ノートパソコンの選び方

　元々、既存の部品を集めてとにかく一年で作ってしまったのがＩＢＭ－ＰＣというものであり、さらにスペースの制約なんぞは無きに等しい合衆国の恵まれたオフィス環境を前提としているので、そのまま日本に持ち込むといろいろと不便があります。
　でもパソコンは持ち運びできた方が便利であろうと器用な日本人があーだこーたやってＡ４なりＢ５なりのサイズに押し込めたわけです。となると、どうしたってどこかで割り切って機能を削らなくてはならなくなる。その削り方が各社のノートパソコンの個性であり、選ぶ際にはそこに着目してゆくことが大事になります。
　私なんかの場合は、とにかくどこでも使えて、Nifty-Serveの通信内容が読めること、メモがとれることが大事であったわけですから、とにかく軽くて／起動が速くて／電池が持つことを重視しておりました。その結果、最高と判断したのがHP-100LXです。当時本体だけで８万５千円。メモリーカードや接続キット、仮名漢字変換ソフトなどをあわせると１７万円程度の出費だったような気もしますが、これはこれで最高でした。
　ところがある日、蝶番部分が音もなく割れてしまい寿命となってしまいました。
　これ以降、新たなパートナー捜しに奔走しましたが、スペック的には博物館行きとはいえ（なにしろＣＰＵは80186、最新のPentiumⅢに比べると６世代は前ですかね）やはりあいつが最高でありました。重さわずか312g、いつでもどこにでもついてきてくれる。0.5秒で立ち上がり、電池が２週間持つという反応の良さとスタミナ。豆粒のようなキーボードといえど使ってみるとこれが押しやすい。液晶画面のルックスも抜群という得難い相棒であります。
　あれからIBMのThinkPad220、同PC-110、NECのMobileGearと持ち替えてまいりましたがやはり重すぎたり、筐体が弱かったり、大きすぎたりでどうもなじみません。600gを重いというのはやはり贅沢なのでしょうかね。私は電池の持ちが２時間というのでも実用にならないと考えるくらいのモバイル人間ですから。
　とはいうものの、誰にでもHP-LXを薦めるわけではありません。少なくともビジネス用途では無理でしょう。それはLotus1-2-3は内蔵しています。でもやはりOFFICEソフトは動いてくれなくてはというのが普通の人でしょう。
　また、HP-LXではInternetの利用が相当難しい。インターネットプロトコルを組み込んで、メールソフトをインストールして、とやっていると結構厳しいです。モデムもどうしても外付けとなると小さくて軽いというメリットが薄れてきます。
　実際の話、殆どのパソコンユーザーにとってはMS-Windowsが稼働するというのは最低条件でしょう。これならInternetにもつなげやすい。
　自宅でもパソコンを使いたいけれどもデスクトップをおく余裕がないのでノートパソコンがほしいという方は、そんなに迷う必要はありません。CD-ROMもフロッピードライブもモデムもサウンドもついた、いわゆるAll-In-Oneモデルを適当に物色して買ってくればいいわけです。それではおもしろくないので、ここではもう少し限定して物事を考えます。出先で仕事をするのに使う、というのはいかがでしょう。つまりはこういうことです。

