取消機能のあるエレベータ

 システム開発にはお金がかかる。よくぶつぶつと言われる。そんなとき「絶対にオペレーションミスしない、取消が必要となる恐れはない、と約束してくださるなら1/3の費用でできると思うんですがね」と答えることがある。幸いなことにだいたいそれで納得してくれる。でも、もし納得してくれないことがあったら、こんなたとえ話をしようと思っている。

 エレベーターに乗って行き先階のボタンを押し間違えることが誰にでもあるでしょう。そんなとき取消機能があればなと思ったことはありませんか。もちろん作ることはできます。でも誰も作らない、何故でしょうか。
 例えばあなたがエレベーターに乗った。行きたい階のボタンが押されているのを確認して奥の方に入った。ところが、元々ボタンを押した人が間違いに気がつき取消を行ったとします。あなたは慌ててボタンを押さなければならない。そんなわけで、あなたはずっとボタンの押され方に注目していなければならない。
 エレベーターが混んでいたときには、すぐさま押し直すということもできません。また周りの人の背が高く、停止予定階の表示が見えないこともあるかもしれません。更に万難を排して押し直したとしても、時すでに遅く行き先階を通り過ぎてしまうかもしれません。

 これらの悲劇を防ぐためには、エレベーターの利用者は一人一人で双方向リモコンを持つようにし、行き先階取消通知が各リモコンにきちんと渡るような仕組みを作り込むといったインフラ整備が必要になるでしょう。で、誰も拒否の操作をしないとすれば取消をする、という仕様になるでしょう。
 さらに、このリモコンを来客に渡すために受付を設置して、使用方法を説明して、在高管理をするとなると、、、。コストがかかって仕方がありませんね。
 また、多くの場合この機能は無駄になります。リモコンから拒否信号の着信を待っている間に該当の階についてしまうことが殆どではないでしょうか。

 ね、取消機能をつけると大変なことになるでしょう。


 指摘をいただきました。取り消し機能のついたエレベータは実在するそうです。しかも複数の会社が発売しています。しかしながらいずれも隠し機能のようです。さすがに上記のような問題が起こるから正式に発表できないのでしょうか。それでもいつか必要となると考えた開発者がこっそり入れておいた機能とか。
 ちなみにこの隠し機能を使いたいときは、取り消したい階数のボタンをダブルクリックすればよいようです。

 知っていると便利だったことが一度だけあるなあ。仲間内だけでエレベーターに乗ったとき。仕事に戻る前にジュースを飲もうと自動販売機のある上の階に行こうという話をしていた。ところが私は条件反射で仕事をするフロアのボタンを押してしまった。
 思わずまわりの人に平謝り。まあ、みんな笑って許してくれましたが、誰か知らない人が乗ってこないかと心配でしたね。「申し訳ありません。私が間違えてこの階のボタンを押してしまいました」と謝れば多分許してくれるとは思いましたが。
 誰も乗り込まないまま目指すフロアに着いたときはほっとしました。(私はこのようなとき、知らない顔ができない正直な性格です。ただし、知らない顔をしてとぼけている人を見るとむかつくという非寛容な性格でもあります。)

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