とある、脇の甘い会社の話

 Yahooでのどかな「電気予報」なんかやっているが、よく見ると
《管轄区域の方は節電および計画停電にご協力ください。》
とある。やはり計画停電はあると見たほうが良かろう。

 商標というのは、手軽な言論封殺の手段にもなりうる。全ての阪神ファンを敵に回したのが「阪神優勝」と登録してしまった奴。さすがに今では無くなっているが。

 嫌なのは、円滑なコミュニケーションの妨げになることである。
 古典的な例では「インスタントカメラ」一般を「ポラロイドカメラ」と呼んではいけないこと。「宅急便」と言った途端、山梨県には送付できないという時代もあったのだ。
 まあそのとおりなのだが、それではこまるでしょ、ということ。19対1!パイオニアはこの辺分かっており、「レーザーディスク」の商標を公開した。

 僕は知的所有権を必要悪だと思っているので、一般に商標による独占というのに対しても冷たいのだが、メーカーのみならず、一般ユーザーまで「それは商標だから使ってはいけない」なんて言う例にずいぶん出くわしたので、まじめに論破することにした。
 対象は「電気ギター」の商標である。「レスポール」というと「ギブソンかエピフォンしか使えない商標」という条件反射がずいぶん多かったので。

 「Les Paul」というギターの名称については、確かにギブソンが登録している。

 が「レスポール」だと登録してないのだな。
 これに対して、フェンダー社は
 「Stratocaster」も「ストラトキャスター」も登録している。 さすがに脇が堅い。

 というわけで「レスポール」と表記する限り、ギターメーカーはともかく、ユーザーは「あの」形のギターを一般的に指すと使っても良かろう。なお「ストラトキャスター」は一般的に「ストラト」と略称されているので、一般ユーザーについては商標を気にしなくて済む、と。(なお「スト ラト」だと伊藤忠が登録している。)

 ここで済ませると普通なのだが、若干なりともまじめに調べたので、妙な問題を指摘しておく。
 ギブソン社とYAMAHAが共に「SG」というギターを出している。シュルエットはずいぶん似ているが別のギターである。じゃあこれはどっちの商標なんだ?である。実はどちらも成立してないんだな。
 が、YAMAHAはいつの間にか「SGforXG」という商標を楽器について登録しているので、優先権はYAMAHAにあると見てよかろう。ギブソンはここでも脇の甘さを見せている。

 他の分野では「SG」が登録商標として成立しているので、構造的にSGが登録できないということはなさそうだ。ひょっとしてギブソンとYAMAHAで係争になったのかな?確かに睨み合いで商標が成立していない例というのを一つ聞いたことがある。
 「おジャ魔女どれみ」というタイトル。最初は「おんぷ」にする予定だったとか。しかし商標が成立している。一方「どれみ」は商標権が係争中だったので「漁夫の利」さっさと登録しちゃったらしい。
 というわけで「SG」でギターの商標、登録しようと思えば出来るぞ。だれか話の種にやってみます?出願料は21,000.−。
 ホントは「Les Paul」って人名だから商標が成立してないかな、なんて思ったのよ。なら勉強をかねて自分で登録しようかな、なんて。Les Paul氏は2009年になくなったので今なら登録できるかと。よく調べたらLes Paulは芸名で、本名はLester William Polfuss。なるほど。でもね「レスポール」なら出願可能よ。
 でもギブソン社、とても法廷闘争が下手なので、こんなことで追い込みたくないという紳士的な態度が、多分日本人には(アメリカ人よりも)あるだろうと思う。

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