裸の王様症候群

 正直「義捐金」疲れ。
 まもなく「増税」という形で無理やり義捐金を払わされるのだから、全うに税金を払っているサラリーマンは義捐金を出すことはないと思うんだがどうだろう。
 まあ増税に応じないわけには行かないとしても、「復興」のための一時的な税だったはずが、恒常的になるのは困る。政治と官僚ははじめからその気で使ってしまう可能性が高い。そうでないことを保証する為に、従来「目的税だったはずがそのままになってしまったもの」を廃止して「きちんと約束を守る」ことを示さなければならない。
 例えば、日露戦争戦費調達のために創設された「固定資産税」だ。高速道路通行料金も似たようなものかもしれない。償却が終われば無料化する約束だったのだから、無料化すべきだろう。その代わり「高速1000円の公約は反故にします」なら、文句を言うわけにはいかない。

 といいながら、ハンカチ王子とマー君が並んで募金箱を持っていたら、そりゃ1万円くらいはねじ込むよな。タニマチ心理につけ込んだ上手い手だ。

 最近、どうも「震災」に対する態度というのが価値判断の基準になっているような気がして嫌だ。首都圏のナイターは電気を使うから悪い。花見で騒ぐのをはばかるのは、被災者のことをおもんぱかってのこと。
 いや、違うだろ。桜の下でお弁当をひろげるのはともかく、夜の公園に酒とカラオケを持ち込んで騒ぐのは、公衆道徳違反だろう。そもそもの問題を見ることをせずに「震災」を基準に考えて、気を使ったふりをするのが良くないのだ。そして「震災」に関連付けることができれば、その発想は「正しい」になる。ようするに「思考停止」に陥っているのだ。

 それでも、まだ「節電のため」と目的がワンクッション入っているのはよかった。これで「いままでの東京は明るすぎた。このくらいで丁度いい」と言うまでは分かる。確かに照明つけすぎだ、とは思うからね。渋谷駅西口のパチンコ屋の前を夜通ったときは、異様なまでの明るさに「無駄だ」と思ったぞ。震災や節電に関係なくだ。
 ところが、光を効果的に用いた演劇で、震災後、節電のために演出を変えて、全体的にスピードアップを図ったものがあったそうだ。舞台全体の時間も短縮。で、観客の感想「これくらいのほうがいい」「メリハリがあってよかった」・・・確かに今までの演出が間延びしていた可能性はある。おばさん二人のプライベートな感想である可能性もある。が、「この演出をほめないと、意識の低い人間と見られる」という観念に縛られて、自身の判断が出来てないとするとこれは怖い。このシチュエーション「はだかの王様」だ。王様の服が見えないと心がすさんだ人に見られるという強迫観念が、見えないものを「見える」と言わせた、あの話である。
 少なくとも演出家は、元の演出を良いと思って作ったに違いないんだよな。もちろん不本意ながら変えてゆく中に新しい発見があって、逆に良くなったという可能性はあるにせよ。
 だから気を使った感想をテレビカメラの前で言うのであれば「いろいろと制限が出てきた中、これだけのものを私たちに見せてくれた演出の方、ありがとう。よく考えたんだろうね。さすがです。逆にメリハリが出ていいところもあったと思う」だろう。
(まず考えられないが、用意されたシナリオが短くて、とても入場料に見合う時間の芝居にならない。そこで不本意ながら演出で上演時間を延ばすということがされていれば、これは素直に「よくなった」でいい。)

 そう「不本意だが」という意識は持ってないとまずい。理由は流されるからだ。自分で判断していないことを忘れるからだ。「震災と復興のため」と言われれば反論できないというのでは民主主義を担えない。

 そのくせ「増税」には反対なんだろうな。増税なしで立ち行かないことは分かるだろうに、「計画経済」という別の策を持ち出すことすらしない。

 「不本意だが」「増税」には応じる。その代わり「復興のため」というのが「方便」でないことを保証せよ。具体的には固定資産税を廃止し、償却の終わった高速道路を無料化せよ。ただし、それでもお金は足りないだろうからいろいろ考えて「新しい発見」があれば生かしてゆこう。
 僕の発想、ものすごく健康的だと思うがどうだろうか。

 ただし、結局は「計画経済」が必要だと考えている。徳川吉宗と宗春、成功したのは吉宗だ。
 少なくとも、福島原発周辺の人を移住させて生活するだけの産業を生み出さなければならないんだから、「計画経済」の発想は部分的であっても必要になる。だから政権のどこかで冷徹に計画を練っている人たちがいなければならないんだ。民主党政権の目玉だった「国家戦略局」はそういうことをするとこだと解釈していたのだが。
 それこそ、普天間基地を当初案どおり名護に移転。福島の人を呼んできて基地建設のために雇用。屈辱を感じるかもしれないが、普天間基地跡地に「福島村」を作るためということなら、気持ちに折り合いをつけてくれるだろう。で恒久的な職を作るために貿易特区に指定して、産業育成。
 無茶苦茶だ。でも、震災ついでにいろいろ公約を反故にしようとしている民主党政権がここで「最低でも県外」を「不本意ながら」反故にするのは悪くない選択ではないか?

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