うちのガキが「12歳の文学賞」応募をもくろんでいる。広告ネタ、目次へ
小学館が未来の小説家の青田刈りのためであろうか、小学生相手に創作小説コンクールをやっておるのだ。なお「青田刈り」をアメリカ人が作ったフリーの和英辞典で引くと「recruiting students」になっていた。なんと即物的で分かりやすい。このコンクール、【小説部門】と【はがき小説部門】に分かれており、うちの子が狙っているのは、はがき小説部門である。まあ、原稿用紙2000文字はきついだろうから、それは分かるのだが真の理由は別のところにあるらしい。賞品である。
当然、小説部門の方がよいのであるが、ノートパソコンには目もくれない。ITパスポート試験に受かればパパが買ってくれることになっているからである。一方、はがき小説部門の賞品であるDSソフトは間違っても買ってくれないから。
出す以上は下っ端であっても賞をとってもらいたいので、参考に過去の入選作を見てみると・・・判断基準が分からない・・・笑えたかどうかで決めているのではなかろうかと思われるような感じである。
おかげで、ガキにアドバイスすることができん。早速2つ書いていた。結構いい味出していたが「視点を変えたほうがいいよ」すら言っていいかわからない。ペットの視点から書いたほうが小説としては完成度が高いのだが、笑いは減る。悩ましい。どこかに「殺人シーンは禁止」なんて可愛い条件はついてないのだろうか。こういうのがあればある程度採点基準が逆算できるのだが。そんなこと考えなくていいって?でもさ、推理小説くらいなら書く奴いると思うよ。「謎が解けるか、アイスが溶けるか。(お菓子のコマーシャルに死体が写っても誰も問題視しなくなったんだ。))」そういえば近所の路線のダイヤで、アリバイ作りに使えそうなのを一つ見つけた。相互乗り入れの関係で、後着電車が先発するのだ。うまくやると先行電車に乗った人を追い抜ける。先に銀座についていたということは、首相を殺せたはずが無い、とかね。
それと昨年でも今年でもこんな小説があれば無視できないぞ。「その日、僕はかぜで学校を休んでいました。両親とも仕事に出かけ、僕は一人家で寝ていました(中略)会社から慌てて戻ってきた父は僕を屋根に押し上げると、そのまま津波に飲まれてしまいました。僕は怖くて手を伸ばすことさえできないまま、ただ父さんを呼び続けました。」
小説だ、当然フィクションでもかまわん。が、これに対して何も反応することなく選外にできるかね?念のため、ばあちゃんち(つまり苗字が違う家)の住所から応募したほうが入選の確率が高そうだ。じ、じぶんの才能が怖い。
あ、いかん。雑念が入った。やはり人が死ぬシーンは禁止しよう。
もちろん取り越し苦労のようで、サイトで紹介されている作品を見る限りではとても平和な世界に見える。ところで、主催の小学館は「12歳の文学」の言い回しによく似た、決して忘れてはいけない文章を知っているのだろうか?
「18歳の文学」という名文があったのだ。とある高校の文芸部部長が文化祭で出す部誌のあとがきである。先輩の部長が「一般にでている小説に比べて文芸部誌の小説はレベルが低い」とあとがきに書いたのに対して、堂々と主張したのだ。「18歳には18歳にしか書けない文学がある。」
なに、なかなか気概のある文芸部でいい伝統だというのは認めるがよくあることだろうって?そうだね。が、「18歳の文学」というタイトルをつけたのは大江健三郎、くいつかれた部長は伊丹十三である。(小学館の人だから知っているかな?)
伊丹編集長に書き直しを命じられている大江少年。ちょっと凄い光景があったということだ。是非これを小説のネタに・・・間違っても入選しないことは容易に推測できる。