1.ヨットの歴史
ヨットの起源は、14世紀のオランダにさかのぼる。当時オランダでは、海賊を追跡するために、Jaghtと呼ぶ快速帆船を用いていたが、これを貿易船や通船に利用し、さらに遊覧にも使うようになった。
1660年、イギリス王チャールズ2世が即位すると、オランダ人は贈り物として、Jaght「メリー号」を献上した。その時イギリスでは、JaghtをYachtと綴り、今日に至っている。
通常、Yachtとは高速な遊覧船で、日本語のヨットは英語ではSail Boatに相当する。
2.ディンギーヨット各部の名称と用語
具体的な解説にはいる前に、ディンギーヨット各部の名称と用語の説明をする。特にヨットでは、耳慣れない用語もたくさんでてきて慣れるまでは大変だが、説明や乗艇した場合のすばやい指示には不可欠なので、図1ディンギーヨット各部の名称を参照に、重要な用語から順番に早く覚えてほしい。
また、そのほかの各部の名称を次にあげる。(太字は耳慣れない重要な用語)
(湘南セイリングクラブのヨット用語集(日本語、英語) 参照)
3.ディンギーヨットの種類
ディンギーは1〜4人乗りの小型ヨットで、主にレースまたはデイクルージングに用いられ、キャビン(船室)はない。
一方、それより大きなヨットであるクルーザーは、キャビン、バース(寝台)、ギャレー(台所)、エンジンを持ち数日以上の航海ができるようになっている。
ディンギーヨットのセールの形式でスループ・リグとは、図1のような2枚セールの形式で、キャット・リグとは図1のメインセールだけのような1枚セールの形式、ガフ・リグとは台形のセールで、セールの上部にもガフと呼ぶセールを張るための支柱のある形式である。また、スピン(スピネーカ)とは、主に後ろから風を受けて走る場合に前方にあげる袋状のセールである。クラスマークは、種類を表すマークでメインセールの上部にある。
ディンギーヨットはモノタイプと呼ばれる、ハルの形状、大きさやセールの形状、サイズの定められた、規格艇が主流である。主な規格艇を次にあげる。
ヤードスティック・ナンバー(YN)は艇種毎のハンディキャップに相当するもので、早い艇種ほど小さい。異なる艇種の混合レースの場合は、所要時間をこのヤードスティック・ナンバーを百分の一した値で割った修正時間で順位を決める。(ここでは、江ノ島ヤードスティック・ナンバーを示す。後半にその他の艇種も含めたヤードスティック・ナンバーを示す。)
名称に*のついている艇種はクリックすると新しいウィンドウで写真が見られる。(ここに使う、使用可能な各規格艇の写真がありましたら、まで、お送り下さい。)
名称 | クラスマーク | 全長 | セールの形式 | 乗員 | YN |
5−0−5 (ファイブ・オー・ファイブ、ごーまるご) |
数字の「505」 | 5.05m | スループ・リグ、スピン | 2人 | 77 |
470 (よん・なな・まる) |
数字の「470」 | 4.7m | スループ・リグ、スピン | 2人 | 80 |
K16 * (けい・じゅうろく) |
文字の「K16」 | 5.03m | スループ・リグ、スピン | 2人 | 84 |
シーホース | タツノオトシゴのマーク | 5.0m | スループ・リグ | 2〜3人 | 87 |
スナイプ * | 鴫(シギ)のマーク | 4.72m | スループ・リグ | 2人 | 90 |
レーザー * | レーザーマーク | 4.23m | キャット・リグ | 1人 | 94 |
フライング・ジュニア | 文字の「FJ」 | 4.03m | スループ・リグ、スピン | 2人 | 94 |
シーホッパー | 波の上にバッタのマーク | 4.24m | キャット・リグ | 1人 | 94 |
Y15 * (わい・じゅうご) |
文字の「Y15」 | 4.6m | スループ・リグ、スピン | 2〜4人 | 98 |
ミニ・ホッパー | Mの上にバッタのマーク | 3.43m | キャット・リグ | 1人 | 113 |
OP (おーぴー) |
文字の「O」と「P」の組み合わせ | 2.3m | ガフ・リグ | 1人 | 144 |
艇種 | YN |
水中翼モス | 49 |
49er | 60 |
RS800 | 67 |
ナクラ5.2 | 67 |
国際14 | 64 |
RS700 | 72 |
FD | 75 |
505 | 77 |
ホビー16 | 78 |
29er | 80 |
470 | 80 |
