【カメムシの話によせて】
AOWAOW column.


 

TOP MENU./Essay./ Joke's./ LAND. /Gallery./X-File /Profile



  • 【カメムシの話によせて】

    あれは私が千葉県のあるつまらぬ全寮制の学校にいた頃の話。私は週末の静かなひとときに寮の部屋で一人静かに読書をしてゐました。その時机の上にコーンスナックを置いて、私は本を読みながら時々手を伸ばしてそれをつかんではボリボリと食べてゐたのであります。

    そろそろ夕方になって日が傾いてきた頃でしたが、私は相変わらずコーンスナックをボリボリ食べては読書に熱中してゐました。そうした時、口の中で突然コーンスナックらしからぬ歯ごたえと、ガリッ!という音でした。私は口の中に異物がある事に気がつきました。それは口の中でブルブルと大きく振動しました。

    次の瞬間、私はどこかで嗅いだ事のある悪臭を数千倍濃縮したような強烈な臭いと味が口の中で炸裂し、思わずクラクラと気を失いそうになったのです。うっ、これは何だ?と思って口の中のものを思い切り反射的に外に吐き出しました。

    そうしたらその吐き出された物体は私の口から外に出るなり、部屋の中をブウーンという音を立てて中空を半周し、床の上にボトッと落ちました。それを見た私はもう一度気を失いそうになりました。それはなんと全長3センチほどのカメムシだったのであります。

    カメムシが私の口の中で羽を半分もぎ取られてもがいてゐたのでした。私の口の中では遠くから嗅いでも耐えられぬおなじみのカメムシのフレーバーが最大濃度で爆発し、もう自分は死ぬのではないかと思いました。


    怒ってカメムシを踏みつけて殺してから、洗面所でうがいをしに走りましたが、これがなかなか取れませんでした。一時間位うがいを続けたと思います。しかし、このカメムシの自爆事件を経験して私には一つ嬉しい自信がつきました。

    つまり、カメムシを口に入れて耐える事が出来たのであるから、もはやこの地球上には私に耐えられないものはなくなったのではないかという奇妙な自信が出来たのです。この自信は今でも私を支えています。

    超国籍原人

     


     

     


  • 私のファイルの MENU へもどる
    Copyright (c) 1997 TAKUFUMI SUZUKI. All rights reserved.