ガキが夏休みということは夏休みの自由研究を抱えているということだ。広告ネタ、目次へ
ゆとり教育以前は夏休みのたびにノーベル賞をとれと言われているようなもので、児童生徒にものすごいプレッシャーを与えていたのであるが、最近は改善されたようだ。(40年近く前だが理科の教科書に「○○してみよう」が延々続くのを見た糸川英夫さんが「ノーベル賞級の大発見をいくつもしろと言っているようなものだ」と批判していた。)したがって、歴史的実験にアレンジを加えて自分でやってみるという難行はやらなくて済むようになった。よかったよかった。
かといって身の丈にあった自由研究を志向させているわけではないらしい。例えば「速く綺麗なボールの磨き方」「真っ直ぐにラインを引く方法」なんかまとめておくとのちのちまで残ると思うのだが、そういう発想を推奨しているわけでもない。(すいエンサーネタっぽいなあ。)うちのガキの自由研究、今年は楽である。父親のことを書けばいい。おなかが痛いと言いだして、急性虫垂炎と診断されて、手術して、退院して、また痛くなって、しかたなく湯治に行って、これに「急性虫垂炎」「腹痛」「湯治」とかで検索した結果をコピペして「父が後でおなかが痛くなったのは、このパターンと思われる」「湯治の効果は・・・」とコメントしておけばいい。実体験、しかも誰もが一応同情しなければならない病気の実体験を縦糸に調べた結果をまとめれば、たとえコピペであっても「コピペばかりじゃないか」と怒るわけにはいかない。しかも「腹痛はこういうことかと思いました」と仮説を立てたふりをして「しかしお医者さんはこう診断しました」と回答をつけることもできる。一挙に切迫感が高まるぞ。
それでも一応、勉強になることは教えたんだけどなあ。退院後1週間。そろそろ大丈夫かと下の娘を迎えに行った途中腹痛に襲われた。ニョーボが娘に何時ごろどんな風に痛そうにしていたかの経過を聞く。まともに答えられるわけが無い。が、父親はあえぐ息の下で「携帯持ってきて」、いい?電車から降りてお前に「付き合う余裕なくなった」って言った直後に電話がかかってきたでしょ。それがこれ。だからこの時刻を基準に考えられるよ。時刻表調べたらどの電車に乗ったか分かるから、で乗る前に「調子悪いから」ってコンビニ寄ったでしょ・・・。この調子でほぼ全工程に渡って、時刻と経過を遡って特定できた。
分かってくれたかなあ?この道筋で考えることができるようになると、例えば歴史で年号覚えてなくても正解が導き出せるようになるのだ。知らないことでも分かっていることを順序だてて組み立てていけば何とかできたという経験は、本当に知らないことに対峙したときに恐ろしく役に立つのです。
残念なのは病院に行ったときに娘を同席させてくれなかったことだ。メモを見ながら経過説明を医者に対してする機会がもてれば、娘にとってはものすごい自信につながっただろうに。もっとも下の娘は、別の自由研究のネタを考えているようだ。最初は地下鉄の写真を撮ってまとめるつもりだったのだが、去年と同じようなこと(去年はばーちゃんちの庭の植物の写真をまとめた)はつまらんらしい。(地下鉄の写真を貼って、それでも淋しかったら「東京の地下鉄の歴史」「第三軌条式とは」をコピペして貼れば、これまた実体験に基くことをまとめているわけだからコピペだと文句を言われることはない、と焚きつけたんだがなあ。)
まあガキの気持ちもわからなくはないので入れ知恵。おこづかい欲しさに何か仕事をください、と言っていたので、エジソンの逸話をもとに「新聞を作ってくれ、できたら買うよ」と提案した。貧しかったエジソン少年は汽車の中で自作の新聞を売って小遣いを稼いだというアレである。残念ながら三日坊主に終わった。バインダーにまとめていたので一月続けば自由研究として出せたのに。まあエジソンもアレだ。今なら記者の中で新聞を売っていたら鉄道会社にしょっ引いていかれるだろうし、そもそも暇つぶしに子どもの作った新聞を買う人などいない。スマホに没頭していることだろう。
つまり現代ではエジソンは出てこない、ということだ。でも子どもの知恵を認めてやって、頭を使うことの楽しさを実感させる機会は作ってあげたいなあ。そういえばガキの中学で、学校紹介のホームページを生徒が班を分けて作ってみるという課題が出た。学校の公式ホームページ自身、校舎紹介がむちゃくちゃアバウトなので、これ以上のものを作るのは簡単だし、作れば公式のものに格上げとなって子どもたちの自信になるだろうな、と思った。そこで資料だけは提供した。法務局に行って校舎の登記の図面を複写してもらったのである。ガキは学校に持っていったが、即座に却下されたらしい。実は学校の公式住所はそれでいいのか、というアイデンティティに係わる大問題を含んでいたのだが、多分そこまでは誰も見ていないだろう。学校がどこから借金して校舎を作ったか、も分かるのだがそれすら気にしていないだろう。