立ち歩いたり、よく発言する子が保護者の前で全く手を挙げなくなってしまったり、また逆に極度に気分がハイになって大声を上げたりと様々でした。タイの授業に参加する子供たちも、今まさにこの1年生とよく似た状況にあるのではないかと思いました。初めてはいる教室で、多くの人に囲まれ、NHKのスタッフにテレビカメラを向けられ、タイ側に送信される顔や動きが正面の大きな液晶画面に映し出されるなどの状況は、子供たちの感情を平静で置くはずはありません。

 しかし、そんな特設会場に入った子供たちは、とても落ち着いていました。緊張していたのでしょうが、数人がピースをするくらいで、私語も少なく、あらかじめ決められた場所に整然と座ったのでした。

 

 

<授業開始>

僕は緊張するタイプです。しかし子供たちには、緊張したら肩がこるから肩をたたいたり、首を回したり、深呼吸をしたりするように行っていたので、こちらが堅くなるわけには行きません。子供たちも敏感に感じ取り、活気も出なくなります。ふた呼吸ほどして、あいさつから入りました。

 あらかじめ数日前の夜に、手短に気分をほぐすあいさつを考えていました。それは、簡単な細工の紙の棒で、ちょっとした指使いで手品のように紙の棒が立つというものです。子供たちが大きな声を出したら、この紙の棒が立つという設定で、元気な声を出させようと考えていました。そして、あたかもみんなの大声で紙が立つという演技をすることになっていました。しかし、この演技は紙の棒が、練習しているうちに、よれよれになってきてやがて立たなくなるので、ある程度新品に近い紙を使う必要がありました。立ってくれよと祈ってやってみると、何とかうまくいきました。ほっ。

 そもそもこれを思いついたのは、緊張している子供たちに大きな声を出させることで緊張をほぐすことができると考えたからです。その他に、歌を歌う、体を動かす、ゲーム・クイズなどをするなども考えましたが、時間がかかってはどうしようもないし、乗りすぎて脱線が著しくなってもいけないと思ったので、この方法に決めました。