ルーズとルール2

最終更新日 1998.8.30

"思い出は常に過去形で語られる"

---おじさんの愚痴は常に「最近の若い者は」で始まる


というわけで、こっちは後編ですので、まだのかたは前編からどうぞ。

の中がREALbasicのままでDelphiに突入したところ、待っていたのは「致命的なエラーです」という捨て台詞。ああ、そうでした。今度はPascalという言語で書くんでした。イライライラ。でも実は私、この瞬間が好きなんです。たとえばこの場合、REALbasicに集中し、文法を覚え、BASICでプログラムを考えるようになると、Pascalの事はきれいサッパリ忘れてしまいます。もうトシだしね。で、そのまま別の言語で書こうとすると、文法や構造はもちろん、考え方そのものがBASICのままなので戸惑うわけです。まるで海外に長い間住んでいて英語で物を考えるようになり、久しぶりに日本人と話をするような感覚。まあそれも、ほんの数分で、すぐに思い出してしまうんですが(ちぇっ)。

DelphiというのはWindows用の開発環境で、Pascalというプログラム言語を使用しています。で、このPascal。ウルサイことこの上なし。やれ変数の型が違うだの、あれがないだの、これが変だの。REALbasicが八百屋のおっちゃんくらい気安いのに比べて、Delphiはまるで大蔵省の官僚。ま、ルールに従いさえすれば強力なパワーを解放してくれるので我慢して作業を続行。REALbasicのときと同じようにボタンやスクロールバーをポイポイと配置し、ダイアログボックスなどのデザインを行って適当に実行。うー、エディタが使いにくい。Windowsのマウスポインタでテキストを選択するのは拷問だ。てなことをツブヤキながら、ついつい、あんなことやこんなことにコリ始めるも、なんとなく形に。うん、OK。さすがDelphi。

それにしてもREALbasicとDelphi。外見は似ているのに中身のなんと異なることよ。まずDelphiというのは、新バージョンを旧バージョンで作れるくらい強力な環境です。おまけに、コンポーネントとよばれる部品も自分自身で作れて、しかも拡張が簡単です。たとえばプラチナカラーのボタンからボンダイブルーのボタンを作り(派生なんて小難しい言い方もアリ)、それをパレットに登録することも出来るんです。このボタンをコピーしてエディタにペーストすると、なんとボタンを表示するためのソースコードが張り付くという荒技までやってのけます。ただね。ちょっと難しいんですわ、初心者には。なんというか、ごく簡単なソフト(こんちは世界って表示するだけみたいなヤツ)を作るにも、ちょっとしたハードルがある。Delphiを作ったインプライズ(旧ボーランド)って会社は、どちらかというと技術者集団で、初心者が戸惑う部分が理解できないんですね。難しい部分はアホみたいに簡単になるんですが。逆にREALbasicは、初心者でも戸惑う部分が少なくて、しかも強力です。単なる玩具に終わっていない点もすばらしい。ただし、残念ながら自分自身を拡張するほどの柔軟性は持ち合わせていません。ボタンとかスクロールバーをカスタマイズして登録し、再利用するなんて事もできません。この点はREALbasic自身のバグの多さにも影響を与えている(つまりREALbasic自身は旧態依然とした方法で作られている)ような気がするんですが、まぁ一般のユーザーには関係ないですね。

同じものが作れる2つの環境。じゃあ私ならどちらをとるのか。うーむ、究極の選択です。まずMacで簡単なプログラムを作るならREALbasicに勝る物はないでしょう。明らかな限界は存在しますが、そこまで到達するようなユーザーなら、別にREALbasicにこだわる必要はないと思いますし(それでもこの手軽さは魅力だなあ)。どちらかだけで何かを作れと言われたら、Delphiをとります。なぜか? それは私が「ずぼら」だから。DelphiのPascalってのは自由度は高いものの、いい加減な事は許してくれません。REALbasicは融通が利くため、私のような人間がプログラムを書くと果てしなく「だらしない、その場限りのコード」ができてしまいます。この「その場限り」ってのが曲者でして、急いでるからとりあえず動けばいいなんて思っていると必ず後で墓穴を掘るんですよ。で、あんまり好きじゃないPascalですが、逆にイヤでも保守性の高い見通しの良いコードを書かざるを得なくなるという点で軍配があがります。ルーズな人にはルールが必要ってことです。あと、凝り性な人にも向いてるかも(苦笑)。

さてさて、短い夏休みもプログラム三昧で終了したところで、懺悔(ザンゲ)を一発。実は、今回取り上げたN88-BASIC用のソフト。これは私が学生の時に作ったものです。当時はPC-9801 F2とかが出た頃。良い子は、まだ産まれてないかもしれませんねぇ。それが、なんと今も使われているという話を、当時お世話になった恩師(美人)から伺い、こりゃイカんとあわててMac版を作ったのでした。過去の恥ずかしいソースを読みながら「ああ、全然進歩してない」と涙する日が続きましたが、果たして満足していただけたでしょうか。使えるようでしたら昔のは消してくださいねぇぇぇ。なお、今回作成したソフトはソース付きのフリーウエアとして、某大学で公開する予定です。便利だと思った学生諸君は自分で拡張するように。どうせヒマでしょ。


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