「無いと困る?」ハードウェア設定FD

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0.はじめに

 PC-9800シリーズの本体や周辺機器には、ハードウェアの設定を専用のフロッピーディスク上のソフトウェアで行うものが数多くあります。それらには、マニュアルが無くてもなんとかなるもの、マニュアルが無いと目的や意味がよくわからないものもあります。またフロッピーディスクが無くても運用でなんとかなるもの、無いとどうにもならないものもあります。以下では対象ごとに必要なフロッピーディスクと、その運用方法について概説します。もちろん正しい使い方は正規の説明書のとおりであって、ここで書かれていることは、超概略の非公式マニュアルです。この点ご留意ください。

 なおここでいう設定FDはハードウェアの設定を行う物であり、デバイスドライバではありません。本稿の1.と2.で取り上げるものは、「PC-98本体を設定するもの」であって、「Cバスボードを設定するもの」ではありません。この点誤解してらっしゃるかたは多いようです。たとえば「PCIセットアップユーティリティでCバスボードのIRQを3に設定できた」などという記述は全くの錯誤です。

 本稿の3.以降ではCバスボードの設定にかかわるFDについて述べます。Cバスボードのリソース設定は、基本的にはボード上のスイッチ、それがないスイッチレス化したものは、専用の設定ツール、または設定機能を併せ持つWindowsドライバが必要です。完全にPnP対応のボードについてはそれらを必要としません。

1.PCIセットアップユーティリティ(PSU)

 これはPCIバス搭載機において意味のあるものですが、実際には「Cバスデバイスのリソースを登録(本体に記憶)して、PCIバスデバイスの使うリソースとの競合を避ける」ということを目的としたものです。つまりこのユーティリティは「PC-9821本体を設定するもの」であって「Cバスボードのリソースを設定するもの」ではありません。リソースの予約をするものです。Cバスボードの実際のリソース設定はCバスボードの付属品(ボード上のスイッチ、ユーティリティソフトウェアなど)で行うことになります。

 PCIセットアップユーティリティのFDは、PCIバスのデバイスリソースの設定の異常で起動できなくなった場合に使用するのが本来だと思いますが、そのような場合にはハングアップしてしまいFDの起動すらできなくなっていることが多いです。本当であればPCIセットアップリューティリティのようなものは、BIOSの機能として、システムセットアップメニューの中に存在すべき機能でした。それか後述のH98のように、システムの起動前にFDからロードして実行する仕組みを用意しておくべきものでした。

 なおこのユーティリティの対象は基本的にはPCIバス搭載機ですが、PnP BIOSの一部機能が対応していれば使用可能で、物理的PCIバス拡張スロットもPCI BIOSも無いPCIバスCanbe,PC-9801BX4,PC-9821Xe10でも適用はできます。

■ 基本的使い方

 機種によってはPCIセットアップユーティリティのFDが本体添付品として存在しています。これを使う場合は、ドライブに挿入してブートさせます。メモリスイッチのブートデバイス設定が、FDから起動できない条件になっていなければ大丈夫です。ソフトウェアDIPスイッチ2-5で「メモリスイッチ初期化」にしておけば必ずFDから起動が試みられます。このFDのディレクトリ内容の一例は次の画像のとおりです。DOSは含まれず、直接ロード実行するプログラムが含まれているようです。

 いっぽうPCISETUP.EXE というDOSアプリ単体で実行できるものも供給されています(後述)。その場合はコマンド引数でPCIsetup /C3 のように、CのあとにCバスのスロット数(実際にはボードの数)を与えます。セカンドバスつきの場合は1枚多くカウントしてください。なお最大値は15です。省略した場合は勝手に5と解釈されるようです。Cバスのスロット数が機種によりさまざまであり、98本体はPnP機であってもCバススロットの数を把握できないため、このようになったと考えられます。

■ 機種とバージョン互換性

 PCIバス搭載機の初期の頃には必ず「PCIセットアップユーティリティ」のFDが付属していました。これにはバージョンや世代というものがあり、互換性の悪い部分もあります。初代Xa,Xf,XtにおいてはPCI BIOS自体の機能が後の物と大きく異なっており、機種専用の「PCIセットアップユーティリティ」が必要です。これらの機種の付属品のバージョンは1.10だったようです。