出先で資料を作る。
出先で電子メールを受信発信する。
出先でデータを加工（検証）する。
　まず、持ち運びが楽でなくてはなりません。これははっきり言って1kgを超えるときつくなります。（ThinkPad220は1kgだった）この制限をクリアしようとすればCD-ROMやフロッピーディスクドライブを内蔵することはできません。CD-ROMドライブを使うのは、電子百科事典や一部のゲームをするのでなければソフトのインストールの時のみと考えてしまえばいらないと割り切ることは難しくないでしょう。
　問題はフロッピーです。印刷の時に必要となる可能性があります。フロッピーでデータを渡して出先のパソコンで印刷してもらうということを期待できる場合です。
　もちろんデーブル接続でデータを渡したり、一時的にＬＡＮを使わせてくれたり、直接プリンタにつながせてくれたりすればいいわけですが、半ば常駐の派遣ででもなければここまでのことは望めないでしょう。
　こう考えてみると軽くなくてはだめだけど、フロッピードライブは必要、というニーズは結構多いような気がいたします。しかし、事実上これは問題とはなりません。そのようなパソコンは市場には殆ど出回っていないからです（コンパックあたりで残っていますが）。仕方なく外付けに頼ることになります。ああ、これで荷物が増えた。でも荷物がこれ以上増えないことを考えるのは重要でしょう。具体的にはパソコンに直接フロッピードライブが接続できることです。つまりポートリプリケータのようなアダプタを必要としないことです。まあＵＳＢ接続のフロッピードライブをつなげればいいという話もありますが、予算の兼ね合いもありますし。
　実際本体にいろいろなケーブルをつなぐことが出来るというのは大切なことでありまして、例えば出先のプリンタに直接つないでいいよと言われても、プリンタポートが無くてはどうしようもないことが多いわけです。またファイル転送を許してくれる人がいたとしてもCOMポートがあってはじめて何とかなることです。
　赤外線やUSBで接続することも可能のようですが、こういうところに限って出先で使われているパソコンがWindowsNTだったりするんですね。（NTではUSBが使えない。）
　以上の考察より得られるチェックポイントは

軽い。
フロッピードライブ内蔵、ないし直接接続が出来ること。
（プリンタポート、COMポート装備）
といったところでしょうか。コンパックのARMADA Slim（ottoで128,000円）やIBMのThinkPad240あたりが候補になってくるでしょうか。
　持ち運んで使うとはいえ、使う場所が定まっている場合、電池の持ちはあまり問題となりません。AC電源がとれることがほぼ前提となっているからです。そんなわけで合衆国の場合はノートパソコンといえどデスクトップにパワーが重要とされているようです。持ち運びは車で行い、移動中も充電しておく。机の上では電源がとれるということです。似たようなことで出先に半ば常駐して作業をする場合は電池の持ちは気にする必要はないでしょう。ただし、車で移動するわけではないですから重さが重要なのは今までに述べたとおりです。
　薄型銀パソと呼ばれるVAIOをはじめとするノートパソコンは、重量を削りスタイルを追求するあまり電池の持ちを無視しておりますが、それはそれで日本のニーズに応えたものかもしれません。さすがに電車の中でパソコンを広げる人はまだまだ少ないです。とはいうものの３年ほど前にパリに行った飛行機の中でこんなことがありました。私がThinkPad220を外部電池（単一電池６本の電池ボックスを自作した）で駆動していると、隣の席の人がごそごそとアップルパワーブックを取り出しました。特に電源対策をしていなかったようでシベリア上空で電池が切れてしまい、それっきり音信不通となりました。アドレスを教え合って情報交換の約束をしたのですがね。モジュラージャックを用意していなかったようなのでちゃんとパリの電気屋さんの位置も教えてあげたはずなのに。（どうやらパリに到着してからは通信が出来なかったらしい。）
　そんなわけで電池の持たない薄型銀パソも購入候補としては悪くないと思います。もっとも弱点が２つありまして、