RS500 | 80 |
セーリングスピリッツ | 80 |
ファイアボール | 80 |
B14 | 82 |
K16 | 82 |
ホビー14 | 84 |
シードスポーツ | 86 |
シーホース | 87 |
テーザー | 83 |
レーザーVORTEX | 87 |
モス | 89 |
スナイプ | 90 |
B14スモールリグ | 92 |
バレオ | 92 |
420 | 93 |
FJ | 94 |
RS200 | 94 |
カシオペア | 94 |
シーホッパー | 94 |
シーラーク | 94 |
レーザー | 94 |
ウィンドコール | 95 |
ビジョン | 95 |
Y15 | 98 |
シーラス | 98 |
B14斉藤スペシャルリグ | 100 |
K420 | 100 |
シーマーチン(2枚帆) | 100 |
シーホッパーSR | 101 |
レーザーラジアル | 101 |
シースパイダー | 102 |
シカーラ | 102 |
フィーバXL | 103 |
フィーバXM | 106 |
フィーバXS | 109 |
LT17 | 110 |
R17 | 110 |
ミラー14 | 110 |
レーザー4.7 | 110 |
シーマーチン(1枚帆) | 112 |
葉山12 | 112 |
ミニホッパー | 113 |
デイセーラ | 115 |
A級ディンギー | 120 |
K16C | 120 |
シースパロー | 120 |
トッパー | 126 |
CJ | 129 |
ミラー | 129 |
アクセスディンギー303 | 130 |
アクアミューズ | 130 |
ダックリング | 140 |
OP | 144 |
アクセスディンギー2.3 | 150 |
4.なぜヨットは走るのか
一口でいえば、セールの両面に生ずる圧力差で走るのである。
風に向かって、あるいは風を横から受けて走る場合を考える。セールはふくらみ(アール)を持っている。そのため、セールには飛行機の翼でいう揚力が働き、艇をセールに直角で膨らんだ方向に押す力が加わる。艇はセンターボードによって、横には動きにくく、前後に動きやすくなっているので、わずかに横に流れながら、前に進むのである。
簡単には、止まった状態でセールをシバーさせた場合の1/2の角度までセールを引き込むと良い。それは、艇が走り出すと、艇のスピードにより、見かけの風はより前方から吹いてくるようになるのと、セールのアールのためである。
では風を後方から受けて走るとき(ランニング)はどうであろう。この場合は、もはや揚力とはいいがたいが、セールの前にできる渦に引き込まれ、つまりやはり圧力差で走るのである。ランニング(追手)の場合には、センターボードは不要である。
5.ロープワーク
ヨットにおいてロープワークは非常に大切である。海上ではいつどんなことが起きるかわからない。ロープワークは、結びやすく、自然にはほどけず、ほどこうとするときには、ほどきやすいことが要求される。
ロープワークには大きく分けて3種類ある。1本のロープに結び目を作ったり、輪を作ったりする、ノット(Knot)(船の速度の単位、ノット[1時間に1海里(1852m)]はロープを流して結び目の数で速度を測ったことによる)、ロープを固定物に(一時的に)結びつけるヒッチ(Hitch)、二本のロープを結びつける、ベンド(Bend)がある。
●エイト・ノット(8の字結び)(クリックすると新しいウィンドウに図が表示される)
ロープに結び目を作る結び方。シートのブロックからの抜け止め等に用いる。通常のこぶを作る結び方にひねりを加える。
●ボーライン・ノット(クリックすると新しいウィンドウに図が表示される)
主に艇をもやう時に用いる結び方。応用範囲が広い。
●クリート・ヒッチ(クリックすると新しいウィンドウに図が表示される)
クリートにロープを8の字に掛けて固定する方法。
そのほか、ツーハーフ・ヒッチ、クラブ・ヒッチ、フィシャーマン・ベンド、シングルシート・ベンド(一重接ぎ)、ダブルシート・ベンド(二重接ぎ)等も用いる。(下記のロープワーク関連ホームページ参照)
6.ディンギーヨットの艤装(フィッティング)
ヨットに乗るためには、準備が必要である。ディンギーは普通陸上に保管されている。海にでる前に、一度陸上で組み立て、必要な物がすべてそろっているか、壊れたり、壊れかけているところはないかを点検する。海上にでてからは、通常修理も不可能で、異常が起きてもその状態で帰ってこられなければ、遭難ということになる。