 次いで登場した Xa7〜10/CやXt13/Cの頃、およびそれ以降の機種でもFDは付属していました。バージョン1.40からPCI BIOS 2.1相当機種対応のものであろうと思われます。このバージョンは後方の機種との互換性は一応ありますが、PCIブリッジデバイスなどを解釈できない点があります。バージョン1.50ではそこが改善(といっても完全ではない)されており、最終機までこのバージョンのようです。1.50より新しいものは知られていません。ですので1.50をもっていれば初代Xaなど以外のほとんどの機種では役に立ちます。

 Windows 95 OSR2搭載機種くらいからは、インストール済みHDおよびバックアップCD内にPCISETUPのフォルダが存在し、そこにあるプログラムで実物のFDを作るようになっており、FDメディアでの供給ではなくなっています(具体的にどの機種からかはよくわかりませんがValue Star 3桁機種頃から)。したがって入手法としては、希少な機種付属FDメディアよりも、バックアップCD-ROMのほうがよいかもしれません。バージョンも必然的に1.50になります。

 なおバックアップCD-ROM内のPCISETUPフォルダには、PCISETUP.EXEの他にMKPCIFD.EXEというWindows9xアプリケーションがあります。これをWindows9xで実行すると、はじめに述べたような自動起動型のFDを作ることができます。しかしこれはMS-DOSのシステムの入った普通のFDにautoexec.batでPCISETUP.EXEが実行されるというものになり、各機種標準添付だったFDとはブートのさせ方に微妙な違いがあります。なぜDOSシステムで起動させる方式にしたのかわかりませんが、MS-DOS(7.x)のロードの時間のぶんも加わり、直にローダを介して起動するよりも時間がかかってしまいます。

■ 必要性

 既に述べたように、PCIデバイスのみを使う、または完全にPnP準拠のCバスボードだけを使うなら、必要ありません。非PnPのCバスボードを使うときは必要となりますが、Cバスボードのリソースの全てを登録する必要はありませんし、I/Oアドレスについては登録できません。ですからIRQとDMAが主な項目になります。厄介なのはCバスボードに非PnPとPnPのものが混在する場合です。PnPのものは挿すだけでリソースが自動的に割り振られますが、そのときに非PnPのものと容易に衝突してしまいます。このような場合はPCIセットアップユーティリティは必須となります。

 PCIセットアップユーティリティを使わないとすると、非PnPのCボードを使うときに、PCIデバイスとIRQが衝突する可能性が高くなります。PCIデバイスが使っているIRQを 拙作pcilistなどで事前に調べて、そこに存在せず、かつオンボードのデバイスが使用していないIRQを、これから装着しようとする非PnPのCバスボードにハードウェアSWなどで設定します。もしそのボードの現在設定されているIRQが不明、あるいはそのボードのIRQの設定自体がソフトウェア方式だった場合、ハングアップしてしまってどうにもならないということも予想されます。PCIセットアップユーティリティが無い場合は、非PnPのCバスボードを複数使うことが難しくなります。

■ 設定上のコツ

 ハードウェアの構成を変えた場合、あるいは一時的に変更してすぐ戻したい場合などのために、PCIセットアップユーティリティには、「構成情報」の削除/待避/復旧 の機能があります。PC-9801-100ボードのように、一度でも挿すとPnPにより設定が勝手になされてしまうボードがありますが、これはボードを取り外しても残ります。そのときは「削除」でCバスPnPボードの情報削除を行ってください。なお[GRPH][SHIFT]押し起動、あるいは[ESC][HELP][9]押し起動などソフトウェアDIPスイッチの初期化起動を行うと、この設定情報は無くなります。PCIセットアップユーティリティが無い場合はそれで初期状態にする手もあります。PCIセットアップリューティリティ適用後に再起動できない事態に陥ったらまず[GRPH][SHIFT]押し起動を試してみる、ということを覚えておいてください。

 ビデオボードのなかにはPC-98上でAT互換機用ROMが出現するものがありますが、通常はC0000-CFFFFhの64KBに現れます。しかし32KBのROMの場合、D0000-D7FFFFhのところに出現し、SCSIボードのROMと競合することがあります。そのようなときは意図的にSCSIボードまたはビデオボードのROMの出現場所を固定にすると問題が解消します。あるいは逆にCバスボードで占有された状態に設定することで、ROMの出現を抑止できる場合があります。

