セーリングの技術と心得

ま〜ちゃんの簡単ディンギーヨット教室 も御覧下さい。


1. セーリングについて

風で船を動かすのがヨット(セールボート)ですが、内燃機関を得た現代においては実用 的な技術ではありません。スポーツ、ホビーいろいろなとりかたがありますが、まったく の遊びの世界です。

この遊びが魅力的なであり、そのために西洋諸国では子供の頃から遊び方を教えこむ システムが作られ、生涯をセーリングで楽しむ生活環境ができているます。

ヨットは幼児の頃から始める人が多いスポーツです。これは、単に技術的な面での早期教 育の他に、他のスポーツに比べて自然との関係があまりにも多く占めるため、それだけの 時間がかります。

この様な長いスパンでの体験が必要なスポーツなので、西欧では学校スポーツではなく地 域のクラブスポーツとして行われています。地域に密着したクラブがサッカーのJリーグ 発足の時に述べられましたが、ヨットは西欧では数百年も前からクラブスポーツとして実 施されてきました。

残念なことに、日本ではこの様なクラブシステムは今まで存在していません。学校スポー ツが代わりの役目をはたしてきましたが、時間的制約があり決して十分とはいえませ んでした。

ヨットは操船技術のほかに、風、波、潮および天候など自然の状態を知ること、艇の構造、 強度などの工学的知識などが、安全にセーリングを行うために必要です。

この様な広い知識と経験を持ち、尚且つ自分の状態(技量、体力)が十分に把握できたセ イラーになることが、ヨットで生涯遊ぶための必要条件です。

始めるのが成人になってからの場合は、ジュニアからに比べると理解力は優れていますが、 体験による知識が十分とはいえません。従って、その点を常に自覚して、焦ら ずに時間をかけて補っていくことが必要です。

その期間は個人差がありますが、数年から十年以上と考えて良いでしょう。この意味から も、ヨットは自分の生涯スポーツと考えて、余裕を持ったスケジュールで行うべきです。

また、一旦海に出た場合は技術の優劣、経験の有無に関係なく個人の責任でセーリングを 行うことになります。しかしながら、各個人だけの経験や知識では常に変化する自然環境 に対して十分に対応できるわけではありません。したがって、自然に対して常に謙虚な姿 勢で、また多の人からの助言や情報を率直に受け入れることが、安全なセーリングを得ら れる基となります。

2.セーリング技術とは

セーリング技術とは艇を安全に正確に走らせることです。これは、単に艇の操船技術だけ でなく、正しい判断も含まれます。

海の上では、レースでお互いに競い合っている場合や、技術向上のための練習を除いて常 にその時点で一番安全な方法を選択します。従って、自分にとって慣れた方法を選択し、 困難な状態にならないように前もって危険を回避することを常に考えてセーリングを行い ます。

陸上では万一失敗したらやり直せば良いことでも、海上では簡単に船の沈につながること になります。経験あるセイラーは復元してセーリングを可能にすることができますが、風 の状況によつて他のレスキューが必要なことにもなります。海の上では風や波を上級者、 初心者平等に受けるわけですので、技術が未熟な人もそれなりのセーリングで無事に港へ 帰るための最低限の技術を持つ必要があります。

3.知っておくべき海の知識と技術(シーマンシッブ)

どれも必要なことです。通常は一人か二人でセーリングしますので、一旦港を離れたら、 他の人に相談したり、教えてもらうことはできません。本当に単純なことでも知らなかっ たために悲惨なめに逢ったセイラーが山のようにいます。操船技術に関しては、テキスト や市販の参考書を御参照ください。( ま〜ちゃんの簡単ディンギーヨット教室 10.ディンギーヨット参考図書他参照)

ロープワーク(ロープの結び方)
ヨットで必要なロープの結び方は数種類ですが、特にボーラインノット(もやい結び)は非 常に重要な結びかたです。基本的には、力が作用しているときには決して解けず、解くと きには容易に解けることです。陸上で簡単に出来るようになっても、大波で揺れた海上で、 確実に出来るようになるには相当の練習が必要です。(救助艇からロープを投げられて短 時間に艇に結ぶ時は中々出来ないものです)( ま〜ちゃんの簡単ディンギーヨット教室 5.ロープワーク参照)

艤装(正しい方法と、各部品の保守点検)
正しい位置に、適切な方法で、正常なものを取り付けること。多くの部品は、陸上に保管 するときに外されます。出艇する時は又取り付けるわけです。ほとんどの部品は、直接ロー プで結んだり、シャックルと呼ばれる金具で取り付けられます。陸上では簡単な作業です が、一旦海に出て、揺れている中で間違った艤装を直すことは大変な作業になります。そ の為に艇を沈させてしまうこともあります。

