二次元への想いは報われる(?)

 昔作ったソフトがある。詳細を述べることはできないが、RPAの基本、Webスクレイピングを使って子どもの中学受験サポートに使うというものだ。
 子どもが中学受験、となると親の負担、結構大きい。学校で進路指導してくれるわけではないからね。志望校の情報は自分で集めなければならない。これをある程度自動化する。
 ただし大変な問題が生じた。出力結果が分かりにくいのはかまわない。自分が分かればよいのだ。作るのにかなり時間がかかってしまったのだ。どれくらいかかったかというと、出来上がった時、わが子は受験を終えていた。要するに間に合わなかったのだ。「パパのばか、やくたたず」という声が聞こえそうなのでいまさら作ったなんて言えない。
 というわけで長くお蔵入りになっていた。

 が、気が付いてはいたのだ。これ業種によっては営業用にも使えるんじゃないか。隣の会社が導入したと知れば自分ところでも入れないと不安になる程度にはインパクトあるぞ。
 しかしながら、無茶苦茶不安定なので商品にならない。もう少しましにならんかと改良を開始。一部Pythonで書きなおしたりして、ロジックも改良した。私の作ったコードが、部分的ながらPythonのBeautiful Soupよりも出来がよかったりなんかして機嫌よくなって、そして出来上がった。当初のバージョンは必要な情報だけをテキストで表示するという形式だったが、今回はHTMLファイルを加工してより元の形に近づけ、見やすくなっている。
 それはレイアウトが崩れたり、多くの画像が表示できなかったり、という制限はあるが「これなら上等じゃない?」というまでに仕上がった。早速テストとしていろいろなサイトを読ませてみた。テキスト主体のサイトはまあまあである。では画像が主なサイトはどうなるのかなあ?ということであればテスト対象はTVアニメの公式サイトあたりから選ぶのが妥当だろう、ということで今期のアニメから「寄宿学校のジュリエット」を対象とした。当方イチオシのヒロインである。
 好きな子に言われてみたいセリフ第一位に近いことを言うし、空回りして落ち込んでいる主人公を励ますセリフが才気と思いやりに満ちている。フォローでなくて本質をとらえなおしているのだわ。というわけでとても気に入っている。

 そういう画像だらけのサイトでテストしてみると、やはり画像が見えないのはさびしい。いやはっきり言おう「ジュリエットの御姿が見えないのは嫌だ」。どうしても見て確認できるようにしたかった。ならば、相対リンクを絶対リンクに変更するモジュールを書くだけだ。他の人が作ってくれたライブラリはあるにはあるが、変換形式が気に入らない。そもそも愛しのジュリエットのためだ。自分でイチから書きなおした。とっても見つけにくいバグがあったが、私の想いがその程度でくじけることはない。そしてついに気持ちは通じた。

 二次元への愛は通じるんだ、ということを私ははじめて知った。なるほど一緒にいて話をしたり、抱き合ったりはできないのだが想いが報われた感は無きにしも非ず。推しキャラが人気投票で一番になった時の気持ちはこれに近いのだろうか。
 なに?しょーもないだと。うん、認める。しかしながら古来より詩人が失恋した人(自分?)に向かって「この世に報われない愛はない。彼女のことを考えていると楽しかっただろう。彼女に振り向いてもらおうと思って自分を高めることができただろう」などと言っているときと状況としては大差あるまい。所詮愛とはこういうものだ。
 生身の人間への愛は拒絶されうるものとはいえ(人により可能性に差はあるが)受け入れられることもありうる。だから期待してしまう。なので「報われない」と落ち込むこともありうる。二次元への愛であれば明示的に受け入れられることはないとはいえ拒絶されることはない。さらに考えていると楽しいし、努力を促して私の場合なら自作ソフトの性能が上がったりした。それゆえに古来の詩人の言葉に頼るまでもなく「必ず報われる」といえはすまいか。

 というわけで一応の完成、アルゴリズムにみっともないところはあるし、最新のホームページテクニックはよくわかってないからブラシュアップする余地は多分にあるが、ジュリエットさまはしっかりと姿を見せてくれる。
 ところで、これあくまで「子どものため」に作ったもので会社とは無関係。ならば自分の会社で提案して使うより、これを手土産に他の会社に行った方が、私の待遇よくなるんじゃないだろうか、なんて思っている。
 ただし「子どものため」に作った時は開発も遅く性能も低かった。「ジュリエットのため」となるとあっという間に改善されて見栄えもよくなった。これだけ見ると二次元への愛が我が子への愛を上回っているってことになるなあ。それって人間としてどうなんだろう。

広告ネタ、目次
ホーム