私はとにかく結論を出す!と書いておいて恐縮だが、今回は結論が出せないオチもつけられない。あまりにひどい。この会社は社員全員馬鹿なんだろうと思えればそこで免罪だが、毎年就職人気企業の上位にいるということは、それなりの人材が集まっているということだろう。それに少々大げさにいうと命がかかっている。とても見過ごすわけに行かない。最近運行上の不祥事が出るはずだ。どうやったらこれだけ愚かなことができるのだ>全日空。広告ネタ、目次へ予約はインターネットでしたものの、運賃を節約しようとして新橋の金券ショップで株主優待券を買った。ただし株主優待券割引は少々特殊な取引。普通の旅行代理店に行っても先方が戸惑うかなと懸念して全日空の直営窓口にゆくことにした。幸い汐留にそれはあった。ANAスクエアというらしい。(こういう心配りをして行ったから先方のいい加減さに腹が立つのだ。)
目的のビルを探しているとガラス張りのロビーにANAの大きな看板。ああ、ここかと思って行くとどうやら社員専用の通用口のようだ。まあしゃあないなと思って脇を見ると「ANAスクエアは地下二階です、中央エスカレーターをご利用ください」。ここで嫌な感じはしたのだ。いきなり「中央エスカレーター」と案内されてわかる人はいるのだろうか?いないと断言できる。というのは中央エスカレーターと聞いてすぐわかる程度にこのビルになじんでいる人は、はじめからANAスクエアが地下二階だとわかっていて、この看板には来ないから。
まあ見にくいながら地図はあったので行けないことはなかったがな。が、どうして「中央エスカレーター」なんて書いたのだ。普通なら「右手の(ホールの)エスカレーター」と書いて矢印をつけておくだろう。
案内の必要性は感じていたが、どうやら案内が不要な人に対して行えばいいと考えていたらしい。というのは案内板の文章を考えた人自身は案内が不要な人だから。
ただしあとでまずいということに気がついたんだろう。地図が小さかったのはあとから書き加えたからか?まあ、下に降りた。場所はすぐにわかった。で入るとカウンターが並んでいる。各カウンターには数字を示した電光掲示板が立っているから「どうやら整理券方式だ」と直感する。で券の発行機はどこだろう?見つからない(あとで気がついたが見つからないようになっているのだ)。仕方がないので別の出入り口に行く。で、最初の出入り口と、この出入り口から共に見えるところにあるに違いないとあたりをつける。どうやらない。なさそうだが仕方がないので共に見えるあたりに近づく。小さな看板にテプラで打った文字でこう書いてある「あちらで、整理券番号をおとりください」。整理券「番号」をとることができるかという些細な問題にはこだわるまい、問題はその矢印の方向に行っても整理券発行機がないということである。あれでは誰が見ても「整理券発行機はカウンターに置いてある」とみる。まあざっとこんなかんじだ。
つまり入り口から来た人間は、案内板1によって右行きの進路を妨害され、結果カウンターの方に誘導され、整理券番号をとれという案内板2によってカウンター沿いを進まされることになる。
実は「整理券」はどこにもないのである。どうやら中央の入口付近に「受付カードをここでお取りください」という看板のついた機械がおいてある。そのことを「整理券番号」と呼んでいたらしい。
受付カード発行機、タッチパネル式なのだが、このインターフェースについては多くを語るまい。まあフロアデザインがこれだから推して知るべしである。が、どうしても言っておきたい。この機械、パック旅行相談窓口と航空券販売窓口の整理券を一台で発行する、従ってメニューをタッチパネルで選択するようになっているのだが、このメニューは「会社が決めた商品名」を大きく書いている。まず面食らう。最初の案内板と同じく「すでにわかっている人がわかればいい」という作りである。まあ「整理券番号=受付カード」が分かっていないとこの機械だと言うことすら分からないから、もうここまで自力でたどり着ける人はそのへんまで理解していることが前提なんだろうが。