 IRQに余裕を持たせるためには、SCSIアダプタやネットワークアダプタのように、Cバス用もPCIバス用もあるものは、極力PCIバスの製品を使うべきです。  

■ 設定上の重要な注意

 PCIデバイスのうちI/Oアドレスを多数もつもの(アイオーデータのUIDE-xxやSlicon Image SATAチップ採用のボードなど)は、PCIセットアップユーティリティで「固定」にすると起動できなくなります。これはPCI BIOS自体のバグが原因ではないかとみていますが根拠はさほどありません。

 PCIデバイスのうちブートROMを持つものを複数装着してIRQが同一となる場合、起動できなくなります。たとえば、UIDE/SATAアダプタとSCSIアダプタの併用のような場合です。片方がブートROMを持たないデバイスの場合でも、Windows 95(OSR2以前)では起動途中でハングアップすることがあります。IRQの共有はできる限り避けるべきです。  

 ValueStar V200/V166では、SOFTWARE DIP SWITCHを初期化して起動した際に、勝手にオンボードPCIデバイスのIRQが6で「固定」に設定されます。これはPCIデバイスが使用するIRQを一つに集約し、空いたIRQをCバスのボード・内蔵デバイスに優先的に割り振るための措置と考えられます。このためValueStar V200/V166では ブートROMを持つPCIデバイスを2個使うのはかなり困難です。たとえばSCSIとSATAのPCIボードの併用です。Cバスボードおよび内蔵デバイスを減らして空きのIRQを捻出し、PCIセットアップユーティリティでPCIデバイスの設定を無理矢理「自動」にしないとなりません。

 もっと難しいのはCバスのPCカードアダプタ(PC-9801-102など)の使用です。このときはPnPモードとしておき、全てのCバスボードでPnPとしておき、PCIデバイスについては一つのIRQに固定の状態にしないと、IRQを複数余すことができません。

2.H98自動セットアッププログラム(ASP)

 H98シリーズ全機種において、オプションボードおよび内蔵デバイスのリソース割り当てを自動的に行うプログラムです。H98以外では無意味であり、実行もできません。自動セットアッププログラム(ASP)もPSUと同じく、NESAバスのボード・デバイスとCバスのボード・デバイスとの間でのリソースの整合性を調べ、NESAの場合は自動設定、Cバスのボードの場合は登録をおこないます。

■ 基本的使い方

 H98全機種でマスターFD(取説ではリファレンスディスクと呼ばれる物の"オリジナル")が本来付属しています。実際の運用ではこれのコピー(取説ではバックアップディスクと呼ばれる)を使うことになります。コピーを作るにはDOSのDISKCOPYコマンドでもよいし、HELP押しで出るメニュー(システムセットアッププログラム、SSP)でも可能です。この点はよくできています。だからといってコピーしたFDを構わずに不特定多数に配布してよいのかはNECに問い合わせない限りわかりません。98がサポートされていた時期には、保守品として有償での入手となっていました。

 基本的には複製されたディスクで運用します。マスターディスクを使おうとすると警告されます。複製されたディスクにはシステムが何か情報を書き込むことにより区別しているようです。したがって書き込み禁止にはできません。

 ASPを使うタイミングには、(1)NESAのボードを装着または取り外した後に起動しようとしたとき、(2)HELP押し起動で出るSSPで、マニュアルセットアップ(MSP)を選択したときの2つがあります。(1)は困ったことに回避不可能ですので、ASPのFDを持っていない場合にはNESAのボード、内蔵メモリ、内蔵HDDの増設や取り外しを行うべきではありません。もし取り外した場合は元の位置に戻さなければなりません。なおASPのディスクは通常のFDブートとしては実行できるメディアになっていません。自動要求に応ずるかSSPを経由する使い方になります。

■ 機種とバージョン互換性

 どのようなバージョンがどの機種に付属していたかはよくわかっておりませんが、NESAの設定については全機種等しい互換性があるようです。新しい機種ほど、付属のASPのFDに収載されているCバス、NESAバスボードの情報が増えているということは言えます。H98最終機に付属のものは1.20でした。H98本体の発売以降に登場したNESAの周辺ボード・機器のごく一部には、ASP実行時に読ませるリソースを記述したFDが付属していたらしいですが、具体例を見たことがなくわかりません。

■ 必要性

 基本的にNESAのボード・デバイスにはNESAFOという情報を格納したROMが存在しており、ASPを実行するよう要求されます。ですからNESAのボード・デバイスに変動がある場合にはASPのFDは必須です。

