<< 1999年7月3日開催 第4回 NT-Committee2 関東勉強会 講演資料 >>
今さらですが、電話の発明とその普及で相手の場所を考えずに情報伝達が可能になりました。
しかしながら、電話には「相手と直接話す」という長所の裏側として「相手がその場にいなくてはならない」という短所もありました。
その短所と長所をひっくり返したのがメールです。「相手がその場にいなくてもよい」というのが最大の利点です。
欠点は「いつ読んだか分からない、読んだかどうかも分からない」ということでしょうか。この利点を生かし欠点を補うように運用することが、メールを正しく使うことになるでしょう。
メールを書く(送信する)時に忘れてはならないこととして、メールはあくまでも手紙と言うことです。
例えば御客様に手紙を書く場合、いきなり本題から書いたりしませんよね。時候の挨拶があったり、ちょっとしたお礼を挟んだり。プライベートな仲良し同士でのメールのやりとりはそれはそれで楽しいものです。
話し言葉も相手によって変えるように手紙の文面だって相手によって変えます。メールの内容も変えるようにしましょう。
返信をするときも同じ気遣いをしましょう。ちょっとした気遣いの積み重ねが仕事円滑に勧めます。
我々システム管理者は一見システムのお守りが専門のようですが、実は仕事を円滑に進めるための裏方です。率先して潤滑油を注入していきましょう。
メールは手紙と同じなのですが、違う側面として同報性があります。
ML(MailingList)の例を出すまでもなく簡単に転送・引用されますので、どこかで書いた内容は全員に伝わってしまうと常に考えた方がいいでしょう。
カチカチカチッと送付先にアカウントを指定していけば、何十人だろうと何百人だろうと一度に送付できます。これはまさしく「駅前の車の上に立ってメガホンでしゃべる」状態と同じです。
普通の人は駅前に止めた車の上でこの原稿を丸読みしなさいって言われたら、相当緊張するはずです。メールを送信するときも、同じように緊張して宛先を何度も確認したり文章を読み直したりするべきです。
1)相手がすぐ読んでくれると勘違いする。
電話と同じモノと思っている人がいて、メールを送るとそれをすぐに読んでくれると思ってしまうことです。
13:00開催の打ち合わせの会議室が変更になったと12:30ゴロメールする人のことです。
メールしか連絡手段がないこともありますが、そんなメールを出すくらいだったら、会議室の入り口に「第三小会議室に変更になりました」と張り紙を張ってきた方が100倍有効です。
2)相手は必ず読んでくれると思っている。
電話だと「今日は休暇です」とか「出張していて来週にならないと戻りません」とか電話を取った人の好意(礼儀)も期待できますけど、メールにはそんなものはありません。
一般的には読んだかどうかも分からないし、届いているかどうかも確実ではありません。必ず読んで欲しいメールは、やはり電話で「見ておいて下さい」と連絡すべきでしょう。
3)すぐに返信出来ないメールは、いったん「受け付けました」メールを出すべきである。
調査依頼を受けたり、会議出席メンバの調整を依頼された場合、返答までに時間がかかります。何も返信しないで作業をやってしまうと、依頼した方は「メールを見てくれただろうか、やってくれているだろうか」と心配になります。
その日のウチに結果を返信出来ない場合は、「依頼は受け付けました、明日中には出来ると思いますのでそれまでお待ち下さい」と中間報告を返信しておきましょう。
4)言葉(電話)で意志を伝えたり、顔つき合わせる必要がある内容でも、メールしてしまう。
「元気でやっているかぁ」とかいう挨拶をメールでする人がいます。遠距離ならばそれはそれで有効活用なのですが、同じフロアでやるのはいただけません。
5)タダの通知メールであって返事を書く。
全部署員一斉の通知メールが来たとします。普通の人はスケジュール帳にメモとかして「分かった」と自分でつぶやいてお終いですね。システム管理者たるもの、率先して返事を書きましょう。
