2.セーリング技術とは
セーリング技術とは艇を安全に正確に走らせることです。これは、単に艇の操船技術だけ
でなく、正しい判断も含まれます。
海の上では、レースでお互いに競い合っている場合や、技術向上のための練習を除いて常
にその時点で一番安全な方法を選択します。従って、自分にとって慣れた方法を選択し、
困難な状態にならないように前もって危険を回避することを常に考えてセーリングを行い
ます。
陸上では万一失敗したらやり直せば良いことでも、海上では簡単に船の沈につながること
になります。経験あるセイラーは復元してセーリングを可能にすることができますが、風
の状況によつて他のレスキューが必要なことにもなります。海の上では風や波を上級者、
初心者平等に受けるわけですので、技術が未熟な人もそれなりのセーリングで無事に港へ
帰るための最低限の技術を持つ必要があります。
ロープワーク(ロープの結び方)
ヨットで必要なロープの結び方は数種類ですが、特にボーラインノット(もやい結び)は非
常に重要な結びかたです。基本的には、力が作用しているときには決して解けず、解くと
きには容易に解けることです。陸上で簡単に出来るようになっても、大波で揺れた海上で、
確実に出来るようになるには相当の練習が必要です。(救助艇からロープを投げられて短
時間に艇に結ぶ時は中々出来ないものです)(
ま〜ちゃんの簡単ディンギーヨット教室 5.ロープワーク参照)
艤装(正しい方法と、各部品の保守点検)
正しい位置に、適切な方法で、正常なものを取り付けること。多くの部品は、陸上に保管
するときに外されます。出艇する時は又取り付けるわけです。ほとんどの部品は、直接ロー
プで結んだり、シャックルと呼ばれる金具で取り付けられます。陸上では簡単な作業です
が、一旦海に出て、揺れている中で間違った艤装を直すことは大変な作業になります。そ
の為に艇を沈させてしまうこともあります。
陸上での艤装作業
陸上で正しくセイルがセットされたか確認のためにセイルを揚げてみます。この場合、艇
は必ず風に向けて置きます。その他の位置にすると、セイルを揚げた瞬間、セイルが風を
はらんで艇が転倒します。艇をスロープに移動する時は一旦セイルを降ろして移動させま
す。(移動中にブームが振れ、他の人に迷惑になるから)
出艇と着艇
スロープから出艇及び帰着の時は、周りを良く見て、十分スペースがあることを確認して
から行います。初級者の場合、艇の操縦技術が安定していないわけですから、予期しない
ミスも発生します。その事が、他のセイラーの迷惑にならないように考えて、失敗しても
余裕があるスペースを確保できるまで待ってから行うことです。
ハーバーの外では、多少の操船ミスも広い海面ですので他のセイラーに影響を与えること
は少ないです。出艇と着艇の時の事故が一番多いです。少なくとも、衝突は避けるようにし
てください。
声をかける
風が強い海上では、セイルのはためく音なとで声が非常に聞き取りづらくなります。同じ
艇に乗っている同士でも、お互いに大きな声で返事をして動作の確認をする必要がありま
す。又、他の艇との衝突を避けるために(艇同士の優先権は規則で決められています)声
を掛け合うことが推奨されています。必ずしも非権利艇が全て見ているわけではありませ
んので、事前に確認をとる動作が必要になります。
セーリングエリア
海上は陸上と違い道路のように走行を制限される場所はありません。ただし、広い海面で
もセーリングエリアは色々な理由で制限されます。各海域でマークを打ってレースや練習
がされている場合、その中を横切ることは避けます。また定置網や刺し網、蛸壷の浮きが
至る所にあります。江ノ島、腰越漁港への漁船の航路も避けます。また、ハーバーから見
えない江ノ島の西側へも万一の場合を考えると行かない方が良いです(ハーバーから
沈艇の監視を行っているので、見えないと助けにきてもらえない)。腰越や江ノ島の岩場
の近くへは、万一そこで沈をした時に直ぐに流れ着くような風向の場合は近寄りません。
以上の通り、広い海を自由に走っているように見えても、沖からハーバーへは一定の道を
考えて走ることになります。
レスキュー依頼
どんなに注意を払つていても、海の上ではトラブルを避けることは出来ません。それを自
分で解決しながら戻ってくることを長い時間をかけ学んでいくわけです。しかしながら、
どうしてもレスキューの手が必要なことも発生します。その時は、明確にレスキュー依頼
の意志を告げ、レスキューの指示に従い行動してください。また陸上に戻ってから、レス
キューしてもらった人(組織,団体)へ必ず一言お礼の言葉を述べましよう。
中止の判断
レースに参加している時に、風が強くなって自分の技量では無理かなと感じた時でも、一
人だけ中止(リタイア)して戻つてくることは行いづらいものです。例えば、遠くから友
人を呼んでセーリングを予定していた時に、風が強くて出艇することに不安を持つ場合も
ありますが同様に中止ししづらいものです。勇気をもって中止しましょう。
一般には技術が上達するに従い、適正な判断が出来るようになります。常に、次の状態を
考えての行動を行えるようになれば、迷うこと無く止めることが出来ます。
艇のメンテナンス
夏になると、その年初めてハーバーに来て一年ぶりに出艇する人達がいますが暫くす
るとレスキューボートに引かれて帰ってくることがよくあります。メンテナンスを行って
いない艇は必ずどこかが壊れます。サイドステー(ワイヤ一)が切れてマストが倒れたり、
ラダー(舵)が折れたり外れたりして、走行不能になることがしばしばあります。
艇のメンテは乗る人の責任であり、この様なトラブルでレスキューされることは恥ずかし
いことです。ヨットの場合、使っていないと、アルミの電蝕やロープが紫外線による劣化
で弱っていることが多く、上記のようなトラブルが発生します。特に海水による腐食は強く
、金具類が錆付くこともあります。