 いっぽうCバスのボードは、NESAのボード・デバイスと衝突しない限りは、ASPなど無くても使用できます。その代わりリソース管理は自分で行うことになりますが、これはH98以前の9800シリーズと変わりません。PnPはH98では機能しませんので、PnPのボードは非PnPのモードにしたうえで、ハードウェアスイッチあるいは設定FDでリソース、とくにIRQを注意深く設定してください。

 Cバスのボードのリソース登録は、マニュアルセットアップ(MSP)で行います。「オプションボード構成の変更」から入ってください。いくつかのCバスボードについては、ASPのFDに情報が収載されており、「スロットの選択」を操作したあと、ボード型番リストから選ぶだけで登録できます。変更可能なリソースはそのときに実態に合ったものを入力します。いっぽうリストにないものは手動で登録しなければなりません。このときリソースの細部までは不明なものも多いと思います。あくまでNESAとの競合が問題になるだけですので、Cバスボードのリソースは自己管理することで、とくに入力しなくてもCバスボードは使用できます。その限りではASPのFDは不要だとも言えます。NESAのリソース空間はかなり広いので、そう容易にはCバスボードとの競合は起こりません。最低限DMAとIRQだけしっかり登録しておけばよいでしょう。

■ 設定上のコツ

 NESAのボード・デバイスではかなり自由度の高いリソース設定ができますが、従来互換性を考慮すると、「レベル割り込み方式」は選択しないほうがよいです。またH98-B12などのボードでは「互換」モードと「拡張」モードが選べますが、DOSでの運用で性能を重視したければ「拡張」を選んでください。その他のOS(OS/2,PC/UXなど)ではデバイスドライバが無い可能性があるので「互換」で使うのが無難です。DMAについても同様です。「拡張」でDMA cH3〜ch7を設定すると、Cバスボードを無設定でもほぼ衝突することはなくなります。

 ハードウェアの構成を変えた場合、あるいは一時的に変更してすぐ戻したい場合などのために、ASPには、「オプションボード構成情報」の削除/待避/復旧 の機能があります。リソース設定が面倒なCバスボードの情報をきちんと入力したときなどは、待避をしておくとよいでしょう。

3.PCI搭載機のオンボードSCSIアダプタのSCSI設定ユーティリティ

 これは該当する98本体に付属しているものです。ターミネーションの設定、転送速度の設定、ホストアダプタのSCSI IDなど、SCSIバス関連の設定を行います。PCIデバイスとしてのリソース設定は行いません。

■ 基本的使い方

 供給されるFDをドライブに挿入すると、FDブート時にOSなしでプログラムが起動します。SCSIハードディスクはこのとき接続されていてもいなくても構いません。メモリスイッチのブートデバイス設定が、FDから起動できない条件になっていなければ大丈夫です。ソフトウェアDIPスイッチ2-5で「メモリスイッチ初期化」にしておけば必ずFDから起動が試みられます。バックアップか原本かの区別もなく、FDへの書き込みも起こりません。

■ 必要性

 上記SCSI設定がデフォルトの状態で問題なければ、無くても構いません。中古で該当本体を入手した場合でも、前使用者がよほど変な使い方をしていない限りは大丈夫ですが、SCSI ID 0はMOディスクドライブなどで使用することがあるために、遅い転送速度に設定されていることがよくあります。そのようなときにSCSI設定ユーティリティのFDを使用します。もし無い場合にはSCSI IDを変更すれば、転送速度デフォルトの状態では使えるでしょう。

 無いと困る場合というのは、PC-9821Rvシリーズのようにultra SCSIのホストアダプタが搭載されている場合です。デフォルトではultra転送をしない状態になっているのです。そのほか、ターミネータの設定が自動になっていた場合は大丈夫ですが、手動で設定した状態の場合、FDが無いとどうなっているかわかりません。とくにultra SCSIではターミネーションにシビアですので、やはりFDは必要だと言えます。

■ 設定上のコツ

 どんなSCSI MOドライブでも、転送速度は遅くし、同期転送ですらも切っておいたほうが無難です。古めのSCSI MOドライブは5.0MB/sの同期転送ですら動作が怪しいです。またMOドライブではディスコネクトも使用してはいけません。CD-ROMドライブについてもその傾向はありますが、1998年頃より新しいものについては10MB/sの同期転送でも問題ないと思われます。心配なら5MB/sの同期転送に落としておくことです。

