地域おこしに:史上最大のスタンプラリーはじまる

 安永三年元旦に阿波、土佐、伊予、讃岐の四か国は史上最大のスタンプラリーを開始すると発表した。徒歩で巡ると40〜60日かかるほどのもので、史上最大の規模となる。
 これは四国生まれの仏教界の偉人、弘法大師の業績を記念して、縁のある寺社が集まって新しくイベントを起こすとのこと。
 四国全体に渡る八十八の寺社がチェックポイントを提供し、参加者を地域をあげて歓迎するという文化を醸成して観光振興を図る目的。一方では仏への帰依を促進し民心の安定を図るという効果を見込んでいる。
 これまで遅れた地方とされた四国にとっては前代未聞のビッグプロジェクトであり、種々の経済効果が期待されている模様。
 四国は山がちで、江戸幕府の街道整備計画からもはずれたことにより各地域を行き来するのが現状ではとても難しいが四国を一周するスタンプラリープロジェクトにより街道の整備が開始されることとなる。同時に宿場町も形成され、交通の飛躍的発展による産業振興が期待されている。また本州からの観光客に讃岐うどんをはじめとする名物を供することにより、域外での需要を喚起し、輸出を拡大させることも目論んでおり、経済効果は数万〜数十万両と見込まれている。

 スタンプラリー参加者には、民間主導で道中の便宜を図れるよう、標準のユニフォームの着用が推奨されている。これについては知的所有権で縛ることはせず「同行二人」のロゴの登録によって誰でも生産できるように調整中。菅笠、金剛杖、白衣といったものの製品化が予定されている。
 リピーターを獲得するために、複数回回ればその回数によって色違いのスタンプ帳を購入できるようになる制度が準備されているようだ。スタンプ帳を見せることにより、沿道で様々な特典が受けられるが、色によって特典に差が出る、という方向で更なる優遇策の具体的内容が詰められている模様。

 今回のプロジェクトの仕掛け人と言われている徳島藩寺社奉行、津田さんは次のように語っている。
「今回のスタンプラリーのコースは島としての形を活かし、八十八のポイントが四国を取り囲むように閉じているところに特徴があります。つまり、どこから回り始めてもちゃんと一周できるということで地域の人が気軽に参加しやすいようにしました。一方では本州からの観光客に分かりやすいよう、弘法さま生誕の善通寺ではなく、本州に近い鳴門を一番としてポイントに番号を振っています。スタンプラリーの結果、四国の風水害が減少するともに、豊作が続き、民が豊かに生活してゆけることを期待しています。
 幕府との交渉は難航を極めましたが、親藩の松平氏の尽力により認可にこぎつけました。この場をお借りしてお礼申し上げます。」

 一方、次のような反対の声もある。
別当寺住職の話
「一部の寺社が密室で決めたことであり、到底受け入れられない。交通網の整備は寺社の負担とされているが、チェックポイントを持たず恩恵のない当社(やしろ)にも一定の区域が任されており、不公平きわまりない。」

市民団体「明るい四国をつくる会」会長の話
「仏の帰依を強調しているが、これは治世の破綻を隠そうという為政者の詭弁である。また沿道の住民に観光客へのボランティアを求めているが、行政予算で行われるべきことを市民に押し付けたものとはいえまいか。」

 四国内の各寺子屋では、スタンプラリー参加者に道を譲るなどの礼儀指導カリキュラムを寺社主導で準備しており、随時適用を開始することとなっている。
 発表後すでにスタンプラリーに参加すると名乗りを上げる者が士農工商をとわず続出しており、滑り出しは上々。
 一番乗りを目指すという衛門三郎さんの話
「弘法大師にはずっと憧れており、日々の生活は弘法様とともにあるといっても過言ではありません。弘法様ゆかりの地を巡るのは一生の夢でした。No1ファンとしての誇りをかけて一番に回りきるつもりです。」

 スタンプラリーは、弘法大師生誕1000年に当たる安永三年六月十五日にスタートとなる。


 うちのガキの夏休みの宿題に「歴史新聞」というのがあるそうな。
 昔のことを新聞?何を書けというのだろうか。「本能寺炎上。信長暗殺か?」という見出しを付けて切迫感あふれる筆致で書いたのでいいのか、あるいは江戸時代の瓦版を模すべきか?
 なので当たり障りのないものを書いてみた。イベントを契機にインフラの整備と殖産興業を図る。結構現代的な話題なので抵抗なく書ける。
 読むとすぐに分かるが、四国八十八カ所のことである。元祖スタンプラリー。
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