それと、パック旅行案内窓口/航空券販売窓口のどちらの整理券を発行させるか、という選択画面、選択肢は上下でなく、左右に並べておいた方がいいぞ。その方がわかりやすい。バナー広告を思わせるデザインもいまいち。バナーは押さない習慣の人もいる。ボタンの方が押す気になりやすい。
なお当方、画面にマウスポインタが出ていたので、ついマウスを探してしまった。整理券発行機が中央の入り口にあるのもおかしい。というのは人の流れからいって、そこを好きこのんで利用する人はいないからだ。(前は廊下。来た人には左右の入り口の方が便利。)多分デザインの提案依頼書の付属資料が不足していたな。デザイナーには借用する場所の図だけ渡していて、フロア全体図を渡していなかった。だからほとんどの客が中央エスカレーター側の入り口から入ってくると分からなかった。そして当然のように整理券発行機を真ん中においた。ANAもチェックしなかった。
結構デザイナー寄りの情状酌量をしたけども、デザイナーもひどい。整理券番号はこちらへ、の案内板がテプラ貼りだったのは、多分従業員の手作りだからだろう。つまりデザイナーは案内板の必要性を感じなかった。これはおかしい。どうしても案内板を作りたくなければ、中央以外の入り口を締めきりにして、入った中央に整理券発行機を置くこと!え、避難経路が確保できない?従業員専用出口に誘導すればよい。吹き抜けに出るから火事のとき煙はこもらない。地震でガラスが落ちてくる?気になるならガラス張りのオフィスにはしないこと。
素直に案内板を置けばいいでしょ。各入り口を入ったところに案内板は置かれているんだから。それが上の図の案内板1。ところがそこに書いていることは「営業時間のご案内」。一応、聞いた。いつもここに置いてあるのか、と。お客様に見やすいようにここに置いているらしい。おい、すでに入店した客に営業時間を案内してどうするんだ。ここでも「すでにわかっている人がわかればいい」という態度が見て取れる。
この案内板が不要と言うつもりはない。営業終了後、入り口から見えるように置いておくのは重要である。しかし営業時間中は片づけておけ。少なくとも客の流れを意図しない方向に動かすようにはするな。従業員はそれなりにやっているのか?さっきのテプラの手作り案内板とか。また営業時間の案内板で人の流れを阻害したおおぼけの姉ちゃんも一応「お客様に見えるように」とは考えている。デザイナーも与えられた情報が少ない場合、そういう設計をすることもあり得る。それぞれによかれと思ってやっている。ただし影響範囲や前提を十分に認識していない。つまり「すでにわかっている人がわかればいい」というふうに作ってしまうということは「分かってないひと」の存在をイメージできていないんだな。そういう人たちが仕事をするのに外注比率を上げると潤滑な意思疎通ができないから困ったことになるぞ。会社合併なんかしたらだめだぞ。頼むからパイロットだけは自前で育てつづけてくれ。
さて、どうして「分かってないひと」の存在をイメージできないようになったのだろう。まだ理由はわからん。で逆を考える「すでにわかっている人がわかればいい」この発想が出てくるのはなぜか。すでに分かっている人になぜ改めて説明する気になるのか。不自然な発想ではないか。
従業員はそれなりに考えて行動しているようにも見えるから問題は深い。つまりこの発想は企業文化だ。企業文化と見て、そういう発想を醸成する場面を考えてみた。上司が、思いつきで「こんなかんじでやっといて」と指示する。担当者はそれをできるだけ具体化して企画書にまとめて報告する。ならば「すでに分かっている人に、改めて説明する」パターンが存在しうる。これを改革するには外圧しかない。この会社、問題点を担当者が見つけてもそれが上がっていかないという組織だから。でなければなぜ「整理券案内の看板がテプラ貼り」だったりするのだ。看板一枚買ってくれないのか。というわけでこの文章Webに上げます。
だってANA本社真下にある旗艦店でこれでしょ。ほかはもっとひどいかもよ。組織全体がこんな調子じゃ怖くて飛行機乗れないよ。それ困るもん。
普通に考えると「分かっていない人」をイメージできないという悪癖を企業が持っていたとしても、国際線進出で否応なく是正されていそうなもんなんだが。