一斉同報する方はそれなりに緊張して練りに練った文章を送信している、はずですから反応をいい意味でも悪い意味でも期待しているとはずです。
1)転送や引用のことを考慮しない文章が多い。
メールは今までのどの情報伝達媒体よりも転送が楽です。引用も簡単で、同じ情報を共有したい場合には非常に有効です。
だらだらと長い文章だと部分引用がしにくい場合があります。文章全体を転送したい場合はともかく、自部署にのみ関わることを引用したいときには、余計な情報まで転送されることになります。
特にシステム管理者から発信される情報は、全社的なことも多いですが、部署によって対応を変えてもらうことも多々あります。
常に、転送や引用を考えて、箇条書きでメールすることを考えていると、情報中継者が引用時に悩まなくて済みます。
2)初対面の人へのメールに自分の所属も名乗らずにいきなり用件から。
普段からお付き合いのある人からの場合は、面識もなく聞いたことのない名前からのメールで「ネットワークサーバが云々」とかメールが来ても、非常に困ってしまいます。
手紙の裏には差出人の名前を書くように、「○○課の××です」は必ず入れること。時候の挨拶と同じように単語登録しておくことをお勧めします。
3)無意識のうちに口語体を使っているので意味が分からない。
文章を書き慣れていないと文章がとかく口語体になりがちです。「そういうシステム構成はマズイんで」と書かれてあっても、
・その構成は技術的に不可能である。
・その構成よりもすぐれた構成がある。
・その構成ではいくつか問題点がある。
・その構成にする必要がある。
のいずれの意味かが分かりません。曖昧さを省くのは簡単で、指示代名詞を使わなければいいだけです。
「そう言うシステム構成はマズイんでこの前作成した資料を参考にして下さい」
は、「貴方の設計したシステム構成は○○という問題がありますので、その問題を回避するために×月×日に作成した資料を元に作成し直して下さい。」
と書き直すといいでしょう。
人間は文章を読むとその文字をそのまま読んでいるのではなく、頭の中で本来の意味に変換している(翻訳している)ものです。ですので、読む人の頭でどうせ翻訳するのだから、最初から明確に書いておいた方が誤解も少なくなります。
個人対個人の私用メールの場合は、Toフィールド(宛先)に相手のメールアカウントを指定するだけですね。昔のメールシステムでは送信履歴が残せなかったので、Bccフィールドに自分のメールアカウントを指定して自分で送信したメールを自分で受信していました。 ちなみに、Ccとは、カーボンコピー(Carbon Copy)の略、Bccとはブラインドカーボンコピー(Blind Carbon Copy)の略です。
1)御客様宛の場合は、必ず自分の上司をCc:に入れておく。
上司は何だかんだと言ってもあなたの仕事ぶりが気になります。
電話とかで御客様と話をしていた頃はその話す内容が自然に耳に入ってきて「おっ、順調にすすんでいるな」とか「なんかトラブっているみたいだけど大丈夫か」とかの気遣いができました。
しかし、マシンに向かって黙ってメールしていると、どういう会話をしているのかさっぱり分かりません。
特に、報告不精な部下は何も言ってこなかったりします。メールを盗み見るわけにもいかないので、部下と上司のとの間の溝は深まるばかり。
溝は片一方で埋めるモノではなく、両者から埋めていくべきです。
御客様へのメールを送付するときには、必ずCc:フィールドに上司のアカウントを入れておきましょう。自分の上司と御客様が面識がない場合、Bcc:フィールドでも構いません。
メールの宛先にも十分注意を。メーラーの表示名がそのまま相手に届くことになりますので、ちゃんとメールアドレスをアドレス帳に登録して、敬称を付けておきましょう。
<メールの悪い例>
1)宛先がアドレスのまま
2)御客様しか送付していない
3)自分の名を名乗っていない
4)文章の内容が曖昧。
こんなメールを送ったら個人の問題じゃなくて会社の信用問題に