外部接続端子がUSBのみということが多い。
単純に流行を追いかけているだけのように見える。（ああ、見栄っ張り＞自分）
　VAIOに関してはもう少しありまして。

外部デバイスとの接続が不安。フラッシュメモリーカード挿しただけでハングアップした経験あり。
キータッチ、ポインティングデバイスともよくない。
　なお、常時携帯は不要ということで切り捨てたかに見えたCD-ROMドライブですが、アプリケーションのインストール時には必要となります。安くあげるにはたまに見かけるインターフェースカード付き9800円などというものを見つけて買っておくのがよいのでしょうが、ひとつ問題があります。システムが壊れて何も動かなくなったとき、の再インストールです。
　パソコンにはだいたいリカバリー用CD-ROMが付属していますが、純正CD-ROMドライブでなければ「リカバリー用CD-ROMが読めない」という事態に陥りがちです。もちろんドライバソフトを読み込ませてブートディスクを使えば何とかなるのですが、やはり確実なのは純正CD-ROMドライブです。
　どんなアプリケーションを入れておくべきかという問題にも触れておきます。
　１年くらい前まではノートパソコンはハードディスク容量が小さいので、インストールするソフトは最小限に、などという説がありましたが、今や６ＧＢくらいは最低ライン。画像データを使うのでなければあまり気にすることは無いと思います。普通にMS-OFFICEなりなんなりをインストールすればよろしい。でも出先で、というと少しだけ気にとめておいた方がいいかもしれないことがあります。「さて、電子メールをどうやろう」
　今や電子メールが使えないと仕事にならない人も多いと思います。で、だいたいは会社がメールアドレスをくれるとは思いますが、出先からメールサーバーにアクセスしてメールを持ってこれる設定となっているのはむしろ希でしょう。
　そうなると、新たにメールアカウントを作らなければなりません。そしてそれを出先で受けるインフラも必要です。一番手っ取り早いのはポータルサイトとかから無料メールアカウントをもらうことですが、多くの場合Webブラウザが無ければ読めないという問題があります。出先の人にちょっとブラウザを借りて、ということができればいいですが、そうでない場合、受けるデータ量が（広告の分）多くなりますので回線確保が厳しくなります。私の場合は、どこに行ってもかまわないように転送サービス付き有料メールアカウントを確保しました。
　では回線をどうやって確保するか。構内回線を貸してくれたとしても一筋縄では行きません。その建物がデジタル交換機を使っていた場合、電圧の高さでモデムが飛ぶ可能性があります。また、ビジネスホンですと、回線を確保するという動きができないことが多いです。こうなるとインラインカプラーをかませるという技を使いたくなりますが、コストが高いし大げさです。確実なのがＦＡＸ回線を分岐して、そこにモデムを繋ぐというものですが、机とＦＡＸの位置関係によってはどうしようもありません。
　結局、携帯電話で接続という一番安易な方法に頼りたくなりますが、とにかく遅い。TCP/IPはオーバーヘッドが大きいのでなおさらです。幸運にも昔からNifty-Serveのアカウントを持っている人は、そのメールアドレスをメインに使った方がいいかもしれません。少なくともテキストメールの受信はずっと速くなります。
　あと出先でデータの加工が必要となると、awkやperlが必需品という人も多いでしょう。私は結局Delphiのコンパイラを入れて加工用ツールを作ることになるでしょう。もっとも世の中には、Emacsとgccでツールは完璧という人も存在するかもしれません。
　しかし、開発ツールを使うとなるとWindows for MS-DOSでは怖いというのも確か。３０分かけて作ったワープロ文書を失うよりも、１０分かけてデバッグしたプログラムソースをOSのハングアップで失う方が何十倍もショックがでかいですから。そうなるとノートパソコンといえどＯＳはWindowsNTを使いたくなります。しかしPCMCIAカードを使うのが面倒だ。かといってWindows2000は危うすぎる。
　あと出先とのデータ交換を考えると「自在眼」のようなファイルビューアーがあったほうが便利かもしれません。
　あとは趣味の問題です。大きく言った場合のユーザビリティの問題です。例えば東芝LibrettoのMobilePackⅢは今まで挙げた条件だけをみればなかなかいい線をいっているように見えます。携帯電話接続カードも付いているし、なにしろ安い（９万円を切っている）。しかしこれを選択する人は極めて少ないでしょう。画面は640×480。キーボードも小さい。そして1kgを切る軽さ。256kBの２次キャッシュも付いてますから普通のLibretto70よりも速いんですがね。
　私はキータッチにこだわるから（自宅で使っているのはKINESYSだし、会社でも大量打ち込みの時には、オリジナルPS-2キーボード英語版が活躍する。ついでにMacのキーボードは左下にアップルマークの入った貴重品）ペラペラのものは駄目、となると選択肢が限られてしまいます。パンタグラフ式キーボードがノートＰＣ用に発明されてよかったよかった。

コンピュータネタ、目次へ
ホームへ