間違い電話の攻防

最終更新日 1998.6.27

"思い出は常に過去形で語られる"

---おじさんの愚痴は常に「最近の若い者は」で始まる


魔と戦いながら仕事の遅れの言い訳を考えていたある日の昼下がり。仕事では使っていない方の電話が鳴りました。私は電話には滅多に出ない方なんですが(これはこれで問題)、その日は逃避モードに入っていたのでつい受話器を手に。「はい(私は電話で名乗らない。これも迷惑)」。すると相手は元気よく「もしもし、Nさん(な行で始まる別人の名前。名簿を読み間違えている)のお宅ですか。私、××の××某と申します。実は弊社では最先端の仕事に携わっておられる方々に耳寄りな情報をお知らせしております。」とかなんとか言いながら「不況」「リストラ」「人脈」「情報戦略」「インターネット」「あなただけに」なんて言葉をマニュアル通りに並べ始めました。

ここで、こうした勧誘をご存じない方のために解説しておきます。要するにインターネットを利用した会員制の情報を提供するビジネスで、会員にはもれなく(三世代くらい前で今ならタダ同然の)パソコンをプレゼントいたしますぅ。会費はPowerBook G3の最上位バージョンの定価(消費税込み)よりも更に高いですが、今は秘密ですぅ、てな商売。学生の頃は、この種の勧誘電話が頻繁にかかってきましたが、最近では珍しい。やはり不況なんでしょうかね。常時3台のパソコンに電源が入っていてMacintosh IIsiのFDドライブをテープでふさいでいるような私には、およそ縁のない世界のサービスではあります。なお、勧誘方法や内容には様々なバリエーションがありますから、興味のある方は「悪徳商法?マニアックス」などを参照されると良いでしょう。

このとき寝不足で朦朧とした頭に浮かんだのは、あるメール形式のニュースに書いてあった「10日で100万円を稼ぐWebデザイナー」の話でした。なんでも一ヶ月で500万円も稼ぐ人すらおられるそうです。すごいですね。額に汗して働くのがバカバカしくなりますね。私も彼のセミナーに通って彼の推薦するソフトを購入してみようかとも思いましたが(嘘)、お金がないのでやめました。とりあえずこの話が本当だとして(笑)、こうしたデザイナーに大金を払ってWebページを発注している人たちは何を考えているのでしょうか。たとえば私の場合、かなりの数のページを巡回していますが、デザインにお金のかかっているページなんて滅多に見ません。JavaやJava Scripは当然オフにしてますし、画像すら読み込まない設定にしていますから(読み込むのは「のり巻き亭」のカウンタを確認するときくらい?)、自然と軽いページが中心になります。それでも繰り返し訪問するページには、更新が頻繁、内容がおもしろい、といった情報の伝達や個性を重視するという共通点があります。「デザインは不要」とか「テキストのブラウザで十分」とは言いませんけど、ことインターネットに限っては外観は二の次ですよね。やっぱり、まずは内容でしょう。で、滅多に見てもらえない装飾過多のページに何百万円もの金をつぎ込むくらいなら、すでに一定の支持を得ているページに広告を出すほうが効率的なんじゃないでしょうか。あるいは、モニタ用の機材を貸し出すとか。広告は載せないというポリシーがあるページでは、プレゼント企画を告知して盛り上げてもらうとか。少なくとも自前で定期的に更新する余裕がないのなら、誰かに任せてお金で解決しようなんて考えないことです。せいぜい「トンデモないページ」として笑われるのがオチですよ。ネット上の人たちをナメちゃいけません。

「もしもし、聞いてらっしゃいますか?」

おっとしまった、電話中でした。向こうがマニュアル通りなら、こちらもマニュアル通りに答えておきましょう。

「申し訳ありません。○○は、ただいま席を外しております。戻り次第連絡させますので、電話番号を教えていただけますか?」

「いえ、それには及びません。またお電話いたします」ガチャリ。

うーん、最後までマニュアル通り。自分で言うのもなんですが、私は客(カモとも言う)としては最悪でしょうねぇ。納税者の長者番付けに載るくらいエラくなったら考えますから、そのときはまた電話してね。でも今度は名前を間違えないでね。


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