 なおRvシリーズ用の「Ultra SCSIユーティリティ」は、オンボードのものだけでなく、同一チップが使われるPC-9821X-B09にも使用できます。いっぽう同一チップであってもアダプテック製の AHA-2940AUの「SCSIセレクト」という設定FDは流用できません。チップは同一でもPCIデバイスコードが一致しないためです。OEM用に異なるデバイスIDが使用されています。ちなみにそこを誤魔化し適用できるようにしても、NEC製のブートROMとアダプテック製のブートROMとでは、SCSI設定の記憶場所が異なるらしく、設定が全く反映されません。

4. PC-9801-100およびAdaptec AHA-1030P/BのSCSIユーティリティ

 CバスSCSIボードで、どちらでもハードウェアは同一で、ブートROMも同じものです。設定ユーティリティはそれぞれありますが、どちらで設定しても、設定結果には互換性があります。

■ 基本的使い方

 NEC版は既に手放してしまい持っておりませんので、Adaptec製の「SCSI select」のほうで説明します。SCSI selectのFDをドライブに挿入すると、FDブート時にOSなしでプログラムが起動します。SCSIハードディスクはこのとき接続されていてもいなくても構いません。メモリスイッチのブートデバイス設定が、FDから起動できない条件になっていなければ大丈夫です。ソフトウェアDIPスイッチ2-5で「メモリスイッチ初期化」にしておけば必ずFDから起動が試みられます。バックアップか原本かの区別もなく、FDへの書き込みも起こりません。

 設定できる項目として最初に出てくるのは、使用98本体が(1)PnP対応機か、(2)PnPに対応しない機種か、の選択です。(2)を選ぶとボードも非PnPに設定されます。(1)を選んだ場合は次にPnPで使うか非PnPで使うかの選択が出ます。いずれにしても「非PnPで使うか」「PnPで使うか」の状態は非常に重要な違いであり、選択により"振る舞いが全く異なるボード"となります

 非PnPとした場合は、次いでIRQの設定も行うことになります。IRQは3,5,6からの選択となります。それ以外のIRQ(9,12や41など)はボード上でINTx信号線に接続されていないとみられます。IRQはここで設定した固定値に決定されますので、非PnPにした場合は、IRQの設定を書いたメモをボードに貼り付けておいたほうがよいでしょう。ROMアドレスは、DIPスイッチ1,2でROMアドレスを4カ所から選択、設定できます。OFF-OFFでDC000h、ON-ONでD0000hです。IDE搭載機ではD8000hに設定してはいけません。DIPスイッチ3をONでROMの出現を無効にできます。つまり、ROMの出現を取り消すにはPnPモードの状態ではダメだということになります。

 いっぽうPnPモードでは手動設定できるところは一切無くなります。ボードのDIPスイッチも設定無効となり、リソース割り当てにユーザが一切関わることができなくなります。IRQは本体システムがほとんどの場合IRQ 3(INT 0)を勝手に(優先的に)割り振りますから、「PnPモードのときはIRQ 3」と決めつけておいてもほぼ間違いないでしょう。

 そのほか、I/Oアドレスのベースとして 1840hと3840hを選択できます。

 以上がCバスボードとしてのリソースに関わるところです。それ以外は、3.のPCI SCSIアダプタで述べたのと同じく、SCSIの設定です。上記3.を参照してください。

■ 必要性

 システム・リソースとSCSIの両方ですから、かなり必要性は高いと言えます。とくにボード単体では非PnP状態かPnP状態かもわかりませんし、非PnPでのIRQの設定状態すらわかりません。ただし1.で述べたPCIセットアップユーティリティを使うと、「現時点でのIRQ」の設定は表示できます。その場合、非PnPに設定してあっても「ボードタイプ」が"Plug &Play"と表示されるので注意してください。またIRQはそこで変更できるものではありません。変更する手段は設定FD以外にないのです。

※追記

 純正品の設定FDがなくても、おふがお氏作のソフトウェア"AHASEL98"で設定できるようになりましたので、紹介します(2022年6月1日)。 http://offgao.net/program/ahasel98.html

■ 設定上のコツ

 PnPモードのときはIRQ 3を仮定できますので、他の非PnPのCバスボードと混在させる場合は、それらでIRQ 3を使わないように設定します。

 非PnPの古い98本体で使う場合は、非PnPに設定し、IRQを控えておくべきです。このボードを使用する98本体が非PnPとPnPを行き来するようなときは、ボードは非PnPでIRQ 3にしておくとよいです。いっぽうPCIバス搭載機で使うなら、何も考えずにPnPモードのままがよいです。

