なるほどこうやって客を測るのか

 うちのガキ、夏のピアノ発表会。5年生になってソナチネアルバムの前半という上達の遅さ。本番2週間前になってようやく練習らしい練習を開始というのんびりムード。それでもニョーボの特訓(というにはあまりにゆるやか)を受けたおかげで、当日はノーミス。第2楽章は一応「聞かせる」演奏をした。途中遅くなったのが意識的か、やむを得ずかは不明であるが、テンポを落としておかしくないところなのでいいとしよう。しかしあっけにとられるほど本番に強い奴である。まずいことに「本番にはなんとかなる」が習慣となってしまった。こんなんで中学受験させると「べんきょうしなくても本番には何とかなる」とたかをくくっていそうで不安である。それは知らなくても何とかする方法はあるけれど、相当の思考訓練が必要よ。実例はさんざん聞かせているが、意識しないと自分からは出来るようにならないよ。折角「ティーカップ・プードルという名前はアメリカでは認められてなくて」とあんたが言ったのをフォローして「そりゃ、アメリカならコーヒーカップ・プードルでしょう(ティーカップ、が先に出てくるのはイギリスならではよ。で、Which do you like better, tea or coffee?という例文がアメリカではcoffee or tea?になるの)」と言ったの、言外の後半部、あんたは聞こうともしなかったでしょ。

 でも、音の向こうの風景が見えることに関して、イタリア音楽はあんたのほうがパパより上になったので、それについては文句言うまい。ゲルマンとケルトはまだパパのほうが上だ。スラブはいい線いっている。スペインは、まだ土俵に上がってない。

 LMについて(日本語にすると軽音楽、だが、「けいおん」は新しいジャンルの音楽だと主張しているのでLMを使用)勘をとりもどすため、久々に大型楽器店なんぞを訪れてみた。別にPRSシングルカッタウェイモデルに「唯モデル」と書かれていることもなく、平積みの楽譜にアニソンが多いことを除けばいたって平穏。(これはけいおん!販促用の唯の絵に描かれているギターだけを見れば、ギブソン、レスポールよりPRSシングルカッタウェイに似ているという/特に広すぎるフレイムが似ている、ので、どさくさに紛れて売り込もうとしていてもおかしくないという推測による。なお一般にレスポールよりPRSの方が軽いので振り回しやすいことは確か。先輩の持っていたのを弾かせてもらったことがある。)

 楽器の造りは確かによくなっているかもしれないが、木材の質の低下には涙が出てきた。「マホガニー」と言っている中には「フィリピンマホガニー」も当然含まれるようになったんだろうなあ。普通は「ラワン」といわれている材であるが、最近かっこいい名前がついたらしい。
 いかにも古いですと塗装にわざと傷をつけたりするオールド仕上げも数が多い。個人的には反対。みっともない。もっともバイオリン族では普通にやられていることです。贋作の歴史が長いだけあってノウハウの蓄積がすごいです。でも嫌い。自分自身が古くなったときに良くなることを放棄しているから。まあ「100年後に鳴るバイオリンを作っています」と鳴らない楽器を売りつけるよりはマシだが。(こういう言い方をする奴、ホントにいるらしい。)

 でも、少し面白いことがあったので随分気分が和らいだ。OL風の若いきれいな女性が「ストラトタイプありますか?」と店員に尋ねる。店員が取り出したのが「フジゲンというメーカーですが」。ちょっと気になったので、あとで見せてもらった。「フジゲン」OEMは多いが名前までは有名じゃないよね。ストラトに似ているがストラトのコピーモデルではない。ボディ材は木目から見てアッシュ。持った感じもライトウェイトアッシュ。よくこんな材が残っていたものだ。そしてネック。メイプルはメイプルだがすっと通った木目。そして仕上げが素晴らしい。私はメイプル指板は嫌いだが、これなら可。ネックの太さとのバランスがいいんだろうね、フラットに近いが弾きやすい。塗装がつや消し風でポジション移動がやりやすいのもGOOD。うーん、自分がギターを探しているときなら最有力候補だ。値段は12万円台だったかな。
 なるほど、あの店員なかなかやるな。「ストラトタイプ」とお客さんが言ったのを「ストラトのコピーモデル」を指すのか「ストラトのような格好(シングルコイルにアーム付含む)」を指すのかを確認。「ストラトタイプ」という言い回しからある程度のギター知識が予想されるが、どの程度のものかフジゲンの名前を出してチェック。つくりのいいものを見せて仕上げや木材をチェックできるかの眼力を推量。OL風であることより高級品と普及品の分かれ目を12万程度と仮定し、どの程度出すつもりがあるかを値踏み(これが学生なら6〜8万円程度を見せたと思う)。私はその後見ていないが、あの雰囲気だと多分フェンダージャパンを勧めたんだろうなあ。
(澪のベース、ジャズベースは判明しているが、フェンダージャパンかUSAか決め手がない。陳列の仕方で分かるかと思ったが微妙なのだ。全体が見えるように吊り下げているが、普通に通路の脇で手の届く範囲。多分フェンダージャパンだろうが、楽器店の格によっては、USAでもそのように陳列していることはありそうだ。逆にそういう楽器店ではフェンダージャパンを重ねて吊り下げるものだろうが、レフティというのが微妙、右利き用なら重ねて吊り下げていても、レフティなら形が合わないので一本ずつ、ということはありえる。これはJEUGIAに聞くしかないかも。ところで山中先生のフライイングVはロゴの雰囲気からエピフォンです。)

 ともかく店員さんの上手さに感心したので、今後この楽器店をひいきすることにした。ちなみに私が昔JEUGIAをひいきにしたのも、店員さんの態度による(ただし四条店)。どのCDを買うか電話で相談を受けていたのを傍で聞いていたが、徹頭徹尾謙虚で丁寧な態度(腹の中は「なんだえらそうにこのド素人!」だったと思う)を貫いたのに感心した。思わず「大変だったですねえ」と声をかけてしまった。JEUGIAは名前を出して、この楽器店は名前を出さない理由は、下手に出すとこの楽器屋を訪れる人が警戒するかもしれないから。すると売上が落ちるかもしれない。なお、売り方のノウハウとしては、傍で見て推測できる範囲だから企業秘密漏示にはならないと思う。教えてもらったのなら別だが。(それにこういうのはたいてい僕の考えすぎだ。)

 というわけで、ギター練習支援機能付きハンディーレコーダーGT-R1をここで買った。ZOOM H2が壊れてしまったのだ。しかも娘のピアノ発表会の現場で。ショックがでかいので当分ZOOMは買わん。(と、最初につながる。)

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