)228〜229pに出てくる。
斫る(はつる)
「〜斫り工業」という名前の会社の存在が、札幌、神戸、四国(川之江)で確認されている。JIS漢字字典でも、「シャク、きる」という読みしか載っていないし、諸橋大漢和はおろか、どの漢和辞典にもこの読みは出ていない。しかしながら、「はつる:削り落とす」という意味をこの漢字に当てるのは、業界では一般的なようだ。[後記]Yeemarさん「ことばをめぐるひとりごと 漢字はえらくない!」というページでもこの読みについて言及されていました。

関連リンク

和製漢字の辞典
大原 望さんが作成中の『和製漢字の辞典』のWWW版、βバージョンです。私が編集に協力しています。
JTCギジモ明朝見本|レイアウト用疑似文字・ギジモ
確か岡本太郎さんの作品に、「座られることを拒否する椅子」というのがあったと思う。「読まれることを拒否した文字」が「ギジモ」。「」にも通じるものがあるように思う。佐藤豊さんの「週刊書体Watcher」でも触れられていた。
文字のスナップ
Yeemarさんのページ。収集した文字を写真で紹介されている。
JIS漢字
北大文学部の池田 証寿先生のページ。
規格外漢字
e漢字(電子漢字)プロジェクト(京大人文研)のページより。
諸橋大漢和辞典 初版縮写版→修訂版間の差
私のページ(^^; 修訂版になって消えた、なんて文字も「俗字」のうちに入るのかな?(でも、単なる「誤字」かも…)
インターネット・カゲロウ日記1998年5月23日分
[後記]andosさんのページ、インターネット・カゲロウ日記で、「俗字の字典」を紹介していただきました。
これって漢字? ヘンな字体を集めた「俗字の字典」
[後記]ImpressInternet Watchで紹介していただきました。[さらに後記]1998/5/25〜5/31の週間アクセスランキングで、Java Ringのネタを抑えて堂々の3位(笑)。

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