【サンタがいっぱい】
AOWAOW Essay.


 

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【セブ島の子供達を学校へ】
Plumeria Cebu Educational Association Inc.



  • File No.74【サンタがいっぱい】

    クリスマスが近づいていた。 師走である年末である年の瀬である。街にはサンタの格好をしたアルバイトのお兄さんでいっぱいである。街ゆく女の子も、首の周りがケサラン・パサランの様にフワフワしたサンタの様なプードルの様な服を着ている。そして街中、紅白がいっぱいで何ともウキウキして来るのである。ウキウキ(・・・ほんとにするなっつーの)。子供のプレゼントを買うためにデパートメントを目指して妻と一緒に歩いていると、いろんなサンタがプレゼントをくれた。くれるものは貰うのが礼儀、しかし申し合わせたようにティッシュばっかりなのだ。

    最近やっと冬らしくなって、 私はその日、コートを着ていた。コートのポケットは大きめで、数も多いのだが、それでもしばらく歩くとポケットがティッシュで一杯になってしまった。これがほんとのポケットティッシュだ、なんちゃって。すまん、あまり面白くないな。一目で白い雨長靴と判るサンタに貰ったティッシュには、「理容1800円スッキリお正月」と書いてあった。そういえば髪が長くなったかな?と、多少寝癖が残る側頭部を気にしながら、最近は不景気なので床屋さん業界もなかなか大変なんだろうなと思った。髪の毛はスキンヘッドの人を除いて必ず伸びるものだが、床屋さんの軒数も最近はかなり伸びて多くなった様だ。この世知辛い世の中、髪は伸びるが経営は伸び悩んでいるのかもしれない。・・・う、重ね重ねつまらん洒落で申し訳ない。

    妻はポケットが膨らむのが嫌らしく、貰うとすぐに私にティッシュをよこすのであった。「だったら貰うなよな」と言いたいのだが、残念な事に我が家での妻の地位は最高位なのである、とても逆らえないのだ。なので精一杯、妻が見ていない時に「ムッ」とするだけである。あるサンタが妻にくれたものには名刺大のピンクの紙が入っていた。渡されるとまず何のティッシュか確認してしまう。え〜と「ドキドキ・ツーショット伝言ダイヤル」。ふっ、悲しいかな、どんな事が書いてあるのかしっかり読んでしまうのが男のサガというものなのだ。

    ピンクの紙には次のように記されていた。「最近ドキドキした事有りますか?、おいしい情報のいいとこ取りを!女はかしこくなくっちゃ!」「プライバシーは絶対安全!絶対安心」。そして伝言ダイヤルの「やり方の説明」も親切に書かれている。伝言の「例」として「インターネットについて教えてください、ホームページって何?」とか「真剣に結婚考えてくれる方いませんか?」それと「遊園地大好き!タダでつれてって!」などと書いてあった。いやいや伝言ダイヤルでインターネットの事を聞いてしまうとはスゴイな、たしかにドキドキしてしまうかも知れないな。と、変に感心したのである。そして最後に「郵政省(般)第二種電気通信事業者○○」と印刷してあった。なるほど、郵政省が認めている伝言ダイヤル業者なら安心して利用できる、・・・と勘違いする女性が居る・・・はずは無いかな。しかし、私が一緒に歩いているにも関わらず、そんなものを妻に渡されると、さすがにムッとするのである。しかし妻も、私が可愛いお姉様から渡されたティッシュの「男の館○○サロン」というムラサキの文字を横目で睨んでいたので、あいこになった。

    駅の広場を通り過ぎると 、また別のサンタがやってきて「お時間は有りますか?、是非、献血しませんか」と、ティッシュをくれた。なるほど、横にはちゃんと献血の車とテントが設置してある。テントの看板には、「全国統一・クリスマス献血キャンペーン・この冬あたたかい献血を!」と書いて有る。これはうまい表現である。冬は寒いが、血液はたしかに温かい。・・・ちがうな、この場合献血してあたたかいのは「心」の方だ。それくらい私でもわかるのだ。

    学生の頃は、 一年に三回は献血をしたもので、献血する時、看護婦さんに「あなたなら二リットルくらいは頂いても大丈夫ね」と、よく言われたものである。しかし数年前に持病を持ってしまって以来、残念だが献血が出来ないカラダになってしまったのだ。それ以来、献血の車を見ると避けて通る様になってしまった。そして今回の様に誘われると、何故か「罪悪感」を感じてしまうのであった。相手が男の場合は、「いや、すまん、献血出来ない体なんだ」とハッキリ言うのだが、女性だと何故か「あ、すいませ〜ん、いま風邪ひいてるので、今度またぁ〜、ゲホゲホ」と、わざとらしい咳をしながら言い訳してしまうのである。くそぉ〜、献血したいのになぁ〜。

