【 目次 】  論点   Q&A   付録 (字形の変更について)



 

 論点  



 略字については、賛否両論がある。それらは次のように大別できる。


 略字賛成論

  略字を認めるべきだ。なぜならば:


 略字反対論

  略字を認めるべきではない。なぜならば:

 
 上記のように賛否両論があるわけだが、これは単純な二分法である。
 もう少し詳しく各論を見ると、次のように細分できる。


 【 略字の範囲 】
 
 どの範囲を略字にするか    仮称   
 第二水準も含めて、すべて。    朝日主義   
 第一水準だけ。    JIS主義   
 常用漢字だけ    常用主義   
   
 

  ※ 注釈


 以上のうちでは、最後の「常用主義」が最も世間に支持されているようだ。 国語審議会の見解がそうである。
 なお、国語審議会の見解は、意見や主張というより、単に世間の実態をまとめたにすぎない。

  ※ 一部の人は「国語審議会は特定の主張を出すべきではない」と言ったり、
    あるいは逆に、「国語審議会は逆の主張を出すべきだ」と言ったりするが、
    どちらにせよ、勘違いである。国語審議会は、特定の主張を打ち出して
    いるわけではなく、単に世間の実態を調べて、「二種類の字体があると
    混乱するので、多く使われている方に統一する」と言っているだけである。
    「多く使われている方」は、正字とは限らなくて、俗字であることもある。
    そのあたりは、個別に異なる。


 【 流通 】
 
 世間での流通は、略字と正字のどちらを許容するか    仮称   
 正字に統一。 (例外あり)    正字派   
 略字に統一。    略字派   
 略字と正字の共存。    併用派   
   
 

  ※ 注釈



 【 用字の範囲 】
 
 常用漢字以外の文字を普通に使うことを許容するか    仮称   
 原則として共用しない。カナ書きか、交ぜ書き。    制限主義   
 第一水準までは自由に使う。(常用漢字の拡張。)    拡張主義   
 特に主張せず。    中間主義   
   
 

 ※ 注釈



 以上の区別を見た上で、既存の主張者がどのように主張しているかを見ると、次のような表ができる。

 
      \ 略字の範囲    流通 (常用漢字以外)    用字   
 朝日派    すべて    正字・略字の併用    制限   
 83JIS派    第一水準    略字に統一    拡張(第一水準)   
 書籍派    常用漢字    正字に統一    中間(主張なし)   
   

  ※ 注釈



 さて、以下では、このような現状に対して、私なりにコメントを加えてみよう。


 (1) 朝日派

 (2) 83JIS派
 (3) 書籍派
 結語


 以上をまとめれば、次のいずれかのみが、選択可能な道となる。

 (a) 略字を常用漢字に取り込んだ上で、使う。(常用漢字の拡張)
 (b) 常用漢字以外は原則として正字に統一する。(多用される俗字も併用する。) 
 (c) 略字と正字を併用する。二重流通として、さまざまな混乱を引き起こす。
 (d) 略字も正字も使わず、カナ書きか交ぜ書きにする。

 以上の四つのうち、現実に行なわれているのは、(c) と (d) である。
 ただ、この二つは、現実だとはいえ、愚策である。そこで、何とかして改良したい、というのが、昨今の議論のテーマとなる。
 国語審議会で提案しているのは、(b) である。
 (a) の「常用漢字の拡張」は、理論的には可能ではあるが、支持者が少ない。
 私が本論で言ったのは、(a) と (b) のみが理屈上で正しい、ということである。(a) と (b) のどちらを取るべきかは、主張しない。(私としてはどちらでもいい。)



 

 Q&A  



  ※ 以下では、略字をめぐるさまざまな疑問に対して、質疑応答形式で述べる。
     冗談半分で書いているところもあるが、そこはそこ、ご容赦いただきたい。



 Q1  常用漢字では「臺」が「台」になって、とても便利になった。その事実を認めよう。


 Q2  常用漢字以外だって、常用漢字と同じような部分字形にすれば、きっと便利のはず。

 Q3  正字と略字の両方があると二つあって混乱するなら、全部略字に統一すればいいでしょ。

 Q4  私は正字なんか使わない。常用漢字とあとちょっとだけあれば十分だ。

 Q5  数万字もの漢字を略字にするのではなくとも、せめて、日常語の範囲では略字にしたい。

 Q6  常用漢字はともかく、JISの第一水準は略字になっているのだから、常用漢字以外の第一水準の範囲では略字に統一しよう!

 Q7  しんにゅうぐらいは、一点しんにゅうに統一したって、いいんじゃない? 

 Q8  JISの第一水準の範囲で、統一しなくてもいいから、現状の略字を認めよう。

 Q9  略字はすでにパソコンで定着している!

 Q10  パソコンの画面では、複雑な字画の文字は出せない。だから画面上でも見やすくなるよう、字画は単純である方が好ましい。

 Q11  わたしゃ、老眼なんです。小さな文字だと、複雑な字画は見えないんです。

 Q12  パソコンの文字なら拡大できるが、書籍の文字は拡大できないぞ。

 Q13  でもやっぱり、字画の多い文字は見にくい。

 Q14  戦後、朝日字体が生まれたころ、文字はカスレがあって見にくかった。朝日の略字には、そういう歴史がある。

 Q15  公文書などで、平易な漢字でなく、難解な漢字を多用するのは困る。

 Q16  現実に、パソコンでは略字が出るんだ。それを認めて、それに合わせればいい。

 Q17  でも略字は、パソコンで長年使われてきたという実績がある。そういう歴史の積み重ねがある。

 Q18  できた経緯は別としても、略字は一応普及しているんじゃない? 

 Q19  略字は公文書などでも使われていることがある。いきなり廃止したら、混乱は必至だ。 

 Q20  略字が大好きだ! 何とかして普及させたい!

 Q21  朝日新聞は略字を主張しているが。

 Q22  朝日の出版物にも、正字は数多く見られるが。

 Q23  朝日だって、朝日字体の出版物は出している。「週刊朝日」がそうだ。

 Q24  朝日の略字には読者が多くある。だから略字は受け入れられていると言える。

 Q25  朝日の新聞発行部数は多大だ。そこで略字が使われているということは、とにかく重要だ。

 Q26  朝日で、人名を勝手に略字にしても、たいていの人は文句を言わないよ。

 Q27  「常用漢字は略字で、常用漢字以外は正字」──というのは、二重基準だ!

 Q28  現在のJISは、二重基準ではないの? 

 Q29  どうして朝日ばかりそんなに攻撃するのか。いくら朝日が略字を使っているからって、公正な態度ではないぞ。あんまり、いじめないでね。

 Q30  そんなに朝日が嫌いなら、朝日なんか読まなければいいでしょ。嫌いだったら、なぜ読むの?

 Q31  略字を批判してばかりいるようだが、略字は昔からあったぞ!

 Q32  でもねえ、なんでそんなに略字が嫌いなの? 

 Q33  でもやっぱり、正字が好きなんでしょ。古いねえ。

 Q34  あんたはともかく、私は略字を使いたいんだ。誰にも迷惑をかけなきゃ、いいだろう? 

 Q35  世の中の迷惑なんか知ったこっちゃない。ともかく、おれは略字を使いたいんだ! おれの好みだ! 文句あっか!

 Q36  南堂体の略字とは? 

 Q37  南堂体なんていう個人的な略字はダメだ! 朝日やJISが定めた、権威あるものでなくては! 











  りゃくじ かんかんがくがく

End.