最低限の礼儀のメール。電話で話しているように、目の前にいて話しかけるように。
2)上司宛の場合は、必ず自分の部下をCc:に入れておく。
今度は、あなたの部下なり同僚があなたの仕事ぶりを気にしています。
自分の上司への報告とか申告とか提案とかはドンドン回りのみんなにも公開してしまいましょう。
そうすると中には「ここはこうした方がいい」とか「ここはやめた方がいい」とかのアドバイス返信が返ってくることも期待できます。
3)部下宛の場合は、必ず自分の上司をCc:に入れておく。
上司があなたの仕事ぶりを気にしているのは、何も対顧客だけに限りません。あなたが部下にどんな内容のメールを送っているのかも気になります。
ですので、部下への仕事のメールはCcなりで上司宛にも送っておきましょう。内容によってはBccを使った方が良い場合もあります。
メールに慣れてくるとなんでもメールにしたがる傾向があります。そういったメール依存症の人々についての対処を。
1)重要な通達はメールでしか流さない。
これを徹底すれば少なくともメールを見なければ仕事にならなくなります。
重要なメールを流す人は大体決まっているので、その人にすり寄って「メールだけにして、回覧とかコピーとか回さないでね」と脅したりすかしたり。
2)「今週の出来事」運動を展開する。
朝礼をやって「今日の一言」を皆の前でしゃべる習慣のメール版です。
当番を決めて「最近思っていること」「新聞記事を読んで」「趣味の話」「楽しかったこと」「辛かったこと」何でもテーマはいいんですけど、メールで全部署員に同報するってのはどうでしょう。メーリングリストを立ち上げておくのもいいでしょう。
その人の意外な面が見えて「あ、この人いいなぁ」って展開もあるかも知れません。社内宛に書けば親切な人は誤字脱字を指摘してくれるかも知れないし、システム管理者からは「メールの書き方作法」を教えてくれるかも知れない。
3)「ご回答はメールで」と電話する。
電話での問い合わせでも、緊急の回答でないことを確認して、「後ほどメールします」とします。すると相手はメールを読まざるを得ません。
回答を読んでまた電話で問い合わせてくるかも知れませんが、「今後の問い合わせはメールでお願いします」とやりましょう。
時間をかけて練りに練ったメールでも読んでもらえないことには一歩も前に進みません。「読んで欲しかったら読んで欲しいと訴えるようにしないと」ということですね。
1)Subjectには【XX】を接頭子として付ける。
Subject
の先頭に「【連絡】」「【通知】」「【質問】」「【回答】」とかを付与するようにする。
決して強制力はありませんが、見やすい Subject
は自然と浸透していきます。こうすると「連絡事項があります」とかいうSubject
は付けられなくなり、「【連絡】会議場所変更」とかに自然になると思います。
2)「〜について」とかいうは全くの無駄なので、体言止めを徹底する。
先ほどの例で言えば「会議場所の変更について」の「について」を取るようにしたということです。
3)気持ちに訴える。
最後は泣き落としです。「とっても困っています」「どーしても相談に乗って欲しい」「高橋さんの力で何とかして欲しい」、そんなSubjectだと、「どれどれ、何かな」となりますね。
1)電話や口頭で依頼された作業を自分宛にメールする。
Subjectを工夫することでToDoリスト代わりになります。何とか付箋紙ソフトの代わりにもできます。
2)ナレッジベースとして活用する。
知り得た技術情報は何でもかんでも自分宛にメールしておく。個人用のメールボックスの容量が制限されている場合もありますので、その時は技術情報用アカウントを作ってそれに送信しておくといいです。
ありきたりな言葉ですが、使い込めば使い込むほどメールは便利なコミュニケーションツールです。正しく使って、正しく使わせて、あらゆる可能性を試してみましょう。ただし、メールの使いすぎは禁物です。
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