オンラインソフトの業務利用上の注意

                ・・・ 2000/8,  2002/6 一部(SPrun関連)改定

時々Muleのオンラインソフトを業務で利用したいという問い合わせを受けることがあります。それについての私の基本的な考え方を書いておきますので参考にしてください。


A.フリーソフトの場合 … システム組み込みは不可。

フリーソフトをハードウェアに組み込んでシステムの一部として販売したり、自社内でフリーソフト組み込み済みのシステムを複数台設置したいという問い合わせが時々あります。
Muleの場合、このようなことはトラブルの元となるので、残念ながらお断りしています。理由として、次のようなことが挙げられます。

1.フリーソフトの理念

本来フリーソフトとは「配布形態である圧縮ファイルを解凍し、ヘルプを熟読して、使い方がわかっている方本人が利用する」場合に成立する配布形態だと考えます。
作者がフリーソフトを公開しているのは、他の作者のフリーソフトを使わせてもらって受けた恩恵の恩返しや相互扶助といった気持ちからです。また、使われたソフトの感想メールをもらって、さらに良いものにすることで喜んでもらえたら、というようなボランティア精神に近いようなものもあります。

しかしシステムに組み込み済みで(解凍済みで)配布すると、使う人は「フリーソフトが組み込まれている」ということを知らずに使うことになり、当然感想メールなど来ないばかりか、最終的にどこでどう使われているのかすら全く知ることができません。
こういうのって、フリーソフト公開の趣旨とはかけ離れてるよね。

2.配布の問題

システムを有料で購入した人は、フリーソフトも有料で購入したことになってしまいます。
フリーソフトを有料で売っちゃあまずいでしょう。

3.サポートの問題

システムに組み込んで販売されれば、動作不良などがあった時のサポートが必要になります。フリーソフトも結果的に有料で購入したことになるので、当然サポートを受ける権利があると考えるでしょう。
また無料で公開されているフリーソフトというものの存在を知らない人も多く、事情を知らずに、システム販売者ではなく付属ドキュメントに書いてある作者にサポートを強要したりすることが予想されます。
実際にそういったトラブルにあったということが、ネットの会議室などでも時々話題にされます。

フリーソフトのサポートを強要されるなんて、迷惑千万だもんね。

4.費用

フリーソフトを使わなくても、同等の機能を果たせるシェアウェアや市販ソフトがある場合もあり、あるいは同様の機能をソフトハウスなどに発注してもそれほど費用のかかるものではない(少なくともMuleのフリーソフトは)と思われます。
営利目的のシステムでは機能を果たすための購入費や開発費は捻出できるもので、フリーソフトに頼らなくても目的を達成できるのは明らかです。


B.シェアウェアの場合 その1 … 引継ぎはきちんと。

シェアウェアを業務利用されている方で、何年もたってから全く別の担当者の方よりメールが送られてくることがありますが、そのような場合にユーザー登録時の情報がうまく引き継がれていないことがよくあります。たとえばこんな事例があります。

1.シェアウェアって何? …って言われても...

かなり古いバージョンのプログラムを使っているが、Muleのホームページを見てもバグ修正のパッチが公開されていないというクレームがあった。実際はそのバージョンから何回かバージョンアップした最新版が公開してあり、とっくに改良されている(ちなみにバグではなく、旧版の仕様だった)のに、どこを見たのか不思議。

シェアウェアのバージョンアップは全ファイルが更新されるので、通常はパッチの公開というような方法をとらないということが認識されてない。そもそもシェアウェアというものの存在を知らず(使っているのに)、市販ソフトはパッチがあるものとしての問い合わせ。

…… 最初にユーザー登録した担当者がシェアウェアのバージョンアップ方法を知らなかったとは思えないし、そういう仕様だということ、バージョンアップにて機能強化することもヘルプに書いてあったんだけどなあ。

2.その仕事の手順、一人しか知らないの?

使い方などの基本的なことが前任者から引き継がれていなくて、ドキュメント類もまったく読まないでの問い合わせ。前任者はわかって使っていたはずなのに「担当が代わったから使い方がわからない」というような問い合わせ。

…… 利用者の責任において使うべきシェアウェアで、そんなことまで要求されるのはちょっと疑問。そもそも業務利用中のソフトについて、その業務での中での位置付けなどは、文書化して残しておくのはビジネスの基本だと思うんだけどなあ。

3.あなたは誰?

ユーザー登録は個人名でされているのに、問い合わせは会社名でさらに別の担当者名なおかつメールアドレスも全く異なるというような形式で問い合わせ。シェアウェアのような小額支払いは経理処理が面倒なので、会社利用だけど個人名で登録している人に多い。
…… 作者には正規ユーザーであることが全く判別できない。あなたのメールアドレスは作者に連絡してあるものか、いま一度確かめてみて欲しい。


これら主に引き継ぎがうまく行われていないことによる問い合わせが時々あります。これではサポートが迅速に行えない場合もあり、作者・ユーザーの双方にとって二度手間・三度手間となってしまいます。
企業でシェアウェアを使われている方は、シェアウェアというものの考え方などをきちんと後任者に引継いで、せっかくユーザー登録されたシェアウェアを末永く利用できるように配慮することを強くお薦めします。
シェアウェアじゃなくても、こういう引継ぎが必要なのは市販ソフトでも同じことですよね。

仕事の引継ぎしてなくて、あなたの会社、大丈夫?


C.シェアウェアの場合 その2 … サポートの優先順位

まれに「当方はビジネスユーザーなので至急連絡しろ」とか「至急改良しろ」というような無茶を書いてくる者がいます。
でも「ビジネスユーザーだから優先せよ」というのは「趣味のユーザーは後回しにせよ」と言っているのと等価でしょう。同一金額をもらっている以上、特定のユーザーを後回しにすることは道義的にも許されないことなので、特定ユーザーを優先することは行いません。もちろん作者としてでき得る限り迅速には対応しているつもりです。
それに、至急のサポートが必要なら、電話サポートのある市販ソフトを使う手もあるのに、あえて安価なシェアウェアを選んだ以上、メールのタイムラグは承知の上でしょう。

まあこういうことは現実社会でもよくあることで、単なるわがまま社会人とも言えるんだけどね。


以上、気持ち良く使ってもらうために、参考になればいいな、と思います。