 そういうわけで、他のCバスボードを併用する場合、他のボードのほうでIRQ 3を除外して設定すれば、まず競合を起こさずに済みます。  

5. PC-9801-107/108ボードの設定ディスク

 Cバスのネットワークアダプタ・ボードですが、PnPに対応しない廉価版です。基板上にハードウェアスイッチがありません。

■ 基本的使い方

 使ったことがないのでわかりませんが、基本的にIRQなどをソフト側から設定するものです。

■ 必要性

 このボードは非PnPですから、IRQの設定ディスクを使わない限りIRQは不変です。デフォルトではIRQ 3(INT 0)になっているようですので、Windowsドライバのほうでそれを使用するという設定にすれば使えることが多いです。使えるIRQがわかったらボードにIRQの値のメモを貼り付けておくとよいでしょう。したがって無いと非常に困るという場面はさほどないと思いますが、想定外のIRQに設定済みだったものを入手した場合には、他のデバイスと競合してWindowsが起動できなくなるなどの可能性はあります。あらかじめCバスボードを他に使用しない環境で、WindowsのドライバがIRQの選択変更で動作するかでIRQを確認しておくとよいかもしれません。

■ 設定上のコツ

 使ったことがないのでわかりませんが、使わないコツは既に述べた通りです。

■ 類似

 NEC以外の、サードパーティ製の非PnPのCバスネットワークアダプタ(スイッチレスのもの)の設定FDも、大概はこれとよく似ています。IRQおよびI/Oアドレスを設定するソフトウェア、さらには現在の設定を表示するソフトウェアが必ず付属しています。そのほとんどはDOS上で実行するものですので、DOSの起動ができなくなるような環境では設定ができない点に注意する必要があります。たとえばSCSIで起動できていたのにネットワークボードを挿したらリソース競合で起動できなくなるなどです。この場合はいったんSCSIボードを抜いてFDからDOSを起動し、ネットワークボード付属FDにある設定プログラムで正しくリソースを設定します。それがSCSIと競合していなければ、SCSIボードをもとに戻したときにきちんと動作します。

6. サードパーティ各社の55/92互換SCSIボードの設定ディスク類

 もともとPC-9801-55L/92互換SCSIボードのリソースは、DIPスイッチ2個とジャンパスイッチ2〜3個で設定されていましたが、ある時期からスイッチが廃止ないしは縮小されて、ソフトウェアで設定するものが登場してきました。私見ですが、これは改良よりは改悪だったと思っています。ジャンパピン1本ですむものをわざわざソフトウェアを介してハードウェアEEPROMに記憶するのは無駄ですし、そのソフトウェアが容易に起動できなくなる可能性があるものだからです。

 通常は設定FDではなく、ブートROM内のソフトウェアに諸設定機能が持たせてあり、2〜3個のキーボード(ボードによりいろいろ)の同時押しで設定メニューに入ります。[CTRL][GRPH]キーのほかに[S]や[L]や[P]などの組み合わせで押すという製品があります。「工作室の記憶」サイトにある 本体起動時にキーボード操作により行うSCSIボードの設定が役に立つはずです。

 しかし対応ハードウェア設定が誤っていたりROMアドレス設定が誤っていると、設定機能自身はROMプログラムですから、どうにも起動できなくなってしいまいます。そのため一部のベンダでは、ROMを使わない非常用スイッチを用意し、フロッピー上のソフトウェアで設定できるようにしていました。設定メニューがROMから起動できない場合でもFDで対応できたわけです。しかしそうでないメーカもあり、とくに最後に登場したSMITボードにおいては非常用設定機能もなかったので、異機種設定がなされたボードでは手も足も出ないということになってしまっていました。

■ 基本的使い方

 非常用のスイッチ類はボードによりますので一概にどうとは言えません。そういうスイッチがないかは確認してみてください。その上で、ブートROMからの設定がどうにもできないときには、設定FDが必要となります。逆に言えば、設定FDが無い状況では非常用スイッチの意味は全くありません。

■ 必要性

 そういうわけで、ROM内ソフトウェアが起動できるのであれば、設定FDは全く要りません。ただしSCSIの設定もできるFDであるとすれば、あったほうがよいです。しかし実例を知りません。

更新履歴

2022年5月7日 新規記事

2022年5月8日 PCIセットアップユーティリティ関連を改訂

2022年5月9日 「はじめに」に本体設定とCバスボード設定の違いを強調する文章を追加

2022年6月1日 PC-9801-100/AHA-1030ボードの設定FDのフリーソフトの情報を追加
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