大まかな手順を述べる。
7.ルール・安全
●ヨットの交通ルールについて簡単に述べる。
ヨット(ウィンドサーフィンを含む帆船)同士が出会った場合
ルールの基本 +−−異なるタック−−−−−−−−−−−−−スターボード・タック優先 | (ポート・スターボー) 優先権| | +−−オーバーラップ有り−−下優先(上・下) +−−同一タック| +−−オーバーラップ無し−−追い越され(クリア・アヘッド)優先 (追い越し・追い越され)
8.帆走(セイリング)
ヨットの走らせ方には大きく分けて二種類ある。クロース・ホールド(風上行き)とフリーである。
目的地が、風上の方向ではない、フリーの帆走においては、艇を目的の方向に向け、セールをシバーの状態から、1/2の角度まで引き込めば、艇は走り出す。走り出した後は、艇の向きを保ったまま、セールにシバーが入らないようにシートを調節すれば、目的地に着く。
目的地が、風上にある場合は、クロース・ホールドでタッキングを行いながら、ジグザグに走り目的地に到達する。
風向きによるセイリングの種類を、風上方向を0度とした進行方向の角度で分けると、下記のようになる。
○クロース・ホールド
前方約45度から風を受けて走る走り方、これ以上風上に向かっては走れない
○ウインド・アビーム
ほぼ真横(90度)から風を受けて走る走り方
○ランニング
後ろ(約165度)から風を受けて走る走り方
図2風向きによるセイリングの種類(クリックすると新しいウィンドウに図が表示される)
風上に向かいながらタックをかえる、タッキングの手順は、概略次のようになる。
9.ビューフォート風力段階表とセイリング
風力の見方と、セイリングの目安をしめす。初心者は、風力3程度まで、中級者は、風力5程度までが
練習に適する。
風力 | 風速(m/s) | 海上の状態 | セイリング |
1(微風) | 0.3〜1.5 | うろこのようなさざ波 | ほとんど練習にならない |
2(微風) | 1.6〜3.3 | 小波、白波はない | 初心者に最適 |
3(中風) | 3.4〜5.4 | 小波、所々に白波 | 初心者から上級者まで基本練習に最適 |
4(中風) | 5.5〜7.9 | 白波がかなり多くなる | 初心者は沈の恐れあり |
5(強風) | 8.0〜10.7 | 白波がたくさん現れ、しぶきが生ずることもある | 中級から上級向き、強風のテクニックが必要 |
6(強風) | 10.8〜13.8 | いたるところ白波、しぶき大波も生ずる | 上級向き |
7(強風) | 13.9〜17.1 | 泡が筋を引く | 上級向き、プレーニング等の練習に最適 |
10.ディンギーヨット参考図書、ビデオ、パソコンプログラム他
○ディンギーヨット参考図書をあげる。(太字はおすすめ図書)
書名 | 著者 | 出版社 | 発行年 | 価格 |
ディンギーセイリングStandard Book | 佃昭二 | BABジャパン | 2000 | ¥2,000 |
ディンギー | 米澤一 | 同朋舎出版 | 1992 | ¥2,000 |
新版 ヨット百科 | 舵編集部 | 舵社 | 1986 | ¥2,200 |
土日で覚えるヨット | ジョン,ドリスコル | 同朋舎出版 | 1993 | ¥2,000 |
ビギナーのためのヨット入門 | 石井 正行 | 舵社 | 1992 | ¥2,000 |
図解ヨットのルール | 日本ヨット協会 | 成美堂出版 | 1998 | ¥600 |
ディンギーヨットの基礎訓練〔改訂増補版〕 | 笹岡 耕平 | 成山堂書店 | 1993 | ¥1,165 |
OPヨットを乗りこなそう | 石井 正行 | 舵社 | 1991 | ¥1,456 |
はじめてのヨット | 小松 一憲 | 高橋書店 | 1990 | ¥1,311 |
ビギナーのヨット教室テキスト | 笹岡 耕平 | 成山堂書店 | 1989 | ¥900 |
ディンギーヨットで海をジョギング | ヤマハ発動機 海洋普及室 |
舵社 | 1983 | ¥825 |
ディンギー入門 | 岡田 豪三 | マリン企画 | 1981 | ¥1,300 |
ヨットマンの航海術 | 鈴木 邦裕 | 海文堂出版 | 1980 | ¥3,000 |
図解コーチ・ヨット 初級技術編[絶版] | 松田 任弘 | 成美堂出版 | 1996 | ¥560 |
11.ディンギーカリキュラム例
ディンギーカリキュラム例を参考までにあげる