    さてデパートメントに到着すると、丁度10時で開店したばかりの様子。従業員の皆様が一斉に並んで挨拶をしてくれるのであるが、これがまことに気持ちがいい。正面のエスカレーターの前に五人程のデパートガールが一列に並んで頭を下げたので、思わずわたしも深々と礼をする。妻はつつましく、三歩さがるどころか5メートルくらい後方からついてくる。彼女は二階のレディースフロアーが目的なのだが、私は7階のおもちゃ売り場なので、別れて私はエレベーターに乗る事にした。余談になるが、息子はエレベーターの事を「エベレーター」テトラポットはトテラポット、タンクローリーを「かんくろう」、スパゲッティはストマッティと発音する。ふふっ。

    妻と一緒にエスカレーターに乗っても良かったのだが、待ち構えて頭を下げているエスカレーター前の女性陣を見ると、何故かこちらが威張っている様な感じがして、ちょっと気が引けたのであった。しかしエスカレーターへ乗った方が良かったのかもしれなかった。じつは入り口から少し離れたエレベーターに乗ったのだが、開店間際であったので客は私一人だけだったのである。そしてそのエレベーターには、しっかりエレベーターガールさんが乗っておられたので、これもいわゆる一つの「ツーショット」と言っても過言ではない。無意識の内にさっきサンタに貰った「男の館○○サロン」のティッシュをポケットの中で握り締めていた私であった。

    開店早々なので、他の階でお客が乗る事も無い。そして、この狭いエレベーターという「密室」に、彼女と二人だけというシチュエーション。多少なりとも緊張してどこが悪い。彼女の「おはようございます、本日はご利用頂きましてありがとうございます」という素晴らしい発音に、返事などしなければ良いのだが、乗っているのは私だけなので、これはもう私に言っているのは明白。挨拶くらいせねばと焦り、つい「どど、どうも」と、どもってしまったのである。

    いかん!緊張しているのを感づかれてしまったであろうか?、ゆっくりと、大きく静かに息をして、気分転換にカガミ張り、もとい、ガラス張りのエレベーターから屋外を見ようと奥に進もうとしたのだが、緊張しているので右手と右足が同時に出てしまった。やばい!見られたか?!と、彼女の方にチラリと目をやると、しっかり見られた様で彼女と目線があってしまった。微笑みながら「何階になさいますか?」と言われて、もう開き直るしかないと、私も微笑みながら「七階をお願いします」・・・と言おうとしたのだが、ちょっと間違えて「七階でお願いします」と言ってしまった。・・・いっ、いったい、わたしは何をお願いするのだ!。彼女は、微笑みから「笑いをガマンする」にチェンジした様子であった。

    しばし「ドキドキ」を味わって七階に到着すると、オモチャ売り場はサンタで溢れていた。ディズニーストアーの有るデパートなので、ミッキーやドナルドのサンタは勿論のこと、キティーちゃんやポチャコのサンタまで居る。そして買う方も家に帰ればサンタなのだから、この季節は世界中、もうサンタだらけである。エレベーターを降りた私の顔も、しばしトナカイの鼻の様に赤かった。

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    オマケの雑学【クリスマスについて】
    Christmasはキリスト(Christ)のミサ(mass)の意味だそうで、Xmasと書く場合のギリシア語のキリストという語のΧΡΙΣΤΟΣ(クリストス)の第1字を用いた書き方で、フランスではノエル(Noel)といい、イタリアではナターレ(Natale)、ドイツではワイナハテン(Weihnachten)。ちなみにスペインではMerry Christmasのことを、Feliz Navidad(フェリス・ナヴィダッド)、フィリピンではMaligayang Paskoっていうんですね。

    ◎「きよしこの夜」
    中国語の“きよしこの夜”

    ロシア語

    韓国

    アラビア

    ※12月25日がクリスマス・デー、その前夜をクリスマス・イブ、クリスマスから公現祭(1月6日)の前日までを「降誕節(Christmastide)」と呼びます。そしてどうしてTreeを飾るのでしょう?。これはドイツの森が起源といわれています。冬になってすべての木々の葉が枯れて落ち、暗く沈んだ森の中で、いつまでも緑を保つ evergreen のモミの木を、これは希望の木だ命の木だと思って家に持ち帰り、家の中に入れて、この木があればもう安心だとしたのが始まりなのだそうです。  


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