日本一短い小説

 かつて、世界最短の小説を紹介し、それで読書感想文が書けることを証明したことがある。
 ふと日本最短の小説はなんだろうと、見つけてしまった。

 アニメ「夏目友人帳」が映画化されるが、そのCFに出てくる
「むかしの知り合いの、お孫さんなの」
これだけの言葉から、情景でなくストーリーがあふれ出てくる。
 古い友人の訃報に接した老婆。また一人、と寂しい思いに。そこに若者が尋ねてくる。「祖母の遺品を整理していたら・・・」。ああ、彼女は私のことを忘れてなかったんだ。若者を見るとなんとなく面影がある。あのころ、楽しかったなあ。
 そこに自分の孫がひょっこりと尋ねてくる。「あれ、おばあちゃん。その人は?」

 世界最短の詩形をもつ日本だからこそ詩ではなく最短の小説というのは難しいはずなのだが、想起させるのは情景だけでなくしっかりとしたストーリー。だからこれは小説だ。自由律俳句などではない。
 英語にしたらひょっとして5語。おお!ヘミングウェイを上回る世界最短の小説かも!と思ったが、やはり無理がある。ヘミングウェイは
 For sale: baby shoes, never worn.
といかにもフリーマーケットのラベルという「書き言葉」であったが、夏目友人帳はあくまで元がアニメ。話し言葉、なのである。さて、このCFで聞こえる声優の名演技なしでもやはり「これが小説である」と気が付いただろうか。確かにヘミングウェイもこの凝縮された6語のほかに「小説である」という予断を必要としはするが。。。

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