音は音で消せ計画

第二回目:オーディオ信号による実験

長橋 かずなり 99/03/27


第一回目:原理と構想から2ヶ月も経過してしまったが、この間にマシン環境の再構築やデジカメの故障などいろいろ発生してしまったので申し訳ない。

いきなり実際のPCの騒音で逆位相を混ぜる実験を行うと大変なので、とりあえずはオーディオ信号を用いて実験を行うというのが今回のテーマである。

実験方法と機材

音楽を騒音と見立て、その音楽と音楽の逆位相の波形をミックスしてどうなるかという事を行いたい。必要になるものは、

  1. 音楽の再生装置
  2. 逆位相の波形を取り出す装置
  3. 逆相と正相をミックするミキサー
  4. 成果を録音するためのサウンドボードとソフト

ということになる。下図が大まかな構成である。

画像の素材集に収録されていた音素材をあらかじめMDにモノラルで録音しておき、それを再生する事にした。また、逆位相を取り出す装置としてはエレクトリックギター用に自作を行った物を利用した。右の写真のシルバーの箱がその装置である。本来の役割は、エレクトリックギターの音を一番左のフォーンジャックに入れて、その出力を右側の5個のフォーンジャックに複数に分けるためのものである。単純に複数に分けると信号が弱くなるので、電流増幅のためのアンプを内蔵している。そして、一番右側の黒いシールド(コード)がささった1個のフォーンジャックのみ逆の位相が取り出せるようになっている。今回の実験を想定してそんな設計になっていたわけではない。2つの理由があって、1つは逆位相の音を元のギターの音に付加して意図的に安っぽい音(なぜそうなるかは今回の実験結果を参考に)にしたい場合であり、もう1つの理由は、その先に接続するギターアンプは出力が逆の位相になっている製品もあるからである。

実験結果

録音はサウンドブラスターのライン入力からサウンドブラスターにバンドルされているWaveStudioで行った。ステレオとモノラルの2つのWAVEファイルを作成する事にした。ステレオのファイルは片側のチャンネルに正相、もう一方に逆相を格納した。モノラルは曲の前半が正相のみ、後半は正相と逆送をミックスしたものである。では録音した波形をそれぞれ見てみよう。

Stereo.exe 291KB これはステレオのWaveファイルの波形の一部である。波形を見ると赤線の正相と、青線の逆相が上下正反対の波形になっている事が顕著に確認できる。
Mono.exe 434KB こちらはモノラルの波形である。縦の黒い線の前である前半が正相のみの波形である。後半の部分は正相の音に逆位相の音をミックスしたものである。上下の振幅の大きさ(高さ)が音量を表すので、逆相を足した事により音量が極端に小さくなった事が確認できる。

実際に録音したWaveファイルは上図をそれぞれクリックする事によりダウンロード(291KBと434KB)する事が可能である。WinRARの自己解凍形式で、解凍を行うとWindowsのWaveファイルになるのでそれを再生する。モノラルのファイルは前半の8秒が正相のみ、後半の8秒が正相と逆相をミックスしたものである。私の資源の都合上Windows以外のファイルは用意できなかったのでWindows以外の方は申し訳ない。また、劇的にサイズを縮小できる非可逆の圧縮は実験の性質上適用できないのでその点はご容赦いただきたい。

実験から判明した重要なポイント

実際にStereo.wavをダウンロードして再生してみると、正相と逆相がそれぞれ左右のスピーカーから再生されているにも関わらず音が小さくなっていない事に気づく方もいるであろう。その場合には左右のスピーカを近づけてみよう。左右のスピーカーの距離が短くなるほど音が小さくなる事が確認できるはずだ。特に左右のスピーカを向きあわせてくっつけるとほぼ無音になってしまうのだ!なぜだ距離があると音が大きいのだろうか。スピーカの距離はせいぜい1メートル程度かもしれないが、このわずかな距離であっても音が進むためには時間を要する事が主な原因であろうか?20度程度の室温であれば、1メートルの距離を音が進むのには3msec(0.003秒)必要になる。周波数の低い音ほど効果が現れるのは、周期が時間的に長い低音はその影響を受けないからであるのか。それとも、音が打ち消し合う前に音が拡散して残響成分などで乱れた波形となるために打ち消し合わないのだろうか。とにかくなるべく騒音の近くで逆相の再生を行わないと効果を生まない事が確認できた。

なぜ無音にならないか

モノラルのWaveファイルはステレオと違って理想的な状態である。音の再生は1点で、録音時にすでにミックスされている。しかしながら無音にまでならないのは前回の想像のように完全な逆位相の波形を得るのは難しいという事であろう。実際にステレオのWaveファイルの左右の波形をWaveStudioでよく観察すると微妙に波形が変化している事がわかる。

次回の実験

今回は騒音の近くで再生する事が重要であり、音の低減効果は低音ほどある事が理解できた。周波数によって効果が違うのであれば、PCの実際の騒音ではどうなるかという事を次回は確認したい。実験の手順は今回と同じであるが、元の音を音楽ではなく実際のPCの騒音を録音する事により行いたい。左の写真は次回の実験のためのPCの騒音を録音する風景であるが、まだ実行はしていない。「PCの騒音による模擬実験」と題しておこう。

 


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