陸上での艤装作業
陸上で正しくセイルがセットされたか確認のためにセイルを揚げてみます。この場合、艇 は必ず風に向けて置きます。その他の位置にすると、セイルを揚げた瞬間、セイルが風を はらんで艇が転倒します。艇をスロープに移動する時は一旦セイルを降ろして移動させま す。(移動中にブームが振れ、他の人に迷惑になるから)

出艇と着艇
スロープから出艇及び帰着の時は、周りを良く見て、十分スペースがあることを確認して から行います。初級者の場合、艇の操縦技術が安定していないわけですから、予期しない ミスも発生します。その事が、他のセイラーの迷惑にならないように考えて、失敗しても 余裕があるスペースを確保できるまで待ってから行うことです。

ハーバーの外では、多少の操船ミスも広い海面ですので他のセイラーに影響を与えること は少ないです。出艇と着艇の時の事故が一番多いです。少なくとも、衝突は避けるようにし てください。

声をかける
風が強い海上では、セイルのはためく音なとで声が非常に聞き取りづらくなります。同じ 艇に乗っている同士でも、お互いに大きな声で返事をして動作の確認をする必要がありま す。又、他の艇との衝突を避けるために(艇同士の優先権は規則で決められています)声 を掛け合うことが推奨されています。必ずしも非権利艇が全て見ているわけではありませ んので、事前に確認をとる動作が必要になります。

セーリングエリア
海上は陸上と違い道路のように走行を制限される場所はありません。ただし、広い海面で もセーリングエリアは色々な理由で制限されます。各海域でマークを打ってレースや練習 がされている場合、その中を横切ることは避けます。また定置網や刺し網、蛸壷の浮きが 至る所にあります。江ノ島、腰越漁港への漁船の航路も避けます。また、ハーバーから見 えない江ノ島の西側へも万一の場合を考えると行かない方が良いです(ハーバーから 沈艇の監視を行っているので、見えないと助けにきてもらえない)。腰越や江ノ島の岩場 の近くへは、万一そこで沈をした時に直ぐに流れ着くような風向の場合は近寄りません。 以上の通り、広い海を自由に走っているように見えても、沖からハーバーへは一定の道を 考えて走ることになります。

レスキュー依頼
どんなに注意を払つていても、海の上ではトラブルを避けることは出来ません。それを自 分で解決しながら戻ってくることを長い時間をかけ学んでいくわけです。しかしながら、 どうしてもレスキューの手が必要なことも発生します。その時は、明確にレスキュー依頼 の意志を告げ、レスキューの指示に従い行動してください。また陸上に戻ってから、レス キューしてもらった人(組織,団体)へ必ず一言お礼の言葉を述べましよう。

中止の判断
レースに参加している時に、風が強くなって自分の技量では無理かなと感じた時でも、一 人だけ中止(リタイア)して戻つてくることは行いづらいものです。例えば、遠くから友 人を呼んでセーリングを予定していた時に、風が強くて出艇することに不安を持つ場合も ありますが同様に中止ししづらいものです。勇気をもって中止しましょう。

一般には技術が上達するに従い、適正な判断が出来るようになります。常に、次の状態を 考えての行動を行えるようになれば、迷うこと無く止めることが出来ます。

艇のメンテナンス
夏になると、その年初めてハーバーに来て一年ぶりに出艇する人達がいますが暫くす るとレスキューボートに引かれて帰ってくることがよくあります。メンテナンスを行って いない艇は必ずどこかが壊れます。サイドステー(ワイヤ一)が切れてマストが倒れたり、 ラダー(舵)が折れたり外れたりして、走行不能になることがしばしばあります。

艇のメンテは乗る人の責任であり、この様なトラブルでレスキューされることは恥ずかし いことです。ヨットの場合、使っていないと、アルミの電蝕やロープが紫外線による劣化 で弱っていることが多く、上記のようなトラブルが発生します。特に海水による腐食は強く 、金具類が錆付くこともあります。

4.生活とセーリング

レース志向の人(若い人が主ですが)は一年中セーリングをします。しかしながら、生涯 スポーツとして楽しもうと考えた場合、セーリングシーズンはあまり寒い時期には無理を せずに4月から11月程度と考えることになります。

5月頃は天候が安定せず、強風の日がありますが、その中でもセーリングに適した風の日 を得ることも出来ます。梅雨の時期を過ぎて夏に入ると、暑さが快適なセーリングの邪魔 をすることになりますが、多少の沈をしても体力的に問題ないので一段アップした練習に チャレンジできます。ただし、南の強風が吹くと、波の状態が悪くセーリングが出来ない ケースもあります。

9月から11月にかけては、北風(陸風)となり、強風でも夏に比べて波がたたないので、 絶好のセーリングシーズンとなります。この間、江ノ島ヨットハーバーでは、春、夏、秋 の各シーズンに一般のセイラーが参加できるオープンヨットレースが開催され、日頃の 練習成果を試すことが出来ます。


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