異世界とはどこか?

 アニメで異世界ものがどんどん増えてきたのであるが、一般的に異世界とは中世ヨーロッパ(ただし一年中五月の気候)のことを指すらしい。税金対策のためか取材もそれなりにやっているものについては、みてると設定がなんとなくわかったりして興味深い。

 異世界を含めて、欧州を舞台にしたアニメは多々あるが、そこそこリアルなものだからやがて「一体ここはどこの国なんだ」という疑問がわいてくる。どうやらローテンベルグが基本であるようで、そうなると元ドイツ在住者としてはいろいろ突っ込みたくなってくるのは自然な流れであるといえよう。

 見てると人種的にはどこの国?までは解決したくなる。なぜトレドの上にモンサンミッシェルが乗っている!くらいの突っ込みは当然行っているとして、だ。(これはLost Songというアニメだが、風景はスペインっぽいので、つじつまはあっている。鈴木このみはのどの酷使か声をつぶしてしまっていたという悲しい現実を突きつけたアニメであった。)
 「寄宿学校のジュリエット」はお姫様がフランス人。これは体臭まで漂ってきそうにフランス人なのでいいとして、ジュリエットは何人だ?ずいぶん悩んだ末に気が付いた。灯台下暗し、ホームステイ先の子供がそっくりの顔だちをしていたぞ。さぞや美人になっているだろう。間違いない。イギリス人だ。
 こうなるとシャロ姫は偉そうにしているが「一人だけ人種が違う王族、ってことはよ−するに人質」という裏が何となく想像できて興味深い(男性はフランス系が多いみたいなことに対してはそっと目をつむる)。

 「ご注文はうさぎですか?」はフランスのストラスブルグが舞台だが、すると青山ブルーマウンテンさんは髪の色からアルジェリア系かな?なんて気がしてくる。髪の毛の色を黒一色でなくしたのがこういう推測を誘発するなんて、作者は思ってもみなかったろう。(髪の毛をカラフルにした元祖は「うる星やつら」かな?宇宙人だから髪の毛の色はなんだってあり。)
 それ言うなら、バンドリの青葉「モカ」さんは髪の毛の色から見てブラジル系っぽい。であればブラジルを代表するコーヒーの品種である青葉「サントス」がより適当な名前だったかもしれない。

 「まおゆう魔王勇者」これは植生から言って北ドイツ平原でしよ。ということは三十年戦争がモチーフだろうなあってことで納得している。ちなみにドイツでもライン川の東西で植生というか風景は全く変わり、旧ローマ帝国側は「とりあえず木を全部切る」ことから入植を始めているらしく、空が広い。ライン右岸は街中であっても木がうっそうと茂っているイメージで西岸海洋性気候の冬空とよく合う。でもケルンの大聖堂の尖塔が映えるのはさえぎるもののない空があってのこと、ってのも書いておかないと不公平だね。
 そういえば「ヨーロッパでは自然林の割合が高く、日本は低い。自然保護はヨーロッパのほうが進んでいる(今でいうと環境先進国ってことだ)」という論調を大昔聞いたことがあるが、あれはようするに木を伐りっぱなしの国だから残ったのは自然林だけというのが理由であって、日本は木を伐って有効活用するとともにちゃんと植林しているのだ(戦国時代には材料、燃料が必要とされたせいで森林面積は国土の六割まで減ったらしい)。
 人工林が多いということは植林をきちんとしたという証拠なのだよ。ちなみに異世界でも植生が何となく日本みたい、というのも当然あったりする。ただし日本の美林や柴刈りという形で手を入れた雑木林にあたるものは見たことないなあ。

 「本好きの下克上」というラノベの舞台設定は、アニメを見る限り
「オランダだろ、あれ」
 どこを掘っても水が出そうなオランダで城壁都市が作れるのか?という疑問があったのでぐっと堪えていたが、調べてみると小規模ながら城壁を持った都市はあるそうな。(壁よりも堀で守るのが主流みたいだが。)
 オランダを持ってきたのは商人が大きな役割をするので、中世の商人の絵が資料として豊富にある、つまり商人が大きな権力を持っていた国が作りやすいからであろう。
 決定的にオランダなのは、主人公がサボ、つまり木靴をはいていること。
 もっとも私がオランダじゃないかと最初に感じたのは、都市の道路であった。
「石畳とすると石が小さい、ひょっとして木じゃないか?地盤が緩いオランダは杭を打ち込んで建築をすることが多いから舞台はそこかな?」
 アムステルダム中央駅が8,687本の杭を打った上に建てられた、ってのを本数は別として覚えていたからね。(地盤の弱いベネチアも木の杭を打った上に町を作っている。)

 「本好きの下克上」のいいところは「異世界で成功するには手に職を持つ必要がある」というか、手に職があるから生き延びていける、という通常の異世界転生ものでは無視されていることに正面から向き合っていることである。
 今のままでは異世界に転生しても通用しないぞ!と娘に芸を仕込むときに使える。ゲームがそんなに好きならコスプレにも手を染めろ。裁縫技術は身につく。(なんかおかしいような。)

 さいとうたかを、はゴルゴ13を描くときに、いろいろな新聞雑誌から人の顔を切り抜いて「人種別の顔だち」の資料を作っていたそうな。なるほど、ゴルゴを見ても人種が気にならなかったはずだ。自然だもん。

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